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2005年10月11日火曜日

【Clip!アカデミー】第19回:エッセイ号「心の歴史図を解説する」

【Clip! アカデミー】 第19回2005/10/11
第1週 エッセイ号「心の歴史図を解説する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



  
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【17世紀以前と、17~19世紀後半】
            3)【20世紀前半:1】
            4)【20世紀前半:2】
            5)【20世紀前半:3】
            6)【20世紀後半】
            7)【あたらめて、心の歴史図を見る】
            8)【心の歴史図の検討点】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
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            ■ 基本サイクル ■
  ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【前回のまとめ】
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16回から17回までの3回では、
心理学史図としての視点を立ち上げました。


心理学史図は、【魂=精神=意識】の17世紀以前から、
【意識 潜在意識 認知過程 知覚 身体 行動】の6つの側面が
出揃う20世紀後半までの、6つの年代から成っています。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

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今回から始まる第7サイクルでは、
心理学史図の各年代を、もう少し詳しく解説していきましょう。


※これから心の歴史図を検討していくにあたり、
心理学史を参照しながらの作業になると思います。

しかし、本メルマガでは、
あくまで心理学史の粗雑なダイジェストにはならないように、
気をつけたいと思います。

心理学史は、各自基本的な概論書・教科書から始めて、
勉強を進めてください。

ここでは、心理学を歴史的に眺めるときに、
無味乾燥な人名や年号に押しつぶされないような、
関心の持ち方として、心の捉え方の歴史について論じていたいと思います。


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2)【17世紀以前と、17~19世紀後半】
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===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】


科学が台頭してくるまでの一番上の1)では、心的過程は、
【魂→精神→意識】で表されています。

科学が発達する以前の世界観においては、
我々は、科学に還元しきれない心の在り様を取るか、
機械のように完全に組み合わされ、合理的な法則によって全てを
説明できる世界の在り様を取るか、
という難しい選択を迫られるまで、まだいくばくかの猶予がありました。

人間の身体や、物質の在り様も、
魂や精神の在り様と、分かちがたく結びつき、
いずれ、同じ地平で論じることが出来ると考えられていました。


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】


17世紀から19世紀後半にかけては、
心的過程は、分裂し、【意識】と【身体】二つの側面から
説明されるようになります。

【身体】は、精巧な機械として科学の対象になり、
医学や生物学の発展によって、その構造や成り立ちが、
解明されていきます。

しかし、機械として説明しきれなかった部分である【意識】は、
科学的に捉えられることのないまま、
哲学の領域にとどまりました。

ここでいうデカルト的【意識】と、
心理学的【意識】とは、かなり異なるものといえます。

デカルト的【意識】を、科学的に捉えようと夢見たのが、
フェヒナーであり、ヴントでした。

ヴントは、【意識】を、我々が直接感じられる感覚や感情の
積み重ねによって構成された、構造体と考えます。

そして、フェヒナーの精神物理学的実験と、
自らの意識を内観し、それをありのままに報告し、
分析することを通して、科学的に捉えることを目指しました。

人間の中でも、【意識】を研究対象にする学問、
心理学の誕生です。


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3)【20世紀前半:1】
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===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】


ただ、心的過程に関心を持つ学問は、
決して心理学だけではありませんでした。

むしろ、ヴント心理学の限界は、
他の学問における心的過程への関心を、
心理学の中に引き入れていくことになりました。

それにしたがって、心の捉え方も、
様々なに多様化していくことになります。

20世紀前半においては、
ヒステリー症状や催眠療法といった医学的現象に、
人間の心的過程への関心の高まりが見られます。

フロイトは、ヒステリーや催眠などの研究や臨床実践を通して、
それまでの心的過程の捉え方である、【意識】と【身体】の間にも、
広大な心の領域が広がっていることを確信します。

フロイト以降、
【意識】と【身体】の間に、
潜在的な、もしくは自覚なき意識過程が存在する、
という心の捉え方は、現代に至るまで一般的なものになっていきます。


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4)【20世紀前半:2】
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===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】


20世紀前半:1・2・3の3つの年代は、
ほとんど年表的には重なっており、順番をつけることが、
ためらわれるほどです。

言い換えると、
この時期に、心理学は、異なる心の捉え方を、
多数手に入れたということが出来ます。

細胞は激しく分裂・分化を繰り返し、
急激に成長しようとしていました。

その原因は、新しい学問であった心理学において、
ヴント的な心の見方(構成主義)や、捉え方(内観報告など)が、
限界を迎え、心の新しい捉え方を探っていたためです。

その中でも、もっとも力を持ち、
主流となったのは、【行動】という捉え方です。

もはや、心的過程そのものを捉えることを放棄した
行動主義は、心的過程の結果として表出された【行動】、
それも、外的刺激に対する身体的反応と、
両者を結びつけるための単純な法則のみを、
心の在り方として許容しました。


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5)【20世紀前半:3】
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===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】


ヴント流の構成主義や、行動主義に批判を加え、
心の捉え方として、また異なる視点を付け加えたのが、
ゲシュタルト主義者たちです。

彼らは、錯覚を初めとする知覚の性質を研究する中で、
知覚を含む心的過程には、単なる要素や、刺激と反応の間の、
機械的な結びつきだけでは説明できない性質があることを、
主張しました。

すなわち、今我々が体験している世界は、
単一で、常に全体として変化していきます。

これは、心的過程のどこかに、
無数の刺激を、ひとつの世界に統合するプロセスがあることを、
示しているようでした。

【知覚】は、感覚器という物理的・化学的機械から生じるという意味では、
【身体】に近く、また、知覚している本人にしか、
体験できない、という意味では、主観的な【意識】に近い、
という、独特の位置にあります。

それは、物質的な側面を持ちつつ、
精神的な現象が、【知覚】です。

【知覚】は、ひとつに統合されたものとして成立し、存在します。

それは常に変化していて、決して1つの機械のように、
変わらない構造を保ち続けることはないのです。

心のこの性質のことを、彼らは【ゲシュタルト】と呼びました。

この性質は、今では“システム”という捉え方の一部として、
心理学に影響を与え続けています。

20世紀前半の時代に見られた3つの心の捉え方は、
同時代に出てきたため、政治的にも、
お互いの捉え方を牽制しようとする歴史を持っています。

ただ、現代においては、
【行動】も、【ゲシュタルト】も、
ともに心理学における心の捉え方の、ひとつの側面として、
並列され、許容するのが、一般的な立場です。


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6)【20世紀後半】
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===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
       【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】


さて、心の捉え方が、
歴史的にどのように移り変わり、
多様化してきたかを検討してきましたが、
いよいよ、認知心理学の登場です。

【認知過程】という心の捉え方は、
心理学に、実に多くの変化をもたらしました。

特に重要なのは、
心的過程を、他の側面を許容しうる形式で、
機械論的な枠組みの中に取り込んだことです。

そこで有効だったのが、
情報処理技術の発達による、コンピューターの比喩です。

コンピューターは単なる機械ですが、
理論上は、あらゆる演算が可能なはずであり、
それは、人間の心的過程の演算も可能ということになります。

その仮説は、人間の心的過程とは、
そもそもそうした情報処理のプロセスのことなのではないか、
という結論を導きます。

【意識】と【身体】の間にあるものが、
こうした情報処理のプロセス、【認知過程】である、
と考えると、【ゲシュタルト】という側面も、
認知過程の一部と考えることが可能であり、
潜在意識も、自覚的にアクセスできない認知過程として、
捉えなおすことが出来るのです。

しかも、こうした心の捉え方は、
もとはコンピューターなど、工学的な捉え方から生じているので、
科学的なアプローチを容易にします。

こうして、20世紀後半には、
【認知】という心の捉え方は、心理学者の多くを魅了することになります。


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7)【あたらめて、心の歴史図を見る】
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以上、心の歴史図を大まかに追ってきました。

あたらめて、
心の歴史図の全体を眺めてみてください。


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

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今まで検討してきた、
各時代の心の捉え方を、並べてみたとき、
全体としては、どのようなパターン、模様が浮かび上がってくるでしょうか。

筆者に思い浮かぶのは、
受精卵が、ひとつの細胞から、次第に分裂し、
複雑に分化していく様子です。

はじめは、シンプルだった心の捉え方が、
時代を経るにしたがって、
次第に分化し、複雑になっていきます。

これが、心理学をややこしくさせている一因かとも
思われるのですが、
心というものを仮定するにしても、ひとつの捉え方では捉えきれない、
様々な側面を持つ存在ないし概念なのだ、ということができるでしょう。


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8)【心の歴史図の検討点】
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【認知過程】という心の捉え方が、
現代心理学において、いかに力を持っているか、
というところで終わりました。

しかし実際には、認知心理学さえあれば、あとの心理学、
ほかの側面はいらない、というわけではありません。

潜在意識と、認知過程は、
重なるところも多いと考えられますが、
はたして重複するのでしょうか。

特に、フロイト的無意識と、認知過程とは、
どのような位置関係にあるのか。

これは、拠って立つ部分がまったく異なるために、
一筋縄ではいかない問題です。

また、【意識】は、【認知過程】の一部なのか、
あるいは認知心理学から、説明可能か、という問題もあります。

この点については、次回のエッセイ号で、
あたらめて検討していくことにしましょう。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 10月18日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣 

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 試験にでる心理学 <一般心理学編> 山口陽弘 高橋美保 2001 北大路書房

● 現代心理学〈理論〉事典 2001 中島義明 編 朝倉書店

● 心理学群像 全2巻 末永俊郎 監修 2005 アカデミア出版会 


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【編集後記】
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今、大学院受験の方々は秋入試の真っ只中ですね。

講座の方でも、合格者の方々から、
喜びのご報告が来ています。

受験生の方々も、そうでない方々も、
長く勉強を続けるためには、
勉強を通して、物の見方が変わる、
という瞬間が大切だと思います。

Clip!アカデミーでも、そうした瞬間を、
皆さんと一緒に見つけていきましょう。



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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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