【Clip! アカデミー】 第44回 2006/5/30
第2週 問題号「心の関係図のイメージ」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【 それでは問題です 】
【Q1】集団の定義についての問題
【Q2】集団の分類についての問題
【Q3】集団内の相互作用についての問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
==================================================================
○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
無料心理学メールマガジンです。
■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題
↓
第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
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1)【前回のまとめ】
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Clip!アカデミーでは、
全体的なイメージを捉えるために図式を立てつつ、
”こころ”をこれまで様々な側面から検討してきました。
前回のエッセイ号では、
新しく、心の関係図の検討が始まりました。
”こころ”が実体としても、概念としても、
捉えきれない存在であるとすると、
”こころ”には、まだまったく別の側面があるのではないか。
そこに、関係性としての心の在り様を、
想像してみる余地があります。
心の関係図(仮)
==========================
● 集団 = 個人1⇔個人2⇔個人3…個人N +α
“こころ”= ???⇔???⇔???…N +α
==========================
集団を形作るのは、まずは、N人の個人です。
それに加えて、集団においては、
個人間に継続的な相互作用(⇔)が生じています。
果たして、個人間でやり取りされる相互作用から、
個々人の総和とは異なる存在として、
どのようにして集団が立ち上がっていくのでしょうか。
集団という、関係性に特徴付けられた存在を検討する中から、
”こころ”についての、新しいイメージを得られるかもしれません。
前回エッセイ号では、
集団についての、大まかなイメージを提示する
ところからは始めました。
今回問題号では、
集団についての基本的な問題を3題お送りします。
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2)【それでは問題です】
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【Q1】集団の定義についての問題
以下の文章は集団の定義について挙げたものである。
成熟した集団にもっともよく見られる特徴を、以下の選択肢から選びなさい。
============選択肢=============
a. 複数の人々の間に、持続的に相互作用が行われている
b. 外部と内部の境界が意識されている
c. 構成員に帰属意識や愛着が存在する
d. 集団内に構造が形成され、機能の分化がみられる
============================
【Q2】集団の分類についての問題
集団は、以下のように様々な集団に分類することが出来る。
1)公式集団と非公式集団 2)一次的集団と二次的集団
3)ゲマインシャフトとゲゼルシャフト 4)タテ型組織とヨコ型組織
以下のA~Dは、1)~4)に示された集団類型を、分類する基準である。
A 直接接触か間接接触か B オフィシャルかプライベートか
C 年功序列か資格か D 親和か打算か
A~Dと、1)~4)の組み合わせとして、
もっとも適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。
=======選択肢======
1) 2) 3) 4)
a. A B C D
b. D A B C
c. B D A C
d. B D C A
================
【Q3】集団内の相互作用についての問題
以下に挙げた選択肢の中から、集団内の相互作用のうち、
非言語的コミュニケーションの例と思われる選択肢を選びなさい。
=============選択肢============
a. メーリングリストにおいて意見のやり取りをすること
b. メールでの書類催促に返信を返さないこと
c. 挨拶メールをひんぱんにやり取りすること
d. ダイレクトメールを、ゴミ箱に移動すること
============================
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【次回配信】
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次回 【解説号】… 6月6日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編著 1999 有斐閣
● マンウォッチング<上> デズモンド・モリス 1991 小学館
● タテ社会の人間関係 中根千枝 1967 講談社
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【編集後記】
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前回から、新章に突入し、
心を関係性から検討する試みを行っています。
集団というものを検討するとき、
心理学というフィールドは、
実はかなり狭いものであることを感じることがあります。
ここでは、周辺諸分野での成果も含めて
紹介しながら、
集団について全体的に検討していきたいと思います。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
2006年5月30日火曜日
【Clip!アカデミー】第44回:問題号「心の関係図のイメージ」
2006年5月23日火曜日
【Clip!アカデミー】第43回:新章突入!エッセイ号「心の関係図のイメージ」
【Clip! アカデミー】 第43号 2006/5/23
第1週 エッセイ号「心の関係図のイメージ」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【関係としてのこころ】
3)【集団についてのイメージ】
4)【集団におけるコミュニケーション】
5)【個人の総和以上の存在】
6)【集団を研究する学問】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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■ 基本サイクル ■
※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
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1)【前回のまとめ】
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これまでの、Clip!アカデミーでは、
●心の構造図や、心の過程図を用いて、
構造やプロセスといった視点からの捉え方
=実体としてのこころ
↓
● 心の歴史図や心の研究法図といった、
捉え方といった方法論からの心の捉え方
=構成概念としてのこころ
を検討して来ました。
そして、現在では、
● 心の対象図という、
それまでと比べて一歩俯瞰した視点からの、
よりマクロなレベルからの捉え方
に入っています。
前回までの、心の対象図で検討してきた中で、
浮かび上がってきたのは、
“こころ”には、
実体的な側面、構成概念的な側面以外の側面が
あるのではないか
ということです。
実体的なものではない
しかし、構成概念でもないものとしてのこころ
心の対象図の検討の中から、
そのようなものとして、浮かび上がってきたのが、
これから検討していきたい、関係としてのこころです。
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2)【関係としてのこころ】
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とはいっても、“こころ”を、
関係性のあり方として捉えるとは、
いったいどういうことなのでしょうか。
おそらく、これまで以上に、
イメージしづらい捉え方かもしれません。
そこでまずは、関係としてのこころを、
イメージとしてつかむところから始めていきましょう。
こころをコンピューターに例えるところから、
認知過程についての研究が生まれたように、
関係としてのこころをうまくイメージするには、
同じく関係によって成り立っているシステムについて、
検討していくことが有効でしょう。
関係によって成り立つシステム。
そう、集団です。
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3)【集団についてのイメージ】
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みなさんは、集団というと、
どんなことを想像しますか。
あるいは、絵に描くとしたら、
どのように集団を表現するでしょう。
人が集まっているところ、
人が集まって、一つにまとまっているところ、
まとまって、何かをしているところ。
絵に描くとしたら。
おそらく多くの人は、まずはじめに
人間を何人か描いてみるのではないかと思います。
○ ○ ○
/|\ /|\ /|\
/ \ / \ / \
そう、集団においてもっとも基本的なことは、
そこに人間がいる、ということです。
集団は、何人かの人間が集まって出来ている。
ここまでは、
どんな人でも納得してもらえるのではないかと思います。
当たり前といえば当たり前のことですが、
ここまでの捉え方を、図で表しておきましょう。
● 集団=個人1+個人2+個人3…個人N
これで、この集団は、N人の個人から出来ている、
と表現できました。
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4)【集団におけるコミュニケーション】
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どんな集団でも、
集団とは個人の集まりであり、
人間がまったくいない集団などというものは、
ありえません。
ただ、それで充分なのでしょうか。
集団を、単純に何人かの棒人間で表した人も、
何か足りないと頭をひねるのではないでしょうか。
ここで、また想像してみて下さい。
人がいるけれど、お互いの存在を全く意識せず、
好き勝手なことをしている場合、
これは、集団といえるのでしょうか。
\○ \○/ ○
/| | /|\
/ \ / \ / \
…もしかすると、言えるのかもしれませんが、
ここからでは、3人が好きなことをしているのか、
3人が集団を形成しているのか、区別することが出来ないんですね。
そう、集団とは、個人の単なる足し算ではありません。
組織として機能していたり、
家族など、集団としてのまとまりを持っている集団では、
そのほかに、重要なことをしている。
それがコミュニケーションです。
新宿駅の雑踏の中で、
お互いのことを無視しているようにみえる場合でも、
我々は言葉以外のサインで、頻繁にコミュニケーションしています。
人の流れが、うまく流れていくためには、
前の人や隣の人が、次にどちらに曲がるか
予測しながら、ぶつからないように距離をとったり、
うまく方向転換する必要があります。
そのため、ほとんど無意識に、
相手の動きを理解して、反応を返すという、
非言語的な情報のやりとりをしているわけです。
つまり、
=============================
人の集まり = 個人1 個人2 個人3…個人N
コミュニケーション = ⇔ ⇔
● 集団 = 個人1⇔個人2⇔個人3…個人N
=============================
となります。
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5)【個人の総和以上の存在】
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では、個人間でコミュニケーションが行われることで、
何が起こるのか。
集団は、新宿駅の雑踏から、
家族や、企業や学校などの組織団体、
広くは国家や社会に至るまで、様々な規模と形態があります。
集団が、高度に組織立てられていればいるほど、
この情報のやりとりは複雑で、継続的に行われる。
ここまで行くと、
個人を横に並べただけの、
先ほどの図では、想像が及ばなくなってきますね。
集団を構成している構成員の個々の顔の代わりに、
集団そのものとしか捉えられなくなっていきます。
そこには、何か、
個人の集まり以上のことが生じていることになります。
その+αは、どこから来るのでしょうか。
先ほどの、「⇔」、個人間でのコミュニケーションを、
すべて集めると、それがちょうどαになるのでしょうか。
あるいは、集団を形成する、
コミュニケーション以外の、
なんらかの要素があるのでしょうか。
ここでは、その+αは、そのままにしておくことで、
集団をより詳しく図式化することができるでしょう。
● 集団= 個人1⇔個人2⇔個人3…個人N +α
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6)【集団を研究する学問】
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どうでしょうか。
集団は、単に個人から成るものではなく、
個々人の間に生じる様々なコミュニケーション、
あるいは環境との様々な相互作用から成り立っている、
というイメージを、持つことが出来たでしょうか。
集団を考える上では、
構成員以上に、個々人間のコミュニケーションから生じる、
様々な現象を考えることが重要になります。
このようなイメージの元で、
家族や社会などの集団、あるいは、集団を形成する要因や、
コミュニケーションの研究をしているのが、
社会学や工学、経済学なのです。
心理学においては、主に
社会心理学や、家族療法・集団療法などの
心理療法が守備範囲にしてきました。
次回からは、
社会心理学や家族療法の視点を通して、
集団における、+αを検討していくことにしましょう。
そこから、関係としてのこころとは
どういうものか、ということも、
見えてくるはずです。
心の関係図(仮)
==========================
● 集団 = 個人1⇔個人2⇔個人3…個人N +α
“こころ”= ???⇔???⇔???…N +α
==========================
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【次回配信】
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次回 【問題号】… 5月30日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 現代心理学[理論]辞典 中島義明 編 2001 朝倉書店
● 社会心理学 -図説・現代の心理学6- 南博 監訳 穐山貞登 訳
1975 講談社
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【編集後記】
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今回から、また”こころ”について、
新しい捉え方を探っていきたいと思います。
またか、と感じる人もいるかもしれません。
あまりにたくさんの捉え方がありすぎて、
何がなんだか分からなくなる。
さて、こう感じたとき、
その感情をどこに持っていくかが重要です。
なにか、すっきりと割り切れる結論を求めるのか、
それとも、割り切れないところに
とどまるのか。
もちろん、どちらも正解です。
しかし、割り切れる結論を追求したい、
あるいは、割り切れないことは耐え難い、
と感じる場合は、
心理学よりもすっきりした、
自然科学に進んだ方がいいかもしれません。
常に、我々の捉え方からすり抜け、
はみ出し続けるのが”こころ”の性質であり、
その際限ないプロセスを繰り返すことに飽きないことが、
”こころ”に付き合うことの必要最低条件だからです。
そんなわけで、
”こころ”の新しい捉え方、
まだまだ当面続きます。
お付き合いのほど、よろしくお願いします。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
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※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
2006年5月9日火曜日
【Clip!アカデミー】第42回:解説号「心の対象図の再検討」
【Clip! アカデミー】 第42回 2006/5/9
第3週 解説号「心の対象図の再検討」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
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◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題号の解説】
【Q1】「概念」と「実在」についての問題
【Q2】高次活動の説明についての問題
【Q3】「関係性」についての問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
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1)【前回のまとめ】
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●心の対象図2
=============================
┌-----┐ ┌-----------┐
A |”こころ”| ⇔ | 対象 |
└-----┘ └-----------┘
↑
┌------┐ ┌-----┬-----┐
B | 構成概念 | ← | 概念 | 実在 |
└------┘ └-----┴-----┘
=============================
心の対象図検討の第3回目となった
前回エッセイ号では、
構成概念を通じて”こころ”を捉えようとする試みの、
限界について検討していきました。
”こころ”を直接観察し、
研究することは誰にもできませんから、
我々は普段、対象の対比(⇔)から、
人間の”こころ”について知ろうとします。
ここでいう”対象”とは、
衣服やパソコン、イス、部屋、街灯、他人、
地面や大気、地球、…と無限に広がる、
”こころ”以外のもの、ということにしておきましょう。
それを科学的な手続きとして行った場合、
現在よく用いられている方法が、
心の対象図2のBの図です。
構成概念は、
それなくしては”こころ”について説明しきれない
のだけれど、まだ明確な根拠が示されていない部分について、
仮に置いておく仮説であるということができます。
そう考えると、
”こころ”という言葉そのものが、
それなくしては人間について説明しきれないのだけれど、
まだなんだか分からない、という、
構成概念のような言葉であることが分かります。
前回のエッセイ号では、
この人間を「説明しきれない」という現状について、
「いつか構成概念なしに説明しきれるはずだ」という立場と、
「説明しきれないのだ」という立場の、
二つについてご紹介しました。
そして、「説明しきれないのだ」という立場を、
科学的に乗り越えようとするアプローチとして、
「関係性」を重視する立場について触れてしめくくりました。
問題号では、
補足として心理学周辺分野から三問をお送りしました。
それでは、今回の解説号で
解説をしていきましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【問題号の解説】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Q1】「概念」と「実在」についての問題
対象を概念と実在に分けるというのは、
今回の議論のために立てた、
便宜的な試みだが、同様のテーマは哲学において
重要なテーマとして論じられている。
対象 → 概念 + 実在
の図式のうち、「概念」と「実在」それぞれに対応する
概念としてもっとも適当なものの組み合わせを、以下の選択肢から選びなさい。
1) ソシュールの「記号」
2) カントの「物自体」
3) スキナーの「マンド」
4) マッハの「感覚与件(センスデータ)」
======選択肢========
「概念」 「実在」
a. 1) 3)
b. 1) 4)
c. 3) 2)
d. 4) 2)
=================
正解は、 【 b. 】
こころの対象図における【対象→概念+実在】の図式は、
分かりやすくするために、全体のイメージを優先しています。
そのため、読者の皆さんに毎回お伝えしている通り、
心理学の中で、今回の図式をそのまま使うには、
おおざっぱ過ぎるという欠点があります。
そこで、皆さんがより深く勉強を進めていくためヒントとして、
今回の議論は、心理学や哲学では、
実際にはどう論じられているのかをいくつか、
ご紹介していきましょう。
たとえば、心の対象図で扱った
実在と概念の違いとして、
実在→ 観察可能
概念→ 観察不可能
という特徴が挙げられます。
セットの上の立て看板(=実在)が、
舞台の最中には風車になったり、
ドンキホーテには恐ろしい竜になったり(=概念)します。
立て看板は、いつでも、
観察可能ですが、
我々が見ていた風車や竜は、
その限りではありません。
この説明は、我々の日常的な受け止め方と、
そう離れてはいないはずです。
ただし、厳密に考えていくと、
「実在」の存在を、自明のものとして捉えてしまうことにも、
注意が必要なのです。
ややこしいテーマですが、
実在を巡るこのテーマは、哲学において、
長く論じられてきました。
我々が観察できるのは、
我々の感覚器官を通して捉えることができる現象のみです。
我々は、風車の形の立て看板を、
その色や、影や、形など、
様々な要素から捉えることができます。
哲学者カントは、感覚要素を取り去っても、
その現象を引き起こすモノそれ自体が存在している、と考えました。
それに対して、
物理学者のマッハは、モノそれ自体が存在することを、
感覚要素による観察抜きにどうやって証明するのか、
を問題視しました。
彼はここから、
感覚要素として捉えられるモノ=観察したもののみをもとに、
科学的検証を行うことを提唱しました。
感覚要素=感覚与件(センスデータ)です。
マッハのこうした立場は、
現象主義と呼ばれ、のちに、
論理実証主義に受け継がれていきます。
つまり、心の対象図における「実在」は、
カントの「物自体」というより、
マッハの「センスデータ」に相当するといえるでしょう。
こうした哲学的議論は、
実証を重んじる科学の理論的な背景となっていますが、
ここでは、立て看板すら、
安易に自明のものとしてはならない、
と考えるのです。
言い換えれば、
研究対象のあり方を、「あたりまえのもの」と考えず、
我々の眼に映るものの、ありのままを記述せよ、
ということになるでしょうか。
観察可能な対象ですらこれだけ厳しく
思い込みを排除していくのですから、
本来観察できない“こころ”を対象とする心理学においては、
なおさら、注意深くなりたいものです。
“こころ”をさも、手で触れられる実体を持つかのように
扱うことは、実は非常に的外れな捉え方なのです。
一方、
「概念」は言語の問題につながります。
スキナーの「マンド」は、言語行動の一種であり、
命令し、記述するための言語行動をさします。
スキナーの言語行動は、
概念というテーマに迫ろうというより、
行動として観察された言語活動を扱うという意味で、
実際的な臨床活動に重きをおきました。
ここでいう「概念」には、当てはまらないようです。
それに対しソシュールは、
言語の構造を分析することから、
我々人間の本質に迫る理論を提出しました。
たとえば、
なぜりんごは、「りんご」と呼ばれるのでしょうか。
言葉が自分の気持ちを正確に表している、
と感じることの方が少ないのに、
我々がお互いの意思を通じ合えるのはなぜでしょうか。
これは、言語を介した心理臨床活動と、
密接に絡み合っています。
つまりは、言葉の在り方は、
人間の在り方そのものと、密接に絡み合っているのです。
フランスの精神分析家ラカンは、
こうした視点から、フロイト理論を再解釈していますが、
哲学や文化人類学の世界では、
様々な心理療法や、臨床心理学よりも、
こうしたフロイト-ラカンの理論の方が、
重宝されているという現実があります。
「実在」の問題は、心理学における科学的検証について、
「概念」の問題は、心理学における、臨床的実践について、
重要なテーマを示唆しているといえるでしょう。
【Q2】高次活動の説明についての問題
急進的行動主義における、
人間の高次活動を説明するものとして、
もっとも適当な概念を以下の選択肢から選びなさい。
===選択肢===
a. モデリング
b. シェイピング
c. スキーマ
d. なし
=========
正解は、 【 b. 】
…急進的行動主義=スキナーだとすると、
シェイピングと迷うところですが、
彼はそもそもそうした問題に関心を持ちませんでした。
行動主義においては、
かつて学習理論、それも、刺激-反応の連鎖のみで、
人間のすべての精神活動を説明できる、と考えられていた
時期がありました。
どんなに複雑に見える行動も、
環境からの刺激を受け、それに随伴する反応が生じる、
という条件付けの結果として形成された、
一組のS-R図式に還元できる、という発想です。
それに対し、
バンデューラの社会的学習理論では、
モデリング(模倣)が重視されます。
行動そのものを強化されるわけではなく、
モデルが行動を強化される場面を、
認識することに重きが置かれています。
バートレットのスキーマは、
知識の「概要」といった意味で使われましたが、
認知心理学が発展する中で、
重要な概念になっていきました。
ここではスキーマとは、知識を構成するモジュールであり、
我々は、買い物やレストランといった、
様々な状況での状況判断や、問題解決を、
様々なスキーマを用いて処理していると考えられます。
現在では、
高次活動を説明する原理としては、
認知過程を仮定することが主流となっています。
それに対して、
スキナーのとった急進的行動主義の立場は、
非常にプラグマティックなものでした。
簡単に言えば、中立的。
機械論にも、メンタリズムにも
傾かなかったということです。
人間のこころをS-Rの連鎖に還元することよりも、
S-Rに還元できないこころの在り様を実証することよりも、
目の前の実際的な問題の役に立つことを優先しました。
それは、彼の理論が非常に臨床的であり、
現場での実践に応用可能であることを念頭に置いた研究から
出発していることからも、分かります。
ほとんどの心理学理論は、
その前提に、こころとはどんなものか、
という人間観、世界観を持っています。
それを自覚し、議論し、
妥当なものに近づけていく努力は非常に重要です。
しかし、自覚をした上で、
それを脇に置き、今の自分にできることを
考えることが、最終的には我々に求められていることでしょう。
【Q3】「関係性」についての問題
対象間での「関係性」を強調する立場として、
もっとも不適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。
=====選択肢====
a. コネクショニズム
b. 生態学的心理学
c. 社会的構成主義
d. 対象関係論
============
正解は、 【 d. 】
…対象関係論は、対象間の関係を論じるというより、
個人内部での「対象関係」の発達に重心があります。
心の対象図の最後に、
対象間における関係性を強調する立場を概観しておきましょう。
こころを、精巧な部品の集合と見る旧来の機械論に対し、
新世代の機械論、もしくは有機体論の立場に立つパラダイムが
説明に用いるのは、広い意味での「関係性」です。
●相互作用
「関係性」を重視する、ということは、
対象そのものより、対象間の相互作用に注意を向ける、
ということです。
たとえば、
脳細胞間での相互作用から高次の機能が生じると考える、
コネクショニズムの立場。
●全体性
対象間、もしくは、要素間の相互作用が、
頻繁に、そしてある程度のパターンを持って繰り返されると、
それは外からは、全体としてのまとまりを持つように
見えます。
たとえば、
環境とのダイレクトな相互作用全体を
ひとつのシステムと見て、
その中から知覚やこころを論ずる、生態学的心理学。
●文脈
相互作用や、全体としてのまとまりは、
さらに大きなまとまりの中での、
相対的な位置関係によって、
機能や意味が決まっていきます。
したがって、一対一で対応するような、
固定的な機能や意味を考えることが難しくなります。
たとえば、
我々の共有する現実に、実態や正解はなく、
その場その場で社会的に構成された文脈によって
変わっていくと考える、社会的構成主義。
対象関係論は、
個人の精神内界において、
内的対象関係がどのように発達していくか、
という考察を基盤として、
人間の精神や精神疾患を捉えるための理論です。
前述の3つの立場との違い、
なんとなくイメージできたでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 5月23日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004
北大路書房
● 現代心理学「理論」辞典 中島義明 2001 朝倉書店
● はじめての構造主義 橋爪大三郎 1988 講談社現代新書
● 絵でわかる現代思想 VALIS DEUX 2000 日本実業出版社
● エコロジカル・マインド-知性と環境をつなぐ心理学 三嶋博之
2000 NHKブックス
● あなたへの社会構成主義 ケネス・J.ガーゲン 著 東村知子 訳
2004 ナカニシヤ出版
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
勉強をするとき、
特に受験勉強をするときというのは、
細部に集中していくことです。
芽吹いた種が、無数の細い根を、
地面に深く張っていくように、
知識体系を構成している個々の専門知識を、
具体的な実例や日常的体験と結びつけながら、
理解し、記憶していく。
根を張らなければ
そもそも立ってはいられないのですが、
その一方で、
空に向かって枝を広げ、
幹を太くしていく作業も必要です。
日の光を受けて、それを栄養に変え、
知識を太く、大きく育てていく。
それが、このメルマガでやっていきたいことです。
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2006年5月2日火曜日
【Clip! アカデミー】 第41回:問題号 「心の対象図の再検討」
【Clip! アカデミー】 第41回 2006/5/2
第2週 問題号「心の対象図の再検討」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【それでは問題です】
【Q1】「概念」と「実在」についての問題
【Q2】高次活動の説明についての問題
【Q3】「関係性」についての問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題
↓
第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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●心の対象図2
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┌-----┐ ┌-----------┐
A |”こころ”| ⇔ | 対象 |
└-----┘ └-----------┘
↑
┌------┐ ┌-----┬-----┐
B | 構成概念 | ← | 概念 | 実在 |
└------┘ └-----┴-----┘
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心の対象図検討の第3回目となった
前回エッセイ号では、
構成概念を通じて”こころ”を捉えようとする試みの、
限界について検討していきました。
”こころ”を直接観察し、
研究することは誰にもできませんから、
我々は普段、対象の対比(⇔)から、
人間の”こころ”について知ろうとします。
ここでいう”対象”とは、
衣服やパソコン、イス、部屋、街灯、他人、
地面や大気、地球、…と無限に広がる、
”こころ”以外のもの、ということにしておきましょう。
それを科学的な手続きとして行った場合、
現在よく用いられている方法が、
心の対象図2のBの図です。
構成概念は、
それなくしては”こころ”について説明しきれない
のだけれど、まだ明確な根拠が示されていない部分について、
仮に置いておく仮説であるということができます。
そう考えると、
”こころ”という言葉そのものが、
それなくしては人間について説明しきれないのだけれど、
まだなんだか分からない、という、
構成概念のような言葉であることが分かります。
前回のエッセイ号では、
この人間を「説明しきれない」という現状について、
「いつか構成概念なしに説明しきれるはずだ」という立場と、
「説明しきれないのだ」という立場の、
二つについてご紹介しました。
そして、「説明しきれないのだ」という立場を、
科学的に乗り越えようとするアプローチとして、
「関係性」を重視する立場について触れてしめくくりました。
哲学的なテーマが中心の心の対象図検討、
今回も、心理学周辺分野から、
補足の問題三問をどうぞ。
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2)【それでは問題です】
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【Q1】「概念」と「実在」についての問題
対象を概念と実在に分けるというのは、
今回の議論のために立てた、
便宜的な試みだが、同様のテーマは哲学において
重要なテーマとして論じられている。
対象 → 概念 + 実在
の図式のうち、「概念」と「実在」それぞれに対応する
概念としてもっとも適当なものの組み合わせを、
以下の選択肢から選びなさい。
1) ソシュールの「記号」
2) カントの「物自体」
3) スキナーの「マンド」
4) マッハの「感覚与件(センスデータ)」
======選択肢=====
「概念」 「実在」
a. 1) 3)
b. 1) 4)
c. 3) 2)
d. 4) 2)
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【Q2】高次活動の説明についての問題
急進的行動主義における、
人間の高次活動を説明するものとして、
もっとも適当な概念を以下の選択肢から選びなさい。
===選択肢===
a. モデリング
b. シェイピング
c. スキーマ
d. なし
=========
【Q3】「関係性」についての問題
対象間での「関係性」を強調する立場として、
もっとも不適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。
=====選択肢====
a. コネクショニズム
b. 生態学的心理学
c. 社会的構成主義
d. 対象関係論
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【次回配信】
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次回 【解説号】… 5月9日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004
北大路書房
● 現代心理学「理論」辞典 中島義明 2001 朝倉書店
● はじめての構造主義 橋爪大三郎 1988 講談社現代新書
● 絵でわかる現代思想 VALIS DEUX 2000 日本実業出版社
● エコロジカル・マインド-知性と環境をつなぐ心理学 三嶋博之
2000 NHKブックス
● あなたへの社会構成主義 ケネス・J.ガーゲン 著 東村知子 訳
2004 ナカニシヤ出版
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【編集後記】
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今回の問題号は、
言語学・哲学など、
心理学周辺領域からの出題になっているためです。
特に、マッハのセンスデータ、
などという言葉は、
心理学を勉強されている方でも、
初めて耳にした人がほとんどではないでしょうか。
もちろん、
大学院受験には直接役立たない知識なのですが、
科学としての心理学を考える上では、
知っていて損はない人物です。
なので、今回は、参考文献に、
入門書をたくさん載せました。
ソシュールにはじまる、
構造主義言語学についても、
入門書程度で充分なので、
ぜひ読んでみてください。
心理学自体についての見方が
変わる可能性大です。
心の対象図の検討も残りわずかですが、
もう少しお付き合いください。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
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