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2008年12月17日水曜日

【Clip!アカデミー】第139回:展開号「心理学研究法から:実験現象学」

【Clip! アカデミー】 第139回 2008/11/4
第3週 展開号 「心理学研究法から:実験現象学(experimental phenomenology)」

       ◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆     
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◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【実験現象学の広がり】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
            第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
       ↓   (具体例を中心に)
 ※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
                  ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目5ヶ月目 臨床心理学から
        「実験現象学(experimental phenomenology)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
        2ヶ月目 基礎心理学から1
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  4ヶ月目 臨床心理学から
  【NOW!】5ヶ月目 心理学研究法から 
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「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓

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「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓

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 ● 第3週「展開」号
「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓


   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【実験現象学の広がり】
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今回の展開号では、
実験現象学の広がりを、3つのトピックスから
展開していきましょう。


●現象学的還元

哲学者フッサールは、
意識の志向性などについて触れ、
優れた業績を残した哲学者ブレンターノに師事し、
「厳密な学」としての現象学を構想した。

現象学的還元とは、
現象学のためにフッサールが提唱した主要な手段であり、
「判断停止」、「カッコ入れ」とも呼ばれる。

現象学的還元とは、
現象を経験しているとき、
それを「当たり前」としている前提自体を、
ひとまず「カッコに入れる」作業を指す。

たとえば、
リンゴを現象学的に観察しようとするならば、
まず、「それがリンゴである」、
という判断を停止し、脇に置いておく。

この手続きによって初めて、
”それ”は、「リンゴ」という言葉やイメージ、
概念としての含みなどを引き剥がされることで、
意識の作用として私に経験されている現象
として、厳密な観察の対象となることができるのである。


●現象学的心理学

対象としての心理過程や行動を、
現象学的な記述や分析から把握する立場を
指して用いられる。

精神症状や生きがい、疎外など、
実験的に取り扱うことが困難な心理的事象に対し、
特に実存主義的な立場から
記述や分析を行ったメダルト・ボスや、
ビンスワンガー、V・フランクルらの名前が
挙げられることが多い。

心理過程を要素に還元し、
操作的に定義し検証していく自然科学的な
立場と対置して論じられる。


●アフォーダンス

J・J・ギブソンは、
ゲシュタルト心理学や実験現象学に影響を受け、
知覚心理学に新しい視点を提供した。

それがアフォーダンス理論と呼ばれる、
知覚の性質である。

アフォーダンスは、
環境が知覚者に「与える」、
「アフォードする」特徴や機会を指す。

アフォーダンス理論においては、
対象の価値や特性は、
知覚者のなかにあるのではなく、
知覚対象と知覚者の関係によって決まる。

たとえば「水」は、
のどが渇いた人にとっては「飲むこと」を、
海辺の観光客には「泳ぐこと」をアフォードする。

こうした環境と行為主体との相互作用から、
人間の心理や行為を捉えていく立場は、
生態学的心理学と呼ばれている。


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3)【解説:知識の展開】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


世界を客観的に観察しようとするとき、
そこには、
「客観的な世界がまず実在し、私はそれを正しく認識できる」
という前提が隠されています。

しかし、もし本当に厳密に、
「客観的な観察」を行おうとするなら、
そもそも、そうした前提が本当か、
検討する必要があるでしょう。

その問題に、
現象学的還元、という方法論から
真剣に取り組んだのがフッサールです。

「客観的な世界」とはなにか?

そもそも、
その「客観的な~」は、
我々の主観的な経験を通して、
我々の意識の中に現れているわけですから、
その時点で厳密な検証に耐えません。

だからこそ、
まずはじめに、
主観的な経験として我々の意識に現れた
現象自体を検証することが必要だ、
とフッサールは考えたのです。

こうした方法論は、
哲学史の中では、
ハイデガーやメルロ=ポンティといった、
実存主義と呼ばれる人々によって、
継承されていきました。

そして、心理学においては、

●精神症状を脳の構造や化学物質の問題ではなく、
 人間が人生の中で経験するままに記述しようとした
 精神病理学者たち

●ゲシュタルト心理学を通して、
 世界がなぜ今のように経験されるのか、
 を同じく単純に生理学や行動主義的な単位に還元しないで
 検証しようとした心理学者たち

などに受け継がれていくことになりました。

しかし、
状況や対象を「ありのまま」に観察しようとする、
状況や対象を「当たり前」と考えず、
それを「当たり前」にしている前提自体を疑う、
という発想は、どのような研究においても、
最初の出発点であるはずです。

この問題をよくよく考えていくと、
そもそも「客観性」って?とか、
「実証」とは可能なのか?など、
研究が一歩も先に進まなくなる危険性があります。

しかし、
それを独創的に踏み越えられれば、
ギブソンのように、
新しい学問分野さえ切り開いていけるかもしれません。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年11月18日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● わかりたいあなたのための現代思想入門
  小坂修平 竹田青嗣 志賀隆生 他著 1990 JICC

● エコロジカル・マインド 三嶋博之 2000 NHKブックス


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【編集後記】
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「あるがまま」というのは、
言葉にする分には簡単なのですが、
かなりの曲者です。

あるがままに観察すれば、
それで現象学になるのかというと、
若干疑問です。

その難しさを引き受けて、
現象学的還元というひとつの方法論を打ち立てたのが、
フッサールであるということが出来るでしょう。

これはさすがに哲学者というところで、
その厳密さと徹底さには、
心理学者はかなわないのかな、
と感じてしまいます。

もちろん、
方法論が異なるのですから、
かなわなくてかまわないのですが、
どうも心理学者が現象学という言葉を使うと、
「あるがまま」のような、
抽象的なお題目になりがちな気がします。

その点については、
個々人のモラルにおいて、
自戒する以外にないのでしょうか。


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※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。
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【Clip!アカデミー】第138回:応用号「心理学研究法から:実験現象学」

【Clip! アカデミー】 第138回 2008/10/28

第2週 応用号 「心理学研究法から:実験現象学(experimental phenomenology)」


  ◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ 
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  ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【現象学的観察】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
                 ↓  (具体例を中心に)
              第3週「展開号」… 知識をつなげる
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              第4週 基本的にお休み
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目5ヶ月目 臨床心理学から
        「実験現象学(experimental phenomenology)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【現象学的観察】
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ルビンの壷は、
実験現象学者のエドワード・J・ルビンが、
視野における「図」と「地」について
検証するために用いた、
多義図形と呼ばれる図形のひとつです。


下の図を見てみましょう。

 ■■■■■■■■■■■■
   ■■■■■■■
    ■■■■■
   ● ■■■ ●
      ■
     ■■■
    ■■■■■■ 
    ■■■■
    ■■■■■■
   ■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■

黒い部分を、
ひとまとまりとして捉えると、
どんな風に見えるでしょうか。

壷や杯のような形に見えてきませんか。

このとき、
白い部分は、何もない背景として、
後ろに退いています。

しかし、
白い部分に注目すると、
向き合ったふたりの顔に見えないでしょうか。

このとき、
黒い部分は、今までと逆に、
人物の背後に広がっている背景に
見えてきます。

図形も、視覚的刺激も変わらないのに、
我々の注意の向け方によって、
まったく異なる現象が立ち上がってきたわけです。

我々の知覚においては、
いったい何が起こっているのでしょうか。

この現象を研究するための、
もっともシンプルな方法は、
何度も何度も図形を観察して、
黒い壷と、白い顔を交互に見比べてみて、
その特徴や、それが逆転するときに何が起こっているのか、
を素朴に観察しようとすることです。

皆さんも、
まずは、何度も繰り返し
ルビンの壷が自分の視野にどのように
存在するのか、観察してみてください。


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3)【解説:知識の根っこ】
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視覚について研究するためには、
様々な方法があります。

視覚的刺激や、眼球の構造について
検証する。

視覚的刺激が、どのように伝達され、
脳によって視覚に統合されるか、
を検証する。

前者は生理学的なアプローチであり、
後者は認知的なアプローチといえるでしょう。

実験現象学的なアプローチにおいては、
主観的に体験されている視野の、
現象としての性質を観察することから、
研究がはじまります。


前面に浮き上がって、
モノとしてのまとまりをもって
認知される部分は、
視野の中でも中心的な位置を占め、
注意の対象となっているようです。

一方、背後に引いて、
形を持たず、図の後ろにも広がっている
印象を与える部分は、
モノとして注意の対象にはならないようです。

ルビンは、前者を「図」、
後者を「地」と呼びました。

普段われわれは、
視野を無自覚にこのような図と地に分け、
全体の視野を構成しています。

そして、
なぜその部分が「図」で、
他の部分が「地」なのか、
などということを疑問に思ったりはしません。

ルビンの壷の画期的な点は、
多義的な図形であるために、
「図」と「地」の区別が、
対象がアプリオリに持つ特性ではなく、
われわれが対象を見るたびに
形成している、心理的な現象であることを、
示しえた点にあるといえるでしょう。

ルビンは、
ほかにも、図と地の観察から、
図となりやすい要因として、
閉合の要因、狭小の要因、内側の要因、
同じ幅の要因、相称の要因、空間方位の要因、
などをあげています。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年11月4日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣


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【編集後記】
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我々が当たり前のこととして、
無自覚にしている行為を疑い、
素朴に観察することによって検証すること。

これは実は、
どのような形式の研究においても、
もっともはじめの段階で必要とされる態度です。

そのあとで、
その疑問をどのように検証するかが、
それぞれの研究法で異なるだけなのです。

その意味では、
こうした物事の捉え方を身につけることは、
心理学を学び、研究をする上では、
必須の基礎であるといえるでしょう。

=====================================================送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    
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【Clip!アカデミー】第137回:理論号「心理学研究法から:実験現象学」

【Clip! アカデミー】 第137回 2008/10/27
 第1週 理論号 「心理学研究法から:実験現象学(experimental phenomenology)」
   
      ◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ 
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       ◆目次◆

         1)【現在地】
         2)【実験現象学(experimental phenomenology)】
         3)【解説:知識の種】
           【次回配信日】
           【参考文献】
           【編集後記】

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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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 ※【今回はこちら!】 第1週「理論号」… 知識のタネをまく
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           第4週 基本的にお休み
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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

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【お詫び】
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   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

     10月21日(火)配信予定だった、
     137回理論号をお送りします。

     配信が遅れましたこと、お詫びいたします。

     申し訳ありませんでした。

                 Clip!アカデミー事務局
   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目5ヶ月目 臨床心理学から
        「実験現象学(experimental phenomenology)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【実験現象学(experimental phenomenology)】
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今回は心理学研究法から、
「実験現象学(experimental phenomenology)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============

心理学における実験現象学とは、
我々に直接体験されている現象を、
実験的手続きを持って記述し、検証しようとする
ものである。

たとえば、
色を研究する場合、
知覚の対象であるリンゴやコップ
の性質を問題にするのではなく、
主観的な体験の中で、
色がどのように経験されているのか、
それがどのような条件・要因に影響されているのか、
といった問題を問う。

研究対象への、
こうした接近の態度を現象学的方法と呼ぶ。

また、実験の際は、
被験者に「ありのままに見える」
ものを報告してもらう、
という方法が好んで用いられる。

条件や要因による「見え方」の違い
を比較するためである。

代表的な研究者としては、
E・J・ルビンや、D・カッツ
などが挙げられる。

ルビンは、
「ルビンの壷」と呼ばれる図形を
用いて、我々の知覚における、
「図」と「地」の現象的な特性を明らかにした。

カッツは、
我々の知覚に現れてくる仕方を観察し、
色を、表面色、面色、空間色、透明面色、
透明表面色、鏡映色、光沢、などに分類している。

ヴェルトハイマーらゲシュタルト心理学者も、
実験現象学の立場から研究を
行っていたことが知られている。


==============================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の展開】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

たとえば、
ひとつのリンゴを見る場合、
哲学者のカントやヘーゲルは、
我々が見ているリンゴは、
実際の”リンゴ自体”か、
つまり、
経験と対象は一致するのか
否かについて議論しました。

議論自体については割愛しますが、
これは、主観と客観、
主体と他者、
に関するかなり根本的なテーマであり、
今日でも最終的な結論は出ていない難問です。

今の時点でいえることは、
我々が持っているといえるデータは、
主観的に「見えて」「体験している」
現象のみである、ということです。

しかし、
哲学がこうした難問を考え続けて
きたおかげで、
生理学者や心理学者が知覚について
研究しようとしたとき、
ひとつの方向性が示唆されることになりました。

それが、
現象学的なアプローチです。

「リンゴ」を客観的に知覚し、
認識できるという前提で知覚を考えだすと、
複雑な哲学論議に巻き込まれてしまいます。

しかし、
我々が意識し、体験している現象、
すなわち、
”リンゴ自体”ではなくて、
我々が今見て、体験している
「赤」や「いびつな円形」については、
検証の余地があります。

哲学においては、
フッサールという哲学者が、
「現象学的還元」という方法によって、
こうした経験を分析しようと試みました。

今日では、「現象学」と言った場合、
主にフッサールの哲学思想を指すことがほとんどです。

心理学においては、
主に視覚研究において、
こうした問題意識を、
実験的に検証しようとする試みが続きました。

ヴェルトハイマーの仮現運動や、
ルビン、カッツらの研究も、
こうした努力のひとつの成果であるといえるでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【応用号】… 2008年10月28日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● わかりたいあなたのための現代思想入門
  小坂修平 竹田青嗣 志賀隆生 他著 1990 JICC

● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

現象学とは、
今日においては主に、
哲学の、それもフッサールの哲学思想を
指して用いられます。

そのため、
心理学における実験現象学と
混同されることが良くあります。

ただし、
混同されるのも当たり前で、
この二つは
同じ問題意識から出発し、
同じ哲学的伝統に根ざしています。

ただし、実際には両者の現象学を、
同じものということはできないでしょう。

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※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。

【Clip! アカデミー】第136回:展開号「臨床心理学から:ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

【Clip! アカデミー】 第136回 2008/10/27            

第3週 展開号 「臨床心理学から:ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

      ◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ 
      http://www.clinicalpsychology.jp/  
       

       ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【全体性を重視する治療】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
                ■ 基本サイクル ■
    第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                     ↓  (用語説明から)
    第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
                     ↓  (具体例を中心に)
 ※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
                      ↓  (テーマを展開する)
               第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
                      ↓
                ■ 第2サイクルへ続く ■

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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号
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 ● 0ヶ月目 ガイダンス号2
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html 




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【お詫び】
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  ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

    10月7日(火)配信予定だった、
    展開号をお送りします。

    配信が遅れましたことをお詫びいたします。

    申し訳ありませんでした。


                Clip!アカデミー事務局
  ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目4ヶ月目 臨床心理学から
        「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

       ======================

        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
        2ヶ月目 基礎心理学から1
        3ヶ月目 基礎心理学から2
  【NOW!】4ヶ月目 臨床心理学から
    |   5ヶ月目 心理学研究法から 
    |            ↓
    |  【※違うテーマではじめから繰り返します。】
    | ======================
    ↓

 ● 第1週「理論」号
「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」はコチラ↓

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 ● 第2週「応用」号
「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」はコチラ↓

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 ● 第3週「展開」号
「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」はコチラ↓


   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【全体性を重視する治療】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


●人間性心理学

精神分析や行動療法に対する、
第三の心理学として提唱された立場である。

実存主義の影響を受け、
人間を、自由意志を持ち、
主体的な決断をなし得る存在として捉えようとする
点に特徴がある。

主な賛同者としては、
実存分析のヴィクトール・フランクルや、
欲求5段階論のマズロー、
来談者中心療法のロジャーズなどがあげられる。

また、アドラーやユングなど、
精神分析と分かれ独自の分析理論を立ち上げた
分析家たちとも、共通する点が多い。

心と体を含めた人間の全体性を重視する
ゲシュタルト療法のパールズも、
人間性心理学の立場に入ると考えられる。

●心身医学

病原菌や身体器官の器質的・機能的な損傷など、
疾患の主要な原因を特定することを、
まず第一としてきた従来の医学に対し、
「心身相関」の立場から、
疾患の発生を、生物学的要因に加え、
社会的・心理的要因から見ることを重視することから
派生した医学を指す。

心身相関とは、
心と体が、単にどちらがどちらに影響するというものではなく、
複雑に相互作用しあい、
原因と結果が切り離せない循環的な在り様をしているという
身体と精神の関係を示したものである。

主に、疾患の原因を特定することが困難な、
心身症や生活習慣病などの治療を得意とし、
日本では、心身医学的な治療をする科は、
「心療内科」と呼ばれている。

●自己実現

自己の中の可能性を実現し、
自己の全体性に向かって己を成長させ、
統合していこうとすること。

または、人間の中にあるそのような傾向を指す。

人間性心理学において重視される
概念のひとつであるが、
何を持って自己の全体性とするかによって、
用い方は異なる。

はじめに自己実現について論じたのは
ユングであるが、
後に個性化という概念を用いるようになる。

彼のいう全体性とは、
通常の自分(自我:ego)ではなく、
無意識を含む人格の全体としての「自己(self)」である。

マズローやロジャーズの自己実現は、
多少の違いはあれ、人格の成熟である。

自己の認めがたい側面をも受容し、
より大きな自律性や統合を目指す。

パールズにおいては、
身体と心の調和に基づいた「全人的な存在」
として、「今、ここ」に充分に存在できることが
重視される。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の展開】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ゲシュタルト療法は、
ヴェルトハイマーらのゲシュタルト心理学と、
直接の関係はなかったとはいえ、
医学や心理療法が、そこから受け取った、
非常に大きなインパクトを如実に表現しているといえます。

それは、個々の要素ではなく、
関係や状況、人間の全体を取り扱おうという視点であり、
それによって、
それまでアプローチすることが難しかった領域にも、
うまく手を差し伸べられるのではないか、
というインスピレーションでした。

20世紀の後半、
反戦運動や、ヒッピーブーム、カルト運動の隆盛した、
アメリカでは、
積極的で、人間を肯定できるような
人間観が求められていたということができます。

人間性心理学を標榜した人たちは、
多くが、
元は精神分析によって
臨床を行っていた経験を持っていましたが、
そうした流れの中で、
実存主義的な人間観、
人間の人格や、心と体といった全体性への指向、
などを共有しあいながら、
精神分析とは異なる理論を確立していったのです。

現在では、心療内科を含め、
そうした影響の生み出したものは、
一般社会にも広く認知されつつあります。

一方で、
たとえば「自己実現」といった言葉は、
あまりに広い意味で用いられるあまり、
ほとんど意味のない言葉にさえなりつつある感もあります。

また、
ゲシュタルト療法をはじめ、
精神分析から出発して、
独自の治療理論を確立した心理療法の中には、
科学的な効果の検証や、理論構築を嫌ったものが、
少なくありませんでした。

科学的な研究や理論構築は、
確かに、言葉に置き換える過程のなかで、
事例やクライエントその人、
臨床の場で生じた変化の全体性を損ない、
変質させてしまう危険性をはらんでいます。

しかし、
結果として、そうした治療法は、
その治療効果を創始者や治療者の個人的な才能や、
パーソナリティに負っており、
彼らがいなくなった後は、
心理療法としての発展を滞らせてしまう結果にも
つながってしまいました。

心理療法は、
理論を構築したり、
実証するために実践されるものではありません。

しかし一方で、
言葉にすることが出来ないことを
言葉にしようと努力し、
主観的なものを、客観的に検証しようとする努力を
あきらめてしまうことも、
心理療法家は充分警戒する必要があるでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【理論号】… 
   2008年10月21日(火)にお送りする予定でしたが、
   予定を変更し10月27日(月)にお送りします。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣


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【編集後記】
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全体性という言葉も、
認知や社会、知覚の文脈の中で用いている分には、
充分共通の土台を持ち合わせているように
感じられるのですが、
一歩その外に出てしまうと、
非常に感覚的で、感性的な言葉になってしまいます。

スピリチュアルという言葉は、
WHOの健康の定義に加えようという動きも
あるくらいであり、
日本においても、近年市民権を得つつありますが、
心理学においては、
まだまだ自戒し、警戒する必要があるでしょう。

他人に開かれ、
他人の批評の余地がある言葉や、
土台を通してしか、
我々は学問や理論を先に進めることが出来ません。

特に、
主観的な体験である心的現象については、
特にそういった点に禁欲的になる必要があると
考えられるからです。


=====================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/index.shtml    

※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。

2008年10月7日火曜日

 【Clip!アカデミー】第135回:応用号「臨床心理学から:ゲシュタルト療法」

【Clip! アカデミー】 第135回  2008/9/30
第2週 応用号 「臨床心理学から:ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/

  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【ゲシュタルトの転換】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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            ■ 基本サイクル ■
第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目4ヶ月目 臨床心理学から
        「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

       ======================

        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【ゲシュタルトの転換】
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ゲシュタルト療法の重要概念である、
「ゲシュタルトの転換」
について、架空の事例によって、
確認しておきましょう。


たとえば、
弁護士になるため司法試験に挑戦し始めて、
5年になる人がいたとしましょう。

しかし、最近では、
試験勉強を続けるモチベーションが
続かなくなってきた。

「今自分は、いったい何をしているのか」
「ここまで苦しんで、得るものがあるのか」

様々な思いがグルグル回るだけで、
何も手につかない状態が続きます。

そこで、

「あなたは、なんのために弁護士になるのですか?」
「弁護士になった後、どんなことをしたいのですか?」

と尋ねる人がいたとしたら、
どうでしょうか。

「自分がこんなに苦しんでいるのに、
そのことを受け止めてはくれないのか」
「いったいどれだけがんばったと思っているんだ」

本人は、
相手に自分の怒りや苦しみを、
ぶつけずにはいられないかもしれません。

しかし、
その先、司法試験に受かった後の、
その先に、自分はどんな思いを込めていたのか。

何をするための、司法試験だったのか。

自分が、司法試験を受けることを決意させた
思いや、そのときの感情を思い出したとき、
もはや、
先ほどまでの状態は、
問題ですらなくなっているでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の根っこ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


状況を、
ひとつの絵とした場合、
われわれは、
中心人物や家屋、静物など、
中心的なテーマとして浮かび上がる「図」と、
その背景として描かれている「地」に、
無自覚に切り分けて、
視覚的に捉えようとします。

これが体制化の働きであり、
こうして与えられた全体像が、ゲシュタルトです。

状況を図と地からなる
ゲシュタルトとして体制化すること。

前々回の認知的斉合性理論でも、
このことが、
われわれの行動の動機に、
大きく関わっていることを取り扱ってきました。

彼の場合、
先が見えないことや、今の状態のつらさなど、
現状のネガティブな面が、
強く「図」=問題として意識されています。

逆にいえば、
それ以外のことが、
目に入らなくなっているのです。

そこに、どれほど
大切なものがあるとしても、
それは、「地」として、背景に追いやられています。

「問題」は、むしろ、
そのような硬直した状況全体のあり方に
あるということができるでしょう。

そこで、
「図」として浮かび上がっている以外の側面に、
注意を促す声かけが役立ちます。

たとえば、
「司法試験に通った後は、何がしたいのか」

今まで「地」として背景に引いていた側面に
注意が向けられると、
状況全体の見方が変わってしまいます。

これが、「ゲシュタルトの転換」
と呼ばれるものです。

状況は、すなわち、
今の状況を構成している要素自体に、
変わりはありません。

しかし、
ゲシュタルトの転換が起こったことで、
より広い視点から、
今の状況を捉えなおす柔軟性を取り戻す
ことができたのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【展開号】… 2008年10月7日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


こうした事例は、
大学院受験の準備をしていても、
日々皆さんが体験するものだと思います。

将来のビジョンを強く持つこと。

こうした警句が、
様々な場面で主張されるのも、
いかにわれわれが、
日々の生活に追われて、
大きな目標を忘れてしまいがちになるか、
を示しています。

ゲシュタルトの転換、
という言葉は、
「気づき」と比べて、
あまり使われることはありませんが、
認知の再体制化を学ぶためには、
分かりやすいイメージを与えてくれます。



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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年9月23日火曜日

【Clip!アカデミー】第134回:理論号「臨床心理学から:ゲシュタルト療法」

【Clip! アカデミー】 第134回  2008/9/23
第1週 理論号 「臨床心理学から:ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/

  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

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   http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html 


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目4ヶ月目 臨床心理学から
        「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)】
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今回は臨床心理学から、
「ゲシュタルト療法(Gestalt Therapy)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============

ゲシュタルト療法とは、
精神科医のフレデリック・パールズが提唱した
心理療法である。

精神分析やゲシュタルト心理学、
実存主義思想など、
様々な哲学、心理学の影響を受けているが、
その基本思想は、
「今、ここ(here and now)」の重視や、
「図と地の転換」に見ることが出来る。

ゲシュタルト療法では、
クライエントが「今、ここ」に留まり、
そこで感じていることを十全に味わい、
体験することを重視する。

また、問題状況を、
前面に出ている問題(=図)と、
その背景(=地)が、固定して動かない状態か、
逆に状況を図と地に分けて、
全体としてひとつのゲシュタルト(形態)にまで体制化
できていない状態であると考えた。

ルビンの壺と呼ばれる白と黒の図形が、
白い部分に注目するか、
黒い部分に注目するか、
によって、まったく異なる全体像が浮き上がるように、
問題以外の部分に注目していく中で、
問題を含む全体の状況の意味づけが変わってしまうことがある。

これを、図と地の転換や、
ゲシュタルトの再体制化と呼んだ。

こうした鍵概念を元に、
ホットシートや、エンプティーチェアなど、
感情を強調し、わざと怒らせるような、
過激な技法を駆使するところに独自性がある。


==============================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の種】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


今回は、ゲシュタルト療法のご紹介です。

ゲシュタルト療法という名前はついていますが、
ヴェルトハイマーやコフカら、
ゲシュタルト学派と直接の関係はないようです。

様々な思想や心理学に影響を受けており、
用いる技法も様々です。

ゲシュタルト心理学を直接心理療法に応用したというより、
ゲシュタルトの再体制化を目指す、
といったニュアンスを表現している、
と見たほうがいいかもしれません。

フレデリック・パールズは、
その有能な手腕とともに、
非常にアクの強い臨床家として知られています。

特に、
カウンセリングの教材としてよく用いられるビデオ教材
『グロリアと3人のセラピスト』では、
来談者中心療法の創始者カール・ロジャーズや、
論理療法の創始者アルバート・エリスに対して、
さかんにクライエントを挑発し、
感情を引き出します。

感情を引き出される中で、
クライエントは
今ここで体験していることを、
最大限表現したり、
自分の非言語的なサインと言語的なサインの
ギャップに気づいていきます。

それを通して、
硬直した視点が柔軟性を取り戻し、
自分が置かれている状況を、
それまでとは違った形で捉えることができれば、
問題は、もはや問題とは言えなくなります。

この、
今まで問題だとばかり思っていたことが、
実はそうではなかった、
という気づきは、驚くべきものです。

これがゲシュタルトの再体制化です。

こうした考え方は、
他の心理療法にも影響を与えており、
現在では、いわば心理療法全体の、
共有財産とでもいうべきものかもしれません。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【応用号】… 2008年9月30日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣


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【編集後記】
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実は、ゲシュタルト学派だけでいえば、
家族療法にこそ、
大きな影響が見られるようにも思われます。

家族システムや、社会システムを
もっとも重視するのが、
家族療法だからです。

ただし、
初学者であれば、
「ゲシュタルト」と聞いて、
すぐに思い浮かぶのは
やはりゲシュタルト療法の方でしょう。

ゲシュタルト心理学と、
ゲシュタルト療法の違いや、
関連性がよく分からない、
とお思いになった方もいると思います。

その整理に役立てるために、
やはりこうした形でご紹介した次第です。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年9月9日火曜日

 【Clip!アカデミー】第133回:展開号「基礎心理学2:認知的斉合性理論」

【Clip! アカデミー】 第133回  2008/9/9
第3週 展開号 「基礎心理学2:認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/


  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【認知的斉合性理論の展開】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
            第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
 ※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目3ヶ月目 基礎心理学から2
     「認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
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2)【認知的斉合性理論の展開】
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●ABX理論

ニューカムの提唱したであり、
ハイダーのバランス理論(POX理論)に近い立場である。

ある対象(X)に対する人物AとBの態度や感情は、
A-B-Xシステムとして表現される。

このシステムを構成する
それぞれの関係性(A-X、B-X間の態度、A-B間の関係)
は、それぞれ(+)、(-)で表されるが、
全体の積が(+)、
すなわち、均衡状態になるように、
AとBの間ではコミュニケーションが生じる。

これによって全体のシステムがバランスするように、
態度変容が生じると考える。

バランス理論と異なり、
人物Pの内部だけでなく、
システム全体の関係性の変化を重視する点が
特徴といえる。


●自己肯定化

認知的不協和理論への批判として、
スティールによって提唱された理論である。

人間は、
自分が環境に適応しており、
倫理的に適切で、有能であるという
自己イメージを維持しようとする。

こうした自己イメージの一部が傷つけられると、
自己を肯定する過程が脅かされることになる。

フェスティンガーの提唱する
認知的不協和の解消は、
再び安定を取り戻すために、
傷ついた一部分を守るより、
全体としての自己イメージを肯定できるような対処を
取る過程として説明できるとする。


●自己知覚理論

ベムが提唱した、
個人が自己の感情や態度を
知覚する過程についての理論である。

自己知覚理論では、
自己の行動を推測する過程は、
他者の行動を推測する過程と、
ほとんど変わらないと考える。

個人は、自己の内的な状態を、
他者の行動からその人の内的な状態を推測するように、
自分の行動や状況などから推測する。

状況の側に、
自分の行動を説明できるような要因(命令や報酬など)
がない場合、
自分の行動は、自分の感情や欲求から
生じたものだ、と推測することが出来る。

認知的不協和理論への批判を行い、
フェスティンガーと論争を行った。


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3)【解説:知識の展開】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


認知的斉合性理論は、
ハイダーのバランス理論、
フェスティンガーの認知的不協和理論を
代表として、新しい分野を切り開き、
それまで説明できなかった様々な社会現象を、
研究する手段を提供しました。

そこから、
システム全体の斉合性の崩れと回復
というイメージを応用したり、
そうしたイメージに対抗する形で
理論を立ち上げる人たちが、
数多く出てくることになりました。

特に、
フェスティンガーの認知的不協和理論は、
多くの社会心理学者に受け入れられ、
様々な不協和の条件が、
実験で検証されることになりましたが、
一方では、
様々な批判によっても、
研究を活性化することになりました。

たとえば、
フェスティンガーは、
認知的不協和理論を実証するために
様々な実験を行いましたが、
ベムの自己知覚理論は、
その結果を別の形で解釈できる、
と批判しました。

たとえば、
同じ作業に対する報酬として、
1ドルもらった場合と、20ドルもらった場合。

1ドルの方が、
作業と報酬が不協和を起こすため、
代わりに「作業へのやりがい」を高く評価することで、
それを回避する、
と認知的不協和理論は考えます。

一方、自己知覚理論では、
個人が自分の行動の動機を解釈し、
説明する際に、
どのような情報を持っているかを重視します。

20ドルもらった場合、
報酬が、作業への動機付けとして十分であるため、
「作業へのやりがい」は、高く評価されません。

しかし、
そうした情報がない1ドルの方は、
個人は自分の動機を、
自己の内的状態からしか推測できない。

そのため、
「作業へのやりがい」を、
高く評価せざるを得ない、と考えたのです。

こうしたベムの自己知覚の考え方は、
自分の行動の原因を、何に帰属させるか、
という、帰属理論に近いものがあります。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年9月23日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社


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【編集後記】
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認知的斉合性理論は、
個人の態度変容や
動機を理解するための、
ひとつの考え方として役に立ちます。

その意味では、
かなり実践的な研究であり、
さすがは、応用心理学としての
社会心理学の面目躍如といったところでしょう。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年9月4日木曜日

【Clip!アカデミー】第132回:応用号「基礎心理学2:認知的斉合性理論」

【Clip! アカデミー】 第132回  2008/9/4
第2週 応用号 「基礎心理学2:認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」



◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座http://www.clinicalpsychology.jp/


      ◆目次◆

           1)【現在地】
    2)【認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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            ■ 基本サイクル ■
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 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
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         (特別号が配信される場合があります)
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【配信ミスのお詫び】
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 ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

   今回の、
   【Clip!アカデミー】第132回は、 
   本来9月2日に配信予定のものでした。

   配信ミスがありましたことを、
   読者の皆様にお詫びいたします。

                Clip!アカデミー事務局

  ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目2ヶ月目 基礎心理学から2
     「認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


AさんとBさんの場合。


AさんがBさんに恋をしたとしましょう。

AさんとBさんの関係が、
それからどのように変化していくのか。

これは、社会心理学では態度変容
の問題として扱うことが出来ます。

AさんはBさんと付き合ううちに、
当然、Bさんの様々な側面を見ることになります。

うどんよりそばが好きだったり、
朝ごはんは和食よりパン食だったり、
おごるより割り勘で2回デートするほうがいい、
という考えを持っているかもしれません。

あるとき、
待ち合わせに早くつきすぎたAさんは、
Bさんが喫煙所でおいしそうにタバコを
吸っているところを見てしまいます。

そう、Bさんは、
これまでAさんの前でタバコを吸うことを
我慢していたのですが、
Aさんと出会う前は、
かなりのヘビースモーカーだったのです。

これを知ったAさんには、
どのような選択肢があるでしょうか。

「タバコを吸っていることを非難する」
「見て見ぬふりをする」
「Bさんを嫌いになる」

などが考えられます。

実際にどうなるかは、
駆け引きによって、
関係全体がどのような安定状態に達するか、
すなわち、認知の再体制化が行われるか、
ということになるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の根っこ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


事物(X)を挟んだ、
自分(P)と他人(O)との関係を記述する
ハイダーのバランス理論は、
別名POX理論とも呼ばれています。

P、O、Xの間の関係を、
心情関係から、好意的(+)、非好意的(-)に、
単位関係から、
ひとつのまとまりとして認知できるか(+)、
認知できないか(-)、
によって記述します。

たとえば、
AさんとBさんの関係。

これは?

+の心情関係ですね。

つきあっているうちに、
Bさんがヘビースモーカーであることが判明したことから、
バランス理論で説明できるような、
社会的な押し引きが始まることになります。

Bさんとタバコの関係は、
心情関係でいうと+です。

ここで、Aさんもタバコが好き(+)ならば、
バランスが取れているので、
関係は安定します。

しかし、
Aさんがタバコを嫌いだとすると(-)、
インバランス状態になり、
不快な感情が生まれることになります。

対人関係上の態度の変容は、
このような関係全体の認知から、
インバランス状態を低減し、
不快な感情を避けようとして生じることになります。

一方、
フェスティンガーの
認知的不協和理論では、
P、O、Xといった三角関係は想定しません。

代わりに、それぞれの要素は、
Aさんの中の信念や意見と考えます。

「Bさんといっしょにいたい」
「タバコを吸っている人は嫌い」

これが、認知要素です。

そして、認知要素同士が矛盾することを、
認知的不協和状態といいます。

すなわち、
フェスティンガーの理論では、
不協和は、個人の中の認知的要素の
間で生じているという点で、
ハイダーの理論と少し異なることになります。


ここから、インバランス状態や認知的不協和を、
人間がどのように処理するか、
が重要な研究となりました。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年9月9日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社


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【編集後記】
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ゲシュタルト心理学では、
物理学から場の理論を心理学に持ち込みました。

対人関係は、
物理学における力場などよりも、
我々が「場」という言葉で
イメージしやすいもののひとつです。

認知的斉合性理論は、
そのような関係の場が、
それぞれの要素の関係によってダイナミックに揺らぎ、
よい安定状態に向かおうとするイメージを与えてくれます。

そこでは、
関係の上での矛盾が忌避され、
矛盾のないよい安定状態が望まれます。

日本では、
特にそのような「場の空気」が重視され、
ふさわしくない話題や、関係性、本音を持ち出すことは
タブーに近くなります。

欧米では、
一時的に認知的不協和やインバランスな状態を
引き起こしてでも、
話し合いをしていこうという風潮が、
日本よりもはありそうに感じられるのですが、
このような理論が認められるということは、
どうやら、事情はあまり変わらないのかもしれません。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年8月26日火曜日

【Clip!アカデミー】第131回:理論号「基礎心理学2:認知的斉合性理論」

【Clip! アカデミー】 第131回 2008/8/26
第1週 理論号 「基礎心理学2:認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
    2)【認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
 ※【今回はこちら!】 第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
            第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号
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 ● 0ヶ月目 ガイダンス号2
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html 


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目2ヶ月目 基礎心理学から2
     「認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
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「社会的知覚(Social Perception)」はコチラ↓


   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


今回は基礎心理学2から、
「認知的斉合性理論(cognitive consistency theory)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============


社会心理学において、
認知的斉合性という特徴から、
認知の体制化・再体制化を説明しようとする理論の総称。

ある対象への認知や態度は、
全体として一貫したまとまりを形成し、
その秩序を維持しようとする。

このように、
認知がまとまり安定していることを、
認知的斉合性と呼ぶ。

斉合性が破綻する状況においては、
認知や態度は斉合性を回復するように動機付けられ、
その結果変化し、再体制化される。

このような前提の下に
展開されている理論の中では、

・ハイダーのバランス理論
・フェスティンガーの認知的不協和理論

などが良く知られている。


==============================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の種】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


認知的斉合性理論は、
対人関係や対象への態度、認知などを、
全体の関係性の場とみなしています。

対人関係や、
関連した対象への態度といったものは、
バラバラに存在するのではなく、
お互いに矛盾しないように体制化され、
安定することを求めます。

たとえば、
タバコが非常に嫌いな人が、
ヘビースモーカーに恋をしてしまった場合、
相手への感情と、タバコへの態度とは、
矛盾することになります。

このふたつの認知を、
まったく無関係に論じることはできない、
というのが、認知的斉合性理論の主張です。

個々の要素に還元した場合、
この人の気持ちの揺れ動きは理解できず、
どちらへの理解も不十分になるのであり、
関係性全体のバランスを論じる必要が出てくる、
というのです。

矛盾した感情は、
その矛盾を解消し、
斉合状態を回復するように個人を
動機付けします。

たとえば、
ヘビースモーカーを嫌いになるか、
タバコに対する態度を改めれば、
関係性全体は再度、安定することになります。

このようなイメージは、
ゲシュタルト心理学における、
知覚の体制化における「よい形態」を求める傾向、
プレグナンツの原理を思い起こさせます。

ゲシュタルト心理学は、
知覚の領域において発展しましたが、
その影響は、動機付けや記憶、認知的スキーマ、
集団など、様々な領域に及びました。

レヴィンとともに働いていた
ハイダーやフェスティンガーも、
そこに要素主義的、連合主義的な価値観とは
異なる可能性を見出しました。

彼らはゲシュタルト心理学者ではありませんが、
社会的状況や認知において、
全体の関係性や、その体制化の在り様について、
ゲシュタルト流のイメージを持ち込み、
社会心理学に大きな影響を与えたということができます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【応用号】… 2008年9月2日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版


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【編集後記】
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今回は、社会的知覚を取り上げようか、
こちらを取り上げようか迷ったのですが、
認知的斉合性理論に決めました。

なぜかというと、
社会的知覚や、その初期の立役者である
J・M・ブルーナーは、
また別のところで取り上げる機会があるかと思ったからです。

ニュールック心理学と呼ばれた
彼の理論もまた、
ゲシュタルト心理学に刺激を受けたもの
であるといえます。

ハイダーやフェスティンガーが、
レヴィンたちとどのような形で係わり合い、
このような理論を形成するに至ったのかは、
非常に興味深い点です。

一見したところ、
そこにゲシュタルト心理学の影響を見るのは、
飛躍しすぎな気すらするからです。

しかし、行動主義の影響が、
もはや心理学の当然の前提として受け入れられていて、
誰も気づきもしないことがあるように、
このようにして、個々の考え方は、
全体の流れのなかに溶け込んでいくものなのかもしれません。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年8月12日火曜日

【Clip!アカデミー】第130回:展開号「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」

【Clip! アカデミー】 第130回  2008/8/12
第3週 展開号 「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/

  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【その他の重要概念】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

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     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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            ■ 基本サイクル ■
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      ↓  (具体例を中心に)
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           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目2ヶ月目 基礎心理学から1
         「群化(perceptual grouping)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
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2)【その他の重要概念】
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今回は、展開号として、
群化に関連するその他の重要概念
について触れていきましょう。


●図と地

図とは視野の中で浮き上がって見える部分、
地とは引いて背景となる部分をいう。

ルビンは、
現象学的な観察を通じて、
図と地が転換可能で、
同じ領域でも、
役割によって見えがまったく異なることを発見した。

視野の中で、
どのような領域が図になりやすく、
地になりやすいか、
という図と地の分化については、
プレグナンツの原理からいくつかの
要因が指摘されている。


●知覚の恒常性

知覚の恒常性とは、
外界からの刺激が安定しない場合でも、
知覚自体は急激に変化せず、
ある程度の安定性を保つ性質を指す。

暗いところでも明るいところでも、
白い紙は白く、
黒い紙は黒く見えるが、
これを、明るさの恒常性という。

これは当たり前のように思えるが、
実際には、
物理的な光の反射量は、
明るいところの黒い紙ではかなり
高くなる。

つまり、
白く見えてもおかしくはないのだが、
知覚を体制化する時点で、
実際よりも、恒常性のほうが優先されている
と考えられる。

どちらにしても、
感覚は刺激とは一対一で対応していない
ことになる。

こうした考え方は、
はじめ、ゲシュタルト心理学者たちによる、
当時の心理学(要素主義)の批判から始まった。

つまり、
感覚と刺激が一対一で対応している、
という考えを、理論の前提にすえることへの批判である。

しかし、今日では、
ではなぜ、我々の世界は、
感覚と刺激とが、一対一で対応しているように、
「見える」のか、
という点から、研究が進められている。


●場の概念

現象を理解するためには、
その諸要素をバラバラに把握し、
その集合として理解するのではなく、
諸要素が属している全体を場と考え、
その配置や関係性から理解するべきであるとする
考え方を指す。

この概念を心理学に持ち込んだのは、
ゲシュタルト心理学者のケーラーである。

もともとは物理学における、
磁場や力場のような物理的なモデルに
由来している。

場を形成している諸要素の変化は、
場全体を変化させ、
全体の変化が要素にも影響する。

ケーラーは、
群化における知覚の体制化や、
錯視、図形残効といった視覚現象も、
こうした場の概念から説明可能であると考えた。


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3)【解説:知識の展開】
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群化は、
ゲシュタルト心理学における
体制化の概念の基礎となるものでした。

それは、他の概念とあいまって、
心理学に様々な影響を与えていくことになりました。

そのなかでも、
特に重要なのが図と地の概念でしょう。

知覚が良い形態へと体制化されていくにあたり、
ある領域が図として浮かび上がり、
その他の領域が地として背景になることで、
我々は日常の安定した視野を得ています。

こうした視野のあり方は、
我々が、特定の対象に注意を集中することを
助けてくれますが、
逆に言えば、
我々はこのような知覚の特性に縛られている、
ということもできます。

図と地は、
ある状況における、問題とその背景、
という比喩にも用いられます。

我々が問題にとらわれ、
悩んでいるときに、
良くあるのは、
問題の特定の領域だけが図として浮かび上がり、
重要な点が背景として見過ごされている場合です。

図と地が逆転し、
背景が図となり、問題が地となったら、
もしかしたら、
問題は問題ではなかったことが分かるかもしれません。

しかし、
今の自分の視野や、
問題のあり方が、当たり前である、
として「前提」としてしまうと、
問題を問題として構造化している要因
が見えなくなってしまいます。

実際には、
我々が見ている視野は、
「変えようのない現実」=刺激などではなく、
見る側の構造化の仕方によるものなのです。

ゲシュタルト心理学者たちは、
このように、感覚と刺激が、
当然一対一で対応しているとみなす考え方を、
「恒常仮定」として批判しました。

こう考えていくと、
我々の視野だけでなく、
記憶や状況など、様々なものが、
実はハッキリとは確定できずに、
常に移ろっているあいまいな存在である
ように感じられてきます。

その全体を指して、
物理学に習って「場」と呼ぶのは相応しい
ことのように思われます。

このあいまいな全体を、
そのたびごとに、
自分が生きやすいように体制化し、
意味づけしているのが、
人間を含めた生物の在り様であるといえるでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年8月26日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版


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【編集後記】
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ゲシュタルト心理学の
恒常仮定は、
我々が日々体験している
知覚世界の恒常性を否定するものではなく、
それを「当たり前」の前提とすること
への批判でした。

知覚が、
世界を安定し、一貫したものとして
体験させようという性質を持っているのは、
世界が安定し、一貫しているからではなく、
人間の認知過程が、
かなりの努力を払っている結果だということです。

これは、
我々が子どもに、
「世界はいいところで、安定していて、一貫している」
と伝えたいことと似ている気がします。

世界をそう信じることは必要です。

だからこそ、
人間として世界を生きていける。

しかし、
現実にはそうではなく、
そうであるように、
陰でたくさんの努力や犠牲が支払われている、
ということも、知っている必要があります。

それを知っている人だけが、
それを支えることの大切さを理解するのではないでしょうか。

学説を価値観につなげるのは
当然自粛するべきですが、
それについて考えることは、
もっと奨励されてもいいことのように思います。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年8月6日水曜日

【Clip!アカデミー】第129回:応用号「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」

【Clip! アカデミー】 第129回 2008/8/6
第2週 応用号  「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/

      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【それぞれの要因】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
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            ■ 第2サイクルへ続く ■

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【お詫び】
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  【Clip!アカデミー】第129回ですが、
   予定していた8月5日の火曜日に配信されませんでした。

   配信が遅くなりましたことを、
   読者のみなさまにお詫びいたします。

                Clip!アカデミー事務局

  
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目2ヶ月目 基礎心理学から1
         「群化(perceptual grouping)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【それぞれの要因】
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今回は、
群化の例について検討してみましょう。

群化とは、
我々が対象を知覚する際に、
ならかの形でまとまりを作ろうとする傾向
を指していました。

ゲシュタルト心理学においては、
こうした傾向を研究し、
群化を引き起こすいくつかの要因を
発見しています。

・近接…近いものがまとまりを作る

・良い連続…つながり方が自然な方がまとまりを作る

・良い形…かんけつさ、規則性、シンメトリーが優先される

・共通運命…同じ変化や動きを示すものがまとまる

・類同…いくつかの種類があれば、おなじ種類でまとまりやすい

・閉合…閉じた領域をつくるものはまとまりやすい

・客観的態度…呈示のされ方によってまとまり方が変わる

・経験…何度も経験することで、まとまりやすくなる


こうした要因を、
以下の例でもって検討してみましょう。

まずは、以下の点の集合を見てみてください。


    ・

  ・         ・
 ・
      ・      ・
  ・
   ●     ・    ・
              ・ 
              ・     
     ・・・
               

    ・     ●


どのようなまとまりが見えたでしょうか。

大きな黒丸が、
全体をひとつのまとまりとして
知覚することを妨げているようです。

これは、類同の要因が考えられます。

真ん中に、
みっつの点が並んでいる様子が目に付きます。

これは、近接の要因から説明できるでしょう。

共通運命、閉合、客観的態度
といった要因は見られませんが、
右側の五つの点は、
上から下への一本の線として、
まとまりをみてとれます。

これは、良い連続の要因でしょう。

最後に、経験の要因です。

もうお気づきの方が
いらっしゃるかもしれませんね。

この点々は、
実はオリオン座の配置を大まかに
なぞったものになっているのです。

大きな●は一等星で、
上がベテルギウス、下がリゲルです。

オリオン座は、
明るい都市圏でも見分けることが出来る
冬の星座の代表格です。

ギリシャ神話のオリオンは、
優秀な狩人で、
ここでも、
左手で棍棒を振り上げ、
右手で毛皮を掲げています。

どうでしょう。

もう一度上に戻って、
点を眺めてみてください。

おそらく、
全体がひとつのまとまりとして
見えて来たはずです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の根っこ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ゲシュタルト心理学者たちが
主張したような構造化の力は、
我々がたとえば視覚で外界を知覚するようなときに、
そこにパターンを見出そうとする傾向
として現れてきます。

このパターンは、
感覚器官から送られてきた感覚刺激と、
それをできるかぎり「よい形態」に
まとめあげるためのいくつかの要因によって
規定される、と彼らは考えました。

それぞれの要因がせめぎ合い、
全体を形作ろうとする中で、
視覚像が成立する。

ルビンの提唱した図と地の反転や、
立体視、錯視という現象も、
こうした考え方の中で検証されていくことになります。

ほかにも、
このような群化の考え方が、
大きく影響を与えた領域があります。

それは、記憶です。

群化の要因として、
最後に挙げた経験の要因ですが、
オリオン座を知っていた人は、
それで即座に例に挙げた点をひとつのまとまり
として構造化できたでしょう。

逆に、ただの点としてだったら、
何がどのような配置だったか、
覚えているのは難しいはずです。

ただの点の集合としてではなく、
その間の関係性のパターンに
オリオン座という名前をつけることで、
飛躍的に記憶しやすくなります。

また、記憶の内部でも、
だんだんと、細部は省略され、
よい形態としてのパターンのみが
残る事が知られています。

このことは、
人間の記憶自体に、
構造化の力が働いていることを表しています。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年8月12日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

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【編集後記】
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あらゆるものに関係性を見出し、
パターンを知覚しようとする傾向は、
人間の認識の根本にある特徴といえます。

我々は、
対象そのものを知覚しているわけではなく、
感覚情報から推測できた、
大まかなパターンを知覚し、
過去の記憶と照合しながら、
それが恋人の顔であると判断していることになります。

だからこそ、
ほかの事に気が向いているときは、
恋人の顔のちょっとした変化に気づきません。

ほとんど記憶の中の恋人の顔を、
目の前にいる人のものとして、
見ているだけだからです。

そこで、
ある日突然、
別れを言い渡されたときに、
まじまじと相手の顔を眺め、
そこにほとんど見知らぬ顔を見出し、
驚くということが、現実に起こりえるわけです。

ゲシュタルトの再体制化ですね。

ありのままに見る、
ということが、
人間にとっていかにに難しいことであるか。

話はそうしたところにつながっていきます。

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2008年7月29日火曜日

【Clip!アカデミー】第128回:理論号「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」

【Clip! アカデミー】 第128回 2008/7/29
第1週 理論号  「基礎心理学1:群化(perceptual grouping)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【群化(perceptual grouping)】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目2ヶ月目 基礎心理学から1
         「群化(perceptual grouping)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
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2)【群化(perceptual grouping)】
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今回は基礎心理学1から、
「群化(perceptual grouping)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============


ゲシュタルト心理学において、
人間の視覚において、
視野の中で知覚された図はまとまりを作る
傾向を、群化という。

たとえば、

   ● ● ●

   ● ● ●

   ● ● ●

上記のような9つの黒点は、
黒点である以上に、
「四角形」というまとまりとして知覚されやすい。

この際のまとまり方には、
「よい形態」と呼ばれる傾向があり、
その傾向に背くまとまり方は知覚しづらい。

たとえば、
口の中に黒点がひとつある、
という見方は、
意識しなければできない。

群化に際して働いているのが、
知覚をゲシュタルト(形態)として
構造化しようとする精神過程である。

ヴェルトハイマーは、
群化の要因として、

近接、良い連続、良い形、共通運命、
類同、閉合、客観的態度、経験

などをあげている。

このような要因によって
できるかぎり簡潔で、
秩序だったまとまりを作ろうとする傾向は、
プレグナンツの法則と呼ばれる。


==============================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の種】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ゲシュタルト心理学者たちは、
ヴントのように個々の要素に注目するのではなく、
個々の要素の「関係性」、
あるいは、個々の要素が置かれている、
「全体の場(文脈)」のようなものに注目しました。

この群化の例は、
その意味で、
ゲシュタルト心理学者たちの主張を
分かりやすく教えてくれます。

我々は、
上記の黒丸を見た瞬間に、

   「いくつあるか」

ということより、

   「四角形(に並んでいる)」

ことのほうを先に認知します。

すなわち、
知覚においては、
まず最初に図はゲシュタルト(形態)として現れ、
そこから部分に分化する、
とゲシュタルト心理学者は主張したのです。

ゲシュタルトは、
部分の特徴とは別の特徴を持ち、
別の要因に規定されています。

だから、部分から全体が作られる、
あるいは、部分を調べれば全体が分かる、
という、要素主義、構成主義、
は批判されることになります。

それでは、
どこを調べればよいのか。

彼らが発見したのは、
部分間の「関係」や全体の「文脈」の重要性です。

たとえば、
黒丸の並び方や位置関係のパターン。

こうしたパターンが、
黒丸を「四角形」に見せる要因
になっているのではないか。

この発見は、
知覚にとどまらず、
むしろその他のより混沌としていて、
把握しづらい現象を理解するために、
応用されていったのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【応用号】… 2008年8月5日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
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【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


我々は、
視覚をある程度「客観的なもの」として、
信頼してきました。

だからこそ、
「幽霊やUFOの目撃者」という人たちも、
一定の信憑性を持つことを
許されているわけです。

「だって見たんだもん」

という言い分は、
かなりの程度、
反論できない力を持っています。

しかし、
我々の知覚は、
要素どうしの関係や、
全体の文脈にも依存して成立している。

そう、ゲシュタルト心理学者
は主張しました。

木の影を人と見間違える
という現象は、
知覚のこうした特性からも
考えることが出来ます。

ここは、
目の錯覚も科学的に説明できる、
ということではなくて、
我々のいう「客観性」自体が、
様々な要素同士の関係や、
全体としての文脈に依存して成立している
のかもしれない、ということでしょう。

いつでも、断定するよりも、
考えの幅を広げ、
新たな問いを作り出すことことのほうが、
理論の重要な仕事だと思います。

ゲシュタルト心理学の
役割も、まさしくそのようなものでした。

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2008年7月15日火曜日

【Clip!アカデミー】第127回:展開号「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー」

【Clip! アカデミー】 第127回 2008/7/15
第3週 展開号 「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
      2)【マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目1ヶ月目 心理学の歴史から
         「マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)」

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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
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2)【ゲシュタルト運動】
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●ゲシュタルト運動

ヴェルトハイマーは、
同じフランクフルト大学に在籍し、
シュトゥンプのもとで学んだ経験がある
二人の若者と、その運動を開始した。

それが、ヴォルフガング・ケーラーと、
クルト・コフカである。

彼らは3人で研究を進めたが、
第二次世界大戦の前後、
それぞれにアメリカに亡命し、
大学に職を得て、ゲシュタルト運動を発展させた。

彼らの後輩にはクルト・レヴィンがおり、
彼も後にアメリカに渡った。


●ケーラー

シュトゥンプのもとで心理学の学位を取り、
フランクフルト大学において
ヴェルトハイマーとともに
ゲシュタルト心理学の研究に着手。

のちにAPA(アメリカ心理学会)会長
にも就任している。

フランクフルトを離れた後、
ケーラーはテネリフェ島でチンパンジーを対象に
一連の実験を行った。

そして、問題解決が、
行動主義者のように刺激ー反応の連合ではなく、
環境を含めた問題構造の再体制化(=洞察)
によって起こっている可能性を示唆した。

これは洞察学習と呼ばれる。


●コフカ

1911年にアメリカに渡り、
アメリカにゲシュタルト心理学を紹介した。

ゲシュタルト心理学の見解を、
発達心理学やその他の
分野に拡大していくことに熱心に取り組み、
1935年には『ゲシュタルト心理学の原理』
を発表している。

早くにアメリカに渡ったコフカの同僚には
社会心理学において名を成したハイダーや、
後にアフォーダンスを提唱することになる
J・J・ギブソン、エレノア・ギブソンがいた。


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3)【解説:知識の展開】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ゲシュタルト運動において、
ヴェルトハイマーはカリスマ的な人物であり、
運動全体を牽引したといえるでしょう。

彼らがアメリカに移って後、
ゲシュタルト運動は様々な点で
行動主義と対立しながらも、
その支持者を増やしていきます。

とはいえ、
その影響が表面化してきたのは、
行動主義にも認知的な視点が
取り入れられ始め、
心理学のトレンドが大きく移り変わり
はじめてからです。

知覚のほかにも、集団や、人格や、
認知構造の研究において、
ゲシュタルト心理学の視点が
大きな影響を与え始めました。

個々の要素が体制化され、
それぞれの要素の足し算とは異なる
全体や形態が立ち上がってくる、
そのプロセスは、
社会心理学や、認知心理学に広がっていったのです。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年7月29日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版


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【編集後記】
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好戦的な少数派の野党、
という印象もあるゲシュタルト心理学
ですが、

ケーラーが読むことなく終わった
APAの会長講演の遺稿には、

「何よりも増してわれわれに必要なことは、
 人々を興奮させることである」

と書いてあったといわれます。


ゲシュタルト運動の伝説的指導者としての
ヴェルトハイマーが、
どこまで事実だったかは分かりません。

とはいえ、
晩年のケーラーにこう書かせるほどの何かが、
当時のヴェルトハイマーに存在し、
それが人の心に訴えかけ、
新しい心理学を立ち上げるほどの
ヴィジョンを与えた。

このように考えることのほうが、
心理学を人の営みとして考えたとき、
われわれに勇気を与えてくれるような気がします。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年7月8日火曜日

【Clip!アカデミー】第126回:応用号「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー」

【Clip! アカデミー】 第126回 2008/7/8
第2週 応用号 「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/


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  「研究計画書添削プレゼント」へのご応募ありがとうございました
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  前回に告知した研究計画書添削プレゼントですが、おかげさまで
  7/3付けで定員となりました。
  
  残念ながら今回は対象とならなかった方もいらっしゃいますので、
  今後も皆様のお役に立てる企画を考えてまいりますので、お楽しみに。
  
  秋入試を目指す方の研究計画書の仕上げが増えてきました。
  9月入試の場合は遅くとも、8月中旬には研究計画が完成していないと
  間に合いませんので、しっかりと準備を行うようにしてください。

  研究計画書に関する質問は

          info@clinicalpsychology.jp
                         までどうぞ。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
      2)【マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目1ヶ月目 心理学の歴史から
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

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2)【フィルム映画の中の仮現運動】
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ウェルトハイマーの行った実験の中で
もっとも知られているのが、
ケーラーやコフカらとともに行った、
ファイ現象の実験について、
もう一度おさらいしておきましょう。


それは、
タキストスコープと呼ばれる、
瞬間的に視覚刺激を提示する実験装置を用いて、
二本の棒を交互に呈示していくという実験でした。

呈示の切り替えスピードが速すぎると、
交互に提示していても、
被験者の目からは同時に呈示しているように見える。

一方、
呈示の切り替えスピードが遅いと、
被験者は、一本が呈示され、それが消えて、
もう一本の棒がその隣に現れる、
という繰り返しを知覚することになりました。

しかし、
呈示の切り替えスピードが約60ミリ秒になったとき、
被験者は、二本の棒ではなく、
一本の棒がなめらかに左右に移動するのを
知覚したのです。

このときの、
なめらかな運動の知覚現象が、
ファイ現象と呼ばれるようになりました。

刺激の離散的な変化が、
連続的な運動の知覚を生じさせる現象全般を、
仮現運動と呼びます。

ファイ現象は、
今では仮現運動の一種として知られています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の根っこ】
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仮現運動のもっとも日常的な例は、
フィルム映画の中です。

フィルム映画のなかでは、
登場人物や背景が、
実際に運動しているように見えます。

でも実際には、
無数の静止画がコマ送りになっているだけで、
そのような運動は存在しているわけではありません。

だとすると、
われわれが認知している運動は、
刺激の側に由来しているわけではないことになる。

それは、どのような仕組みで、
どこから来るのか?

この問いが、
ヴェルトハイマーが心理学に
残した貢献の最初のひとつになります。

ヴントやワトソンなど、
心理学の主流となっていった研究者たちは、
心的現象を、「単純感情」や「刺激」「反応」といった、
単純な要素に分解・還元し、
その単位を積み上げ・組み合わせることで、
彼らの理論を立ち上げていきました。

これは、
科学的理論には馴染みのある、
とても妥当なアプローチです。

しかし、ヴェルトハイマーは、
その”あるはずのない運動”が知覚されている、
という状況自体に関心がありました。

それは、分解し、
要素に還元されてしまったら
失われてしまう性質であり、
逆にどれだけヴントやワトソンが扱っている
最小の単位(単純感覚やら、刺激やら)
を積み重ねても、発生しない性質だったからです。

これが、
ゲシュタルトと呼ばれる性質でした。

われわれの中には、
関連もなく、意味もない刺激の中に、
まとまりや関連を見出して、
全体をゲシュタルトとして構成しようとする
傾向がある。

ゲシュタルト像自体は主観的であり、
他人からは同じ像を見ることは出来ませんが、
この傾向を明らかにしていくことで、
心的現象について、
多くのことを理解することができるのではないか。

ヴェルトハイマーが
心理学に持ち込んだ主題は、
形を変えて心理学の中で
様々に新しい研究を生み出していくことになりました。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年7月15日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版


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【編集後記】
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新しい価値や発見には、
心躍るものがあります。

ヴェルトハイマーが仲間たちとはじめた実験も、
その実験自体よりも、
その実験が示した可能性、
新しい心理学を指し示すものとして、
やはり彼らの心を躍らせたのではないでしょうか。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。

2008年7月1日火曜日

【Clip!アカデミー】第125回:理論号「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー」

【Clip! アカデミー】 第125回 2008/7/1
第1週 理論号 「心理学の歴史から:マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/


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◆講座7周年記念◆研究計画書添削プレゼント
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臨床心理士指定大学院受験講座は、2008年7月で7周年を
迎えることができました。
7周年の記念としまして、Clip!アカデミー読者の皆様にプレゼントを
ご用意いたしました。
みなさまふるってご応募ください。

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■内容:通常¥15,750相当の研究計画書指導を、講座7周年を記念し
    先着7名様に限り無料で行います。
■対象:Clip!アカデミー購読者
■応募期間:2008/7/1~7/7までにご提出の方
■応募方法:info@clinicalpsychology.jpまで
      メールタイトル「講座7周年記念キャンペーン応募」とし、
本文に「氏名」「研究計画書(3000字まで)」を記載し送付。

*本メール受信者様限定となります。(受講経験がある方を除きます。)
*添削状況により返却まで最大3週間程お時間を頂戴しております。
*添削対象となった研究計画書を、個人が特定できない範囲において
 利用することがあります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

      ◆目次◆

           1)【現在地】
      2)【マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
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1)【現在地】
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
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2)【マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)】
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今回は心理学の歴史から、
「マックス・ウェルトハイマー(Max Wertheimer)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============

マックス・ウェルトハイマーは、
ゲシュタルト心理学の中心人物として、
知られている。

1880年にチェコスロバキア(当時)のプラハに生まれ、
ドイツの心理学者シュトゥンプ、キュルペの元で学ぶ。

知覚におけるファイ現象を研究し、
ケーラーやコフカらとともに、
ゲシュタルト心理学派として、
ヴントの構造主義や、のちの行動主義とは
異なる立場からの心理学を展開し、
後の心理学に大きな影響を与えた。

ウェルトハイマーの行った実験の中で
もっとも知られているのは、
ケーラーやコフカらとともに行った、
ファイ現象の実験である。

それは、
タキストスコープと呼ばれる、
瞬間的に視覚刺激を提示する実験装置を用いて、
二本の棒を交互に呈示していくという実験であった。

呈示の切り替えスピードが速すぎると、
交互に提示していても、
被験者の目からは同時に呈示しているように見える。

一方、
呈示の切り替えスピードが遅いと、
被験者は、一本が呈示され、それが消えて、
もう一本の棒がその隣に現れる、
という繰り返しを知覚することになった。

しかし、
呈示の切り替えスピードが約60ミリ秒になったとき、
被験者は、二本の棒ではなく、
一本の棒がなめらかに左右に移動するのを
知覚した。

このときの、
なめらかな運動の知覚現象を、
ファイ現象と呼んだのである。

この実験は、
知覚と視覚刺激とが一対一対応せず、
被験者側のなんらかの精神過程の関与を受けていることを
示唆していた。

すなわち、
我々が当たり前に見ている外界の像は、
外界からもたらされた視覚刺激そのものではなく、
我々の知覚過程によって編集され、
ひとつの全体像(ゲシュタルト)としてまとめ上げられた
ものではないか、
という仮説を支持していると考えられたのである。

ヴントの構造主義や、ワトソンらの行動主義など、
当時主流の心理学においては、
刺激や感覚、知覚はバラバラの構成要素として扱われ、
それらを全体として捉えようとする視点は見られなかった。

そのため、この仮説から、
知覚や思考、発達、集団の特性など、
様々な領域における研究が影響を受けるに至った。


==============================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【解説:知識の種】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ウェルトハイマーは、
大学教育の伝統に支えられた
ドイツにおいて教育を受けました。

アメリカにおいては、
心理学は新しい学問として
様々な方向に発展していこうとしていましたが、
ドイツにおいては、
そうした新しい試みとは、
また別の発想が温められていたわけです。

ただし、
第二次世界大戦によって、
結局ウェルトハイマーもアメリカに亡命し、
そこで研究を継続することになったのですが。


ウェルトハイマーは、
フランクフルト大学で知り合った
コフカやケーラーらとともに、
人間の行動をバラバラに分解して、
それぞれの部品について理解しようとするのではなく、
バラバラな部品を”ひとつの全体”として統合しているプロセス
自体に関心を向けました。

同じ刺激でも、
呈示の仕方によって、
まったく異なる知覚を生み出す。

ということは、
素材となる刺激だけを個々に分析していても、
人間の主観的な経験や行動を、
理解するには足りない、ということになります。

実際、
我々が知覚するのは
行動主義が分析の対象とするような
視覚、聴覚、触覚のような個々の刺激ではなく、
それらすべてを含んだ、ひとつの状況だからです。

こうした発想は、
個々の要素に還元することが難しい領域で、
特に歓迎されたのです。


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【次回配信】
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   次回 【応用号】… 2008年7月8日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

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● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
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【編集後記】
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ウェルトハイマーが、
ファイ現象のアイデアを得たのは、
ウィーンへの鉄道の中だったといわれています。

ウェルトハイマー、当時30歳。

フランクフルト大学で、
後の盟友になるコフカとケーラーと
出会ったのは、
そのすぐ後です。


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2008年6月18日水曜日

【Clip!アカデミー】第124回:展開号「心理学研究法から:一事例実験計画」

【Clip! アカデミー】 第124回  2008/6/18
第3週 展開号 「心理学研究法から:一事例実験計画(single subject designs)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【一事例実験計画法の限界】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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            ■ 基本サイクル ■
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            ■ 第2サイクルへ続く ■

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 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

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【お詫び】
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    先週6月10日分の【Clip!アカデミー】第123号を
    先日6月17日にお届けした関係で、
    予定していた第124号を
    例外的に本日配信しております。
    
    次回からは通常どおり火曜日の配信になります。

    ご迷惑をおかけしますが、
    よろしくお願いいたします。

                 Clip!アカデミー事務局

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 3巡目5ヶ月目 心理学研究法から
         「一事例実験計画(single subject designs)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
        2ヶ月目 基礎心理学から1
        3ヶ月目 基礎心理学から2
        4ヶ月目 臨床心理学から
  【NOW!】5ヶ月目 心理学研究法から 
   |    ↓
    |  【※違うテーマではじめから繰り返します。】
   |  ======================
   ↓

 ● 第1週「理論」号
「心理学研究法から:
 一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓

http://clipseminar.blogspot.com/2008/06/clip122.html

 ● 第2週「応用」号
「心理学研究法から:
 一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓

http://clipseminar.blogspot.com/2008/06/clip123.html

 ● 第3週「展開」号
「心理学研究法から:
 一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓


   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
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※ その他バックナンバーはコチラ↓

http://clipseminar.blogspot.com/


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2)【一事例実験計画法の限界】
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●ABA法がうまく行かない場合

一事例実験計画法において、
介入条件(B)による行動(独立変数)の変容が
継続する場合が考えられる。

たとえば、

●技術の習得(テニスや将棋、自転車の運転など)

●病気の治癒(風邪や悪性腫瘍から、自傷行為まで)

などがあげられる。

技術を習得してしまった場合、
介入を中止して、
第二ベースライン(A2)の段階を観察することは、
第一ベースライン(A1)との比較として
適当ではないために、
介入と独立変数の変化との因果関係について、
言及することができない。

また、病気が治癒した場合、
風邪ならば生理的要因が明確であるため、
反復する必要はないし、
自傷行為が消失した場合、
第一ベースラインの状態を再現しようとすること自体が、
倫理的に問題となる。

これらの場合、
ABA法では因果関係の検証は不適当である。


●多層ベースライン法

多層ベースライン法とは、
一事例実験計画の中でも、
ベースラインを複数設定し、
介入のタイミングをズラすことで、
介入の効果を検証するために利用される実験方法である。

ABA法では検証できない事例に対して、
介入の効果を検証したい場合などに用いられる。

・被験者間での多重ベースライン
たとえば、
同じクラスの同程度の学力の学生で、
介入のタイミングをズラして技術習得の結果を検証する。

・行動間での多重ベースライン
黒板を写したり、問題を解いたり、
といった被験者内の複数の行動に対しても、
それぞれの行動のベースラインを設定して、
介入の時期をズラせば、
指導法の結果を検証できることになる。

・状況間での多重ベースライン
学校と家庭での発話の頻度をそれぞれベースラインとして、
介入の時期をズラすことで、
治療法の効果を検証する。

●一事例実験計画法の限界


一事例実験計画が研究法として、
目的とする介入の効果の検証、
すなわち、介入と独立変数との因果関係への言及
が可能であるためには、


・反復実験が可能であること

・被験者内の、
 もしくは被験者間の同一性を前提とすることが可能なこと

・厳密に単独の独立変数の変化のみを、
 介入条件として設定できること

などの条件が考えられる。

逆に言えば、
こうした条件が満たされない場合、
結果の解釈には、自ずから限界が出てくることになる。



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3)【解説:知識の展開】
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一事例実験計画に、
反復を含まないABデザインを含むとすると、
現場においては、
仮説検証のために、
一事例での実験計画をしている場合が多いものです。

たとえば、
叱る代わりに放っておく、
という介入を実施して、
事前事後での相手の行動の変化を比較する、など。

意識的な実践であれば、
介入ごとの結果をきちんと観察していて、
何度も反復を繰り返す中で、
ジグザクに、
よい介入方法に対する確信を深めていく、
というパターンになるのでしょう。

これを計画的に実験に組み入れると、
一事例実験計画に近づいていくのかもしれません。

しかし、そうした意識がまったくない場合、
一事例で事前事後を見るだけでは、
非合理的な処遇の原因となる場合もあります。

たとえば、
たまたま怒鳴ったら効果があった。

この人が、
自分の実践に不安を感じていて、
相手の反応を意識的に観察できていなければ、
今度は、また怒鳴らないでみたら、
どうなるか、という検証をせずに、
いつも怒鳴ってばかりの人になってしまうかもしれません。

加持祈祷の類で病気が治ったという場合や、
カツ丼を食べたら、いい点が取れた、
という場合にも、
同様の盲点があります。

こうした現場における仮説検証に、
一事例実験計画は一定の根拠を与えることが出来る
と考えられます。

とはいえ、もちろん万能の研究法
というものは存在しません。

ABA法は、
介入を中断して、
もう一度”元の状態”に戻してみることで、
介入の効果を分かりやすく検証することができます。

しかし、”元の状態”に戻せない場合、
あるいは、戻すことが適当でない場合、
第2ベースラインを設定することには、
意味があるとはいえません。

こうした場合には、
条件の統制に関して、
別のロジックを用いなければならなくなります。

よく知られているのが、
多層ベースライン法と呼ばれる方法です。

とはいえ、
これでもまだ根本的な前提について、
問題が解決しているとはいえません。

第一ベースラインと第二ベースライン、
あるいは、
被験者間での多重ベースラインは同一である、
という前提は成立するかしないか。

違いを無視できる場合もあれば、
出来ない場合もあります。

また、
「●●指導法」などという大雑把な介入条件では、
変化が起こっても、
その条件のどこが行動変容に影響しているか、
結局分からない場合もあります。

こうした限界にとらわれると、
逆にまた現場で用いるのは難しくなってきます。

ただ単に、
「効果的な介入である」と、
実証するためだけに用いるならば、
結局はまた、
研究が現場から離れていくだけになるかもしれません。

その場その場での目的を明確にし、
研究法の効果と限界とをにらみながら、
程よいバランスを探していく
必要があるのでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年7月1日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 行動分析学入門 杉山尚子 著 2005 集英社新書

● はじめての応用行動分析 P.A.アルバート A.C.トルートマン 著
  1992 二瓶社


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【編集後記】
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行動分析学では、
行動を詳細に観察し、
行動の事前事後、
すなわち行動随伴性を検証することで、
研究法としての厳密さと、
臨床実践における有用性の両方を
満足させようとします。

しかし、
研究法としての厳密さ、
因果関係検証へのこだわりが高じると、
現場での、
全体の流れの中での実践、という視点が、
分断されるように感じられることもあります。

あまりに行動の分析のみに集中すると、
相手が一人の人間というより、
個々の行動にしか見えなくなるかもしれません。

特に、行動の分析だけで、
あまりに多くの問題が解決できてしまうと、
問題状況さえも、
単なる謎解きパズルになってしまったりはしないのでしょうか。

もちろん、
これは個人の態度や心がけによって
防げる問題なのかもしれません。

しかし、
それを防ぐためには、
行動主義的な考え方自体を捨てる必要があるような気がします。

なんとなく、
行動主義でもなく、
行動主義的なアプローチも取っていないけれど、
結果だけ見ると、
とても行動分析的に素晴らしい実践になっている。

このような人が、
逆説的にいうと、
理想的な実践家なのかもしれません。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座  http://www.clinicalpsychology.jp/    ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。