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2005年12月20日火曜日

【Clip!アカデミー】第27回:解説号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第27回2005/12/20
第3週 解説号「心の研究法図を作る
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/


    ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題号の解説】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。


   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本サイクルでは、
新しく心の研究法図を立てる中で、
研究法を通してまた異なる視点から心理学を見ています。

●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

前回エッセイ号では、
こころという目に見えないものを観察可能な形に落とし込む、
現在の心理学でも行われている一般的な過程を通じて、
心理学における研究法の検討をスタートしました。

心理学を、知識としてではなく、
心理学的なものの考え方として身に付けていくことを、
ここでは目的としましょう。

今回は解説号です。

問題号を読んで、
ご自分で考えてみたことと照らし合わせながら、
今回の解説を読んでみてください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【問題号の解説】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】仮説検証

仮説検証の方法として、
もっとも不適当なものを以下の選択肢から選びなさい。


  ===========選択肢============

a. 例証とは、仮説の正しさを支持する実例を、
積み重ねることで、仮説を検証すること。

b. 反証とは、仮説を支持しない実例をあげることで、
仮説が成立することを証明すること。

c. 仮説検証では、どんなに例証を積み上げても、
仮説を証明したことにはならない。

d. 仮説検証では、反証が成り立つかによってこそ、
仮説が成り立つかどうかを検証することが出来る。

==========================


正解は、  【 b. 】
 ……反証は、仮説が成立しない、という証拠です。


ここでは、仮説検証における帰無仮説の役割について説明します。

仮説検証には、例証と反証とがあります。

よく、女性に好意を持って欲しければ、
ジェットコースターに乗せろ、
とか言いますね。

ここに、「心拍数と恋愛感情は関係がある」
という仮説があったとします。

社会心理学に、有名な吊り橋実験というものがありますが、
不安定な吊り橋を渡ったところで出会った女性への好感度は、
通常よりも高く評価される、という結果が出ています。

この結果を読んだ皆さんは、
あ、そういえば、と、色々な実例を思い出すかもしれません。

このように、仮説の正しさを示すような例を挙げることで、
仮説を検証することを、例証といいます。

我々が日常でよくやりがちな例証ですが、
実は、仮説を支持しないような実例が見過ごされる、
という危険性があります。

そこで、科学的な検証においては、
帰無仮説の棄却、という手続きを取ることがあります。

つまり、主張したい仮説とは逆の仮説を立て、
それを一定の基準に照らし合わせて否定することができれば、
反証が見過ごされるという危険性を、
乗り越えることができる、と考えるわけです。

これを厳密に行うためには、
統計学の知識と、計算ツールが必要です。

しかし、
1、常に反証を考慮する
2、常に一定の基準に照らし合わせる

という2点は、我々が安易な思い込み(仮説)から、
物事を判断してしまうことに、ストップを掛けてくれるはずです。

ちなみに、科学においては、反証が可能でなければ、
科学理論ではない、と考える考え方もあります。

反証ができないというのは、
反証が探してもなかった、という意味ではありません。

ここでいう反証可能性とは、
その理論を支持しないという証拠を探してきて、
理論の正当性を検討する、という科学的な検証の手続きが
可能かどうか、を指します。

反証可能性がなければ、
その理論の正当性を、受け入れるか受け入れないか、
の選択肢しかないことになります。

これは、科学の中ではフェアな議論ができないと見なされます。

その意味では、フロイトの精神分析理論も、
反証可能性がなく、科学理論とは呼べない、
ということにもなるのです。


【Q2】心的概念と研究法

次の文章を読んで、以下の設問に答えなさい。

「こころ」やその構成要素であると思われるような人の内的過程や状態を
意味する概念、つまり心的概念を人間行動の原因的説明に用いることは、
人間の日常生活において一般的であると同様に、心理学においても古くから
一般的であった。
(略)しかし、こうした心的概念を用いて行動を説明することの根拠は、
実は非常に脆弱である。多くの心的概念は人の内部にあり行動に因果的に
先行すると仮定されているが、そうした内的過程の存在は観察された行動や
行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合客観的に
観察された事象、つまり外的なものに還元されてしまう
(サトウ・渡邊・尾見,2000)。

ここで述べられている「心的概念」とは、
以下にあげた【心の側面】の中ではどれにあたるか。

A【意識】 B【身体】 C【潜在意識】 D【認知過程】

「心的概念」にあたるものを○、あたらないものを×として、
正しい組み合わせを以下から答えなさい。


======選択肢====

       A B C D

a.  ○ ○ ○ ×
b.  ○ × ○ ×
c.  ○ ○ ○ ○
d.  ○ × ○ ○

=============

正解は、  【 d. 】
 ……脳の生理学的過程は、概念ではありません。

科学的に思考できる、ということには、
科学が思考のために便宜的に立てた仮説(存在しないもの)と、
実際に存在しているもの、を区別できることも含まれます。

本メルマガで毎回図式を立てるために用いている、
以下の概念。

【心の側面】…【意識】【潜在意識】【認知過程】
       【ゲシュタルト】【身体】【行動】

これらも、心理学から見た心を、捉えやすくまとめるための、
便宜的なカテゴリーです。

けっして、心がこうした6つの部品の組み合わせによって
できている訳ではありません。

その意味では、
【身体】というカテゴリーも心的概念ではないか、
という疑問も出てくるかもしれません。

これは、身体をどのような意味で捉えるかに
よって異なってくるのですが、
本メルマガでは、これまで心の【身体】の側面を、
脳や神経系の生理的プロセスを含むものとして捉えてきたことから、
心的概念との対比として、
問題では【身体】と他の側面との比較を行いました。

引用文は、渡邊論文
『メタファーとしての「こころ」-心的概念が意味しているもの』
からです。

メタファーである心的概念を、
実体として捉えることから生じている研究上の問題と、
逆に、日常の中でこうした心的概念を用いることの意義を、
対比させて論じている点が、
行動主義からの単なる批判に終わっておらず、面白い点です。

なぜ心理臨床家が、心的概念を、
操作的定義によって数値にすることに抵抗を覚えるのか、
という点に、有益な説明を与えているように思います。


【Q3】傾性概念

前回エッセイ号では、
目に見えない心を観察可能な形に変換し、
研究に乗せるという、心理学研究における一般的な流れの触りを
説明しました。
整理し直すと、以下のような流れになります。

こころ →(1) → (2) → (3) → (4)→ 仮説検証

次のA~Dの概念を並べ替えて、
上記の流れを完成させることのできる組み合わせを、
選択肢より選びなさい。

A 傾性概念 B 理論的構成概念 C 操作的定義 D 測定

========選択肢========

(1) (2) (3) (4)
a.  A   B   D   C
b.  A   B   C   D
c.  B   C   A   D
d.  B   A   C   D

===================


正解は、  【 c. 】
 ……ポイントは、傾性概念と理論的構成概念の順序です。

傾性概念という言葉は、
聞き慣れない人が多いのではないかと思います。

ただ、前エッセイ号の話の流れを、
理論的枠組みから整理する上では、
理論的構成概念と、傾性概念の区別に触れることになるので、
取り上げました。

傾性概念は、
ファイルキャビネットの
引き出しにつけるラベルのように、
単純に現象をまとめるためにつけられた名前です。

例えば、
S-R理論とS-O-R理論を比べると、
R(反応)は、単純に観察される現象や行動を集約するために
つけられた名前にすぎませんが、
O(有機体)は、
Rという行動の要因である内的過程が仮定されています。

このRが、傾性概念、
Oが、Q2で取り上げられていた、
心的概念とか、こころとか、理論的構成概念になります。

設問のA~Dの選択肢では、
傾性概念以外の用語はすでに説明したので、
あとはこれをどこに位置付けるか、
ということになります。

こころ→ 理論的構成概念→ 操作的定義→ 傾性概念→ 測定

という流れはつまり、

理論的構成概念が、操作的定義によって、
傾性概念に変換される、あるいは還元されたことを示しています。

エッセイ号の例で言えば、
「恋人の愛情」が、
「打ったメールの数」に還元されている訳です。

Q2でも述べたように、
ここに、臨床心理学者の難しさがあります。

カウンセラーとしては、
「恋人の愛情」を、「打ったメールの数」に還元することは、
決して、クライエントの状況を理解する助けにはならないでしょう。

むしろ、無意識的な欲求や、相手の気持ちを仮定する事の方が、
状況の全体的な理解の助けになります。

しかし、研究者としては、
こうした見解には慎重になる必要があります。

なぜなら、科学的に物を考えるということは、
幾重にも条件を設定し、
常に一定の基準から、何がいえるかを考えていくことだからです。

たとえ言えることが少なくても、
これは確かに言うことができる、という点を、
積み上げていくことが重要になるのです。

心理学を実際に応用する上では、
こうした区別にも敏感になり、
適宜使い分けられることが必要でしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【エッセイ号】… 1月3日(火)にお送りする予定です。
  ※ 12日27日はお休みです。特別号が配信されることがあります。

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【参考文献】
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● グラフィック社会心理学 池上和子 遠藤由美 1998 サイエンス社

● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回、今回と引用した「心理学論の誕生」。

日本の若手心理学者たちの作った論文集ですが、
教科書に載っている心理学の暗黙の前提を、
真面目に捉え直しているところが面白いので、
紹介してみました。

ただ、教科書的な知識を一通り学ぶ前に読んでしまうと、
逆に混乱を招くかもしれません。

頭の片隅に置いておいて、
何年後かに読んでみると、
面白い本かもしれません。



====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年12月13日火曜日

 【Clip!アカデミー】第26回:問題号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第26回2005/12/13
第2週 問題号「心の研究法図を作る」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【それでは問題です】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。




   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
 ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回から、Clip!アカデミーでは、
新しく心の研究法図を立てる中で、
研究法を通してまた異なる視点から心理学を見ていきたいと思います。

●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

前回エッセイ号では、
こころという目に見えないものを観察可能な形に落とし込む、
現在の心理学でも行われている一般的な過程を通じて、
心理学における研究法の検討をスタートしました。

心理学を、知識としてではなく、
心理学的なものの考え方として身に付けていくことを、
ここでは目的としましょう。

今回の問題号は、心理学におけるものの考え方の訓練となりそうな、
3題を用意しました。

なかには難しいものもありますが、
次回の解説号まで、一度自分で考え、
答えを出してみてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【それでは問題です】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】仮説検証

仮説検証の方法として、
もっとも不適当なものを以下の選択肢から選びなさい。


  ===========選択肢============

a. 例証とは、仮説の正しさを支持する実例を、
積み重ねることで、仮説を検証すること。

b. 反証とは、仮説を支持しない実例をあげることで、
仮説が成立することを証明すること。

c. 仮説検証では、どんなに例証を積み上げても、
仮説を証明したことにはならない。

d. 仮説検証では、反証が成り立つかによってこそ、
仮説が成り立つかどうかを検証することが出来る。

==========================


【Q2】心的概念と研究法

次の文章を読んで、以下の設問に答えなさい。

「こころ」やその構成要素であると思われるような人の内的過程や状態を
意味する概念、つまり心的概念を人間行動の原因的説明に用いることは、
人間の日常生活において一般的であると同様に、心理学においても古くから
一般的であった。
(略)しかし、こうした心的概念を用いて行動を説明することの根拠は、
実は非常に脆弱である。多くの心的概念は人の内部にあり行動に因果的に
先行すると仮定されているが、そうした内的過程の存在は観察された行動や
行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合客観的に
観察された事象、つまり外的なものに還元されてしまう
(サトウ・渡邊・尾見,2000)。

ここで述べられている「心的概念」とは、
以下にあげた【心の側面】の中ではどれにあたるか。

A【意識】 B【身体】 C【潜在意識】 D【認知過程】

「心的概念」にあたるものを○、あたらないものを×として、
正しい組み合わせを以下から答えなさい。


======選択肢====

       A B C D

a.  ○ ○ ○ ×
b.  ○ × ○ ×
c.  ○ ○ ○ ○
d.  ○ × ○ ○

=============


【Q3】

前回エッセイ号では、
目に見えない心を観察可能な形に変換し、
研究に乗せるという、心理学研究における一般的な流れの触りを
説明しました。
整理し直すと、以下のような流れになります。

こころ →(1) → (2) → (3) → (4)→ 仮説検証

次のA~Dの概念を並べ替えて、
上記の流れを完成させることのできる組み合わせを、
選択肢より選びなさい。

A 傾性概念 B 理論的構成概念 C 操作的定義 D 測定


========選択肢========

(1) (2) (3) (4)

a.  A   B   D   C

b.  A   B   C   D

c.  B   C   A   D

d.  B   A   C   D

===================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【解説号】… 12月20日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 編 1973
  有斐閣 

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【編集後記】
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今回は、基礎概念の確認、といういつものパターンから、
少し外れています。

というのは、前回のエッセイ号が、
研究法の簡単な概論というより、
研究をはじめるにあたって前提となる考え方についての
内容だったためです。

そのため、今回の内容も、
少し考え方的な問題に偏っています。

頭の体操と思って、気軽にチャレンジしてみてください。

次のエッセイ号からは、
もう少し概論的な内容に戻る予定です。

====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年12月6日火曜日

【Clip! アカデミー】 第25回:新章突入!エッセイ号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第25回 2005/12/6
第1週 新章突入:エッセイ号「心の研究法図を作る」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/




      ◆目次◆

            1)【新サイクル突入!】
            2)【研究をするということ】
            3)【操作的定義】
            4)【心の側面】
            5)【研究方法は、捉え方に規定される】
            6)【心の研究法図(仮)】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。



   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
  ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
            第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【新サイクル突入!】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回までは、3ヶ月にわたり、
心の歴史図を通して、心理学における、
心の捉え方の歴史的変遷を検討してきました。

今回からは、新しいサイクルとして、
心理学の研究法について論じて行きたいと思います。


研究法について考えるということは、
実は、心理学の勉強の中で、もっとも重要なことのひとつです。

というのは、

  心理学の研究法を身につける = 心理学者の考え方を身に着ける

ということに他ならないからです。

ですから、
単に心理学の知識が豊富な人を、
心理学者と呼ぶのは、この際やめましょう。

心理学者とは、
心理学の手続き、ロジックから、物事を見ることができる人、
つまり、心理学者として考えることができる人なのです。

それでは、心理学者はどのように考えるのか、
いつものように、非常に大まかにではありますが、
概観していくことにしましょう。

その中から、
心の研究法図を立てていくヒントが得られるかもしれません。

また、皆さんが、
実際に研究を行っていくときの、
発想のヒントになるといいなと思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【研究をするということ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読者の皆さんは、研究法、というと、
どんなことを連想しますか。

心理学に興味のある人なら、
よくテレビでもやっていたりする実験や、
ストレス診断テストなどを思い浮かべるかもしれなせん。

大学院受験のために勉強している人なら、
観察法、実験法、質問紙法……と、
暗記したての専門用語が出てくるかもしれませんね。

どちらも、とても結構です。

ただし、そこには、
一番大事な事が抜けています。

それは、何を、どんな風に研究するのか、
というイメージです。

これが研究のキモで、
実験や質問紙などの具体的な研究法は、
実はここが決まらないと、何の意味もないのです。

つまり、研究法以前に、

   形のない心を、どのように切り取り、どのような捉え方をするか

を考えることが、研究をするということです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【操作的定義】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


そして、初めて研究に取り組むとき、最も苦しむのも、ここです。

前回までの心の歴史図では、
心理学の先人たちが、心をいかにして科学的に捉えるか、
に苦心し、心理学の歴史を作っていったかをたどりました。

逆を言えば、
心をうまく科学的な枠組みの中で捉えることに成功した
人たちが、心理学を作ってきたのだといえます。

ですから、ここに、その研究の価値や、オリジナリティの、
すべてが詰まっているといえます。

ただし、我々には、ゼロから新しい捉え方を
生み出す才能も経験もありませんから、
これまでの心理学の蓄積を、最大に生かすことを考えましょう。

まず、はじめにつまずきやすいのが、
自分が研究したいテーマを、
どうやって具体的な研究に落とせばいいのか分からない、
というものです。

ここで利用できるのが、
前々回の問題号でも触れた、操作主義、という考え方です。

一言でいうと、

 科学的な研究の対象は、
 手続き(操作)によって明確に示されなければならない

ということです。

たとえば、
「恋人の愛情」という形のないものも、
「1日に来る携帯メールの数」という手続きによって表現できるもの、
と定義することができます。

仮に、「恋人の愛情」=「1日に来る携帯メールの数」
ということにしておくわけです。

これなら、抽象的な愛情の代わりに、
1日に来る携帯メールの数を、研究対象にすることができます。

ここではじめて、
具体的な研究方法について考え始めることができるわけですね。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【心の側面】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


たとえば、
愛情=メールの数、ということにすれば、
メール送信という行動の数を調べることで、研究が可能そうです。

しかし、
ここでもうひとつ、前提となっている条件に注意しましょう。

それは、
「恋人の愛情」を、「1日に来る携帯メールの数」として
操作的に定義する、ということは、
心のなかの、【行動】という側面を切り取っているのだ、
ということです。

心には、今までのメルマガでも取り上げてきたように、
行動以外にも、様々な側面があると考えられます。

そして実際、
皆さんは、本当に恋人の愛情が、
1日に来るメールの数で測れると思いますか?

そうです。

実際には、心(愛情) = 行動(メール)ではなく、
     心(愛情) > 行動(メール)ですね。

ですから愛情には、メールの数という、行動として測れる側面もある、
くらいなら許されそうです。

ほかには、たとえば、
恋人が今、どんな気持ちでメールを打っているか→【意識】の側面
メールの少なさは、本当に気持ちの薄さか、
それとも、本人も気づかない何かのサインなのか→【潜在意識】の側面
など、いろいろ考えることができます。

単純に、体調が悪かっただけかもしれないのです。→【身体】の側面


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【研究方法は、捉え方に規定される】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


このように、心を科学的研究に乗せようとする場合、
実際には、心のいずれかの側面に着目し、
それをどのような形で操作的に定義するか、
という手続きが存在しています。

このことが重要なのは、
着目する側面によって、用いることのできる研究法が
変わってくるためです。

メールを送っている恋人が、今どんな気持ちでいるか、
という意識体験は、行動とは一致しないかもしれません。

したがって、行動を対象とした研究では、
今どんな気持ちか、
という意識体験について知ることはできないことになります。

 可能な研究方法は、切り取ろうとする側面に規定される。

これが、
形のない心を、どのように切り取り、どのように捉えるかが、
重要な理由なのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6)【心の研究法図(仮)】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


つまり、心の側面それぞれに、
それを研究しようとして工夫されてきた研究法が存在する、
と考えると、
研究法を、大まかに位置づける枠組みを作ることができそうです。

心の捉え方には様々なものがありますが、
我々は、これまでにいくつかの側面から、
心の捉え方を検討してきたのですから、
ここでもそれを利用しながら、図式を立てて見ましょう。


●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

 ※注 【ゲシュタルト・知覚】の側面は、今回は意図的に入れていません。
    
    図式を分かりやすく、シンプルにするためです。
    
    その理由は、一度全体を一通り説明し終わった後に、
    改めて取り上げることにしたいと思います。
   

どうでしょうか。

この図式を通して、
大まかな研究の流れをつかむことができます。

しかし、これは単なる1回きりのプロセスではなく、
日常においても、常に繰り返し行われる、
心理学者としての考え方の流れと考えましょう。

次回は、この図式を使って、
実際に、あれこれと物事を考えてみたいと思います。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 12月13日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● チビクロこころ 中学生高校生のための心理学入門 森まりも 著
 1999 北大路書店

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 編 1973
  有斐閣


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【編集後記】
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Clip!アカデミーが臨床心理学を学びたい人にも、
基礎心理学の重要性を説き続けている、
その理由がお分かりいただけたでしょうか。

どんなにカウンセリング理論について詳しくなっても、
心理学者として考えることができなければ、
実際の現場において、
カウンセリング理論を応用していくこともまたできません。

特に、最近のスクールカウンセラーばやりによって、
カウンセラーが相談室で、
クライエントを待っていればいい時代は終わりを迎えています。

現場では、心理学者として主体的に考え、
創意工夫できる人間が求められているのです。

そのためには、
専門家としての研究能力が、
これから、現場のレベルでも重要になってくることは、
間違いないところだと考えられます。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年11月22日火曜日

【Clip! アカデミー】第24回:解説号「心の歴史図における論点」

【Clip! アカデミー】 第24回2005/11/22
第3週 解説号「心の歴史図における論点」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/ 
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題の解説】
          【Q1】心身二元論の影響についての問題
          【Q2】操作的定義についての問題
          【Q3】心理学の限界への反論についての問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
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【セミナー・講演会情報】東京国際大学公開講演会「摂食障害をめぐって」
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 東京国際大学の教授陣による、前半・後半の2部構成の講演会(無料)
前半では摂食障害の基本的知識を深め、後半では心理的援助について学びます。
  会場:東京国際大学早稲田サテライト(東西線早稲田駅徒歩5分)
  日時:12/10(土)14時~17時 ◆詳細は↓↓こちら↓↓から◆
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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○



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1)【前回のまとめ】
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●これまで、以下の心の歴史図を中心に、
心理学の歴史について検討を行ってきました。

エッセイ号では、心の歴史図の締めくくりとして、
そこから見えてくる心理学の特徴と限界について
検討を行いました。

前回問題号では、考えてもらう問題を用意しました。

今回の解説号では、前回の3つの問題を解説していきます。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================


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2)【それでは問題です】
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【Q1】心身二元論の影響についての問題

デカルト以来、精神と自然は切り離して考えられるようになった。

現代医学の進歩は、主としてこのような世界観のもとで進歩してきたが、
二元論的思考と対立する医学上の進歩を、
以下の選択肢から選びなさい。

  ====選択肢=====
   
   a. 外科手術の発展
   b. 病原菌の発見
   c. 心療内科の設立
   d. 医薬品の開発

  ============

正解は、
    【 c. 】…心療内科では、心身をひとつのものと捉えます。

【 a. 】【 b. 】【 d. 】では、
心と身体を切り離し、身体を精密な機械と捉えて、
その構造と働きを理解することが前提として存在します。

どの選択肢も、現代医療の常識を形成している、
重要な治療モデルです。

ここでは詳しく説明しませんが、
押さえておくことをお勧めします。

心療内科は、池見酉次郎が
1961年に、日本で始めて九州大学に開きました。

1996年に標榜科として正式に認可され、
日本中に広く認知されるようになってきています。

心療内科は、心身症を対象としています。

心身症とは、
心理社会的な要因が密接に関係して発症する身体疾患のことです。

それまで、身体を心から、できるかぎり切り離し、
物質として研究し、治療の対象としようとしてきた医学において、
心と身体の間の関係を重要視し、出来る限り心身をトータルで
扱おうとするのが、心療内科だといえるでしょう。

ただし、今日全国的に増えている心療内科では、
薬物治療が中心になりつつあり、
池見酉次郎の考えたものからは離れてきている、という現実もあります。


【Q2】操作的定義についての問題

科学があいまいさを容認することができないのは、
研究対象についての仮説を科学的に検証するためには、
研究対象を具体的に定義づけなければならないためである。
これを、操作的定義と呼ぶ。

操作的定義の説明のうち、
不適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。

 ================選択肢==============

  a. 物理学者のブリッジマンが提唱した考え方から来ている。
  b. 心理学研究室を設立した当時のヴントらに大きな影響を与えた。
  c. 具体的な手続きによって研究対象を明確にすることをさす。
  d. たとえば「愛情」を、「1日に来る恋人からのメールの数」
    という形に置き換えることである。

 =================================

正解は、
    【 b. 】…ブリッジマンが操作主義を提唱したのは、1928年です。
          大きな影響を受けたのは、
          スキナーら行動主義者たちでした。
          
もともとは、アインシュタインの研究成果から
物理学において提唱された方法論で、
ヴントの時代には、まだ知られていませんでした。

科学においては、操作的に定義された概念でなければ、
その概念は、ないも同然として扱われます。

すなわち、操作的定義とは、形のない概念に、
実際にいじくりまわすことのできる形を与える、
とイメージできると思います。

これは、実際に研究をしてみると実感することが出来ます。

特に心理学は、認知だの態度だの知能だの、
抽象的な概念を研究対象にすることが多いので、
注意が必要です。

【 d. 】に挙げたように、
「愛情」は個人の主観的な感情であって、
計ったり、他人と比較したりすることはそもそも難しいものです。

しかし、研究者は、これって愛情の差だよね?という根拠を、
誰もが納得するような形で示すことが求められるのです。

それを可能とするのが、
具体的な手続きによって、抽象的な概念を定義する、
操作主義という考え方なのです。


ただし実際には、皆さんもお感じのとおり、
「愛情」=「1日に来るメールの数」とは言い切れません。

「愛情」という言葉には、
もっと複雑な意味が含まれていて、
それが言葉の意味をあいまいにしているのですが、
操作的定義ではそれを切り捨てることになるからです。

操作的定義は、目に見えない概念に、
手にとって研究するための形を与える、
という意味で有効な手段です。

ただし、研究結果から何を読み取り、
どんな意味を与えるかは、結局はあいまいな世界に住む、
我々自身なのだといえるでしょう。


【Q3】心理学の限界への反論についての問題

前回は心の歴史図から読み取れる心理学の限界について解説した。
前回の主張に反論する場合、もっとも適切な主張はどれか。
次の選択肢から選びなさい。

 ===============選択肢==================

  a. その人の悩みを理解しなければ、問題は解決しない。
  b. その人自身を問題にせず、たとえば行動の変容のみでも問題は解決する。
  c. DSMの診断基準にしたがえば、精神障害への適切な処置が可能である。
  d. 問題の解決は、人格的成長の一部に位置づけられる。

 ====================================

正解は、
    【 b. 】…たとえば、身体や法律問題だけを扱う整体師や弁護士でも、
          このようなかかわりを持つことは可能です。

 ※ この問題はかなり解釈の幅が広いため、
   正答よりも、自分だったらどう反論するか、
   を念頭において考えてみてください。

前回エッセイ号の最後では、

   研究対象としての諸概念の集合体ではなく、
   全体として生きる人間を対象とするとき、
   我々は心理学の限界を、どのように補うことが出来るのか。

という点を、宿題として問題提起しました。

人間を相手にする、ということは、
風邪やLDなど、問題をあいてにすることとは違います。

厳密に定義され、
同じ条件の中でだけ比較され、
積み重ねられた概念と異なり、
人間は、刻一刻と変化する世界の中で、
常に異なる状況を生きている存在です。

ですから問題に対しても、
DSMのような分類を当てはめる以外に、
その人自身や、
その人の人生という全体の中に位置づけ、
そこからその人へのかかわりや援助を考えようとする
視点が必要になるのです。

ただ、当事者にとって、問題をこれまでの人生や、
自分自身に結び付けることは、
自分の問題に正面から直面することでもあります。

このことは、多くの場合、当事者に抵抗を生みます。

その意味では、個人と切り離された問題として、
部分的に扱うことが有効な場合の方が多いのも事実です。

たとえば、子どもに学習障害があることが分かることによって、
子ども自身と勉強の苦手さを、切り離して考えることができます。

この場合、勉強の苦手さを子ども自身に結びつけることは、
本人の努力不足などの、精神論におちいりがちになるでしょう。

お互いに長短のあるかかわり方ですが、
逆に、どちらか一方に偏らないことで、
より有効な援助が出来る可能性があります。

ここで考えられるのは、たとえば、
カウンセラーは全体的な視点からクライエントの問題を眺め、
アセスメントを行いながら、
実際の相談においては、なるべく具体的な問題のみを扱っていく、
という方法です。

そのため、選択肢に挙げられた反論の中では、
問題を個人から切り離して捉えようとする、
【 b. 】【 c. 】の選択肢が残ることになります。

その中で、【 c. 】のDSMによるアセスメントは、
個人や、人生といったその人そのものを物語る視点を、
一切排除した形で分類をするためのシステムです。

カウンセラーがその人個人に対するまなざしを持ち、
問題の背景や、その意味を受け取りながらかかわるのなら、
その人自身を問題にする必要はない、といえるでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 12月6日(火)にお送りする予定です。
※ 次週11月29日(火)は休刊です。特別号が配信されることがあります。

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【参考文献】
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● 心療内科 池見酉次郎著 1963 中央公論社 

● 実践心理データ解析 問題の発想・データ処理・論文の作成 田中敏著
1996 新曜社

● 人間科学序説 ジャン・ピアジェ著 波多野完治訳 1970 岩波書店

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【編集後記】
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前回のエッセイ号が、しめくくりということで、
どちらかというと考え方についての内容であったため、
前回の問題号は、なかなか設問を考えるのが大変でした。

意見系の問題は、正解不正解の判断がはっきりしない
場合が多いので、誤解や解釈の余地を生まず、
しかも勉強し、考えなければ解けない良問を作るのが難しいのです。

ただ、心理学の基礎知識を問う大学院入試に対して、
臨床心理士としてのあり方をも含めて問わなければならない、
臨床心理士認定試験では、意見系の選択肢問題が数多く出題されています。

以前は悪問が多いと愚痴をこぼしていたこともありましたが、
いざ自分が問題を考える立場に立つと、
問題作成者の先生方のご苦労が身にしみるというものです。

今年の一次試験は10月に終わり、
これから二次試験が行われます。

来年はどのような臨床心理士たちが巣立っていくのでしょうか。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年11月15日火曜日

【Clip!アカデミー】第23回:問題号「心の歴史図における論点」

【Clip! アカデミー】 第23回2005/11/15
第2週 問題号「心の歴史図における論点」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【それでは問題です】
        【Q1】心身二元論の影響についての問題
        【Q2】操作的定義についての問題
        【Q3】心理学の限界への反論についての問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
 ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

  ※ これからは不定期で、
    皆さんに役立つ大学院情報も合わせて掲載していきます。
            ↓第一弾はこちら↓

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【大学院情報】 東京国際大学大学院 臨床心理学研究科
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  第5回 東京国際大学 臨床心理学研究科 説明会
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  11月26日(土)13:00~  詳細は↓↓こちら↓↓から
     http://k.d.mail-magazine.co.jp/t/k9wv/50j36610g8rikebpvs
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1)【前回のまとめ】
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● 前回エッセイ号「心の歴史図における論点」はコチラ↓

http://k.d.mail-magazine.co.jp/t/k9wv/50j37610g8rikebpvs

● その他バックナンバーはコチラ↓

http://k.d.mail-magazine.co.jp/t/k9wv/50j38610g8rikebpvs


これまで、以下の心の歴史図を中心に、
心理学の歴史について検討を行ってきました。

前回は、心の歴史図の締めくくりとして、
そこから見えてくる心理学の特徴と限界について
検討を行いました。

今回の問題号では、
その点についての考えを深めてもらうための問題を3問用意しました。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

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2)【それでは問題です】
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【Q1】心身二元論の影響についての問題

デカルト以来、精神と自然は切り離して考えられるようになった。

現代医学の進歩は、主としてこのような世界観のもとで進歩してきたが、
二元論的思考と対立する医学上の進歩を、
以下の選択肢から選びなさい。

  ====選択肢=====
   
   a. 外科手術の発展
   b. 病原菌の発見
   c. 心療内科の設立
   d. 医薬品の開発

  ============


【Q2】操作的定義についての問題

科学があいまいさを容認することができないのは、
研究対象についての仮説を科学的に検証するためには、
研究対象を具体的に定義づけなければならないためである。
これを、操作的定義と呼ぶ。

操作的定義の説明のうち、
不適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。

 =============選択肢=================

  a. 物理学者のブリッジマンが提唱した考え方から来ている。
  b. 心理学研究室を設立した当時のヴントらに大きな影響を与えた。
  c. 具体的な手続きによって研究対象を明確にすることをさす。
  d. たとえば「愛情」を、「1日に来る恋人からのメールの数」という形
    に置き換えることである。

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【Q3】心理学の限界への反論についての問題

前回は心の歴史図から読み取れる心理学の限界について解説した。
前回の主張に反論する場合、もっとも適切な主張はどれか。
次の選択肢から選びなさい。

 ===============選択肢==================

  a. その人の悩みを理解しなければ、問題は解決しない。
  b. その人自身を問題にせず、たとえば行動の変容のみでも問題は解決する。
  c. DSMの診断基準にしたがえば、精神障害への適切な処置が可能である。
  d. 問題の解決は、人格的成長の一部に位置づけられる。

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【次回配信】
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   次回 【解説号】… 11月22日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
  2003 有斐閣 

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 心を名づけること 上・下 心理学の社会的構成 カート・ダンジガー著
  河野哲也監訳 2005 勁草書房

● 実践データ解析 田中敏著 1996 新曜社 

● わかりたいあなたのための現代思想・入門 小阪 修平 志賀 隆生 
  竹田 青嗣著 2000 宝島社

● 人間科学序説 ジャン・ピアジェ著 波多野完治訳 1970 岩波書店


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【編集後記】
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半年ほど前から作成していたのですが、

● 臨床心理士指定大学院 DATA BOOK 

本日、講座受講生の方々への発送(PDF形式)が終わりました。

例によって無料なのですが、
内容はちょっとしたものです。

時間も労力もたっぷりかかっているというか。

全国の大学院について、
就職率、合格率、実習先など、
書店で買える既存のデータブックにはない
生の情報がたくさんつまっています。

今回の依頼状には、あえて聞きづらい質問項目も含め、
大学院の担当者の方々に返答していただきました。

学校側にとってデリケートな情報というのが、
受験生にとっては、本当に知りたい情報であることも多いからです。

その分、質問事項の選定から、
大学院へのご依頼、DATA BOOK の編集にいたるまで、
細心の注意と、熱意を込めて準備を進めてきました。

受講生の皆さんには、
大学院の受験担当者の方々や、講座スタッフの、
本気が感じ取っていただけるとうれしいですね。

講座スタッフの皆さん、お疲れ様でした。


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2005年11月8日火曜日

 【Clip! アカデミー】第22回:エッセイ号「心の歴史図における論点」

【Clip! アカデミー】 第22回2005/11/8
第1週 エッセイ号「心の歴史図における論点」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【学問としての心理学】
            3)【再度、心の歴史図をよく見る】
            4)【置き換えと細分化】
            5)【細分化はどこまで可能か。】
            6)【曖昧なもの】
            7)【臨床はどこから学ぶのか】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
 ※【今回はこちら!】 第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


さて、2ヶ月にわたり心の歴史図を通して心理学史を検討してきましたが、
今月でいよいよ終わりです。

今まで、心の歴史図を立てる(第16回)→詳しく解説する(第19回)
というプロセスを経てきたので、
今回のエッセイ号では、心の歴史図を通して見えてくる
心理学のあり方、その限界
について検討していきましょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【学問としての心理学】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


心理学とは、大まかに言えば、人間の心を研究する学問です。

もちろん、ここまでClip!アカデミーを読まれてきた皆さん、
もしくは、心理学を勉強している皆さんは、
そのような大雑把な言い方では心理学を言い尽くせないし、
単に誤解を与えてしまうだけではないか、
という収まりの悪さを感じるようになっているでしょう。

むしろ、
“人間の心”なるものの独自な捉え方そのものが、
心理学の学問としての独自性なのだということができます。

だからこそ、
本メルマガでも今まで心理学は心をどう捉えるか、
というテーマを検討してきたのでした。

なぜ、いまさらこのような話を持ち出すのかというと、
学問とは、どのようなものであれ、
最終的には、
人間、もしくは人間の心を対象にしている、といえるからです。

学問は、そもそもどんなものでも、同じものを対象にしています。

異なるのは、それに至る道筋=アプローチであるといえるでしょう。

同じ対象に至るために、無数の道筋があり、
また、ひとつの道筋でよしとされない理由は、
どのようなアプローチにも、限界があるからです。

それでは、心理学の限界はどこにあるのでしょうか。

今回は、心の歴史図を通じて、その点を検討していきます。


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3)【再度、心の歴史図をよく見る】
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● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================

心の捉え方が、心理学の誕生から発展するにしたがって、
どのように変化していったかをたどっていくと、
様々な連想が浮かんできます。

この図だと、たとえば、時代を経るごとに、
段々と【意識】の側面は、端っこに追いやられていくようですし、
新しい心の捉え方は、【意識】と【身体】の境界領域を、
いくつにも分割するように分かれていっているように見えます。

ここでは、その中から、
17世紀以前から、20世紀後半へかけて、
時代が進めば進むほど、【意識】の側面は段々脇へ追いやられていく、
というポイントに絞って取り上げてみましょう。

このことは、心理学のどのような性質と、限界を示しているのでしょうか。

そして、それは心理学にどのような未来を示唆しているのでしょうか。


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4)【置き換えと細分化】
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学問としての心理学は、
あいまいで捉えどころのない“心”に名前をつけて、
操作可能な、より具体的な概念に置き換えることから始まりました。

例えば、デカルトは、人間を機械に置き換えようとしました。

人間と機械をイコールで結べれば、
人間を機械として扱うことができます。

具体的な概念に置き換えることで、
あいまいで捉えどころのないものが、操作可能になるのです。

この考え方は、医学や生物学の分野において、
大きな威力を発揮しました。

心理学の努力は常に、
“心”の、それまで捉えられなかった部分を、
なんらかの具体的な概念に置き換えることに関わっています。

それでまだ捉えきれなければ、
その部分を、また別の概念で、置き換える。

そうして、置き換えられた部分は“心”から分化されていき、
そのプロセスのくり返しが、心の歴史図に見られる構造を形作ってきたと
考えることができます。


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5)【細分化はどこまで可能か。】
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このような置き換えと細分化のプロセスは、
どこまで可能なのでしょうか。

心の一部に、例えば「行動」という具体的な名前をつけ、
その働きを説明することが出来れば、
その一部分は、心以外のものとして論じることが可能になります。

つまり、機能として説明できるものは、概念として分化できるのです。

もし、これ以上細分化はできない、
という限界があるとしたら、
それは“心”の中でも、名付けようのない、
機能としては説明不可能な特徴であることでしょう。


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6)【曖昧なもの】
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ここで、心の歴史図をふり返ってみましょう。

心の歴史図では、デカルト以前は、
心と身体はおろか、我々の世界のほとんどは、
科学的な諸概念によって説明されないあいまいな世界でした。

あいまいさは、近年に至るまで、
科学が扱えない最も苦手な領域として、避けられてきました。

心理学においても、それは同様です。

心の歴史図において、
心理学が、そもそも【意識】の科学として出発したにもかかわらず、
結果的に、客観的に説明することが出来ない、
あいまいなものとして、脇に追いやられていく過程を見ることが出来ます。

そもそも、
デカルトの物心二元論においては、
機械で置き換えることができた部分を、身体、
それができなかった部分を、意識と分けた、ということができます。

もともと【意識】という概念は、
説明できないもの、課題として先送りされる、目の上のたんこぶとして
スタートしました。

それは、今でも我々を、
先へ進ませようとしているのです。


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7)【臨床はどこから学ぶのか】
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これまでの検討を振り返ると、
心を、分かるところと分からないところに分け、
分かるところだけを取り出して、
分からないところを減らしていこうとするのが、
心に対する、心理学の戦略であるといえるでしょう。

ただ、
この方法によって得られた理解は、
生身の人間に、どうやって当てはめればいいのでしょうか。

我々人間は、
ひとつの全体であって、
細分化された様々な側面の寄せ集めではありません。

また、心理学の戦略では、
常に心の中に、分からない部分が残るにもかかわらず、
それが心理学では扱えないがゆえに、
ないものとして扱われる危険があります。

つまり、

研究対象としての諸概念の集合体ではなく、
全体として生きる人間を対象とするとき、
我々は心理学の限界を、どのように補うことが出来るのか。

これが、心理学を生身の人間に応用する、
臨床心理学における課題であるといえるでしょう。

皆さんも考えてみてください。

もちろん、本メルマガでも、
我々なりの答えを、これからも折に触れて示していきたい、
と考えています。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 11月15日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
  2003 有斐閣 

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 心を名づけること 上・下 心理学の社会的構成 カート・ダンジガー著
  河野哲也監訳 勁草書房

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【編集後記】
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今回は、これまで半年ほどのあいだ
Clip!アカデミーを配信してきて、
特に思い入れの強い部分です。

その分、我々の考える心理学であり、
いつもより、幾分偏った意見かもしれません。

ただし、本メルマガは、
決して自分たちの主義主張の場ではなく、
自分で勉強し、考えようとする皆さんのやる気を、
応援するための場です。

ですから、答えを提示する気はありません。

あるいは、答えを持っているふりをする気もありません。

歴史を引き受け、
そこから導き出される課題を、
どう乗り越えるか。

これからも、メルマガの中で
いっしょに考えていければうれしいと思います。



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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年10月25日火曜日

 【Clip!アカデミー】第21回:解説号「心の歴史図を解説する」

【Clip! アカデミー】 第21回2005/10/25
第3週 解説号「心の歴史図を解説する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/


 
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題の解説】
           【Q1】実験心理学の時代に関する問題
           【Q2】行動主義の時代に関する問題
           【Q3】ゲシュタルト心理学の時代に関する問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
  ※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
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現在のClip!アカデミーでは、
心の歴史図(仮)を用いて、心理学史を少し違った視点から、
取り上げる試みをしています。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================

エッセイ号では、
心の歴史図の各年代を、それぞれ個別に解説していきました。

そして問題号では、
心理学史の中でも特に取り上げられることの多い、

◆ ヴントの実験心理学の時代
◆ ワトソンの行動主義の時代
◆ ヴェルトハイマーらのゲシュタルト心理学の動き

について、もう少し詳しく補足的な問題を出題しました。

解説号の今回は、以上の3問について、
心理学史の流れから解説していきたいと思います。

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2)【問題の解説】
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【Q1】実験心理学の時代に関する問題

実験心理学を創始したヴントの影響を示した以下の文章において、
適切な文を○、不適切な文を×とした場合、
選択肢から、正しい○×の組み合わせを選びなさい。

1)アメリカに心理学を広めた
  スタンレー・ホール(Hall,G.Stanley.)、J・M,キャッテル(Cattel)、
ティチュナー(Tichener,E.B.)は、ヴント研究室の出身である。
2)ヴントの有名な言葉に、
  「心理学の過去は長いが歴史は短い」という言葉がある。
3)クレペリン(Kraepelin,E.)とヴントは同時代人である。
4)ヴントは、ヘルムホルツ(Helmholtz,H.L.F.von)のもとで助手をしていたことがある。
5)ヴントによって初めて出版された心理学の専門紙の名前は、
  「哲学研究」だった。

   ========選択肢========

       1) 2) 3) 4) 5)

    a.  ○  ○  ○  ×  ×
    b.  ○  ×  ○  ○  ○
    c.  ○  ○  ×  ×  ○
    d.  ×  ×  ○  ○  ○

   ===================

正解は、 
       【 b. 】 
…2)は、エビングハウス(Ebbinghaus,H.)の言葉です。

今回の選択肢は、トリビアというべきもので、
実際に知らなくとも試験や研究に差しさわりがあるものではありません。

ただし、周辺の細かなエピソードは、
その時代に対する我々の興味を膨らませてくれます。

皆さんも、面白い心理学史を目指して、
意外なエピソードをあさってみてはいかがでしょうか。

以下、それぞれの選択肢について。

スタンレー・ホールは、どちらかというと教育学で有名ですが、
アメリカ心理学会の立役者であり、初代会長を勤めました。

彼らは、留学など何らかの形でヴントの研究室にかかわりを持っています。

当時は、心理学の博士号を取れる研究室が
アメリカになかったため、多くの学生が、
学位を取るためにドイツに留学していたのです。

また、精神医学における精神疾患理解の基礎を築いたクレペリンは、
ヴント研究室でも心理学実験を行っていたといわれます。

新しい学問の確立には、
その分野での研究論文を掲載する雑誌の存在が欠かせませんが、
ヴントがはじめて発行した心理学雑誌は、「哲学研究」という名前でした。

のちに「心理学研究」に改称されています。


【Q2】行動主義の時代に関する問題

以下にあげた、人名と理論の組み合わせのうち、
もっとも適切なものを、選択肢から選びなさい。

1)ワトソン(Watoson,J.B.)2)ハル(Hull,C.L.) 
2)スキナー(Skinner,B.F.) 4)トールマン(Tolman,E.C.)

A オペラント条件付け(opernt Conditioning) B 認知地図(cognitive map)
C 動因低減説(drive reduction theory) D アルバート坊や

  ======選択肢=======
       1) 2) 3) 4)
 
    a.  D  C  B  A
 
    b.  D  C  A  B
 
    c.  D  B  C  A
 
    d.  B  A  D  C

   ================

正解は、
     【 b. 】…BとCを取り違えなければOK

行動主義は、心理学の発展の中で一時代を築き、
最も成果を挙げてきた心の捉え方のひとつといえるでしょう。

初期においては、心や他の構成概念の否定と、
人間の行動を徹底的にS(刺激)-R(反応)の連鎖に解体しうる
という理念によって、心理学研究に新しい領域を開きました。

その後、ハルやトールマンなど、さまざまな立場の登場によって、
その理念は背景に退きましたが、今でも心理学研究の基礎のひとつとして、
多くの研究に、大きな影響力を与え続けています。

アルバート坊やを対象にした嫌悪条件付けの実験は、
学習理論によって、人間の行動を操作することができることを証明し、
それまでの主体的な人間観に大きな衝撃を与えました。

ただ逆に、ワトソンは人間を徹底的な環境の産物と考えたため、
行動主義の考え方は、「教育」というものの価値を高めたともいえます。

スキナーも、教育に大きな関心を示していました。

本メルマガの第2回・第3回でもご紹介した、
彼のプログラム学習や、行動形成の理論は、
今でも教育現場に広く取り入れられています。

特に、障害児教育の現場においては、
受容的・分析的な立場よりも、クライエントの求めるものを
提供しやすいようです。

一方で、ハル、トールマンは、
刺激(S)と反応(R)の間に、媒介変数・中間変数である
有機体(organism)を置き、
S-O-Rの図式を通して、人間を捉えようとしました。

ハルの取り入れた媒介変数のひとつが、動因であり、
トールマンのそれが、認知地図です。

動因や認知といった、観察可能な刺激や反応の中間に仮定される概念は、
初期の行動主義が、“心”と同じく存在しないものとして、
退けたものです。

そのため、彼らは新行動主義と呼ばれました。

この流れは、のちに認知心理学につながっていきます。


【Q3】ゲシュタルト心理学の時代に関する問題

ゲシュタルト心理学と関わりのある以下の4人の
心理学者のうち、仲間はずれと考えられる人物を、
一人選びなさい。

   =====選択肢=====

    a. ケーラー(Kohler,W.)
    b. フェスティンガー(Festinger,L.)
    c. レヴィン(Lewin,L.)
    d. ヴェルトハイマー(Wertheimer,M.)

   =============

正解は、
     【 b. 】…初学者ほど答えやすい問題かもしれません。

ゲシュタルト心理学は、まずはじめはヴント流の構成主義、
のちには当時全盛を誇った行動主義へのアンチテーゼであり続けました。

その主張は、科学全般に特徴的であった、
原子論、還元論への抵抗でもありました。

すなわち、自然現象のすべては、
究極的な要素、たとえば“原子”のような存在に分解し、
還元することはできないし、
また、そのような“原子”からすべての現象は解明することができない、
という主張です。

構成主義における“原子”が、
内観によって特定された単純感情、単純感覚であり、
行動主義におけるそれが、SとRでした。

それに対し、ゲシュタルト心理学では、
たとえばゲシュタルトのような、現象の持つ全体性、
還元不可能性を重要視しました。

この主張は、のちに様々な形で心理学に影響を与えていきますが、
ここでは、ゲシュタルト心理学から、社会心理学への流れを指摘したいと思います。

4人のうち仲間はずれとして取り挙げたフェスティンガーですが、
彼は教科書では、ゲシュタルト心理学者というより、
認知的不協和理論を提唱した
社会心理学者として紹介されていることが多いと思います。

ところが、彼はレヴィンの初期の弟子であり、
ゲシュタルト心理学から大きな影響を受けていました。

実際、シャクター(Schachter,S.)やケリー(Kellet,H.)といった
有名な社会心理学者も、レヴィンの下で学んだ人々です。

彼らは人間の社会活動を、
行動主義のように刺激と反応に還元して考えるのではなく、
個人間の認知や緊張関係から導き出されるものと考えました。

フェスティンガーは、知覚から、
ケーラーは学習に、
レヴィンは行動や動機付けに、
要素に還元できないところから人間を規定する
“場”の存在を感じ取っていましたが、
フェスティンガーは、それを人間の社会活動の場に広げたといえるでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 11月8日(火)にお送りする予定です。
   ※ 11月1日はお休みです。特別号が配信されることがあります。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
  2003 有斐閣

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

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【編集後記】
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今回のQ1のトリビア的情報は、
上のふたつの文献から持ってきました。

どちらも、初学者が受験勉強のために使う最初の参考書としては
使いにくいかもしれませんが、
心理学史自体についての考え方や、
歴史を、心理学者たちの物語として捉えた文献の中では、
とっつきやすく、面白いものだと思います。

よく言われることですが、
やはり参考書は、できるだけ幅広いモノに当たるのがいいでしょう。

特に、まえがきを読んでみることをお勧めします。

その文献の編者が、どんな思いとコンセプトでその文献を
作成したかが、にじみ出てくるためです。

Clip!アカデミーでも、
第1回~第3回を中心に、前回のまとめや編集後記にも、
本メルマガのコンセプトや考え方を掲載しているので、
ご覧になってみてください。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年10月18日火曜日

【Clip!アカデミー】第20回:問題号「心の歴史図を解説する」

【Clip! アカデミー】 第20回2005/10/18
第2週 問題号「心の歴史図を解説する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

 
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【それでは問題です。】
           【Q1】実験心理学の時代に関する問題
           【Q2】行動主義の時代に関する問題
           【Q3】ゲシュタルト心理学の時代に関する問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
 ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
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現在のClip!アカデミーでは、
心の歴史図(仮)を用いて、心理学史を少し違った視点から、
取り上げる試みをしています。

● 心の歴史図
===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================

前回エッセイ号では、
心の歴史図の各年代を、それぞれ個別に解説していきました。

今回の問題号、次回の解説号では、
心理学史の中でも特に取り上げられることの多い、

◆ ヴントの実験心理学の時代
◆ ワトソンの行動主義の時代
◆ ヴェルトハイマーらのゲシュタルト心理学の動き

について、もう少し詳しく捕捉的な説明をして行きたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【それでは問題です。】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】実験心理学の時代に関する問題

実験心理学を創始したヴントの影響を示した以下の文章において、
適切な文を○、不適切な文を×とした場合、
選択肢から、正しい○×の組み合わせを選びなさい。

1)アメリカに心理学を広めた
  スタンレー・ホール、J・M,キャッテル、ティチナーは、
  ヴント研究室の出身である。
2)ヴントの有名な言葉に、
  「心理学の過去は長いが歴史は短い」という言葉がある。
3)クレペリンとヴントは同時代人である。
4)ヴントは、ヘルムホルツのもとで助手をしていたことがある。
5)ヴントによって初めて出版された心理学の専門紙の名前は、
  「哲学研究」だった。

   ========選択肢========

       1) 2) 3) 4) 5)

    a.  ○  ○  ○  ×  ×
    b.  ○  ×  ○  ○  ○
    c.  ○  ○  ×  ×  ○
    d.  ×  ×  ○  ○  ○

   ===================


【Q2】行動主義の時代に関する問題

以下にあげた、人名と理論の組み合わせのうち、
もっとも適切なものを、選択肢から選びなさい。

1)ワトソン 2)ハル 3)スキナー 4)トールマン

A オペラント条件付け B 認知地図
C 動因低減説 D アルバート坊や

   ======選択肢=======
       1) 2) 3) 4)
 
    a.  D  C  A  B
 
    b.  D  C  A  B
 
    c.  D  B  C  A
 
    d.  B  A  D  C

   ================


【Q3】ゲシュタルト心理学の時代に関する問題

ゲシュタルト心理学と関わりのある以下の4人の
心理学者のうち、仲間はずれと考えられる人物を、
一人選びなさい。

   =====選択肢=====

    a. ケーラー
    b. コフカ
    c. レヴィン
    d. ヴェルトハイマー

   =============


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【解説号】… 10月25日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 2003 サトウタツヤ 高橋美樹 著 有斐閣アルマ


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【編集後記】
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Clip!アカデミーも、ついに通算20回を数えることになりました。

時間にして、約半年になろうとしています。

細かなミスや、手違いなどもあり、
ときに読者の皆さんに謝罪などしつつも、
ここまで来られたことを嬉しく思っています。

第1回から読まれている方々の中には、
そろそろ大学院の秋受験が一段落、
というかたも多いでしょうね。

受験を終わっても読んでもらえるようなメルマガを目指して、
Clip!アカデミーは、これからも進歩していきたいと
考えています。

これから受験勉強を始める方にも、
これまで受験勉強をしてきた方にも、
受験の予定はないけれど、心理学に関心のある方にも、
何かを持って帰ってもらえるメールマガジンを。

Clip!アカデミーをこれからもよろしくお願いいたします。




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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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2005年10月11日火曜日

【Clip!アカデミー】第19回:エッセイ号「心の歴史図を解説する」

【Clip! アカデミー】 第19回2005/10/11
第1週 エッセイ号「心の歴史図を解説する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



  
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【17世紀以前と、17~19世紀後半】
            3)【20世紀前半:1】
            4)【20世紀前半:2】
            5)【20世紀前半:3】
            6)【20世紀後半】
            7)【あたらめて、心の歴史図を見る】
            8)【心の歴史図の検討点】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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  ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

16回から17回までの3回では、
心理学史図としての視点を立ち上げました。


心理学史図は、【魂=精神=意識】の17世紀以前から、
【意識 潜在意識 認知過程 知覚 身体 行動】の6つの側面が
出揃う20世紀後半までの、6つの年代から成っています。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================

今回から始まる第7サイクルでは、
心理学史図の各年代を、もう少し詳しく解説していきましょう。


※これから心の歴史図を検討していくにあたり、
心理学史を参照しながらの作業になると思います。

しかし、本メルマガでは、
あくまで心理学史の粗雑なダイジェストにはならないように、
気をつけたいと思います。

心理学史は、各自基本的な概論書・教科書から始めて、
勉強を進めてください。

ここでは、心理学を歴史的に眺めるときに、
無味乾燥な人名や年号に押しつぶされないような、
関心の持ち方として、心の捉え方の歴史について論じていたいと思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【17世紀以前と、17~19世紀後半】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】


科学が台頭してくるまでの一番上の1)では、心的過程は、
【魂→精神→意識】で表されています。

科学が発達する以前の世界観においては、
我々は、科学に還元しきれない心の在り様を取るか、
機械のように完全に組み合わされ、合理的な法則によって全てを
説明できる世界の在り様を取るか、
という難しい選択を迫られるまで、まだいくばくかの猶予がありました。

人間の身体や、物質の在り様も、
魂や精神の在り様と、分かちがたく結びつき、
いずれ、同じ地平で論じることが出来ると考えられていました。


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】


17世紀から19世紀後半にかけては、
心的過程は、分裂し、【意識】と【身体】二つの側面から
説明されるようになります。

【身体】は、精巧な機械として科学の対象になり、
医学や生物学の発展によって、その構造や成り立ちが、
解明されていきます。

しかし、機械として説明しきれなかった部分である【意識】は、
科学的に捉えられることのないまま、
哲学の領域にとどまりました。

ここでいうデカルト的【意識】と、
心理学的【意識】とは、かなり異なるものといえます。

デカルト的【意識】を、科学的に捉えようと夢見たのが、
フェヒナーであり、ヴントでした。

ヴントは、【意識】を、我々が直接感じられる感覚や感情の
積み重ねによって構成された、構造体と考えます。

そして、フェヒナーの精神物理学的実験と、
自らの意識を内観し、それをありのままに報告し、
分析することを通して、科学的に捉えることを目指しました。

人間の中でも、【意識】を研究対象にする学問、
心理学の誕生です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【20世紀前半:1】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】


ただ、心的過程に関心を持つ学問は、
決して心理学だけではありませんでした。

むしろ、ヴント心理学の限界は、
他の学問における心的過程への関心を、
心理学の中に引き入れていくことになりました。

それにしたがって、心の捉え方も、
様々なに多様化していくことになります。

20世紀前半においては、
ヒステリー症状や催眠療法といった医学的現象に、
人間の心的過程への関心の高まりが見られます。

フロイトは、ヒステリーや催眠などの研究や臨床実践を通して、
それまでの心的過程の捉え方である、【意識】と【身体】の間にも、
広大な心の領域が広がっていることを確信します。

フロイト以降、
【意識】と【身体】の間に、
潜在的な、もしくは自覚なき意識過程が存在する、
という心の捉え方は、現代に至るまで一般的なものになっていきます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【20世紀前半:2】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】


20世紀前半:1・2・3の3つの年代は、
ほとんど年表的には重なっており、順番をつけることが、
ためらわれるほどです。

言い換えると、
この時期に、心理学は、異なる心の捉え方を、
多数手に入れたということが出来ます。

細胞は激しく分裂・分化を繰り返し、
急激に成長しようとしていました。

その原因は、新しい学問であった心理学において、
ヴント的な心の見方(構成主義)や、捉え方(内観報告など)が、
限界を迎え、心の新しい捉え方を探っていたためです。

その中でも、もっとも力を持ち、
主流となったのは、【行動】という捉え方です。

もはや、心的過程そのものを捉えることを放棄した
行動主義は、心的過程の結果として表出された【行動】、
それも、外的刺激に対する身体的反応と、
両者を結びつけるための単純な法則のみを、
心の在り方として許容しました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【20世紀前半:3】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】


ヴント流の構成主義や、行動主義に批判を加え、
心の捉え方として、また異なる視点を付け加えたのが、
ゲシュタルト主義者たちです。

彼らは、錯覚を初めとする知覚の性質を研究する中で、
知覚を含む心的過程には、単なる要素や、刺激と反応の間の、
機械的な結びつきだけでは説明できない性質があることを、
主張しました。

すなわち、今我々が体験している世界は、
単一で、常に全体として変化していきます。

これは、心的過程のどこかに、
無数の刺激を、ひとつの世界に統合するプロセスがあることを、
示しているようでした。

【知覚】は、感覚器という物理的・化学的機械から生じるという意味では、
【身体】に近く、また、知覚している本人にしか、
体験できない、という意味では、主観的な【意識】に近い、
という、独特の位置にあります。

それは、物質的な側面を持ちつつ、
精神的な現象が、【知覚】です。

【知覚】は、ひとつに統合されたものとして成立し、存在します。

それは常に変化していて、決して1つの機械のように、
変わらない構造を保ち続けることはないのです。

心のこの性質のことを、彼らは【ゲシュタルト】と呼びました。

この性質は、今では“システム”という捉え方の一部として、
心理学に影響を与え続けています。

20世紀前半の時代に見られた3つの心の捉え方は、
同時代に出てきたため、政治的にも、
お互いの捉え方を牽制しようとする歴史を持っています。

ただ、現代においては、
【行動】も、【ゲシュタルト】も、
ともに心理学における心の捉え方の、ひとつの側面として、
並列され、許容するのが、一般的な立場です。


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6)【20世紀後半】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

       【         魂→精神→意識         】
       【    意識     】【     身体     】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
       【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
       【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】


さて、心の捉え方が、
歴史的にどのように移り変わり、
多様化してきたかを検討してきましたが、
いよいよ、認知心理学の登場です。

【認知過程】という心の捉え方は、
心理学に、実に多くの変化をもたらしました。

特に重要なのは、
心的過程を、他の側面を許容しうる形式で、
機械論的な枠組みの中に取り込んだことです。

そこで有効だったのが、
情報処理技術の発達による、コンピューターの比喩です。

コンピューターは単なる機械ですが、
理論上は、あらゆる演算が可能なはずであり、
それは、人間の心的過程の演算も可能ということになります。

その仮説は、人間の心的過程とは、
そもそもそうした情報処理のプロセスのことなのではないか、
という結論を導きます。

【意識】と【身体】の間にあるものが、
こうした情報処理のプロセス、【認知過程】である、
と考えると、【ゲシュタルト】という側面も、
認知過程の一部と考えることが可能であり、
潜在意識も、自覚的にアクセスできない認知過程として、
捉えなおすことが出来るのです。

しかも、こうした心の捉え方は、
もとはコンピューターなど、工学的な捉え方から生じているので、
科学的なアプローチを容易にします。

こうして、20世紀後半には、
【認知】という心の捉え方は、心理学者の多くを魅了することになります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7)【あたらめて、心の歴史図を見る】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


以上、心の歴史図を大まかに追ってきました。

あたらめて、
心の歴史図の全体を眺めてみてください。


===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

====================================


今まで検討してきた、
各時代の心の捉え方を、並べてみたとき、
全体としては、どのようなパターン、模様が浮かび上がってくるでしょうか。

筆者に思い浮かぶのは、
受精卵が、ひとつの細胞から、次第に分裂し、
複雑に分化していく様子です。

はじめは、シンプルだった心の捉え方が、
時代を経るにしたがって、
次第に分化し、複雑になっていきます。

これが、心理学をややこしくさせている一因かとも
思われるのですが、
心というものを仮定するにしても、ひとつの捉え方では捉えきれない、
様々な側面を持つ存在ないし概念なのだ、ということができるでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
8)【心の歴史図の検討点】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【認知過程】という心の捉え方が、
現代心理学において、いかに力を持っているか、
というところで終わりました。

しかし実際には、認知心理学さえあれば、あとの心理学、
ほかの側面はいらない、というわけではありません。

潜在意識と、認知過程は、
重なるところも多いと考えられますが、
はたして重複するのでしょうか。

特に、フロイト的無意識と、認知過程とは、
どのような位置関係にあるのか。

これは、拠って立つ部分がまったく異なるために、
一筋縄ではいかない問題です。

また、【意識】は、【認知過程】の一部なのか、
あるいは認知心理学から、説明可能か、という問題もあります。

この点については、次回のエッセイ号で、
あたらめて検討していくことにしましょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【問題号】… 10月18日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣 

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 試験にでる心理学 <一般心理学編> 山口陽弘 高橋美保 2001 北大路書房

● 現代心理学〈理論〉事典 2001 中島義明 編 朝倉書店

● 心理学群像 全2巻 末永俊郎 監修 2005 アカデミア出版会 


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【編集後記】
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今、大学院受験の方々は秋入試の真っ只中ですね。

講座の方でも、合格者の方々から、
喜びのご報告が来ています。

受験生の方々も、そうでない方々も、
長く勉強を続けるためには、
勉強を通して、物の見方が変わる、
という瞬間が大切だと思います。

Clip!アカデミーでも、そうした瞬間を、
皆さんと一緒に見つけていきましょう。



====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年9月27日火曜日

【Clip!アカデミー】第18回:解説号「心の捉え方の歴史」

【Clip! アカデミー】 第18回2005/09/27
第3週 解説号「心の捉え方の歴史」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題号の解説】
            Q1【パラダイムに関する問題】
            Q2【哲学に関する問題】
            Q3【生理学近辺の問題】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
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1)【前回のまとめ】
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今回は、問題号で取り上げた、
3つの問題についての解説を行う、解説号です。
==================================

前々回のエッセイ号から、

「心の捉え方の歴史」

すなわち、心の歴史図(仮)の検討が始まりました。

心理学における心の捉え方が、
歴史的にどのように変化・発展していったのか。

について、図式を立てて検討していきます。




● 心の歴史図(仮)
===========心的過程============|===外界====

↓【       魂→精神→意識            】
↓【    意識    】【     身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体 】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【   行動   】

===========================|==========

※ 図式についての解説の続きは、次回エッセイ号に続きます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【それでは問題です。】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】パラダイムに関する問題

科学史家のクーン(T.S.Kuhn)は、科学の在り方と発展の仕方を、
パラダイム(paradigm)という用語から説明している。
以下の記述の中で、もっとも不適当なものを選びなさい。

===============選択肢===================

 a. パラダイムとは、その時代の科学において支配的な、
   考え方の基本的枠組みのことを指す。
 b. 個々の研究や、研究者の教育、研究方法、対象の捉え方は、
   パラダイムに支配されている。
 c. パラダイムはひとつの学問、ひとつの時代にひとつしか存在しない。
 d. 支配的なパラダイムによって説明不可能な例外が積み重なると、
   それを説明可能な新しいパラダイムにとって変わられる。

=====================================

正解: 【 c. 】 → 人文科学・社会科学においては、
            単一のパラダイムに集約されない状態が続くことがあります。
            また、パラダイムを持つまでに至っていない
            (「パラダイム以前」)場合も在るとされます。
  
解説:

※ 心理学の前に、そもそも科学とは何か、
という問題意識も、頭の片隅に置いておきましょう。

   パラダイムという概念から、そもそも科学とは何か、
   その中でも自分が何に依拠しようとしているのか、
   それはどういう性質と、時代的背景、限界を持っているのか、
   などを考えてみるといいと思います。

   すでに特定の理論や学問を学んでいる人にとっては、
   それを相対化する視点として、重要な意味を持つ概念です。


クーンは、パラダイムという概念から科学史を論じることで、
それまで一般的だった、発見が積み重ねられ、ゆるやかに発展していく、
という科学観に大きな衝撃を与えたといわれています。

科学の発展も政治に似ており、
既存の価値観(パラダイム)が一気にひっくり返る、
科学革命(パラダイム・シフト)を通じて断続的に発展すると論じたのです。

心理学において有名なのは、
ボーリング史観と呼ばれるものです。

ボーリング(E.G.Boring)は、
アメリカにヴント流の心理学を持ちこんだ、
ティチナー(E.B.Titchener)の弟子であり、
「実験心理学史」(1929)の中で、心理学の成立を、
ヴェーバー→フェヒナー→ヴント→ティチナーという形で
説明した人物だとされます。

この流れは、今でも一般的な教科書で触れられる歴史ですが、
現在では、様々な形で、細部の見直しが始まっているようです。

そのため、初学者の皆さんは、
書店に行き、よい心理学の教科書を選ぼうとするとき、
すでにこの問題に深く関わっています。

教科書は、その時代の支配的なパラダイムの影響を受け、
また、そのパラダイムの正しさを権威付けるために用いられるためです。

この場合の”正しさ”とは、
今現在における、一般的な理解ということで、
普遍的な正しさのことではありません。

しかし、この一般的な理解を欠いている人は、
おそらく“心理学者としての”議論に加わることは出来ないでしょう。

だからこそ、大学院入試では、
受験者が、そうした一般的な理解を持っているか、
または、持ちうる人か、を問われるのです。

その意味で、考え方は二つあると考えられます。

まずよい教科書とは、
できるだけ特定の立場に偏らず、一般的な理解を前提に書かれたものです。

しかし、これは裏を返すと、その時代に支配的なパラダイムという
ことにすぎません。

そう考えると、
もうひとつのよい教科書とは、
現在“主流”、と呼ばれる価値観にも
慎重な立場を取り、そうした支配的な価値観を相対化してくれるような
視点を提供してくれるようなものでしょう。


【Q2】 哲学に関する問題

哲学は、心理学の源流の一つである。
以下の4つの思想は、哲学的論議の中から生じ、
心理学の中に今でも息づいている考え方である。

以下の選択肢の中から、説明としてもっとも不適切なものを選びなさい。

================選択肢==================

 a. 連合主義は、感覚によって生じる観念と観念の間の結びつきから、
   心理現象を説明する考え方である。 
 b. 経験主義は、人間の精神は始め白紙であり、
   経験を通して生じるものと捉えた。連合主義から生じた考え方で、
   ここでの経験とは観念と観念の連合を指す。
 c. 原子論は、人間の精神を、観念や感情など最小の単位(原子)から成り、
   また原子に還元可能な存在と考える。
 d. 機械論によれば、人間の行動は全て、
   物質的なメカニズムから生起すると考えられる。
   よって、心の存在を考えなくともメカニズムから人間を理解することが
   可能である。

=======================================

正解: 【 b. 】→ 前後関係でいうと、経験主義が連合主義から生じた、
           とは言えません。

解説:

※ 難しい問題。

   したがって、正解不正解よりも、基本的な○○主義、××論の整理として
   頭にいれておいてください。

   自分が今取り組んでいる理論は、上記でいうと何に当たるのか、
   どのような影響を受けているか、を考えてみると、
   理解が促進されると思います。

   また、心理学を学んでいる友人と実際に使ってみましょう。

   「○○理論は、あまりに機械論的で、抵抗がある」とか、
   「経験主義的に見ると、君の意見は××だね。」

   先の見えないつらい勉強の合間に、自分は勉強している、
   という気分が盛り上がってくると思います。

   その意味でも、使い勝手の言い言葉ではあります。

【 a. 】から【 d. 】の選択肢を年代順に並べると、
原子論が理論の成立としては最も古く、
科学が発展しだすと、機械論が、
続いて経験主義、連合主義が出てきたことになります。

原子論(atomism)の始まりは、
デモクリトス(Democritus)、その弟子のエピクロス(Epicurus)といった、
ギリシャ哲学の中に見ることが出来ます。

キリスト教の影響で一時忘れられますが、
ルネッサンスには再び再発見され、
物理学において原子仮説を証明する実験データが出てくることで、
その地位を不動のものとしています。

対立する考え方としては、全体論があります。

機械論(mechanism)を形にしたのはデカルト(R.Descartes)です。

デカルトの心身二元論がなぜ重要かといえば、
デカルトが、人間の身体を精巧な機械として考えた
機械論者だったにもかかわらず、
人間の全てを機械論では説明できないと考えていたからです。

二元論とは、そこから来ています。

キリスト教の時代には、
人間が生きているのは、機械的な仕組みではなく、
神に由来する“生気”の働きとして考える、生気主義が特徴でした。

また、“心”は観念の世界の現象であり、
機械論では説明できないと考えていました。

現代では、完全な機械論を容認しない場合、
生気主義に陥らずにどのように機械論的宇宙に、
“心”なるものを導入するか、が問題となっています。

そこでは、自己組織化や“創発(emergence)”といった、
個々の要素から大きなシステムが立ち上がって行く現象が
重視されてきています。

生まれたばかりの人間を、白紙(タブラ・ラサ;tabula rasa)といったのは、
イギリスの哲学者ロック(J.Locke)です。

イギリス経験主義(British empiricism)は、
アメリカにおける行動主義の成立に、
連合主義とともに大きな影響を与えました。

経験主義の中には、すでに知識が経験から生じるのならば、
経験同士がどのように結びついているのか、
という問題が内在していましたが、
それが、のちに哲学者ヒューム(D.Hume)らによって、
連合主義(Associstionism)という形に結実して行きました。

観念同士の連合というアイデアは、
感情や感覚の連合から意識が構成される、というヴントの構成主義や、
行動と反応の条件付けから、あらゆる心理現象が生じると考えた、
ワトソンの行動主義につながって行きます。

このように見て行くと、いずれの考え方も、
心理学の基本的なスタンスであり、前提に近いものであることが分かります。



【Q3】 生理学に関する問題

以下の4人は、ヴントが心理学研究室を立ち上げる前後に、
のちの心理学に大きな影響を与えた人物である。

A ヘルムホルツ B ウェーバー C ヨハネス・ミューラー D フェヒナー

研究上関係の深い人物同士の組み合わせとして、
もっとも適切なものを、以下の選択肢から答えなさい。

   ======選択肢======

    a. 【AとB】、【CとD】

    b. 【AとC】、【BとD】

    c. 【BとC】、【AとD】

    d. 【A、B、D】と、【C】

    e. 【A】と、【B、C、D】

   ===============

解答: 【 b. 】→ ヘルムホルツはヨハネス・ミューラーの弟子。
           ウェーバーはフェヒナーの同僚で元指導教官でした。

 ※ ウェーバー→フェヒナーという基本的な流れを
   つかんでいれば正解できる問題です。

ヨハネス・ミューラー(Johannes Muller)は、ドイツの生理学者。

神経を伝わっているのは神経エネルギーであり、
視覚画像や音そのものではないという、
特殊神経エネルギー説を提唱した人物です。

これを持って、実験生理学への道を開きました。

ヘルムホルツ(H.L.F.von Helmholtz)は、ミューラーとともに
特殊神経エネルギー説に関する実験に参加しつつ、
のちに、視覚や聴覚の研究を通して、
知覚における無意識的推理の概念を提唱しています。

知覚はそれが成立する時点で、
すでに経験や無意識的な推論の過程を通過している
というもので、のちのニュールック心理学や、
認知心理学を先取りしていました。

ウェーバーとフェヒナーの関係も、
ミューラーとヘルムホルツの関係に勝るとも劣らないほど、
重要なものだったようです。

ドイツの生理学者のウェーバー(E.weber)が、
重さの弁別実験を行い、
のちにウェーバーの法則と呼ばれる外的刺激と内的感覚の対応関係を
導き出したとき、ウェーバーはあまりその発見を重視していなかったようです。

その重要性に気付き、心理学が誕生するほどの
意味を与えたのが、ウェーバーの元学生で、
同僚だったフェヒナー(G.Fechner)です。

フェヒナーが考えていたのは、デカルトの提示した心身問題でした。

詩人でもあったフェヒナーは、
分断された心と身体とを、再びひとつのものとして捉える方法を
夢見、そのための方法として、精神物理学を考案しました。

ウェーバーの実験方法は、
つまり主観的である主観的な感覚というものを、
客観的な刺激に結び付けて数値化する方法であり、
それはすなわち、主観的な心理過程を、
科学的に研究する道を開くものだったからです。

ウェーバーの実験から、実に10年の歳月がたっていました。

余談ですが、ヨハネス・ミューラーと、フェヒナーは1801年生まれで
同い年でした。

ウェーバーの主著「触覚論」と、
ミューラーの「人体生理学ハンドブック」の初版発行は、
同じ1834年です。


流れをつかむためには、個々の業績や概念を暗記するよりも、
歴史的背景の中で展開した、
ダイナミックな人間ドラマに注目したほうが、
比べ物にならないほど身につきます。

簡単になれば、ミーハーになろう、ということです。


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 10月4日(火)にお送りする予定です。

※ 9月27日は休刊ですが、【特別号】が発行されることもあります。

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【参考文献】
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● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 試験にでる心理学 <一般心理学編> 山口陽弘 高橋美保 2001 北大路書房

● 心理学群像 全2巻 末永俊郎 監修 2005 アカデミア出版会 

● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣 


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【編集後記】
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今回は、解説号の解説のやり方に若干変更を加えてみました。

答えについての説明はシンプルにして、
関連する余談のほうが長くなっています。

もともと、単純に基礎知識の確認というよりも、
その問題を通して何を考えるか、という点を重視して
問題を作成しています。

いうなれば、皆さんに考えてもらうための、
「方便」なわけです。

よく「ウソも方便」といいますが、
ウソもうまく使うと、よいことのための道具になる
という意味で、仏教からきています。

もともとの「方便」は、悟りに至るための知識や
修行をさします。

つまり、目的のための手段が「方便」であって、
目的を達したあとは捨ててしまってよいもの、
捨ててしまうべきものとして捉えられているわけですね。

科学における「仮説」にも似たニュアンスがあって、
わざわざ捨てるために立てる「帰無仮説」というものがあります。

ここでの問題の位置づけは、いわば
仏教でいうところの「方便」なんですね。

皆さんにとっての「方便」は、受験勉強でしょうか。

ただ、Q1でも触れたように、一般的な理解は、
共通言語の役割も果たしますから、
ここをおろそかにすると、どんなに優れたセンスがあっても、
足腰が弱くて力を発揮できないなんてことにもつながります。

自戒も込めて、両方大切にしていきましょう。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年9月20日火曜日

【Clip!アカデミー】第17回:問題号「心の捉え方の歴史」

【Clip! アカデミー】 第17回2005/09/20
第2週 問題号「心の捉え方の歴史」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【それでは問題です。】
            Q1【パラダイムに関する問題】
            Q2【哲学に関する問題】
            Q3【生理学近辺の問題】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
 ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
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前回エッセイ号から、

「心の捉え方の歴史」

すなわち、心の歴史図(仮)の検討が始まりました。

心理学における心の捉え方が、
歴史的にどのように変化・発展していったのか。

について、図式を立てて検討していきます。



● 心の歴史図(仮)
===========心的過程============|===外界====

↓【       魂→精神→意識            】
↓【    意識    】【     身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体 】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【   行動   】

===========================|==========


今回は、前回の心の捉え方に関する歴史について捕捉する意味で、
3つの問題を取り上げました。

◆ 科学における「捉え方」そのものに関する問題。
◆ 心理学の源流のひとつである哲学に関する問題。
◆ それ以外の動き(例えば生理学など)に関する問題。


※ 今回、問題を3問にしてみました。

5問だと、どうしても問題のテイストに統一性をもたせづらいのに対し、
3問だと、一貫したテーマを持って出題できそうです。

長すぎず、短すぎず、最適な長さについては、
これからも検討を続けたいと思います。

ご意見は、clip-academy@clinicalpsychology.jp まで。


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2)【それでは問題です。】
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【Q1】パラダイムに関する問題

科学史家のトーマス・クーンは、科学の在り方と発展の仕方を、
パラダイムという用語から説明している。
以下の記述の中で、もっとも不適当なものを選びなさい。

===============選択肢===================

 a. パラダイムとは、その時代の科学において支配的な、
   考え方の基本的枠組みのことを指す。

 b. 個々の研究や、研究者の教育、研究方法、対象の捉え方は、
   パラダイムに支配されている。

 c. パラダイムはひとつの学問、ひとつの時代にひとつしか存在しない。

 d. 支配的なパラダイムによって説明不可能な例外が積み重なると、
   それを説明可能な新しいパラダイムにとって変わられる。

=====================================


【Q2】 哲学に関する問題

哲学は、心理学の源流の一つである。
以下の4つの思想は、哲学的論議の中から生じ、
心理学の中に今でも息づいている考え方である。

以下の選択肢の中から、説明としてもっとも不適切なものを選びなさい。

================選択肢==================

 a. 連合主義は、感覚によって生じる観念と観念の間の結びつきから、
   心理現象を説明する考え方である。 

 b. 経験主義は、人間の精神は始め白紙であり、
   経験を通して生じるものと捉えた。連合主義から生じた考え方で、
   ここでの経験とは観念と観念の連合を指す。

 c. 原子論は、人間の精神を、観念や感情など最小の単位(原子)から成り、
   また原子に還元可能な存在と考える。

 d. 機械論によれば、人間の行動は全て、
   物質的なメカニズムから生起すると考えられる。
   よって、心の存在を考えなくともメカニズムから人間を理解することが
   可能である。

=====================================


【Q3】 生理学に関する問題

以下の4人は、ヴントが心理学研究室を立ち上げる前後に、
のちの心理学に大きな影響を与えた人物である。

A ヘルムホルツ B ウェーバー C ヨハネス・ミューラー D フェヒナー

研究上関係の深い人物同士の組み合わせとして、
もっとも適切なものを、以下の選択肢から答えなさい。

   ======選択肢======

    a. 【AとB】、【CとD】

    b. 【AとC】、【BとD】

    c. 【BとC】、【AとD】

    d. 【A、B、D】と、【C】

    e. 【A】と、【B、C、D】

   ===============


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【次回配信】
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   次回 【解説号】… 9月27日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 試験にでる心理学 <一般心理学編> 山口陽弘 高橋美保 2001 北大路書房

● 心理学群像 全2巻 末永俊郎 監修 2005 アカデミア出版会 

● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣 


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【編集後記】
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心理学史という領域は、どうやら
心理学の初学者にとっては鬼門のようです。

なぜなら、まだ心理学が何かもわからない段階で、
様々な理論や人名が出てきて、混乱してしまうからです。

しかし、一通り心理学の基礎的な知識を身につけたあとで
心理学史に立ち戻ると、すべてが違って見えてきます。

それは、個々の知識を持った上で、全体のつながりや流れが
見えてくるからでしょう。

そして、そうした全体のつながりや流れこそが、
暗記と理解の分かれ目になることが多いと思います。

本メルマガでは、初学者の皆さんに、
一足先に、そうした驚きや発見の、香りだけでも届けよう
という主旨に基づいて構成を考えています。



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2005年9月12日月曜日

【Clip!アカデミー】第16回:エッセイ号「心の捉え方の歴史」

【Clip! アカデミー】 第16回 2005/09/12
第1週 エッセイ号「心の捉え方の歴史」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/


      ◆目次◆

          1)【前回のまとめ】
          2)【心を歴史から捉えるとは】
          3)【心理学の戦略】
          4)【心をいかに操作可能な形で捉えるか】
          5)【捉えられたものの歴史】
          6)【心の歴史図(仮)】
            【次回配信日】
            【参考文献】
            【編集後記】

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            第1週「エッセイ号」…問題提起
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   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
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今回から、Clip!アカデミーは、“心”を、
歴史的な視点から切っていきたいと思います。

第一回のエッセイ号では、
まずは、恒例となった図式を立てることからはじめましょう。



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2)【心を歴史的に捉えるとは】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

これまで、
我々は心理学が扱う重要な心の側面として、大きく
「身体」「意識」「行動」「潜在意識」「認知過程」「ゲシュタルト」
の6つの側面を立てて考えてきました。

ここでも、この6つの側面を通して、
心の歴史図を構築してみましょう。

心の歴史図はいかなるものになるでしょうか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【心理学の戦略】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

“心”というものは、捉えがたいものです。

もともと形がなく、目にも見えない上に、空気のように
物質的基盤すら定かではありません。

それが、何千年もの昔から、
我々人間に不可欠なものとして、
思想と考察の対象となってきたのは、
“心”を理解することが、人間存在を理解することと、
ほとんど同じ意味だったからなのでしょう。

そのため、人文科学、人間科学と呼ばれる分野は、
全て、捉えがたい“心”を捉え、理解するための戦略
を持っているといえます。

ですから、我々が試みようとしている、
心の歴史図の構築も、
心理学におけるこうした戦略の変遷を、
歴史的な視点から検討するということになるでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【心をいかに操作可能な形で捉えるか】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

現代心理学においては、
研究の対象になる“心”は、いくつも存在します。

これは、初学者を混乱させやすい、
心理学の特徴です。

心理学は、これまでに心に様々な側面を見出し、
それを研究対象とすることで、心なるもの、しいては人間なるものを
理解しようとしてきました。

これがすなわち、“心”を捉えるための、
心理学独自の戦略といえそうです。

つまり、

“心”という存在を定義する中で、
科学的に検証可能な部分をいわば切り取ることで、
新しい心理学研究が可能になった感があります。

それを繰り返していくうちに、
アリストテレスの時代には単純だった“心”という存在は、
多様な側面を持った複雑な構造体に変わっていきます。

心の側面の代表として取り上げた6つの側面が、
見出された年代順に並べて行くことで、

このような心理学の戦略、
そのダイナミックな働きが、我々人類の“心”に対する眼差しを、
いかに変えて行ったか、

が浮かび上がってくるはずです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【捉えられたものの歴史】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

新しい視点が登場するたびに、
心理学はその全てが変化し、新しい視点を中心に
再統合されるのではなく、
旧来の視点と新しい視点が共存することで、
より複雑に、多様化して発達してきました。

人間を内省する「意識」と機械である「身体」に分け、
今日の二元論的価値観を決定付けたデカルト。

彼が「方法序説」を執筆したのが、1637年です。

ヴントが、研究の対象として「意識」そのものを挙げることで、
心理学研究室を立ち上げたのが、1879年。

無意識という潜在的意識を中心的概念として、
人間について独自の理論を構築したフロイトの、
「夢判断」の初刊が1900年。

ワトソンが、行動主義を提唱する講演を、
コロンビア大学で行ったのが1912年です。

ウェルトハイマーがゲシュタルト心理学初の研究として、
仮現運動に関する論文を発表したのも1912年でした。

ここからしばらく行動主義全盛の時代と、
ゲシュタルト心理学のゲリラ的抵抗の時代が続きます。

1956年には、ブルーナーやミラー、チョムスキーらによって、
認知心理学と呼ばれる新しい流れが生まれ、
70年代にはすっかり心理学を変えてしまいました。

彼らが捉えたのは、“心”そのものではありませんでした。

いわば“心”なるものの、研究可能な一部分、
一側面を捉えることに成功したのだといえるでしょう。

それでも、
その積み重ねの中に我々は、
心理学が追い求めてきたものを見出します。

それは、我々自身が心理学など知らずとも
いつも当然と感じていること、
それでも、いざ実際に手を伸ばして、
目を凝らして捉えようとすると、
その正体がさだかではない、“心”というものではないでしょうか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6)【心の歴史図(仮)】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

なんとも大まかに、心理学史をたどってきました。

これらの年代の順に、
彼らが代表する心の捉え方を、並べて行くことにします。

以下に挙げた図式が、
歴史的に見た、心の捉え方の非常に大まかな変遷です。

● 心の歴史図(仮)
===========心的過程============|===外界====

↓【       魂→精神→意識            】
↓【    意識    】【     身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】
↓【 意識 】【 潜在意識  】【   身体      】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体 】【   行動   】
↓【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【   行動   】

===========================|==========

ここまで、“心”を、実在する存在のように
扱ってきました。

しかし、実際には、この“心”というものも、
仮説のようなものにすぎません。

ですから、心の歴史図で扱っている心の側面も、
「“心”とはこういうものではないか」という
捉え方=定義であって、実際に「意識」や「認知過程」
という実在物があるとは断言できません。

歴史的に見ると、
我々の“心”が、物理的に変化してきたのではなく、
我々の考える「“心”とはこういうものだ」が、
変化してきたのだ、と考えた方が、適切でしょう。

さて、
図式をながめながら、イメージを膨らませてみましょう。

例えば、受精卵が、分裂を繰り返し、
次第に分化して複雑な構造を持つように、
我々の“心”も、時代を追うごとに分化し、複雑になっていった様子を、
感じ取ることが出来るようです。

また、ヴントが心理学の対象として中心に据えた「意識」が、
時代を追うにしたがってどのようになっていくか、
新しい側面が、主にどこに生じているか、
などなど、図式化することで、
いくつかの傾向が浮かび上がってきます。

こうした発見や、論点が出てくることが、
図式にしてみることの面白さです。

ただ、ここではそうした論点の検討に移る前に、
次回は、この図式について、基本的な事項を確認しておきましょう。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 9月19日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 方法序説 ルネ・デカルト著 谷川多佳子訳 1637 岩波書店

● 夢判断 ジグムント・フロイト著 新宮一成訳 1900 岩波新書

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● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房

● 試験にでる心理学 <一般心理学編> 山口陽弘 高橋美保 2001 北大路書房

● 心理学群像 全2巻 末永俊郎 監修 2005 アカデミア出版会 

● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣 

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【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●新しい図式に突入しました。

前回特別号では、レイアウトをよりシンプルに、
読みやすく変更していく予定ですとお伝えしたのですが、
いかがでしたでしょうか。

次回は問題号ですが、
問題数は減らす方向で検討しています。

ただし、内容については、
今までどおりのやり方を続けていきたいと考えています。

今後とも、皆さんのご勉強にいくらかでも
参考になるメールマガジンを目指していきたいと思います。

●セミナーへのご参加ありがとうございました。

これからも、皆さんにご協力いただいたアンケート結果を参考に、
人気のあったセミナーを企画していきたいと思います。

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2005年8月30日火曜日

【Clip!アカデミー】第15回:解説号「心の過程図を捉えなおす」

【Clip! アカデミー】 第15回2005/08/30
第3週 解説号「心の過程図を捉えなおす」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

         ◆目次◆
       ※【読売新聞より取材を受けました!!】※            
            ※【セミナーのお知らせ】※
              1)【前回のまとめ】
              2)【問題号の解説】
【Q1】心の過程図に関する問題
          【Q2】リバースエンジニアリングに関する問題
          【Q3】家族システムに関する問題
          【Q4】サイバネティクスに関する問題
          【Q5】システムと臨床心理学に関する問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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            第1週「エッセイ号」…問題提起
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            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
            第4週 基本的にお休み
           (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

    

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今回は、心の過程図を検討する一連のサイクルの、
最後になります。

次回から、新しい図式を検討していくので、
今回は、これまでの流れと、目的について、
簡単に振り返ってみることにしたいと思います。

Clip!アカデミーでは、
既存の参考書と違い、網羅的な専門知識の解説を目指していません。

その理由としては、紙幅が限られていることと、
優れた参考書が多く世に出てきているからです。

心理学を勉強中の読者の皆さんは、
より実際的な知識を求めていると思いますが、
ここでは、あえて一歩引いた、
「心理学全体」とでもいうものを、検討の対象にしています。

受験勉強は特に、
断片的な知識の寄せ集めになりがちです。

しかし、我々が実際に心を捉えようとするとき
必要になってくるのは、寄せ集めの知識ではなく、
自分の体験や世界観、現在の社会や、現代人の生きかた、
などに結びついて発展してきた、心理学という学問についての、
体系的・全体的な知識だといえます。

心理学全体についてのまなざしは、
もちろん、受験勉強を通しても身についていくと思います。

むしろ、基礎的な専門知識は必要不可欠です。

しかし、心理学を全体として捉えようとすること、
様々な視点から見れることは、
こうした基礎的な受験勉強にも役に立つことでしょう。

そこで、Clip!アカデミーでは、
心理学全体を常に一度に扱い、異なる角度から捉えなおす、
という試みを行うことを通じて、
読者の皆さんが、個々の断片的知識の暗記的学習に埋もれず、
心理学全体へのまなざしを得るお手伝いをすることを目指しています。

はじめに、
心を、「身体」「認知過程」「潜在意識」
「知覚・ゲシュタルト」「意識」「行動」
の6つの側面から捉える、心の構造図(仮)を立てました。

現在は、
心を、身体→知覚→認知過程→潜在意識→意識→行動
という6つのプロセスの流れとして捉える、
心の過程図(仮)を検討しています。

エッセイ号では、こうした心理学全体を捉える図式をまず立て、
次の回で、その詳細と、限界、図式の欠点を論じています。

なぜそんな形式にしているかというと、
そもそも、心理学という学問を、ひとつの図式で捉えることは、
できないからです。

しかし、無理にでもひとつの図式を立ててみることで、
どこがおかしいのかが見えてきます。

そのおかしい部分は、
実は、心というものにとって、
とても大切な視点が隠れているのです。

そこを検討していくことで、新しい視野が開けてくるでしょう。

これは、仮説を立て、検証し、結果から新しい視野を
得ようとする科学的研究と、実は
まったく同じプロセスなのです。


今回は、この心の過程図を検討するサイクルの、
最後の回になります。

現在、Clip!アカデミーエッセイ号では、
プロセスという側面から心を捉えた心の過程図を、
より大きな(マクロな)視点、より小さな(ミクロな)視点から、
捉えなおす試みを行っています。

前回は、それに関連した問題を出題する、
問題号をお送りしました。

今回は、前回の問題の正答と、解説をお送りしたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【問題号の解説】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】心の過程図に関する問題

● 心の過程図(仮)
 ┌――――――――┐
 |物理的エネルギー|
 └――――――――┘
   ↓
 ┌--------------------------┐
 |身体|→|知覚|→|認知過程|→|潜在意識|→|意識|
 └--------------------------┘
                           ↓
                         ┌――┐
                         |行動|
                         └――┘


心の過程図において、矢印にしたがって流れているものは、
そもそもなにか。
次の選択肢からもっとも適切なものを選びなさい。

   =======選択肢=======

    a. エネルギー

    b. 情報

    c. 意識

    d. 表象

   ===================

※ 心の過程図についての復習問題です。

  基本的な事柄なのですが、意外と盲点で、
  心をプロセスとして捉えるとはどういうことか、
  を理解していないと、答えられないかもしれません。

心の過程図では、
心を、過程(プロセス)・流れ等と表現し、
図式化してきました。

心が流れである、という表現は、
外界からの刺激が入力され、行動として出力される、
という表現をする場合、前提として存在するものです。

したがって、上記のような表現や、図式に触れたことのある人なら、
なんとなく直感的にイメージできるでしょう。

ただ、この場合、この流れは、何の流れなのか、
ということは、意外と考えてみることがないのではないでしょうか。

その意味で、とても基本的な事柄であるにもかかわらず、
答えるのが難しい問題だったと思います。

さて、直感的に陥りやすい誤答は、【 a. 】です。

エネルギーの流れ、という表現は、
特にフロイト(S.Freud)を学んだばかりだとイメージしやすいのですが、
我々の主観的な意識からはそのように感じられる、という意味であって、
実際には、生理学的な裏づけに欠けています。

【 c. 】の意識も同様です。

意識の流れ、という表現は、
ジェームズ(W.James)の心理学で重視された概念ですが、
この選択肢も、あくまで、
主観的に感じられる、という点に限定された選択肢です。

そうなると、問題は、

【 b. 】の情報か、【 d. 】の表象か、

ということになります。

両者とも、認知心理学における中心的な概念です。

心の過程図は、あくまでフローチャートとして表現された、
感覚から行動に至る心的プロセスとして表現されています。

フローチャートは認知心理学の成立と切り離せない、
ということは、前々回のエッセイ号で説明したと思います。

よって、まずは、このどちらかだろう、
と当たりをつけられれば、◎です。

さて、皆さんは、
情報(information)と、表象(representation)
の違いを説明できるでしょうか。

情報は、情報理論によれば、それを受け取る側において、
事態の不確実性を減少させる、
すなわち、物事を規定するものを指します。

例えば、Bさんにとって、Aさんの年齢が、
20代であって30代でない、
ということを表現することができるものは、
全て情報です。

その意味で、
「Aさんは30代ですか?」
と尋ねたとき、「・・・。」と沈黙が返ってきたとしても、
それも情報になります。

また、直立姿勢を維持するためには、
常に筋緊張を微調整する必要があります。

このとき、姿勢を制御する筋肉からは、
現在の姿勢についての情報が、
神経信号としてフィードバックされています。

一方、表象は、
心理学においても様々な経緯をたどってはいますが、
現代においては、人間の心的過程における、
外的対象を表すシンボル、という捉え方をするのが一般的です。

例えば、「Aさん」という言葉はBさんにとって、
実在する「あの人」を表象するシンボル(言語表象)です。

認知心理学においては、
心的表象は認知過程の対象であり、
我々は、外部に対して構成した心的対象を操作することで、
記憶や思考といった認知処理をしているとされます。

こうして両者を比較してみると、
情報の方が、表象よりも広い概念であるといえるでしょう。

また、表象は人間が情報を認知し、操作するための、
形式のひとつであると見ることが出来ます。

よって、常に進行しているプロセスとしての心は、
様々な形の、情報のやり取りの中から立ち上がってくるもの、
と考えることが出来ます。

正解は、  【 b. 】


【Q2】リバースエンジニアリングに関する問題

リバースエンジニアリング(reverse engineering)
とは、再現するための技術である。
認知心理学の観点から見た場合、
リバースエンジニアリングの対象としてもっとも不適当なものは、
次の選択肢のうちどれか。

 ======================選択肢======================

  a. 人間の知能を再現しようとする、人工知能

  b. 人間自身を再現しようとする、人工人間(ロボット)

  c. 人間の臓器を再現しようとする、人工臓器

 =================================================

※ 選択肢自体は、初学者にとって難しいモノではないと思います。
  むしろ、初学者でない人の方が迷うかもしれません。

  リバースエンジニアリングという言葉自体、
  聞きなれない言葉だと思います。

  ただし、認知心理学においては重要な方法論なので、
  基本的な考え方を知っていることで、
  テクノロジーと心理学の関係について、
  これまでと違った見方を出来るようになるのではないかと思います。

料理についての
リバースエンジニアリングを考えてみましょう。

例えば、皆さんがお料理好きだとすると、
話題のお店に行ったときに何を考えるでしょうか。

おそらく、
この味付けにするには、何を調味料に使っているのかとか、
このてんぷらの衣がカリッとしているのはなんでかなど、
なぜ美味しいのか、という理由を探すのではないでしょうか。

そして、推測の段階であっても、
理解できたら実際に家で挑戦してみる。

そうしてお店の味が再現できたとすれば、
その料理に対する理解が正しかったことが分かります。

認知心理学におけるリバースエンジニアリングも同様ですが、
この場合、再現することができる=理解の正しさが支持される、
という点が重要です。

すなわち、リバースエンジニアリングは、
工業への応用より先に、基礎研究における、
仮説の検証手続きとして、その意義を認められているといえるでしょう。

認知心理学が、研究の対象としてきたのは、
広い意味での人間の認知の仕組みです。

感覚刺激の符号化から、
知覚の成立、記憶や思考、問題解決、
外界への働きかけまで、多様な範囲が対象になりえます。

では、この問題の選択肢の中で、
リバースエンジニアリングという研究方法が有効なものはどれでしょうか。

逆に、ほかの方法でも研究が可能なものはどれでしょうか。

そう考えてみると、
リバースエンジニアリングというアプローチが有効なのは、
やはり形のないモノ、捉えがたいモノであるといえそうです。

人間の、モノを考え、推論し、問題を解決するという、
機能は、いったいどこからくるのか。

そもそも、人間とは、どういったものなのか。

どんなに捉えづらくとも、
実際に再現することが出来たなら、
そこには答えがおのずから存在しているはずです。

また、再現の過程では、
人間とは何か、という哲学的・抽象的な問いが、
おのずから具体的で、技術的な問題に落とし込まれるでしょう。

また、捉えづらい問いにおいて問題となるのは、
何が正解で、何が不正解なのか、という判断基準です。

しかし、人間を再現しよう、という前提から出発すれば、
実際にどれだけ再現できたか、実物にどれだけ近づいたか、
という形で、おのずから、判断基準を得ることが出来ます。

その点で、

【 a. 】人工知能と、【 b. 】ロボットは、
リバースエンジニアリングに適しているといえます。

ですが、臓器の理解は、
わざわざ膨大な手間をかけてそっくり同じ臓器を再現しなくても、
解剖学など、構造を分析することで行われてきました。

よって、最も適当なもの、と考えると、

正解は、【 c. 】

ただ、もちろん、人工臓器への認知心理学的なアプローチの可能性も、
考えられます。

例えば義足などの制御システムに、
人間の脳が行っている情報処理過程を再現できれば、
生身の人間と変わらない運動機能を実現できるかもしれません。


【Q3】家族システムに関する問題

家族システム理論の立場から見たとき、
夫婦というシステムを規定するものとして
もっとも重視されるのは、次の選択肢のうちどの側面か。

  =============選択肢=============

    a. 婚姻届

    b. 愛情

    c. コミュニケーション

    d. 習慣

  ================================

※ 家族や夫婦を、分解できないひとつの全体として考える場合、
  それをシステムとして成立させているものは何か、という問題。

  どの選択肢も、
  それぞれ異なる文脈においては、間違ってはいないのですが、
  家族を、システムとして捉える場合は、
  どのような条件を前提として考えるのでしょうか。

【 a. 】の婚姻届ですが、これは法的な規定です。

法律というルールにおける夫婦成立の前提条件ですが、
そこには、実際の夫婦システムが存在している必要はありません。

【 b. 】の愛情。

確かに夫婦の間には、お互いに対する愛情が必要かもしれません。

愛情がなくなれば、
相手のことはどうでもよくなり、離婚にいたることもあるでしょう。

これは、人間主義的な(ヒューマニスティックな)捉え方といえます。

しかし、愛情がなくても、
夫婦としていっしょに住んでいるふたりは、
ひとつのシステムを構成することが可能です。

正解は、    【 c. 】コミュニケーションです。

【 d. 】習慣ですが、これは、個人内の過程ですね。

システム論は、システムの存在を、
個人内の過程に還元するものではありません。

夫婦間の情報のやり取りによって規定されるのが、
システムとしての夫婦の在り様です。



【Q4】サイバネティクスに関する問題

サイバネティクス(cybernetics)は、
システムを制御するための方法論を提供する。

N.ヴィーナー(N.Wiener)は、
システムの制御に用いられる相互作用として、
フィードバックと、フィードフォアードをあげている。

夫婦システムにおける以下の選択肢は、
フィードバック、フィードフォアード、どの例といえるか。

適切な組み合わせを答えなさい。

1) 妻が泣くと、夫は我に返って慰めた
2) 妻が泣くと、夫はより激しく手を挙げた
3) 夫は、これを言ったら妻は泣き出すだろう、と口をつぐんだ

A プラス・フィードバック B マイナス・フィードバック
C フィードフォアード 

   ==========選択肢============

        1)  2)  3) 
   
    a.   A   B   C

    b.   A   C   B

    c.   B   A   C

    d.   B   C   A

   ============================

※ 【Q3】では、システムの在り様を規定するのは、
  コミュニケーションであるといいました。

  では、コミュニケーションは、
  実際には、どのようにシステムを規定しているのでしょうか。

エッセイ号では、フィードバックについて
エアコンのサーモスタットの例から説明しました。

改めて、簡単に説明すると、
フィードバックとは、出力に関する情報のことであり、
システムを制御するために、出力に関する情報を、
次の入力の調整に用いることです。

このようなフィードバックを、
マイナス・フィードバック(minus feedback)、
あるいはネガティブ・フィードバック(negative feedback)
と呼びます。

夫婦間では、

1) 妻が泣くと、夫は我に返って慰めた

がその例になります。

この二人は喧嘩をしていたのでしょう。

夫婦関係(システム)は安定を求めますから、
それまでの関係を破綻させるような逸脱を、
何とか修正しようとします。

この場合、妻が泣くことは、
夫婦関係の破綻につながるような
システムの不安定のサインになっています。

それ以上、深刻な対立を続けると、
関係が破綻する、というサインを受け止めた夫は、
関係の安定を取り戻すべく、対立を解消するような行動に出ました。

これによって、
夫婦の関係は、これまでのあり方を取り戻します。

夫婦は、個別に反応しているだけですが、
夫婦全体から見ると、お互いにフィードバックのやり取りをしながら、
現状の関係(夫婦システム)を
維持する方向で行動していることが分かります。

ただ、このように、
現状を維持しようとするフィードバック機構は、
現状に問題がある場合、問題をも維持し、
必要な変化を妨害することがあります。

この場合に重要になるのが、
プラスのフィードバック(plus feedback)、
またはポジティブ・フィードバック(positive feedback)です。

プラス・フィードバックは、
システムの安定を維持する方向に修正する
マイナス・フィードバックとは異なり、
逆に現状からの逸脱を増幅するように働きます。

例でいえば、

2) 妻が泣くと、夫はより激しく手を挙げた

にあたります。

この例では、妻が泣くほど、夫の暴力はエスカレートしていきます。

これはどう考えても深刻な状況ですが、
プラス・フィードバックの意味は、
変わる必要のあるシステムに、変化を呼び込むという点にあります。

夫の暴力が激しくなれば、
妻はなんらかの時点で、単に泣くことで、
それまでの関係を維持しようとする努力を放棄せざるを得なくなります。

その結果、妻の対応の変化や、第三者の介入によって、
システムはより現状に即した変化を迫られることになります。

この場合、もちろん、離婚という形で、
システムが崩壊する危険性もありますが、
ポジティブ・フィードバックによって、
よりよい安定に到達する可能性があるのです。

システムの制御には、
過去の出力を次の入力に用いるために差し戻すフィードバックのほかに、
未来に生じるであろう事態を推測し、
その推測を、次の制御に用いようとするものもあります。

3) 夫は、これを言ったら妻は泣き出すだろう、と口をつぐんだ

それが、フィードフォアード(feedforward)です。



よって、正解は

1)…B 2)…A 3)…C

で、 【 a. 】


【Q5】システム理論と心理学に関する問題

一般システム理論の視点から見たとき、
人間は有機体システムとして捉えられる。

以下の心理学研究者のうち、
有機体論に基づく人間観に、立っていないものを答えなさい。

   ============選択肢============

    a. ピアジェ(J.piaget)

    b. ワトソン(J.B.Watson)

    c. ロジャーズ(C.R.Rogers)

    d. オールポート(F.H.Allprt)

   =============================

※ システムという言葉は、
  現代においては、特にパソコンなどの複雑な機械を連想させます。

  そのために、人間や人間関係を、システムとして捉える、
  と聞くと、反射的に、人間や人間関係を、単なる機械として
  扱おうとしているのではないか、と誤解する人がよくいます。

  しかし、ベルタランフィ(L. von Bertalanffy)を初めとした、
  システム理論的な視点は、
  機械論とは正反対の立場を取っていることに注目しましょう。

有機体論とは、人間を、部分に分割できない全体(システム)として
見ようとする視点です。

以外に感じられるかもしれませんが、
システム論は、機械論に立つ行動主義などと対立し、
人間性心理学や、ゲシュタルト心理学などに近い考え方なのです。

ここから、行動主義の祖である、【 b. 】のワトソンが、
異質であることが分かります。

発達心理学に大きな影響を与えたピアジェですが、
彼は、発達という現象を、部分部分の変化ではなく、
あくまで有機体全体の構造の変化として捉えようと試みました。

また、ロジャーズの著作を読むと、
有機体という言葉が頻繁に出てくるのに気づくでしょう。

オールポートが有機体論者なのはどうしてでしょう。

オールポートは、
パーソナリティを、部品として分けられないシステムとして捉えたためです。

よって、正解は 【 c. 】


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 9月13日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理臨床大辞典 改訂版 氏原寛 他 2004 培風館

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊 他 1973 有斐閣 

● 一般システム理論  フォン・ベルタランフィー著 長野敬
  太田邦昌訳 1973 みすず書房

● 人格心理学 上・下 G.W.オールポート 著 今田恵 訳 1968
  誠信書房

● 事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法  長谷川啓三 若島孔文
  2002 金子書房



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【編集後記】
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6回にわたってお届けしてきました、
心の過程図ですが、いかがでしたでしょうか。

最後は、システム論から、
かなり広い学際的な分野について言及せざるを得ない場面がありました。

私が知りたいのは、システム何チャラではなく、
心理学だ、という方もいるかもしれません。

私が心理学を勉強し始めて、
ようやく心理学全体のあり方みたいなものが見えてきたとき、
一番愕然としたことは、
心理学は、今まで一度も心を研究したことがない、
という事実でした。

本来心を対象とするはずの心理学は、
心を扱わないことでしか、成立できなかった。

その原因には、心理学成立当時の技術的水準や、
心なるものにまつわる、本質的な問いまでもが、
現れているように思います。

技術水準も向上し、
現在、心のナゾに迫ろうという学問は、
何も心理学だけではありません。

我々一人一人が、そうした諸科学からのアプローチを知り、
なおかつ心理学にしか扱えないだろう領域を見極め、
進んでいくまでには、非常な時間が掛かるだろうと思います。

このことは、学校現場や、医療現場での、
カウンセラーの立場、アイデンティティの問題を連想させます。

おそらく、心理学と諸科学との間の問題と、
カウンセラーと異業種との間の問題は、表と裏なのでしょう。

だからこそ、我々は、
ここでもまた、心理学と同じ問題に直面します。

心理学者・カウンセラーとしてあろうとするならば、
むしろ心理学・カウンセリング以外の世界を知らなければなりません。

心というあやふやなものに寄って立ち、
それ以外のものから守られていることは、もうできません。

そう決意して初めて、
我々は心理学に向かうことが出来るのではないでしょうか。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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