【Clip! アカデミー】 第22回2005/11/8
第1週 エッセイ号「心の歴史図における論点」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【学問としての心理学】
3)【再度、心の歴史図をよく見る】
4)【置き換えと細分化】
5)【細分化はどこまで可能か。】
6)【曖昧なもの】
7)【臨床はどこから学ぶのか】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※
メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
のフォント設定のやり方を載せてあります。
==================================================================
○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
無料心理学メールマガジンです。
■ 基本サイクル ■
※【今回はこちら!】 第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
さて、2ヶ月にわたり心の歴史図を通して心理学史を検討してきましたが、
今月でいよいよ終わりです。
今まで、心の歴史図を立てる(第16回)→詳しく解説する(第19回)
というプロセスを経てきたので、
今回のエッセイ号では、心の歴史図を通して見えてくる
心理学のあり方、その限界
について検討していきましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【学問としての心理学】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
心理学とは、大まかに言えば、人間の心を研究する学問です。
もちろん、ここまでClip!アカデミーを読まれてきた皆さん、
もしくは、心理学を勉強している皆さんは、
そのような大雑把な言い方では心理学を言い尽くせないし、
単に誤解を与えてしまうだけではないか、
という収まりの悪さを感じるようになっているでしょう。
むしろ、
“人間の心”なるものの独自な捉え方そのものが、
心理学の学問としての独自性なのだということができます。
だからこそ、
本メルマガでも今まで心理学は心をどう捉えるか、
というテーマを検討してきたのでした。
なぜ、いまさらこのような話を持ち出すのかというと、
学問とは、どのようなものであれ、
最終的には、
人間、もしくは人間の心を対象にしている、といえるからです。
学問は、そもそもどんなものでも、同じものを対象にしています。
異なるのは、それに至る道筋=アプローチであるといえるでしょう。
同じ対象に至るために、無数の道筋があり、
また、ひとつの道筋でよしとされない理由は、
どのようなアプローチにも、限界があるからです。
それでは、心理学の限界はどこにあるのでしょうか。
今回は、心の歴史図を通じて、その点を検討していきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【再度、心の歴史図をよく見る】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● 心の歴史図(仮)
===時代==|==========心的過程===========|=外界=
17世紀以前 【 魂→精神→意識 】
17~19世紀後半【 意識 】【 身体 】
20世紀前半:1【 意識 】【 潜在意識 】【 身体 】
20世紀前半:2【 意識 】【 潜在意識 】【 身体 】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半 【意識】【潜在意識】【 認知過程 】【知覚】【身体】【行動】
====================================
心の捉え方が、心理学の誕生から発展するにしたがって、
どのように変化していったかをたどっていくと、
様々な連想が浮かんできます。
この図だと、たとえば、時代を経るごとに、
段々と【意識】の側面は、端っこに追いやられていくようですし、
新しい心の捉え方は、【意識】と【身体】の境界領域を、
いくつにも分割するように分かれていっているように見えます。
ここでは、その中から、
17世紀以前から、20世紀後半へかけて、
時代が進めば進むほど、【意識】の側面は段々脇へ追いやられていく、
というポイントに絞って取り上げてみましょう。
このことは、心理学のどのような性質と、限界を示しているのでしょうか。
そして、それは心理学にどのような未来を示唆しているのでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【置き換えと細分化】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
学問としての心理学は、
あいまいで捉えどころのない“心”に名前をつけて、
操作可能な、より具体的な概念に置き換えることから始まりました。
例えば、デカルトは、人間を機械に置き換えようとしました。
人間と機械をイコールで結べれば、
人間を機械として扱うことができます。
具体的な概念に置き換えることで、
あいまいで捉えどころのないものが、操作可能になるのです。
この考え方は、医学や生物学の分野において、
大きな威力を発揮しました。
心理学の努力は常に、
“心”の、それまで捉えられなかった部分を、
なんらかの具体的な概念に置き換えることに関わっています。
それでまだ捉えきれなければ、
その部分を、また別の概念で、置き換える。
そうして、置き換えられた部分は“心”から分化されていき、
そのプロセスのくり返しが、心の歴史図に見られる構造を形作ってきたと
考えることができます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【細分化はどこまで可能か。】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このような置き換えと細分化のプロセスは、
どこまで可能なのでしょうか。
心の一部に、例えば「行動」という具体的な名前をつけ、
その働きを説明することが出来れば、
その一部分は、心以外のものとして論じることが可能になります。
つまり、機能として説明できるものは、概念として分化できるのです。
もし、これ以上細分化はできない、
という限界があるとしたら、
それは“心”の中でも、名付けようのない、
機能としては説明不可能な特徴であることでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6)【曖昧なもの】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここで、心の歴史図をふり返ってみましょう。
心の歴史図では、デカルト以前は、
心と身体はおろか、我々の世界のほとんどは、
科学的な諸概念によって説明されないあいまいな世界でした。
あいまいさは、近年に至るまで、
科学が扱えない最も苦手な領域として、避けられてきました。
心理学においても、それは同様です。
心の歴史図において、
心理学が、そもそも【意識】の科学として出発したにもかかわらず、
結果的に、客観的に説明することが出来ない、
あいまいなものとして、脇に追いやられていく過程を見ることが出来ます。
そもそも、
デカルトの物心二元論においては、
機械で置き換えることができた部分を、身体、
それができなかった部分を、意識と分けた、ということができます。
もともと【意識】という概念は、
説明できないもの、課題として先送りされる、目の上のたんこぶとして
スタートしました。
それは、今でも我々を、
先へ進ませようとしているのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7)【臨床はどこから学ぶのか】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これまでの検討を振り返ると、
心を、分かるところと分からないところに分け、
分かるところだけを取り出して、
分からないところを減らしていこうとするのが、
心に対する、心理学の戦略であるといえるでしょう。
ただ、
この方法によって得られた理解は、
生身の人間に、どうやって当てはめればいいのでしょうか。
我々人間は、
ひとつの全体であって、
細分化された様々な側面の寄せ集めではありません。
また、心理学の戦略では、
常に心の中に、分からない部分が残るにもかかわらず、
それが心理学では扱えないがゆえに、
ないものとして扱われる危険があります。
つまり、
研究対象としての諸概念の集合体ではなく、
全体として生きる人間を対象とするとき、
我々は心理学の限界を、どのように補うことが出来るのか。
これが、心理学を生身の人間に応用する、
臨床心理学における課題であるといえるでしょう。
皆さんも考えてみてください。
もちろん、本メルマガでも、
我々なりの答えを、これからも折に触れて示していきたい、
と考えています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回 【問題号】… 11月15日(火)にお送りする予定です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【参考文献】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣
● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房
● 心を名づけること 上・下 心理学の社会的構成 カート・ダンジガー著
河野哲也監訳 勁草書房
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今回は、これまで半年ほどのあいだ
Clip!アカデミーを配信してきて、
特に思い入れの強い部分です。
その分、我々の考える心理学であり、
いつもより、幾分偏った意見かもしれません。
ただし、本メルマガは、
決して自分たちの主義主張の場ではなく、
自分で勉強し、考えようとする皆さんのやる気を、
応援するための場です。
ですから、答えを提示する気はありません。
あるいは、答えを持っているふりをする気もありません。
歴史を引き受け、
そこから導き出される課題を、
どう乗り越えるか。
これからも、メルマガの中で
いっしょに考えていければうれしいと思います。
====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
2005年11月8日火曜日
【Clip! アカデミー】第22回:エッセイ号「心の歴史図における論点」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿