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2005年6月28日火曜日

【Clip!アカデミー】第8回:問題号「心の構造図を検討する」

【Clip! アカデミー】 第8回2005/06/28/
第2週 問題号「心の構造図を検討する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



                  
            ◆目次◆
   
               1)【前回のまとめ】
               2)【それでは問題です】
             【Q1】 “身体”の側面に関する問題
             【Q2】 “行動”の側面に関する問題
             【Q3】 “ゲシュタルト”の側面に関する問題
             【Q4】 “潜在意識”の側面に関する問題
    【Q5】 “仮説的構成概念”に関する問題
                 【次回配信日】
                 【参考文献】
                 【編集後記】
   
   ====================================================================
   
   
      ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
   
               ■ 基本サイクル ■
               第1週「エッセイ号」…問題提起
        ↓
    ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
         ↓
           第3週「解説号」…確認とフィードバック
                    ↓
               第4週 基本的にお休み
            (特別号が配信される場合があります)
                  ↓
              ■ 第2サイクルへ続く ■
   
      ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   1) 【前回のまとめ】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   現在、エッセイ号では、心理学における「こころ」の捉え方を、
   検討しています。
   
   心理学において研究の対象になる「こころ」の捉え方を、
   学習の便宜上6つの側面にまとめ、
   6つの側面からなる図式「心の構造図(仮)」を検討しました。
   
   ● 心の構造図
      ┏━━┳━━━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃   知覚 | | ┃  ┃ |
      ┃意識┃ゲシュタルト|潜在意識|認知過程┃身体 ┃行動| 外界
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃ | | ┃  ┃ |
      ┗━━┻━━━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛
   
   前回は、あくまで便宜的に立てた図式である「心の構造図」を、
   より詳細に、批判的に検討することで、
   その限界や、バリエーションを考えてみました。
   
   
   その過程で、
   現象学や、仮説的構造概念など、
   いくつか耳慣れない用語も出てきたかもしれません。
   
   そこで、今回の問題号は、
   各側面の問題に加えて、耳慣れない用語についても、
   理解を深めてもらうための問題を作ってみました。
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2) それでは問題です。
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   【Q1】 “身体”の側面に関する問題
   
   大脳の以下の領域が司るとされる機能の、
   正しい組み合わせを述べなさい。
   
   (1)前頭葉 (2)頭頂葉 (3)側頭葉 (4)後頭葉
   
   A 体性感覚 C 聴覚 B 運動  D 視覚
   
   
      ==============選択肢===============
   
        (1) (2) (3) (4)
   
       a.  A  C  B  D
   
       b.  B  A  C  D
   
       c.  B  A  D  C
   
       d.  C B A D
   
      ===================================
   
   
   【Q2】 “行動”の側面に関する問題
    
   「A男がB子の人形をとって、B子は泣いた」という状況があるとき、
   「行動」の側面に注目する考え方としてもっとも適当なものを、
   以下の選択肢から選びなさい。
   
   
       ======================選択肢========================
   
        a. A男は、何らかの葛藤を抱えている。
        b. A男は、発達障害である。
        c. A男は、突然人形をとられたB子の気持ちを
          推測できない。
        d. A男が、B子の人形をとったことに、意味はない。
        e. A男が、今何を感じているかが問題である。
   
       ====================================================
   
   
   【Q3】 “ゲシュタルト”の側面に関する問題
   
   ゲシュタルト心理学では現象学が重視された。
   現象学についての記述のうち、不適切なものを次の選択肢から選びなさい。
   
   
       =======================選択肢========================
   
        a. 現象学における「現象」は、”客観的な”現象というより、
          意識上の現象のことである。
        b. 現象学は、我々が現象についての
          一切の判断を停止することから始まる。
        c. 現象学を創始したのはフッサールだが、
          学問として体系化したのはメルロ・ポンティである。
   
       ======================================================
   
   
   【Q4】 “潜在意識”の側面に関する問題
   
   ”潜在意識”の側面の特徴として、
   もっとも不適切なものを以下の選択肢から選びなさい。
   
   
   ============================選択肢================================
   
    a. 精神分析など、主に人格理論において仮定される。
    b. 意識されない動機として、人間の行動を規定していると考えられる。
    c. その構造には、生理学的基盤は想定されない。
    d. 催眠状態において、意識水準が低下したとき観察される。
   
   ===================================================================
   
   
   【Q5】 “仮説的構成概念”に関する問題
   
   以下の文章の(1)(2)に当てはまる語句の組み合わせを、
   選択肢から選びなさい。
      
    -----------------------------------------------
     仮説的構成概念は、(1)を検討する必要があるが、
     (2)と同じように用いられる。
-----------------------------------------------   

      A 仲介変数 B 妥当性 C 剰余意味
   
   
       =========選択肢========
   
         (1) (2) 

        a. C    B

        b. B    A

        c. A    C

       =======================
   
   以上です。
   解説は、次号解説号でお伝えします。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【次回配信】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
      次回 【解説号】… 7月5日(火)にお送りする予定です。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【参考文献】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
 仮説的構成概念等基礎知識
   
     ● 心理学論の誕生「心理学」のフィールドワーク 2000 サトウタツヤ
   
       渡邊芳之 尾見康博 北大路書房
   
   
    現象学・構造主義
   
     ● わかりたいあなたのための現代思想・入門 1990 小坂修平・
       竹田青嗣・志賀隆生 他 JICC
   
     ● はじめての構造主義 1988 橋爪大三郎 講談社現代新書
   
   
    脳科学・認知科学
   
● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊 他 1973 有斐閣        
   
     ● 脳内現象〈私〉はいかに創られるか 2004 茂木健一郎 
       日本放送出版協会
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【編集後記】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   問題号は一応、形式は安定してきましたね。
   
   解説号の分量が長くなるので、
   一時は問題数を減らすことも考える、
   というのは、前々回の編集後記でも触れました。
   
   その結果、問題数、分量ともに今のままでよいのではないか、
   等のご意見もいただいたので、
   問題等、しばらく現在の形式で続けたいと思います。
   
   ご意見等を寄せてくださった皆さん、ありがとうございました!
   
   後は内容の充実ということで。
   
   それにくらべて、エッセイ号には毎度苦しめられますが、
   これからも、実験をしながら、
   よりよいモノを目指していきたいと思います。
   
   (当面は、エッセイ号では
   図式の提示→議論→図式の提示
   の形式でいきたいと考えています。)
   
   これからもよろしくお願いいたします。
   
  ====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年6月21日火曜日

【Clip!アカデミー】第7回:エッセイ号「心の構造図を検討する」

【Clip! アカデミー】 第7回2005/06/21
第1週 エッセイ号「心の構造図を検討する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/                    
           ◆目次◆
   
             1)【前回のまとめ】
             2)【見方を変えてみると】
             3)【心の構造図は正しいのか】
                【次回配信日】
                【参考文献】
                【編集後記】
   
   ===================================================================
   
   
   
      ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
   
   
               ■ 基本サイクル ■
     ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                    ↓
               第2週「問題号」…練習問題 
         ↓
           第3週「解説号」…確認とフィードバック
                    ↓
              第4週 基本的にお休み
            (特別号が配信される場合があります)
                  ↓
               ■ 第2サイクルへ続く ■
   
   
      ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   1)【前回のまとめ】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   前回エッセイ号では、
   心の仕組みを、様々な側面から捉えるために、
   一つの図式をご紹介しました。
   

     そこでは、まず現代の心理学を学ぶにあたり、
   心理学の研究対象となっている心の側面6つをあげました。
   
   なぜなら、
   客観的に観察できない“心”には、
   とらえ方によって様々な側面が生じます。
   
   どれが本物か、というより、どれも本物、
   いや、それら全ての側面をひっくるめて、
   それ以上のものが、心である、
   という考え方がバランスのとれた見方であると考えるためです。
   
   これが、臨床心理学を勉強したい、という学生も、
   基礎心理学を学ぶ必要がある、ということの、
   ひとつの根拠となります。
   
   ただし、6つの側面のそれぞれは、
   お互いに影響を与えあっているとはいえ、
   成立過程も、成立理由もバラバラです。
   
   そこで、学習のための方便として、
   6つの側面をひとつの図式として提示しました。
   
   それをここでは、仮に「心の構造図」と呼ぶことにしましょう。
   

   ● 心の構造図
      ┏━━┳━━━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃   知覚 | | ┃  ┃ |
      ┃意識┃ゲシュタルト|潜在意識|認知過程┃身体 ┃行動| 外界
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃ | | ┃  ┃ |
      ┗━━┻━━━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛ 
   
   心の構造図では、
   身体から右が我々が客観的に観察できる外の世界、
   左が心の内側という位置づけになります。
   
   この図では、一番内側にある意識の側面から、
   いくつもの側面を通して、
   身体の外に広がる世界を垣間見る、
   ということになります。
   
   心理学では、
   まず自分(あるいは他人を含めた人間)のことを知りたい、
   という気持ちから出発します。
   
   ここでいう“自分”とは、
   
   デカルトが  
         “我思うゆえに我有り”
   
   (私が今考えている、という事実は疑うことができない、
   だからこそ、この事実から私は、自分が今存在している、
   と言うのだ。)
   
   と表現したときの“我”、すなわち意識のことです。
   
   ですから、意識を起点として、
   そのほか心理学で扱われている心の側面を並べてみた場合、
   このような並び順になった、ということです。
   
   このような図式から心の構造を捉えるということからは、
   以下の3点が導き出されます。
   
    ◆ 意識と身体の間に、
      普段我々が意識することのないプロセスが存在すること、
   
    ◆ それは、心理学においては、
      ゲシュタルト、潜在意識、認知過程
      の三つの側面に整理することが出来ること、
   
    ◆ 意識は、ゲシュタルト像を認識するが、
      その背後で働いている意識過程、認知過程は、
      認識することができないこと、
   
   の3つです。
   
   いずれ心理学史の回で詳しく扱うことにしますが、
   これは、心理学が、意識の研究から始まって、
   心を研究していく中で、発見してきたことでもあるのです。
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2)【見方を変えてみると】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   このように、心の構造図を用いて、
   6つの側面から心の構造を捉えてきたわけですが、
   これは学習のための仮の枠組みです。
   
   実際には、
   心理学における心のモデルとして、
   許容されているわけではありません。
   
   そこで今回は、
   前回の心の構造図の図式を、
   より詳細に、批判的に検討することで、
   その限界や、バリエーションを考えてみることにします。
   
   
   例えば、ゲシュタルト、潜在意識、認知過程、は、
   我々が普段意識することはありません。
   
   つまり、我々から見たとき、自覚しているのは、
   
       ┏━━┳━━━╋━━┓
       ┃  ┃   ┃  |  
       ┃ ┃   ┃ |
       ┃意識┃身体 ┃行動| 外界
       ┃  ┃   ┃  |
       ┃ ┃   ┃ |
       ┗━━┻━━━╋━━┛ 
   
   また、このうち、外部から観察が可能なのは、
   「身体」と「行動」の側面のみです。
   
   他の側面は、身体や行動など、
   観察可能な現象や、実験結果を説明するために
   構成された、概念的な存在です。
   
   単に説明のために用いる場合と、
   実際に存在するはずであると仮定する場合では
   意味合いが異なります。
   
   前者を単に構成概念、
   後者を仮説的構成概念と呼びます。
   
   認知過程や、潜在意識、知覚、意識の側面は、
   したがって、
   心理学研究者の側で仮定された、
   「仮説的構成概念」と呼ばれます。
   
   
   実体のある脳や神経系の仕組みだけから、
   人間の心を考えようとする生理学の立場では、
   このうち、「身体」の側面を重視して、
   その観察から、意識の発生のメカニズムを探ったり、
   行動を予測しようとしたりします。
   
   そのため、身体の側面だけを問題にする場合、
   心理学の範疇には入らないことの方が多いですね。
   
   行動の側面だけを問題にする行動主義心理学においても、
   自らを行動科学という言い方で、
   心理学と区別しようとする傾向があります。
   
   
   それに対して、主観的な視点を突き詰めていく、
   現象学的な立場からは、以下のような立場が出てきます。
   
   我々が見ているのは、実際には、外界そのものではなく、
   複雑な過程を経て出来あがったゲシュタルト像であるとすると、
   
       ┏━━╋━━━━━━┓
       ┃  ┃      |
       ┃ ┃   知覚 |
       ┃意識┃ゲシュタルト| 外界
       ┃  ┃      |
       ┃ ┃ |
       ┗━━╋━━━━━━┛ 
   
   
   この知覚が、
   外界を忠実に反映しているのか、いないのか、
   については、未だ結論が出ていません。
   
   外界を、一度表象という形で再構成するということは、
   その過程で外界を忠実に反映していないことになります。
   
   (アフォーダンス理論では、表象を形成しないで行われる、
   直接知覚と呼ばれる知覚もありうるとしているようです。)
   
   
   ゲシュタルト形質は、おもに視知覚における例ですが、
   言葉にしても、外界を100%忠実に表現することは出来ない。
   
   これは、構造主義言語学からの考え方です。
   
   言語に関するこうした考え方は、
   心理療法、特に精神分析に大きな影響を与えています。
   
   こうした立場では、
   身体や行動という側面は、
   ブラックボックス(中身の見えない箱)として考えます。
   
   
   また、現在では、
   ゲシュタルト心理学で研究されていた、
   知覚の持つ独自の構造や、知覚の成立の仕組みは、
   現在では、認知過程の一部として、
   認知心理学や、大脳生理学などの領域で
   研究されています。
   
   つまり、処理過程としては、
   知覚は、認知過程の一部であり、
   情報処理の初期の段階で行われる、
   比較的低次のプロセスと考えることができます。
   
   そこで、知覚は、認知過程の下位過程であると考えると、
   
      ┏━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
      ┃  ┃    ┃   ┃  |
      ┃ ┃ ┃  ┃ |
      ┃意識┃認知過程┃ 身体┃行動| 外界
      ┃  ┃    ┃   ┃  |
      ┃ ┃ ┃  ┃ |
      ┗━━┻━━━━┻━━━╋━━┛ 
   
   このように、認知過程に含まれる、
   という考え方をすることも可能です。
   
   ※ 我々の心の構造図式では、
     心理学を学ぶ上で欠かせない、
     ゲシュタルト心理学を位置付けるために、
     あえて、知覚・ゲシュタルトとして挙げてあります。
   
   現代の心理学においては、
   わざわざゲシュタルトという側面を提示するより、
   このように認知過程の一部と考える方が、
   むしろ自然であることも、ここに添えておきます。
   
   
   また、認知過程を、
   潜在意識に含めてしまうと、
   
      ┏━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
      ┃  ┃    |   ┃  |
      ┃ ┃ |  ┃ |
      ┃意識┃潜在意識| 身体┃行動| 外界
      ┃  ┃    |   ┃  |
      ┃ ┃ | ┃ |
      ┗━━┻━━━━┻━━━╋━━┛ 
   
   といってしまってもいいかもしれません。
   
   通俗的な見方として、
   心理学を学んだことがなくても分かりやすいかもしれない。
   
   これは、フロイトの功績といえます。
   
   
   ※ 潜在意識は、無意識と言い換えてもいいのですが、
     無意識だと、現代では、フロイト理論における無意識が
     あまりに有名なので、少し広い意味で、
     潜在意識という言い方をしておきます。
   
      
   認知過程と、潜在意識との関係は、
   きれいには割り切れません。
   
   共通の理論的土台がないので、
   比較ができないのです。
   
   そのため、心理学の中でも、
   基礎心理学といわれる心の仕組みを理解し、
   再現し、予測することを目的とした研究では、
   認知過程を置く方が好まれます。
   
   それに対して、
   厳密な心の仕組みよりも、
   目の前の個人の理解や、行動の予測・推測に
   効果のある図式を好む応用心理学においては、
   説明概念として有効であれば、
   潜在意識は、ブラックボックスでもかまわないわけです。
   
   
   このように、
   前回エッセイ号では、
   便宜的にひとつの心の構造図というものを
   想定しましたが、
   心の構造というものも、様々なとらえ方が可能です。
   
   それは、心理学に登場する心の側面の多くが、
   仮説的構成概念だからなのです。
   
   心という実体が、
   果たして存在するかというと疑わしい。
   
   とはいえ、
   そのあいまいな空白に、仮に何か置いてみることで、
   理解が進むことがあります。
   
   数学でいう、方程式
   
   逆に、だからこそ、
   基本的な枠組みさえ頭に入れておけば、
   そこから、学んだ内容にしたがって、
   様々な応用が可能になるのです。
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   3)【心の構造図は正しいのか】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   前回エッセイ号では、図式を説明するために、
   コンビニエンスストアの社長にご登場いただきました。
   
   全国に店を持つコンビニの社長(意識)が、
   自分の会社の直面している現状(外界)を知りたいとする。
   
   しかし、
   いくら自分の経営している会社とはいえ、
   全国の店舗でバイトや店長達が体験していることの
   全てを知るということは、
   不可能でもあるし、不必要なことでもあります。
   
   そのために、
   全国から集まってくる現状についての情報は、
   様々な形で加工が施されることになります。
   
   その結果社長は、
   会社の現状に関する一つの報告書を手にします。
   
   報告書(知覚)は、
   集められた山のような情報の単なる要約ではなく、
   そこから浮かび上がってくる、
   ひとつの目に見えない流れ(ゲシュタルト)についての
   報告書になるでしょう。
   
   こうした比喩は心理学でよく見られるものですが、
   基本的に、「意識」が意思決定の責任者であることを
   前提としています。
   
   しかし実際には、
   どうもそうとは言えないような知見が集まりつつあり、
   意識とは一体なんなのか、
   心理学が避けつづけてきたテーマが、
   再び熱くなってきています。
   
   意識は、果たして心の中心なのでしょうか。
   
   それとも、もっと他の考え方が優勢になるのでしょうか。
   
   これは、コンビニの比喩で言えば、
   社長は本当に責任者なのか、という話しになります。
   
   この点については、
   次回、心を、構造ではなく、
   “機能”という視点から眺めてみる中で、
   もう一度浮かび上がってくることでしょう。
   
    
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【次回配信】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
      次回 問題号 … 6月28日(火)にお送りする予定です。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【参考文献】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
    仮説的構成概念等基礎知識

     ● 心理学論の誕生「心理学」のフィールドワーク 2000 サトウタツヤ
   
       渡邊芳之 尾見康博 北大路書房

    アフォーダンス
       
     ● アフォーダンス─新しい認知の理論 1994 佐々木正人 岩波書店
   
   
     ● エコロジカル・マインド―知性と環境をつなぐ心理学 2000 
       三嶋 博之 NHKブックス
   
    現象学・構造主義

     ● わかりたいあなたのための現代思想・入門 1990 小坂修平・
       竹田青嗣・志賀隆生 他 JICC
   
     ● はじめての構造主義 1988 橋爪大三郎 講談社現代新書

    
    脳科学・認知科学        
     ● 脳内現象〈私〉はいかに創られるか 2004 茂木健一郎 
       日本放送出版協会
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【編集後記】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      
   今回のエッセイ号は、
   前回のエッセイ号でご紹介した図式へのつっこみです。
   
   心理学は、心という観察しづらいものが対象ですから、
   言葉の使い方、概念の用い方に非常に敏感になる必要があります。
   
   多少くどくはなりますが、
   これからも、図式を提示したら、その限界を議論してから、
   次に進む、というやり方にしていきたいと考えています。
   
   ====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年6月14日火曜日

◆【Clip!アカデミー特別号】不定期連載「心理”学外”人物伝(第1回)デカルト」

           ◆【Clip! アカデミー特別号】2005/06/14
       不定期連載「心理“学外”人物伝(第1回)デカルト」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/
   
          ◆目次◆
   
       1)【心理“学外”人物伝とは】
         2)【ルネ・デカルト】
                【次回配信日】
                【参考文献】
                【編集後記】
   
   ====================================================================
   
   
      ○ ~~~~~~~~~お知らせ~~~~~~~~~~ ○
   
         【Clip!アカデミー特別号】をお送りします。
   
          特別号では、皆さんに役立つ様々な情報を、
          今後不定期で発信していく予定です。
   
         【Clip!アカデミー】ともども、
          これからもよろしくお願いいたします。
   
                  Clip!アカデミー事務局一同
   
      ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○ 
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   1)【心理“学外”人物伝とは】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   
   哲学、文化人類学、社会学…などなど、心理学に大きな影響を与えた巨人を、
   
   心理学の“外”からピックアップして読者の皆さんにご紹介するコーナー
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   
   
   
   心理学を勉強していると、
   心理学以外にも、様々な学問や人名を目にするでしょう。
   そんなとき、どうしていますか?
   
   見てみぬフリをしていないでしょうか。
   
   心理学については体系的に勉強をしている人でも、
   近接領域や、学問全般については関心が薄く、また、自分には分からない、
   難しい領域だ、と感じて敬遠している人が多いようです。
   
   
   そう、実は心理学初学者にとって、往々にして
   
   ● 心理学そのものより、関連分野こそ、ガイドを必要とする分野なのです。
   
   
   【心理“学外”人物伝】によって、
   手を出しづらいからといって、見て見ぬふりをするのはやめましょう。
   
   ここであげる人々や、彼らの代表する学問全てについて、
   知識を深める必要はありません。
   
   ただ、ひとりでも関心を持った人がいれば、
   その分野を読み進め、自分の世界を広げてみてください。
   
   自然科学、人文科学の区別はさておき、
   外にひとつでもお気に入りの学問を持つことで、
   心理学をまた新しい視点から見ることが出来るようになるでしょう。
   
   特別号初めての 心理“学外”人物 は、
   
   哲学界の巨人ルネ・デカルトです。
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2)ルネ・デカルト(Descartes, 1596‐1650) 【哲学】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   デカルトという名前から、心理学を連想する人は少ないであろう。
   
   しかし、デカルトが存在しなかったならば、
   今日の心理学は少し違ったものになっていたかもしれないのである。
   
   
   デカルトは1596年に、
   フランスの旧い貴族の家に生まれた。
   
   母は大変に病弱な人で、
   デカルトはその病弱体質を見事なまでに受け継いだ。
   
   顔色は青白く、朝寝の習慣を欠かさずには活動できない程であった。
   
   しかし、
   この長い朝の瞑想が、
   後にデカルトの哲学の源となったのである。
   
   
   心理学的観点からみて、デカルトの功績は大きく分けて2つある。
   
   
      ◆ 1つは、「機械論的世界観」
   
      ◆ 2つめは、「心身二元論」の重視である。
   
   機械論的世界観とは
   
   世界の全てが単純な物理法則に支配されていると考える世界観
   
   である。
   
   世界を時計仕掛けの精密機械に見立てたため、
   機械論と名付けられたこの世界観は、
   それまでの神や精霊等の超自然的存在により
   主観的に物事を解決しようとするファンタジー的世界観から
   「科学」を飛躍的に進歩させた。
   
   神学的観点を一切、排除したこの考え方がなければ、
   科学は発展する術を持たなかったからである。
   
   全てに機械論的世界観を適用しようとしたデカルトであったが、
   機械論を適用できない精神の世界があることにも気付いた。
   
   よってデカルトは世界を、
   
   
      ◆ 機械論的世界観が適用できる物質の世界
   
      ◆ 適用できない人間の精神の世界
   
   の2つに分けた。
   
   そして精神の世界を分析する上でも、
   神学的観点を排除したため、
   それまで「心」と密接に関連していた魂等の概念はついに消滅し、
   ここに初めて心の定義が明確化した。
   
   こうして精神や肉体の定義がはっきり示されたことで、
   心理学や医学は発展するための基盤をようやく確立できたのである。
   
   
   【デカルトの主な著作】
   
      ● 『方法叙説』(1637)
      ● 『省察』(1641)
      ● 『哲学の原理』(1644)
      ● 『情念論』(1649)
      ● 『世界論』(1664)
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【次回配信日】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   次回、エミール・デュルケム (Durkheim 1858-1917) 【社会学】
   
   ※ 特別号のため、心理“学外”人物伝は不定期連載となります。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【参考文献】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   ● 心理学物語 2004 ボールズ, R. C. 富田達彦 訳 北大路書房
   
   ● 精神医学文献辞典 2003 松下正明 弘文堂 
   
   ● 「方法序説」を読む-若きデカルトの生と思想 1995 山田弘明 
     世界思想社
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【編集後記】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   Clip!アカデミー読者の皆さんこんばんは。
   
   不定期配信の、【Clip!アカデミー特別号】をお送りします。
   
   こちらでは、
   アカデミックな内容以外にもいろいろと、
   心理学の勉強に役立つ情報を発信していきたいと考えています。
   
   というわけで、まず第一弾は、
   心理学以外の領域から、心理学に深くかかわる研究者たちを
   紹介する企画を立ち上げてみました。
   
   デカルト以下、これからも、心理学に関連は深いながら、
   日頃接する機会のない様々な分野の巨人たちを紹介していきたい
   と思います。
      
   不定期ではありますが、
   Clip!アカデミーともども、よろしくお願いいたします。
   
   ====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年6月7日火曜日

【Clip!アカデミー】第6回:解説号「心の側面をどう捉えるか」

【Clip! アカデミー】 第6回  2005/06/07
第3週 解説号「心の側面をどう捉えるか」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



         ◆目次◆
   
         1)【前回のまとめ】
        2)【問題号の解説】
      【Q1】「意識」に関する問題
     【Q2】「身体」に関する問題
     【Q3】「認知過程」に関する問題
     【Q4】「ゲシュタルト」に関する問題
     【Q5】心理学の「枠組み」に関する問題         
                【参考文献】
                【編集後記】
   
   
   ===================================================================
   
   
        ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
       
   
               ■ 基本サイクル ■
               第1週「エッセイ号」…問題提起
                    ↓
               第2週「問題号」…練習問題 
                    ↓
【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
                    ↓
              第4週 基本的にお休み
          (特別号が配信される場合があります)
                 ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■
   
   
      ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   1) 【前回のまとめ】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   本サイクルでは、
   「心の側面をどう捉えるか」と題して、
   心理学で扱われている心の側面を、
   暫定的に以下の6つの側面から捉える試みをしています。
   
     第4回エッセイ号では、
   “コンビニの社長=意識が、各店舗の現状=現実をどのように知るか”
   という例を通じて、
   心の各側面のつながりを、総体的に把握する、
   ひとつの枠組みを提示したのでした。
   
   ● コンビニの各側面
   
   ┏━━┳━━━━━┳━━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
   ┃  ┃     |     |    ┃   ┃  |
   ┃本社┃ 報告書 |店長の野望| レジ ┃従業員┃販売|
   ┃社長┃     |     |    ┃   ┃  |
   ┗━━┻━━━━━┻━━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛
   
   ● 心の各側面          
   ┏━━┳━━━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
   ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
   ┃ ┃   知覚 | | ┃  ┃ |
   ┃意識┃ゲシュタルト|潜在意識|認知過程┃身体 ┃行動|
   ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
   ┃ ┃ | | ┃  ┃ |
   ┗━━┻━━━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛     
   
    
   
   ● 外界とのかかわりから生じてくる3つの側面
      ◆ 他者との比較=個人差  
      ◆ 過去との比較=発達
      ◆ 他者との関わり=コミュニケーション
   
   そして、前回第5回は、上の図解に上げた6つの側面を中心に、
   問題号をお届けしました。
   今回は、その解説号をお届けします。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2) 【問題号の解説】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   【Q1】「意識」に関する問題
   
   以下に挙げた研究者の、意識(consciousness)についての考え方について、
   正しい組み合わせを、次の選択肢から選びなさい。
  
   (1)ワトソン(Watson,J.B.)  (2) フロイト(Freud,Sigmund) 
   (3) フェヒナー(Fechner,G.T.) (4) ヴント(Wundt,Wilhelm)
   
   A 意識と身体との間の関数関係を明らかにする必要がある。
   B 意識こそ、心理学の研究対象である。
   C 意識よりも、意識されないものが重要である。
   D 人間を理解するために、意識を研究する必要はない。
   
  
   
        ==============選択肢===============
    
          (1) (2) (3)  (4) 
     
         a. B C A D
        
       b. A B D C
        
         c. D C A B
        
         d. D   A B C
        
        ===================================
   
   
   【解説】
 
   研究者として取り上げた人々は、
   皆心理学の在り方自体に影響を与えた巨人達です。
   意識という側面は、まずデカルトによって規定され、
   フェヒナーとヴントの努力によって科学の対象となりました。
   
   それに対し、フロイトとワトソンは、研究対象として、
   無意識(潜在意識)と行動という意識以外の側面を強調しました。
   
   これによって心理学は、様々な方向へ発展していきました。
   
   
   (1) ワトソン … D 人間を理解するために、意識を研究する必要はない
   
   (2) フロイト … C 意識よりも、意識されないものが重要である。
   
   (3) フェヒナー … A 意識と身体との間の関数関係を明らかにする
                必要がある。
   (4) ヴント … B 意識こそ、心理学の研究対象である。
   
   非常に基礎的な問題です。
   
   ただ、フェヒナーのところは
   ピンとこない人も多かったかもしれないので、
   すこし解説を加えておきましょう。
   
   「意識と身体の間の関数関係」とは、
   我々の意識と身体とのつながりを、関数によって表したものです。
   
   物理学でいえば、アインシュタインのE=mc二乗という公式は、
   エネルギー(E)は、質量(m)掛ける光速(c)の二乗で表される、
   という関係を表しています。
   
   物理学者フェヒナーは、
   意識と身体の関係をこのような形で解明するため
   内的精神物理学を構想しましたが、
   そのためには、まずは外界の刺激と身体的な感覚の関係から
   始める必要がありました。
   
   これが、外的精神物理学です。
   
   その成果は、
   フェヒナーの法則(S = k log I)や精神物理学的研究法として、
   今日の心理学の礎になっています。
   
   ただ、彼の目指した意識と身体との関係を、
   関数として表すことはついに出来ませんでした。
   
   人間の意識は、
   心理学の誕生から考え抜かれているにもかかわらず、
   いまだ決定的な研究のやり方自体、
   ハッキリしていないフロンティアでありつづけています。
   
   よって、     
   
        正解は  【 c. 】
   
   
   【Q2】「身体」に関する問題
   
   身体の側面から、心へ影響を与える方法の1つとして、
   薬物療法が挙げられる。
   抗うつ薬であるSSRIがうつ症状の軽減に効果を発揮するとき、
   脳の内部で作用しているのはどこか。
   もっとも適当と考えられる選択肢を選びなさい。
   
   
        ============選択肢===========
   
         a. シナプス(synapse)
         b. レセプター(receptor)
         c. トランスポーター(transporter)
         d. セロトニン(Serotonin)
   
        ============================
   
   
   【解説】
   
   ※ この問題は、最終的には正解する必要はありません。
   
   SSRIの詳細な作用機序は、
   実際にはまだ専門家間でも議論が分かれていて、
   我々門外漢の場合、理解しようとすることによって、
   逆に混乱してしまうことの方が多いと思うからです。
   
   したがって、この問題に正解してしまった人は、
   逆に、勉強においてカンペキ主義に陥っていないか注意してください。
   
   とはいえ、医療現場で心理職として仕事をしたいという場合など、
   脳の構造と脳内の神経伝達の仕組みなどは、
   基本的な知識として、理解できるようにしておきましょう。
   
   
   まずSSRIが、うつ病の治療に用いられる、
   
    セロトニン 選択的 再吸収 阻害薬
   (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)
   
   の略だということを思い出しましょう。
   
   次に、脳細胞間での神経伝達の仕組みを思い出す必要があります。
   
   選択肢のなかに分からない単語があっても、
   これらの知識から、答えを推測することが出来ます。
   
   まず、感覚刺激等は、電気信号(神経信号)として、
   脳内ではニューロンと呼ばれる脳神経細胞によって伝えられます。
   
   ただし、ニューロンとニューロンの間では、
   神経信号ではなく、神経伝達物質と呼ばれる化学物質によって
   情報を伝達する仕組みになっています。
   
   
   ● ニューロン間での情報伝達経路
   
    ニューロン → シナプス前部 
              ↓
            神経伝達物質(セロトニン) 
              ↓
            レセプター(シナプス後部) → ニューロン 
   
   
   ニューロンとニューロンの間の隙間は、
   シナプス間隙といいます。
   
   シナプス前部では、ニューロンを伝わってきた神経信号を受けて、
   セロトニンのような神経伝達物質を放出します。
   
   放出された神経伝達物質は、
   相手側のシナプスにあるレセプターと結びつき、
   それによって、次のニューロンに信号が伝わります。
   
   このとき、レセプターに結びつかなかったセロトニンは、
   セロトニントランスポーターと呼ばれる回収機構によって回収されます。
   ● SSRIは、セロトニンの再吸収を阻害することで、
   シナプス間のセロトニン濃度を高める働きをしているとされます。
   
   脳内のセロトニン量はうつ症状と関係しており、
   セロトニン濃度を高めることで、
   うつ症状に効果を発揮していると考えられます。
   これまで、他の三環系抗うつ剤は、
   セロトニン以外の伝達物質にも影響を与え、
   その結果、様々な副作用を生じていました。
   
   今回、セロトニンだけに作用するフルボキサミンの発見によって、
   この点が改善されたSSRIは、うつ病への第1選択として、
   世界的に広がりつつあります。
   
   よって、
  
          正解は 【 c. 】
   
      
  【Q3】「認知過程」に関する問題
   
   認知過程(cognitive process)の特徴として、
   もっとも適当な語句の組み合わせを次の選択肢から選びなさい。
   
        A 感覚刺激
        B 記憶や思考
        C 独自な構造
   
        =======選択肢========
      
        a. A + C
        b. B
        c. A + B + C
      
        ====================
   
   
   【解説】
   
   ※ 感覚・知覚・認知の関係を問う問題です。
   
      
   感覚は、感覚刺激を最大限忠実に反映しています。
   ここで、  感覚 = A
   それに対して、知覚は、
   感覚から成立する物でありながら、
   ある程度感覚刺激から離れた独自な構造(ゲシュタルト性)を持ちます。
   
   つまり、  知覚 = A+C
   
   感覚から得られた情報への推測や、補足などを反映し、
   またそれらを全て統合するプロセスが介在しているためです。
   
   認知過程は、
   知覚(A+C)について、
   既存の記憶と照合し、分析して理解すること(B)を含む、
   非常に高度な処理過程です。
   
   
   よって、  認知過程 = A+B+C
   
   人間の心のどこまでが、認知過程の問題として解明できるのかは、
   まだ明らかになっていません。
   しかし、以上のように心の広いの領域を扱えるために、
   現在の心理学においては、
   欠かすことに出来ない側面になっています。
   
   したがって、
   
          正解は  【c.】
   
   
  【Q4】「ゲシュタルト」に関する問題
   
   以下に示した選択肢のうち、
   知覚現象におけるゲシュタルト(Gestalt)の存在を
   示唆するとはいえないもの、を選びなさい。
   
   
        ================選択肢===============
        
         a. 仮現運動(apparent movement)
         b. 両眼視差(binocular disparity)
         c. 図と地(figure and ground)
         d. プレグナンツの法則
(principles of pregnancy)
        
        ====================================
   
   
   【解説】
   
    ※ ここでは、選択肢に上げられた概念を、
    一つ一つ検討していきましょう。
   
   まず、a.の仮現運動は、ネオンサインに応用されています。
   
   二つのランプが交互に点滅するとき、
   一定の速度を超えると、
   光が横に移動しているように見える現象です。
   
   仮現運動が生じているということは、
   実際の刺激(交互に点滅する光点)から、
   移動する光点という、実際には存在していない知覚が
   作り上げられていることを、示唆しています。
   
   移動する光点は、ゲシュタルトの性質を備えています。
   c.の図と地も同様です。
   
   日本ではルビンの杯と呼ばれる図では、
   白い部分に注意を向けるか、黒い部分に注意を向けるかによって、
   まったく違う図に見えます。
   
   注意を向け換えた瞬間、我々には意識できないくらいの時間で、
   成立していた知覚の全体としての性質はバラバラになり、
   次の瞬間にはまた新しい図として体制化されます。
   
   これがゲシュタルトの崩壊と、再体制化のプロセスです。
   
   こうした体制化に際しては、いくつかの要因があることが、
   ゲシュタルト心理学の研究からわかっています。
   
   それがd.のプレグナンツの法則です。
   
   人間は全体として、
   もっとも簡潔な秩序を持ったまとまりを見出そうとする
   傾向をもっている、とするものです。
   
   b.の両眼視差は、両目から見える像のズレのことであり、
   外界の奥行きを推し量るための情報として利用されます。
   
   視覚は、
   そのゲシュタルト性が非常にシンプルに現れる領域です。
   そのため、ゲシュタルト心理学においては
   中心的に研究されました。
   
   ただし、他の3つに対して、
   直接的にゲシュタルト性の存在を示唆するとはいえません。
   
   よって、
          正解は 【 b. 】
   知覚現象におけるゲシュタルトの存在は、
   行動主義全盛の当時の心理学界に対するアンチテーゼとなりました。
   人間の知覚が現実を忠実に反映したレンズではなく、
   無数の情報から統合された、
   独自の構造として成立しているという発見からは、
   その背後にあるべき、なんらかの統合プロセスの存在を暗示します。
   これは後の認知心理学にも大きな影響を与えました。
   
   また、
   
   部分に対する全体が、
   単なる総和以上の独自の性質を持ちうる
   
   という発想は、
   個人の知覚現象を超えた集団への視点として、
   社会心理学にも受け継がれました。
   
   ゲシュタルトの成立と、崩壊、再体制化のプロセスは、
   我々が、同じものを見ているにもかかわらず、
   まったく異なった見方をするようになる、
   気づきの瞬間の比喩にも用いられます。
   
   これは、ゲシュタルト療法の基本概念として、
   広く受け入れられるようになっています。
   
   このように、心の持つゲシュタルトという側面は、
   のちの心理学に様々な影響を与えています。
   
   勉強を始めたばかりの人には分かりづらいかもしれませんが、
   理解できれば、新しい心の見方が開けていくはずです。
   
  【Q5】心理学の「枠組み」に関する問題
   
   ゲントナー(Gentner)とグルーディン(Grudin)は、
   心理学は歴史的に、「生き物」「神経」「空間」「システム」
   の4つのメタファーによって説明されてきたとしている。
   心理学史後期において、もっとも多く利用されたメタファーは、
   次のうちどれか。
   
   
        ===============選択肢==============
        
         a. 「神経」(neural metaphor)
         b. 「生き物」(animate being metaphor)
         c. 「システム」(system metaphor)
         d. 「空間」(spatial metaphor)
        
        ==================================
  
  
  【解説】
   
   ※ 最後に、心理学の試験勉強には必要ないかもしれませんが、
   本メルマガでも大きなテーマとしている、
   心理学をより大きな枠組みから分類しようという試みを、
   1つご紹介したいと考え出題してみました。
   
   提唱者の名前などはあまり重要ではないので、
   あまり気にしないでかまわないと思います。
   
   ただ、心を何に例えるか、という視点は、
   非常に一般的で、理論を分かりやすくする以上に、
   重要な意味を持っていると思われます。
   
   4つのメタファーが挙げられていますが、
   正解を知ろうというより、
   おのおのの比喩に、どのような理論が当てはまるのか、
   現代における心の捉え方としては、
   どのような方向に向かっているのか、を、
   考えてみてもらえるといいと思います。
   
   
   例えば、「空間」メタファーとしてすぐに思いつくのは、
   認知心理学における記憶モデルです。
   
   心を大きな空間と仮定して、入力された情報を、
   
   ◆ 仮に置く場所(ワーキングメモリ:working memory)
   ◆ 一時置き場(短期記憶:short-term memory)
   ◆ 保存庫(長期記憶:long-term memory)
   
   に分ける、という発想をします。
   
   心や心の要素それ自体を「生き物」として捉えることは、
   現代の心理学ではあまりありません。
   
   ただ、フォーカシングや、ユング派、などなど、
   心理療法の世界では、
   様々なレベルで心の一部を自分とは違う生き物とみなすことで、
   内的対話をしやすくすることはよくあります。
   
   「神経」のメタファーは、
   例えば、眠気を副交感神経が優位な状態、
   と考える、といった、神経系についての理解に依存しています。
   
   それに対し、
   生理的な構造や働きは気にせず、心の働きの様々な側面を、
   相互作用し合い、フィードバックし合う、システムとして捉えるのが、
   「システム」メタファーです。
   
   システムの比喩は、
   以前は単なる機械を連想させるところがありましたが、
   近年様々な新しいモデルが提唱され、
   有機体や環境の在り様までもが
   システムとして捉えることが出来るようになりつつあります。
   
   システムは、心理学だけでなく、
   他の多くの学問にも持ち込むことが可能な概念であるため、
   これからますます多くなっていくことが予想されます。
   
   よって、
           正解は 【 c. 】
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   【参考文献】
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   ● 比喩から学ぶ心理学 2004 田邊敏明 北大路出版
   
   ● キーワードコレクション 心理学 1994 重野純 新曜社
   
   ● 心理用語の基礎知識 1973 東 洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 友斐閣
   ● 心理学 1996 鹿取廣人・杉本敏夫 東京大学出版会
   ● 心理学辞典 1999 中島義明ら 編 有斐閣 
 
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   【編集後記】
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   ここまで読んでくださった皆さん、お疲れ様でした。
   …正直、お疲れでしょう。
   前回解説号でも同じような編集後記を書いてしまったのですが、
   今回、輪をかけて
            長くなってます。
   ただ、解説号では、
   問題も載せつつ、単なる答え合わせに終わらないよう、
   広がりを意識した解説を載せています。
   そのため、ちょっとしたエッセイが5本載っている、
   というような状態になってしまうんですね。
   この件については、
   問題数を減らす、解説を短くする、などの手段を検討中です。
   どれも一長一短なので、正直悩んでいます。
   ご意見をお持ちの方は、
   clip-academy@clinicalpsychology.jp
   までお寄せください。
   
   そのほか、ご意見をお寄せくださった皆さん、
   ありがとうございます。
   
   順次対応していきたいと思いますので、
   今しばらくお待ちください。
   
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 送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
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