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2005年12月20日火曜日

【Clip!アカデミー】第27回:解説号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第27回2005/12/20
第3週 解説号「心の研究法図を作る
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/


    ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題号の解説】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。


   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本サイクルでは、
新しく心の研究法図を立てる中で、
研究法を通してまた異なる視点から心理学を見ています。

●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

前回エッセイ号では、
こころという目に見えないものを観察可能な形に落とし込む、
現在の心理学でも行われている一般的な過程を通じて、
心理学における研究法の検討をスタートしました。

心理学を、知識としてではなく、
心理学的なものの考え方として身に付けていくことを、
ここでは目的としましょう。

今回は解説号です。

問題号を読んで、
ご自分で考えてみたことと照らし合わせながら、
今回の解説を読んでみてください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【問題号の解説】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】仮説検証

仮説検証の方法として、
もっとも不適当なものを以下の選択肢から選びなさい。


  ===========選択肢============

a. 例証とは、仮説の正しさを支持する実例を、
積み重ねることで、仮説を検証すること。

b. 反証とは、仮説を支持しない実例をあげることで、
仮説が成立することを証明すること。

c. 仮説検証では、どんなに例証を積み上げても、
仮説を証明したことにはならない。

d. 仮説検証では、反証が成り立つかによってこそ、
仮説が成り立つかどうかを検証することが出来る。

==========================


正解は、  【 b. 】
 ……反証は、仮説が成立しない、という証拠です。


ここでは、仮説検証における帰無仮説の役割について説明します。

仮説検証には、例証と反証とがあります。

よく、女性に好意を持って欲しければ、
ジェットコースターに乗せろ、
とか言いますね。

ここに、「心拍数と恋愛感情は関係がある」
という仮説があったとします。

社会心理学に、有名な吊り橋実験というものがありますが、
不安定な吊り橋を渡ったところで出会った女性への好感度は、
通常よりも高く評価される、という結果が出ています。

この結果を読んだ皆さんは、
あ、そういえば、と、色々な実例を思い出すかもしれません。

このように、仮説の正しさを示すような例を挙げることで、
仮説を検証することを、例証といいます。

我々が日常でよくやりがちな例証ですが、
実は、仮説を支持しないような実例が見過ごされる、
という危険性があります。

そこで、科学的な検証においては、
帰無仮説の棄却、という手続きを取ることがあります。

つまり、主張したい仮説とは逆の仮説を立て、
それを一定の基準に照らし合わせて否定することができれば、
反証が見過ごされるという危険性を、
乗り越えることができる、と考えるわけです。

これを厳密に行うためには、
統計学の知識と、計算ツールが必要です。

しかし、
1、常に反証を考慮する
2、常に一定の基準に照らし合わせる

という2点は、我々が安易な思い込み(仮説)から、
物事を判断してしまうことに、ストップを掛けてくれるはずです。

ちなみに、科学においては、反証が可能でなければ、
科学理論ではない、と考える考え方もあります。

反証ができないというのは、
反証が探してもなかった、という意味ではありません。

ここでいう反証可能性とは、
その理論を支持しないという証拠を探してきて、
理論の正当性を検討する、という科学的な検証の手続きが
可能かどうか、を指します。

反証可能性がなければ、
その理論の正当性を、受け入れるか受け入れないか、
の選択肢しかないことになります。

これは、科学の中ではフェアな議論ができないと見なされます。

その意味では、フロイトの精神分析理論も、
反証可能性がなく、科学理論とは呼べない、
ということにもなるのです。


【Q2】心的概念と研究法

次の文章を読んで、以下の設問に答えなさい。

「こころ」やその構成要素であると思われるような人の内的過程や状態を
意味する概念、つまり心的概念を人間行動の原因的説明に用いることは、
人間の日常生活において一般的であると同様に、心理学においても古くから
一般的であった。
(略)しかし、こうした心的概念を用いて行動を説明することの根拠は、
実は非常に脆弱である。多くの心的概念は人の内部にあり行動に因果的に
先行すると仮定されているが、そうした内的過程の存在は観察された行動や
行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合客観的に
観察された事象、つまり外的なものに還元されてしまう
(サトウ・渡邊・尾見,2000)。

ここで述べられている「心的概念」とは、
以下にあげた【心の側面】の中ではどれにあたるか。

A【意識】 B【身体】 C【潜在意識】 D【認知過程】

「心的概念」にあたるものを○、あたらないものを×として、
正しい組み合わせを以下から答えなさい。


======選択肢====

       A B C D

a.  ○ ○ ○ ×
b.  ○ × ○ ×
c.  ○ ○ ○ ○
d.  ○ × ○ ○

=============

正解は、  【 d. 】
 ……脳の生理学的過程は、概念ではありません。

科学的に思考できる、ということには、
科学が思考のために便宜的に立てた仮説(存在しないもの)と、
実際に存在しているもの、を区別できることも含まれます。

本メルマガで毎回図式を立てるために用いている、
以下の概念。

【心の側面】…【意識】【潜在意識】【認知過程】
       【ゲシュタルト】【身体】【行動】

これらも、心理学から見た心を、捉えやすくまとめるための、
便宜的なカテゴリーです。

けっして、心がこうした6つの部品の組み合わせによって
できている訳ではありません。

その意味では、
【身体】というカテゴリーも心的概念ではないか、
という疑問も出てくるかもしれません。

これは、身体をどのような意味で捉えるかに
よって異なってくるのですが、
本メルマガでは、これまで心の【身体】の側面を、
脳や神経系の生理的プロセスを含むものとして捉えてきたことから、
心的概念との対比として、
問題では【身体】と他の側面との比較を行いました。

引用文は、渡邊論文
『メタファーとしての「こころ」-心的概念が意味しているもの』
からです。

メタファーである心的概念を、
実体として捉えることから生じている研究上の問題と、
逆に、日常の中でこうした心的概念を用いることの意義を、
対比させて論じている点が、
行動主義からの単なる批判に終わっておらず、面白い点です。

なぜ心理臨床家が、心的概念を、
操作的定義によって数値にすることに抵抗を覚えるのか、
という点に、有益な説明を与えているように思います。


【Q3】傾性概念

前回エッセイ号では、
目に見えない心を観察可能な形に変換し、
研究に乗せるという、心理学研究における一般的な流れの触りを
説明しました。
整理し直すと、以下のような流れになります。

こころ →(1) → (2) → (3) → (4)→ 仮説検証

次のA~Dの概念を並べ替えて、
上記の流れを完成させることのできる組み合わせを、
選択肢より選びなさい。

A 傾性概念 B 理論的構成概念 C 操作的定義 D 測定

========選択肢========

(1) (2) (3) (4)
a.  A   B   D   C
b.  A   B   C   D
c.  B   C   A   D
d.  B   A   C   D

===================


正解は、  【 c. 】
 ……ポイントは、傾性概念と理論的構成概念の順序です。

傾性概念という言葉は、
聞き慣れない人が多いのではないかと思います。

ただ、前エッセイ号の話の流れを、
理論的枠組みから整理する上では、
理論的構成概念と、傾性概念の区別に触れることになるので、
取り上げました。

傾性概念は、
ファイルキャビネットの
引き出しにつけるラベルのように、
単純に現象をまとめるためにつけられた名前です。

例えば、
S-R理論とS-O-R理論を比べると、
R(反応)は、単純に観察される現象や行動を集約するために
つけられた名前にすぎませんが、
O(有機体)は、
Rという行動の要因である内的過程が仮定されています。

このRが、傾性概念、
Oが、Q2で取り上げられていた、
心的概念とか、こころとか、理論的構成概念になります。

設問のA~Dの選択肢では、
傾性概念以外の用語はすでに説明したので、
あとはこれをどこに位置付けるか、
ということになります。

こころ→ 理論的構成概念→ 操作的定義→ 傾性概念→ 測定

という流れはつまり、

理論的構成概念が、操作的定義によって、
傾性概念に変換される、あるいは還元されたことを示しています。

エッセイ号の例で言えば、
「恋人の愛情」が、
「打ったメールの数」に還元されている訳です。

Q2でも述べたように、
ここに、臨床心理学者の難しさがあります。

カウンセラーとしては、
「恋人の愛情」を、「打ったメールの数」に還元することは、
決して、クライエントの状況を理解する助けにはならないでしょう。

むしろ、無意識的な欲求や、相手の気持ちを仮定する事の方が、
状況の全体的な理解の助けになります。

しかし、研究者としては、
こうした見解には慎重になる必要があります。

なぜなら、科学的に物を考えるということは、
幾重にも条件を設定し、
常に一定の基準から、何がいえるかを考えていくことだからです。

たとえ言えることが少なくても、
これは確かに言うことができる、という点を、
積み上げていくことが重要になるのです。

心理学を実際に応用する上では、
こうした区別にも敏感になり、
適宜使い分けられることが必要でしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【エッセイ号】… 1月3日(火)にお送りする予定です。
  ※ 12日27日はお休みです。特別号が配信されることがあります。

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【参考文献】
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● グラフィック社会心理学 池上和子 遠藤由美 1998 サイエンス社

● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回、今回と引用した「心理学論の誕生」。

日本の若手心理学者たちの作った論文集ですが、
教科書に載っている心理学の暗黙の前提を、
真面目に捉え直しているところが面白いので、
紹介してみました。

ただ、教科書的な知識を一通り学ぶ前に読んでしまうと、
逆に混乱を招くかもしれません。

頭の片隅に置いておいて、
何年後かに読んでみると、
面白い本かもしれません。



====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年12月13日火曜日

 【Clip!アカデミー】第26回:問題号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第26回2005/12/13
第2週 問題号「心の研究法図を作る」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【それでは問題です】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。




   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
 ※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回から、Clip!アカデミーでは、
新しく心の研究法図を立てる中で、
研究法を通してまた異なる視点から心理学を見ていきたいと思います。

●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

前回エッセイ号では、
こころという目に見えないものを観察可能な形に落とし込む、
現在の心理学でも行われている一般的な過程を通じて、
心理学における研究法の検討をスタートしました。

心理学を、知識としてではなく、
心理学的なものの考え方として身に付けていくことを、
ここでは目的としましょう。

今回の問題号は、心理学におけるものの考え方の訓練となりそうな、
3題を用意しました。

なかには難しいものもありますが、
次回の解説号まで、一度自分で考え、
答えを出してみてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【それでは問題です】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Q1】仮説検証

仮説検証の方法として、
もっとも不適当なものを以下の選択肢から選びなさい。


  ===========選択肢============

a. 例証とは、仮説の正しさを支持する実例を、
積み重ねることで、仮説を検証すること。

b. 反証とは、仮説を支持しない実例をあげることで、
仮説が成立することを証明すること。

c. 仮説検証では、どんなに例証を積み上げても、
仮説を証明したことにはならない。

d. 仮説検証では、反証が成り立つかによってこそ、
仮説が成り立つかどうかを検証することが出来る。

==========================


【Q2】心的概念と研究法

次の文章を読んで、以下の設問に答えなさい。

「こころ」やその構成要素であると思われるような人の内的過程や状態を
意味する概念、つまり心的概念を人間行動の原因的説明に用いることは、
人間の日常生活において一般的であると同様に、心理学においても古くから
一般的であった。
(略)しかし、こうした心的概念を用いて行動を説明することの根拠は、
実は非常に脆弱である。多くの心的概念は人の内部にあり行動に因果的に
先行すると仮定されているが、そうした内的過程の存在は観察された行動や
行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合客観的に
観察された事象、つまり外的なものに還元されてしまう
(サトウ・渡邊・尾見,2000)。

ここで述べられている「心的概念」とは、
以下にあげた【心の側面】の中ではどれにあたるか。

A【意識】 B【身体】 C【潜在意識】 D【認知過程】

「心的概念」にあたるものを○、あたらないものを×として、
正しい組み合わせを以下から答えなさい。


======選択肢====

       A B C D

a.  ○ ○ ○ ×
b.  ○ × ○ ×
c.  ○ ○ ○ ○
d.  ○ × ○ ○

=============


【Q3】

前回エッセイ号では、
目に見えない心を観察可能な形に変換し、
研究に乗せるという、心理学研究における一般的な流れの触りを
説明しました。
整理し直すと、以下のような流れになります。

こころ →(1) → (2) → (3) → (4)→ 仮説検証

次のA~Dの概念を並べ替えて、
上記の流れを完成させることのできる組み合わせを、
選択肢より選びなさい。

A 傾性概念 B 理論的構成概念 C 操作的定義 D 測定


========選択肢========

(1) (2) (3) (4)

a.  A   B   D   C

b.  A   B   C   D

c.  B   C   A   D

d.  B   A   C   D

===================


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【解説号】… 12月20日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 編 1973
  有斐閣 

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【編集後記】
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今回は、基礎概念の確認、といういつものパターンから、
少し外れています。

というのは、前回のエッセイ号が、
研究法の簡単な概論というより、
研究をはじめるにあたって前提となる考え方についての
内容だったためです。

そのため、今回の内容も、
少し考え方的な問題に偏っています。

頭の体操と思って、気軽にチャレンジしてみてください。

次のエッセイ号からは、
もう少し概論的な内容に戻る予定です。

====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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2005年12月6日火曜日

【Clip! アカデミー】 第25回:新章突入!エッセイ号「心の研究法図を作る」

【Clip! アカデミー】 第25回 2005/12/6
第1週 新章突入:エッセイ号「心の研究法図を作る」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/




      ◆目次◆

            1)【新サイクル突入!】
            2)【研究をするということ】
            3)【操作的定義】
            4)【心の側面】
            5)【研究方法は、捉え方に規定される】
            6)【心の研究法図(仮)】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。



   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
  ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
            第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【新サイクル突入!】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回までは、3ヶ月にわたり、
心の歴史図を通して、心理学における、
心の捉え方の歴史的変遷を検討してきました。

今回からは、新しいサイクルとして、
心理学の研究法について論じて行きたいと思います。


研究法について考えるということは、
実は、心理学の勉強の中で、もっとも重要なことのひとつです。

というのは、

  心理学の研究法を身につける = 心理学者の考え方を身に着ける

ということに他ならないからです。

ですから、
単に心理学の知識が豊富な人を、
心理学者と呼ぶのは、この際やめましょう。

心理学者とは、
心理学の手続き、ロジックから、物事を見ることができる人、
つまり、心理学者として考えることができる人なのです。

それでは、心理学者はどのように考えるのか、
いつものように、非常に大まかにではありますが、
概観していくことにしましょう。

その中から、
心の研究法図を立てていくヒントが得られるかもしれません。

また、皆さんが、
実際に研究を行っていくときの、
発想のヒントになるといいなと思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【研究をするということ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読者の皆さんは、研究法、というと、
どんなことを連想しますか。

心理学に興味のある人なら、
よくテレビでもやっていたりする実験や、
ストレス診断テストなどを思い浮かべるかもしれなせん。

大学院受験のために勉強している人なら、
観察法、実験法、質問紙法……と、
暗記したての専門用語が出てくるかもしれませんね。

どちらも、とても結構です。

ただし、そこには、
一番大事な事が抜けています。

それは、何を、どんな風に研究するのか、
というイメージです。

これが研究のキモで、
実験や質問紙などの具体的な研究法は、
実はここが決まらないと、何の意味もないのです。

つまり、研究法以前に、

   形のない心を、どのように切り取り、どのような捉え方をするか

を考えることが、研究をするということです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【操作的定義】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


そして、初めて研究に取り組むとき、最も苦しむのも、ここです。

前回までの心の歴史図では、
心理学の先人たちが、心をいかにして科学的に捉えるか、
に苦心し、心理学の歴史を作っていったかをたどりました。

逆を言えば、
心をうまく科学的な枠組みの中で捉えることに成功した
人たちが、心理学を作ってきたのだといえます。

ですから、ここに、その研究の価値や、オリジナリティの、
すべてが詰まっているといえます。

ただし、我々には、ゼロから新しい捉え方を
生み出す才能も経験もありませんから、
これまでの心理学の蓄積を、最大に生かすことを考えましょう。

まず、はじめにつまずきやすいのが、
自分が研究したいテーマを、
どうやって具体的な研究に落とせばいいのか分からない、
というものです。

ここで利用できるのが、
前々回の問題号でも触れた、操作主義、という考え方です。

一言でいうと、

 科学的な研究の対象は、
 手続き(操作)によって明確に示されなければならない

ということです。

たとえば、
「恋人の愛情」という形のないものも、
「1日に来る携帯メールの数」という手続きによって表現できるもの、
と定義することができます。

仮に、「恋人の愛情」=「1日に来る携帯メールの数」
ということにしておくわけです。

これなら、抽象的な愛情の代わりに、
1日に来る携帯メールの数を、研究対象にすることができます。

ここではじめて、
具体的な研究方法について考え始めることができるわけですね。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【心の側面】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


たとえば、
愛情=メールの数、ということにすれば、
メール送信という行動の数を調べることで、研究が可能そうです。

しかし、
ここでもうひとつ、前提となっている条件に注意しましょう。

それは、
「恋人の愛情」を、「1日に来る携帯メールの数」として
操作的に定義する、ということは、
心のなかの、【行動】という側面を切り取っているのだ、
ということです。

心には、今までのメルマガでも取り上げてきたように、
行動以外にも、様々な側面があると考えられます。

そして実際、
皆さんは、本当に恋人の愛情が、
1日に来るメールの数で測れると思いますか?

そうです。

実際には、心(愛情) = 行動(メール)ではなく、
     心(愛情) > 行動(メール)ですね。

ですから愛情には、メールの数という、行動として測れる側面もある、
くらいなら許されそうです。

ほかには、たとえば、
恋人が今、どんな気持ちでメールを打っているか→【意識】の側面
メールの少なさは、本当に気持ちの薄さか、
それとも、本人も気づかない何かのサインなのか→【潜在意識】の側面
など、いろいろ考えることができます。

単純に、体調が悪かっただけかもしれないのです。→【身体】の側面


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【研究方法は、捉え方に規定される】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


このように、心を科学的研究に乗せようとする場合、
実際には、心のいずれかの側面に着目し、
それをどのような形で操作的に定義するか、
という手続きが存在しています。

このことが重要なのは、
着目する側面によって、用いることのできる研究法が
変わってくるためです。

メールを送っている恋人が、今どんな気持ちでいるか、
という意識体験は、行動とは一致しないかもしれません。

したがって、行動を対象とした研究では、
今どんな気持ちか、
という意識体験について知ることはできないことになります。

 可能な研究方法は、切り取ろうとする側面に規定される。

これが、
形のない心を、どのように切り取り、どのように捉えるかが、
重要な理由なのです。


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6)【心の研究法図(仮)】
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つまり、心の側面それぞれに、
それを研究しようとして工夫されてきた研究法が存在する、
と考えると、
研究法を、大まかに位置づける枠組みを作ることができそうです。

心の捉え方には様々なものがありますが、
我々は、これまでにいくつかの側面から、
心の捉え方を検討してきたのですから、
ここでもそれを利用しながら、図式を立てて見ましょう。


●心の研究法図(仮)
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          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
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 ※注 【ゲシュタルト・知覚】の側面は、今回は意図的に入れていません。
    
    図式を分かりやすく、シンプルにするためです。
    
    その理由は、一度全体を一通り説明し終わった後に、
    改めて取り上げることにしたいと思います。
   

どうでしょうか。

この図式を通して、
大まかな研究の流れをつかむことができます。

しかし、これは単なる1回きりのプロセスではなく、
日常においても、常に繰り返し行われる、
心理学者としての考え方の流れと考えましょう。

次回は、この図式を使って、
実際に、あれこれと物事を考えてみたいと思います。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 12月13日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● チビクロこころ 中学生高校生のための心理学入門 森まりも 著
 1999 北大路書店

● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
  2004 有斐閣

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 編 1973
  有斐閣


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【編集後記】
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Clip!アカデミーが臨床心理学を学びたい人にも、
基礎心理学の重要性を説き続けている、
その理由がお分かりいただけたでしょうか。

どんなにカウンセリング理論について詳しくなっても、
心理学者として考えることができなければ、
実際の現場において、
カウンセリング理論を応用していくこともまたできません。

特に、最近のスクールカウンセラーばやりによって、
カウンセラーが相談室で、
クライエントを待っていればいい時代は終わりを迎えています。

現場では、心理学者として主体的に考え、
創意工夫できる人間が求められているのです。

そのためには、
専門家としての研究能力が、
これから、現場のレベルでも重要になってくることは、
間違いないところだと考えられます。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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