【Clip! アカデミー】 第27回2005/12/20
第3週 解説号「心の研究法図を作る
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題号の解説】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
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心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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本サイクルでは、
新しく心の研究法図を立てる中で、
研究法を通してまた異なる視点から心理学を見ています。
●心の研究法図(仮)
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【 捉え方 】 【 道具 】
・・・・・ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
→ │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査 →| |
→ |観|【 意識 】…|作|→ 内観法 →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
→ | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
→ | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・ └─┘ └─┘ └─┘
===================================
前回エッセイ号では、
こころという目に見えないものを観察可能な形に落とし込む、
現在の心理学でも行われている一般的な過程を通じて、
心理学における研究法の検討をスタートしました。
心理学を、知識としてではなく、
心理学的なものの考え方として身に付けていくことを、
ここでは目的としましょう。
今回は解説号です。
問題号を読んで、
ご自分で考えてみたことと照らし合わせながら、
今回の解説を読んでみてください。
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2)【問題号の解説】
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【Q1】仮説検証
仮説検証の方法として、
もっとも不適当なものを以下の選択肢から選びなさい。
===========選択肢============
a. 例証とは、仮説の正しさを支持する実例を、
積み重ねることで、仮説を検証すること。
b. 反証とは、仮説を支持しない実例をあげることで、
仮説が成立することを証明すること。
c. 仮説検証では、どんなに例証を積み上げても、
仮説を証明したことにはならない。
d. 仮説検証では、反証が成り立つかによってこそ、
仮説が成り立つかどうかを検証することが出来る。
==========================
正解は、 【 b. 】
……反証は、仮説が成立しない、という証拠です。
ここでは、仮説検証における帰無仮説の役割について説明します。
仮説検証には、例証と反証とがあります。
よく、女性に好意を持って欲しければ、
ジェットコースターに乗せろ、
とか言いますね。
ここに、「心拍数と恋愛感情は関係がある」
という仮説があったとします。
社会心理学に、有名な吊り橋実験というものがありますが、
不安定な吊り橋を渡ったところで出会った女性への好感度は、
通常よりも高く評価される、という結果が出ています。
この結果を読んだ皆さんは、
あ、そういえば、と、色々な実例を思い出すかもしれません。
このように、仮説の正しさを示すような例を挙げることで、
仮説を検証することを、例証といいます。
我々が日常でよくやりがちな例証ですが、
実は、仮説を支持しないような実例が見過ごされる、
という危険性があります。
そこで、科学的な検証においては、
帰無仮説の棄却、という手続きを取ることがあります。
つまり、主張したい仮説とは逆の仮説を立て、
それを一定の基準に照らし合わせて否定することができれば、
反証が見過ごされるという危険性を、
乗り越えることができる、と考えるわけです。
これを厳密に行うためには、
統計学の知識と、計算ツールが必要です。
しかし、
1、常に反証を考慮する
2、常に一定の基準に照らし合わせる
という2点は、我々が安易な思い込み(仮説)から、
物事を判断してしまうことに、ストップを掛けてくれるはずです。
ちなみに、科学においては、反証が可能でなければ、
科学理論ではない、と考える考え方もあります。
反証ができないというのは、
反証が探してもなかった、という意味ではありません。
ここでいう反証可能性とは、
その理論を支持しないという証拠を探してきて、
理論の正当性を検討する、という科学的な検証の手続きが
可能かどうか、を指します。
反証可能性がなければ、
その理論の正当性を、受け入れるか受け入れないか、
の選択肢しかないことになります。
これは、科学の中ではフェアな議論ができないと見なされます。
その意味では、フロイトの精神分析理論も、
反証可能性がなく、科学理論とは呼べない、
ということにもなるのです。
【Q2】心的概念と研究法
次の文章を読んで、以下の設問に答えなさい。
「こころ」やその構成要素であると思われるような人の内的過程や状態を
意味する概念、つまり心的概念を人間行動の原因的説明に用いることは、
人間の日常生活において一般的であると同様に、心理学においても古くから
一般的であった。
(略)しかし、こうした心的概念を用いて行動を説明することの根拠は、
実は非常に脆弱である。多くの心的概念は人の内部にあり行動に因果的に
先行すると仮定されているが、そうした内的過程の存在は観察された行動や
行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合客観的に
観察された事象、つまり外的なものに還元されてしまう
(サトウ・渡邊・尾見,2000)。
ここで述べられている「心的概念」とは、
以下にあげた【心の側面】の中ではどれにあたるか。
A【意識】 B【身体】 C【潜在意識】 D【認知過程】
「心的概念」にあたるものを○、あたらないものを×として、
正しい組み合わせを以下から答えなさい。
======選択肢====
A B C D
a. ○ ○ ○ ×
b. ○ × ○ ×
c. ○ ○ ○ ○
d. ○ × ○ ○
=============
正解は、 【 d. 】
……脳の生理学的過程は、概念ではありません。
科学的に思考できる、ということには、
科学が思考のために便宜的に立てた仮説(存在しないもの)と、
実際に存在しているもの、を区別できることも含まれます。
本メルマガで毎回図式を立てるために用いている、
以下の概念。
【心の側面】…【意識】【潜在意識】【認知過程】
【ゲシュタルト】【身体】【行動】
これらも、心理学から見た心を、捉えやすくまとめるための、
便宜的なカテゴリーです。
けっして、心がこうした6つの部品の組み合わせによって
できている訳ではありません。
その意味では、
【身体】というカテゴリーも心的概念ではないか、
という疑問も出てくるかもしれません。
これは、身体をどのような意味で捉えるかに
よって異なってくるのですが、
本メルマガでは、これまで心の【身体】の側面を、
脳や神経系の生理的プロセスを含むものとして捉えてきたことから、
心的概念との対比として、
問題では【身体】と他の側面との比較を行いました。
引用文は、渡邊論文
『メタファーとしての「こころ」-心的概念が意味しているもの』
からです。
メタファーである心的概念を、
実体として捉えることから生じている研究上の問題と、
逆に、日常の中でこうした心的概念を用いることの意義を、
対比させて論じている点が、
行動主義からの単なる批判に終わっておらず、面白い点です。
なぜ心理臨床家が、心的概念を、
操作的定義によって数値にすることに抵抗を覚えるのか、
という点に、有益な説明を与えているように思います。
【Q3】傾性概念
前回エッセイ号では、
目に見えない心を観察可能な形に変換し、
研究に乗せるという、心理学研究における一般的な流れの触りを
説明しました。
整理し直すと、以下のような流れになります。
こころ →(1) → (2) → (3) → (4)→ 仮説検証
次のA~Dの概念を並べ替えて、
上記の流れを完成させることのできる組み合わせを、
選択肢より選びなさい。
A 傾性概念 B 理論的構成概念 C 操作的定義 D 測定
========選択肢========
(1) (2) (3) (4)
a. A B D C
b. A B C D
c. B C A D
d. B A C D
===================
正解は、 【 c. 】
……ポイントは、傾性概念と理論的構成概念の順序です。
傾性概念という言葉は、
聞き慣れない人が多いのではないかと思います。
ただ、前エッセイ号の話の流れを、
理論的枠組みから整理する上では、
理論的構成概念と、傾性概念の区別に触れることになるので、
取り上げました。
傾性概念は、
ファイルキャビネットの
引き出しにつけるラベルのように、
単純に現象をまとめるためにつけられた名前です。
例えば、
S-R理論とS-O-R理論を比べると、
R(反応)は、単純に観察される現象や行動を集約するために
つけられた名前にすぎませんが、
O(有機体)は、
Rという行動の要因である内的過程が仮定されています。
このRが、傾性概念、
Oが、Q2で取り上げられていた、
心的概念とか、こころとか、理論的構成概念になります。
設問のA~Dの選択肢では、
傾性概念以外の用語はすでに説明したので、
あとはこれをどこに位置付けるか、
ということになります。
こころ→ 理論的構成概念→ 操作的定義→ 傾性概念→ 測定
という流れはつまり、
理論的構成概念が、操作的定義によって、
傾性概念に変換される、あるいは還元されたことを示しています。
エッセイ号の例で言えば、
「恋人の愛情」が、
「打ったメールの数」に還元されている訳です。
Q2でも述べたように、
ここに、臨床心理学者の難しさがあります。
カウンセラーとしては、
「恋人の愛情」を、「打ったメールの数」に還元することは、
決して、クライエントの状況を理解する助けにはならないでしょう。
むしろ、無意識的な欲求や、相手の気持ちを仮定する事の方が、
状況の全体的な理解の助けになります。
しかし、研究者としては、
こうした見解には慎重になる必要があります。
なぜなら、科学的に物を考えるということは、
幾重にも条件を設定し、
常に一定の基準から、何がいえるかを考えていくことだからです。
たとえ言えることが少なくても、
これは確かに言うことができる、という点を、
積み上げていくことが重要になるのです。
心理学を実際に応用する上では、
こうした区別にも敏感になり、
適宜使い分けられることが必要でしょう。
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【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 1月3日(火)にお送りする予定です。
※ 12日27日はお休みです。特別号が配信されることがあります。
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【参考文献】
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● グラフィック社会心理学 池上和子 遠藤由美 1998 サイエンス社
● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房
● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
2004 有斐閣
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【編集後記】
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前回、今回と引用した「心理学論の誕生」。
日本の若手心理学者たちの作った論文集ですが、
教科書に載っている心理学の暗黙の前提を、
真面目に捉え直しているところが面白いので、
紹介してみました。
ただ、教科書的な知識を一通り学ぶ前に読んでしまうと、
逆に混乱を招くかもしれません。
頭の片隅に置いておいて、
何年後かに読んでみると、
面白い本かもしれません。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
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2005年12月20日火曜日
【Clip!アカデミー】第27回:解説号「心の研究法図を作る」
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