【Clip!アカデミー】 第28回 2006/1/3
第1週 エッセイ号「心の研究法図を分析していくと」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【 心の側面を捉えるための道具 】
3)【身体】…【科学的観察】=解剖や生理的指標の利用
4)【意識】…【言語報告】 =言語報告の重要性と限界
5)【潜在意識】…【対話】=事例から見えてくるもの
6)【行動】…【条件統制】=条件を統制した上での観察
7)【認知】…【モデル構築】=数理的解析とモデルの構築
8)【歴史的蓄積の意味】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※
メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
のフォント設定のやり方を載せてあります。
○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
無料心理学メールマガジンです。
■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
※【今回はこちら!】 第2週「問題号」…練習問題
↓
第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これまで、本メルマがでは、心の捉え方という言葉で、
心理学の概念を検討してきました。
今回は、心の研究法図を使いながら、
そのまま研究対象を捉えるための手段である、
研究法について、より詳細な検討に入っていきましょう。
●心の研究法図(仮)
===================================
【 捉え方 】 【 道具 】
・・・・・ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
→ │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査 →| |
→ |観|【 意識 】…|作|→ 内観法 →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
→ | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
→ | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・ └─┘ └─┘ └─┘
===================================
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【 心の側面を捉えるための道具 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
心理学における研究法は、
心の捉え方を具体化し、実際に研究するために用いられる道具だと
考えられます。
ここで重要なのは、
心理学においては心をどう捉えるかという捉え方自体が、
新しい発明であり、それは、心の捉え方を具体化する道具の発明と、
切り離せないということです。
まずは、
心の側面を捉えるための工夫が、研究法として蓄積されてきた
心理学の歴史=研究法の歴史でもある、
と捉えるところから、始めましょう。
蓄積されてきたということは、
現代において我々がひとつ研究をするにしても、
これまでの研究法の蓄積の上に行われているのだということです。
そこで、心の研究法図にもうひとつ、
現代心理学の研究に、どのように影響を与えたか、
という点を付け加えてみます。
それを検討していくことで、
各研究法をバラバラに見るだけでは見えてこない、
心理学における研究法全体が、
イメージできるようになるでしょう。
心の研究法図2(仮)
===================================
【 捉え方 】 【 道具 】 【研究への影響】
【 身体 】→ 生理学的検査 …【科学的観察】
【 意識 】→ 内観法 …【言語報告】
【潜在意識】→ 事例研究・面接 …【対話】
【 行動 】→ 観察法・実験法 …【条件統制】
【認知過程】→ 調査法・数理的解析…【モデル構築】
===================================
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【身体】…【科学的観察】=解剖や生理的指標の利用
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
科学におけるもっとも基本的な研究法は、
対象を詳しく観察することです。
【身体】の側面を捉える方法は、自然現象としての身体構造や、
生命活動を観察する過程で、発展してきました。
その延長上として、
身体構造や脳の障害を観察するために解剖したり、
皮膚電気反応や脳波など、ありのままでは観察しにくい
生理的反応を、データとして捉えるための技術が発展することになりました。
ただし、心理学における観察法とは、
一般に行動を対象にした、より狭い意味で用いられることが多く、
ここでいう観察とは区別されます。
ただ、研究をするうえでは、
まず始めにこうした科学的に観察する、
という行為が存在することは、覚えておく必要があります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【意識】…【言語報告】 =言語報告の重要性と限界
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
被験者が、主観的な経験を言語化して報告する内観報告は、
現在、独立して用いられることはありませんが、
観察と並ぶ、心理学研究の基本的な要素のひとつといえます。
ウェーバー・フェヒナーらが用いた当初は、
主観的感覚という現象を、データとして
測定することを可能にしたという点で、画期的な意味を持っていました。
その後、内観の対象が、被験者の感情や印象、価値観と
広がっていくにつれて、科学的分析を可能とするデータとして、
言語報告を用いることの困難性が、繰り返し指摘されつつあります。
とはいえ、我々の心は、
行動から推測する以外は、言語を媒介にしてしか
近づくことが出来ません。
これからも、言語報告からいかにして
人間の内面を探るか、心理学者は頭を痛めていくでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)【潜在意識】…【対話】=事例から見えてくるもの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
潜在意識を仮定したフロイトが取ったのは、
精神疾患を抱える人々との、対話による方法でした。
脳の損傷から記憶中枢を定位したヴェルニッケ、ブローカらは、
患者の症状(行動)の原因が脳の損傷部位にある、
という仮説を、解剖で確認することによって、
研究を行いました。
しかし、精神症状の多くは、脳の損傷のような、
観察可能な原因を同定することが出来ていません。
フロイトが個々の患者との対話を元に行ったのは、
精神症状の原因を、観察可能な対象に求めるのではなく、
我々が生きている、言葉の世界に求めることだったといえます。
我々は、主観的には世界や人生や自分の多くを、
言葉によって考え、生きています。
しかし、対話によって自分について突き詰めていけば、
いつか必ず、言葉の外にはみ出てしまう部分、
が出現してくる。
フロイトが精神分析(言葉)によって捉えようとした
無意識とは、このようなものであったようです。
ここでいう言葉の外とは、
物理的な身体や、世界とは明らかに異なるものであり、
客観的な手段では捉えることが出来ません。
様々な面接法や、事例研究を通じて、
心理学者がと捉えようとすることは、
言葉で持って言葉で捉えられないものを捉えようという、
矛盾した試みでもあるのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6)【行動】…【条件統制】=条件を統制した上での観察
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
行動は、心理学において、立場は異なれども、
もっとも重視される研究対象です。
それは、客観的に観察が可能であるのもかかわらず、
我々の心がどういうものか推測するために、
最も多くの情報を与えてくれると考えられているためです。
日常においても我々は、
自覚している以上に、話し合いよりも行動から
相手の気持ちを理解し、それに反応して生活しています。
研究において日常と異なるのは、
研究が行動を、組織的、計画的に観察しようとする点です。
そのためにもっとも重要なのが、
条件の統制(コントロール)です。
「恋人とのメールのやりとりの数」が、
多い人たちと少ない人たちがいるとしたら、
その差はどこにあるのか?
多い群と少ない群に分けたとき、
ある一つの要因以外は、まったく条件が同じであれば、
数の違いを、唯一異なる要因と結びつけて考えることが
許されるでしょう。
こうした手続きをとることが、
日常と研究との違いであり、
心理学者として発言することの意味であると言えるかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7)【認知】…【モデル構築】=数理的解析とモデルの構築
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
モデルを構築するとは、簡単にいうと、
ある結果を引き起こすような因果関係の道筋を、
図式化して示すことだといえます。
いわば、物理学における物理法則のようなものであり、
先行条件さえわかれば、結果の予測が可能になることになります。
しかし、現状としてはこうしたモデルを、
心理学において実証することは難しいのが現状です。
たとえば精神分析における力動的な発達理論は、
実証はされていないけれど、子どもや成人の振る舞いを
ある程度予測・説明できるから、おそらく正しいのだろう、
と受け入れられるケースも少なくありません。
【認知過程】という側面の流行も、
こうしたモデル構築を、ある程度客観性のある手続きである、
因子分析や、共分散構造分析など、
数理的解析によって扱うことが出来るのではないか、
という期待によるところは大きいでしょう。
認知心理学によって発展したこのような手続きは、
心理学研究に広く波及しています。
ただし、モデル構築の目的として、
実効性を求める臨床心理学と、
実証性を求める基礎心理学では違いがあるのは当然で、
このような違いを十分自覚して研究することが、
これからの研究者には求められるでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
8)【歴史的蓄積の意味】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
さて、こうして見ていくと、
結局ひとつの研究を行ううえでも、注意点するべき点というのは、
膨大な先行研究の積み重ねから出てきていることが見えてきます。
当たり前といえば当たり前ではありますが、
一つの研究を行うにあたり、一つの研究法を選び、
それだけ勉強するだけではすまない
ということです。
逆に、全ての研究法が、
自分の興味につながるのだ、という意識から
豊かな発想が生まれてくる。
こう考えることで、
目的意識を持って勉強に取り組めると思いませんか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回 【問題号】… 1月10日(火)にお送りする予定です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【参考文献】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● あなたもできるデータの処理と解析 岩淵千明 編著 1997 福村出版
● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
2004 有斐閣
● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊・藤永保 編 1973
有斐閣
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Clip!アカデミー読者の皆さん、あけましておめでとうございます。
今年1回目のClip!アカデミーをお届けします。
今年も皆さんに、
心理学の勉強に向かうモチベーションと、
学問の楽しさに気付くきっかけをご提供できる、
Clip!アカデミーでありたいと思います。
====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
2006年1月3日火曜日
【Clip!アカデミー】第28回:エッセイ号「心の研究法図を分析していくと」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿