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2006年1月31日火曜日

 【Clip!アカデミー】第31回:エッセイ号「心の研究法図の盲点」

【Clip! アカデミー】 第31回2006/1/31
第1週 エッセイ号「心の研究法図の盲点」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

      ◆目次◆

          1)【前回のまとめ】
     2)【 【ゲシュタルト】の側面を捉える、特有の研究法は、 】
     3)【アクション・リサーチとは、】
4)【アクション・リサーチの現状】
     5)【なぜ心理学において用いられないのか。】
          6)【実践と研究の葛藤】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

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            ■ 基本サイクル ■
 ※【今回はこちら!】 第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
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                 ↓
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         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【前回のまとめ】
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これまで、前回エッセイ号(第28回)を含め、
心の研究法図を立て、それを分析していく中から、
心理学における研究法について、検討してきました。

●心の研究法図(仮)
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          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
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【 捉え方 】 【  道具   】  【研究への影響】 

【 身体 】→ 生理学的検査   …【科学的観察】
【 意識 】→ 内観法      …【言語報告】
【潜在意識】→ 事例研究・面接  …【対話】
【 行動 】→ 観察法・実験法  …【条件統制】
【認知過程】→ 調査法・数理的解析…【モデル構築】
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心の研究法図3回目のエッセイ号となる今回は、
その締めくくりとして、
心理学研究法の、
限界と課題について論じていきたいと思います。

心の研究法図を立てた、
第25回のエッセイ号↓では、

なぜ【ゲシュタルト】の側面
図に入れなかったのかについて、
あえて説明をしませんでした。

【ゲシュタルト】の側面を捉えるために開発され、
今でも心理学に影響を与えているような、特有の研究法。

今回は、そこから話を始めていきましょう。


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2)【 【ゲシュタルト】の側面を捉える、特有の研究法は、 】
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ハッキリこれ、と言えるものがないのです。

【ゲシュタルト】の側面を捉えられる道具が開発され、
心理学に一般化できたのだとすれば、
その成果は、現在の個々の研究にも反映されているはずです。

ゲシュタルト心理学の、心理学全般への影響は、
計り知れないものがありますが、
【ゲシュタルト】の側面を捉えるための道具は、
残念ながら、他の側面と比べて現代心理学において
一般的であるとはいえません。

独自の切り口と、それを研究するための強力な道具がなかったことが、
現在ゲシュタルト心理学が、そのままの形で残っていない
理由のひとつかもしれません。

しかし、それをあえて挙げてみることで、
それを通して、心理学研究法の現状について、
なにかの示唆を得られるでしょう。


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3)【アクション・リサーチとは、】
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アクション・リサーチは、
ゲシュタルト心理学の流れを汲むK・レヴィンによる、
人間全般に一般化できるような結果を求める、
実験室アプローチへの批判として現れました。

実験法では、研究対象を完全に統制し、
研究者の主観を極力排除するところから、
物理学における自然法則のような結果を得ようとします。

それに対してアクション・リサーチでは、
研究対象を、我々の日常から切り離し、
研究者自身から切り離すことを批判します。

むしろ研究者自身が、自分が生活し、
参与しているありのままの現場の中で問題を立て、
それをどう改善できるか、
というところから、研究をスタートさせようとします。

つまり、研究者が現場に参与しながら、
ありのままの研究対象を観察し、
研究者の主観(実感)に基づいた研究をすることを目指したのです。

これは、人間の心を、要素や条件付けに分解することを
批判した、ゲシュタルト心理学当初の理念と、
同じところから来ています。

心理学における研究法として確立し、
産業領域や教育領域、または、社会運動の領域で
用いられるようになりました。

日本においても、
看護や教育、市民運動における行政的かかわりなどに
用いられています。

もちろん、心理学においても研究法の教科書を開けば、
アクション・リサーチについての記述が見られるはずです。

しかし、それにもかかわらず、
アクション・リサーチは、心理学領域においては、
ほとんど用いられていないのです。


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4)【アクション・リサーチの現状】
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その根拠として、
過去に日本において投稿された論文数を、
データベースから検索してみましょう。

アクション・リサーチをキーワードに
ヒットする論文は、
過去に日本では159件あります。

これだけでも、
事例研究でヒットする7696件に比べると、
かなり少ないのですが、
その中でも、心理学関連の雑誌に載っているものは、
明確にわかる限りでは5・6件ほどなのです。

この現状は、どこからくるのでしょうか。


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5)【なぜ心理学において用いられないのか。】
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ひとつには、アクションリサーチ側の限界があります。

1、 研究者が参与しつつ統制できるフィールドでないと難しい
2、 直接「集団」や「集団の中の個人」が対象になる。
3、社会変革に動機付けられている。

アクション・リサーチを実際に用いることの多い、
看護や教育、行政の研究者と、現場の特徴はなんでしょうか。

研究者自身が、実践家であり、
なおかつ、程度の差こそあれ、
実践の中で現場の条件を変更する権限を持っている、
ということです。

また、アクションリサーチは、現場全体の枠組みや、
現場という集団の中での、個人のあり方を直接対象にします。

このことは、心理学や、心理臨床でも行われていますが、
心理学では、個人や個人の内的過程を対象にするため、
集団の扱い方は、あくまでも間接的になります。

しかし、アクションリサーチ的な手法をそこに導入すると、
実際にクライエントの職場でいっしょに働く、
という発想になってしまうのです。

また、集団に参与し、直接介入し、統制する中で、
研究を進めるということは、その現場の責任者であっても、
その現場から、大きな抵抗を受ける可能性が常に存在します。

こうした点が、心理学にはなじまなかったと考えることができます。

ただ、ここから見えてくるのは、
心理学の側の問題点とも言えるところです。

つまり、心理学のほうも、
社会に向いていない点があるのではないか、
という点です。


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6)【実践と研究の葛藤】
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この点については、
皆さんにも考えてほしいと思います。

現在、スクールカウンセラーの配置が進んだことで、
今まで面接室に閉じこもっていたカウンセラーたちが、
社会に出ることが増えてきました。

学校ではじめて、
カウンセラーという存在と出会うという人も、
非常に増えてきています。

今まで、個人を対象にし、
集団や、集団とのかかわりは間接的に扱ってくればよかった
心理学者たちが、
生活者として、社会と直接かかわらなければならない
状況が出現してきているのです。

学校の中で生活していれば、
守秘義務であるとか、臨床家の中立性といった、
これまでカウンセラーを守るために役立ってきた点が、
現場から自分を切り離そう、
という発想になり、逆にカウンセラーの首を絞める場面も出てきます。

そうした点について、
やまだようこらの提唱するフィールド心理学など、
現場の実感を大切にする心理学を模索する試みも始まってきています。

特に臨床心理学は、
心理学の中でも、もっとも現場性が強い領域です。

そこから得られた知見を、共有し、蓄積するための、
新しい研究法が求められているといえるでしょう。

このような流れを、
心の研究法図に組み入れるとしたら、

     【ゲシュタルト】→ ? …【参与観察】

とでも書けるでしょうか。

いずれにしても、まだ取り組みは始まったばかりです。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 2月7日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● ヘルスケアに活かすアクションリサーチ 2005 
  アリソン・モートン=クーパー著 岡本玲子 関戸好子 鳩野洋子 訳
  医学書院

● アクションリサーチの勧め-新しい英語授業研究 2000 佐野正之 著
  大修館書房

● 現場(フィールド)心理学の発想 1997 やまだようこ 伊藤哲司
  佐藤達哉 下山晴彦 奈須正裕 著 新曜社


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【編集後記】
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今回は、アクションリサーチの現状を通して、
臨床心理学における研究法上のボトルネックを
あぶりだす試みをしてみました。

ただ、アクションリサーチという研究法は、
研究法の参考書にはよく乗っている割に、
心理学のなかでは、
ほとんど用いられていない研究法でもあったりします。

そのため、今回はアクションリサーチの
説明も長くなってしまいましたし、
その割りにアクションリサーチ自体、
よく分からない、という人もいるかもしれません。

その点については、
次回の問題号でもフォローしていきたいと思います。

事例研究だけでなく、
もう少し広い視点から、
よりよい質的研究について考えていくきっかけ
になってくれるといいと思います。

その意味で、
やまだようこ編の「フィールド心理学」はお勧め。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
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 無断転載・転用を禁止します。   

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