【Clip! アカデミー】 第30回2006/1/17
第3週 解説号「心の研究法図を分析していくと」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題号の解説】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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今回は、前回問題号の解説をしていきたいと思います。
●心の研究法図(仮)
===================================
【 捉え方 】 【 道具 】
・・・・・ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
→ │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査 →| |
→ |観|【 意識 】…|作|→ 内観法 →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
→ | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
→ | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・ └─┘ └─┘ └─┘
===================================
前回エッセイ号では、
これまでに、心の研究法図を立てて検討してきた、
心理学における研究法について、さらに詳細な分析をしていきました。
●心の研究法図2(仮)
===================================
【 捉え方 】 【 道具 】 【研究への影響】
【 身体 】→ 生理学的検査 …【科学的観察】
【 意識 】→ 内観法 …【言語報告】
【潜在意識】→ 事例研究・面接 …【対話】
【 行動 】→ 観察法・実験法 …【条件統制】
【認知過程】→ 調査法・数理的解析…【モデル構築】
===================================
心の研究法図2は、
心理学が、心の様々な側面を捉えるために、
道具となる研究法を工夫してきたこと、
その結果が、今日の個々の研究にも影響を与えていることを
示しています。
前回は、研究に関する問題3問を通して、
研究法への理解を深めていきました。
今回は、前回問題号の解説を通して、
研究法の基礎的な知識を確認していくエッセイをお送りしていきます。
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2)【問題号の解説】
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【Q1】変数に関する問題
以下の中から、もっとも適切な主張を、ひとつ選びなさい。
==========選択肢==============
a. 独立変数は多ければ多いほど、分析に有利である。
b. 独立変数と予測変数は、どちらも観測変数である。
c. y = ax + bの中で、変数は aである。
d. 従属変数は、分析自体には関わりのない、
いわばおまけのようなものである。
===========================
正解は、 【 b. 】
…独立変数は、実験計画法における呼び方、
予測変数は、回帰分析などで用いられる呼び方です。
どちらも、実際にデータとして観測された変数を指しています。
量的研究につきものの統計処理ですが、
これが苦手な人も多いはずです。
わけの分からない公式や、
統計ソフトの操作に、右往左往するのはいい方で、
受験勉強として丸暗記している人の中には、
さっぱり言葉の意味が頭に入ってこない人もいるでしょう。
しかし、統計の基礎は、すでに中学校時代に
皆さんが触れているものなのです。
たとえば、変数は、中学校の数学においておなじみの、
方程式に代入するために用いる「x」や「y」などの
数字です。
もうひとつ、文系の人には久しぶりなものが、
中学校の数学で習う、y = ax + b
という一次方程式です。
よく、定数aやbを求めて、直線を引かされましたよね。
この直線を回帰直線といい、
予測変数xを観測することで、
回帰直線を用いて変数yを予測しようとすることを、
回帰分析といいます。
定数aとbが定まれば、あとは変数xを実際に測定しなくても、
変数yの値を予測することができる、というわけです。
回帰分析に必要な基礎的な手続きや計算は、
機械的にとはいえ、
実際には皆さんがすでに中学校でやっていたことの延長なのです。
心理学における統計の基礎は、
すでに中学校の数学で勉強したことのあるものです。
思い出してみましょう。
中学の教科書を引っ張り出してみましょう。
少し自信が湧いてくるはずです。
【Q2】統制に関する問題
以下にあげた実験の手続きにおいて、
実験した後に行うものとして、もっとも適当なものを、
次の選択肢からひとつ選びなさい。
=====選択肢=======
a. 実験計画法
b. 実験室状況
c. ディブリーフィング
d. 実験群と統制群
===============
正解は、 【 c. 】
…ディブリーフィングは、実験後に、実験の目的や手続きなど
について、被験者に説明することをさします。
主に社会心理学においては、被験者に嘘の教示をしたり、
サクラをしこんで望みの実験状況を作ることがあるため、
重要になります。
コントロールとは、一種の暴力である。
実験計画法は、もともとはフィッシャーが、
農業における肥料の改良のために用いた方法です。
つまりもともとは、
農業という、同じ条件での毎年の繰り返しの中で、
いかに結果を改善できるか、
を目的として始められた方法だということができます。
農業では、天候などの自然環境に変化はあっても、
毎年同じ手順で同じ時間をかけて同じ結果を求めるわけです。
その中で、ひとつだけ条件を変えてみる。
そうすれば、その変えた条件が、
結果に与えた影響を知ることができるはずです。
もともと、条件をなるべく同じにする、
という統制という手続きが、やりやすい状況だったといえるし、
結果も体験的に実感しやすい。
しかし、心理学においては、
対象は人間の行動です。
人間の行動は、多くは習慣的・機械的なものであっても、
自然環境以外の、多くの社会的環境から豊かな影響を受けています。
社会的環境から引き離されると、
とたんに貧しく、画一的な行動しか見られなくなるかもしれません。
そこから、実験室状況についての、
心理学者の葛藤が生まれたといえます。
果たして、統制された実験室における実験結果は、
どこまで人間存在について一般化しうるのか?
被験者に実験内容を知らせずに、
実験に参加してもらったあとのディブリーフィングも、
独立変数として選択した要因の、
影響の仕方や程度を実感しやすくするための、
実験計画法も、こうした葛藤の中で、選択されてきたといえます。
一方で、実験室状況を作るということは、
人間を、画一的な枠組みに当てはめ、
その中で一定の反応を引き起こさせるには都合のいい状況です。
ミルグラム実験をはじめとして、
権力者による効率的な国民のコントロールのために
利用されやすいのは、そういった理由でもあるのです。
【Q3】多変量解析に関する問題
多変量解析とは、どのような解析方法か。
以下に挙げた1~4の文章の正否の組み合わせとして、
もっとも適切なものを、以下の選択肢から選びなさい。
1)正しいモデルを判定してくれる
2)正しいモデルを探してくれる
3)正しいモデルを作ってくれる
4)正しいモデルであることを証明してくれる
=====選択肢=======
1) 2) 3) 4)
a. ○ ○ × ×
b. ○ ○ × ○
c. × × ○ ○
d. × × × ×
===============
正解は、 【 d. 】
…「正しいモデル」について、何かを自動的に「してくれる」
ものではありません。
因子分析や、重回帰分析、共分散構造解析といった、
多くの変数を一度に扱う解析方法の目的は、
測定された変数間に一定のパターン・構造を見出すことです。
それが、因子分析であれば、観測変数に対する潜在変数、
つまり因子であり、
共分散構造解析であれば、モデルであることになります。
そこにはもちろん、
研究者の想定したモデルが必ず存在します。
しかし、解析法自体は、
純粋に数学的な構造を、最も当てはまりがよい形で
提出してくれるものにすぎません。
つまり、我々が求めている基準に比べると、
かなり大まかな目安を与えてくれるにすぎないのです。
そうしたパターンに意味を見出すのは、
いつだって我々人間の方です。
ですから、いかに高度な分析手法であれ、
変数を放り込めば、何らかの結果を産出してくれる、
と考えるのは間違いです。
そして、それ以上に「正しいモデル」が存在する、
と考えることにも、謙虚である必要があります。
ただし、はじめに研究者の想定していたモデルと、
そうした数学的に算出された構造が、
非常に似通っているとするなら、
そこには、なんらかの必然性が存在しているはずです。
そして、研究者のモデルが論理的にも、
説明として納得できるものであり、
実際に我々の心の理解や、行動の予測に役立つのであれば、
そのモデルには、意味があるといっていいでしょう。
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【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 1月24日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 心は実験できるか―20世紀心理学実験物語
ローレン・スレイター 著 岩坂彰 訳 2005 紀伊国屋書店
● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎 岡隆 編
2004 有斐閣
● あなたもできるデータの処理と解析 岩淵千明 編著 1997 福村出版
● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
2004 有斐閣
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【編集後記】
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【問題数5問。3分で終わるアンケートに答えるだけで、
スターバックス500円券が抽選で20名様に】
※ 皆さんが大学院受験について感じていることを
お聞きしています。
ご協力していただいた方には、抽選で、
少し遅いお年玉のチャンス。
今すぐ受験を考えていない方も
よろしくお願いします。
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Clip!アカデミーも今回で30回。
30回ということは、ちょうど、
【エッセイ→問題→解説】のサイクルを10回づつ繰り返した
計算になります。
心理学を、様々な角度から切ってきました。
どんな角度から切ると、
心理学が、今までと少し違って見えるのか。
少し分かりやすく、捉えやすくなるのか。
こちらもこちらで、毎回頭をひねっていますが、
我々の努力で、皆さんの勉強における負担が、
少しでも軽くなり、その分がモチベーションに
変わっていくことを願っています。
いよいよ、次回のエッセイ号で、
心の研究法図の検討も最後になります。
心理学における研究法の課題について
一緒に考えていきましょう。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
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2006年1月17日火曜日
【Clip!アカデミー】第30回:解説号「心の研究法図を分析していくと」
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