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2008年2月26日火曜日

【Clip!アカデミー】第112回:展開号「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

【Clip! アカデミー】 第112回 2008/2/26
第3週 展開号 「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
 http://www.clinicalpsychology.jp/


  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【ワトソンの人間観とその背景】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
            第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
 ※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 3巡目1ヶ月目 心理学史から
        「ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
  【NOW!】1ヶ月目 心理学の歴史から
   | 2ヶ月目 基礎心理学から1
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
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2)【ワトソンの人間観とその背景】
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●ワトソンの人間観

ワトソンは、1930年に出版された
「行動主義の心理学」において、

健康な1ダースの赤ん坊と、
彼らを育てるための特殊な環境さえあれば、
医者や法律家、芸術家、大実業家、
だけでなく、乞食や泥棒にさえ、
出自に関係なくしてみせる

という趣旨の発言をしている。

ワトソンは、
人間の発達について極端な経験主義の立場に立ち、
生まれたばかりの乳児は、
基本的には「白紙」の状態にあると考えた。

本人の行動や思考、人格に影響を与えるのは、
生まれや遺伝ではなく、
その人が生まれ育った環境と、
その環境のなかでの経験である。

だからこそ、
人間が環境から受け取る刺激と、
その刺激への反応の仕方を研究することで、
どのような人間でも作り出すことが出来るようになる、
という主張が、
ワトソンによる行動主義の未来であった。


●イギリス経験論の影響

人間を「白紙=タブラ・ラサ」と見る人間観は、
イギリスの経験主義者、
ロックのものとして有名である。

ロックは、
人間の知識や理解は、
経験からもたらされると考えていた。

一方で、乳児を「白紙」と見る視点は、
当時の階級社会を批判し、
教育の重要性を強調していたロックの主張にとっても、
都合のよいものだったのである。

直接的なつながりこそないものの、
ワトソンの行動主義は、
イギリスの経験主義や連合主義に、
様々な影響を受けていたように見える。


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3)【解説:知識の展開】
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刺激と反応の間の結びつきを明らかにし、
刺激から反応を予測できるような法則を確立すれば、
行動主義心理学は、
人間の行動を予測し、制御できるはずです。

ここから、
ワトソンの有名な主張が出てくることになります。

それは、
適切な環境と、行動主義の理論さえあれば、
どんな人間でも育てることが出来るようになる、
というものでした。

当時の階級社会では、
出自や遺伝によってその人の能力は決まっている、
という考え方の方が広く受け入れられていました。

ワトソンの主張は、それに挑戦しているという点で、
ロックの主張と似ています。

おそらく、
当時の階級社会のあり方は、
今日のわれわれからは、
想像も出来ないようなかたちで、
個人の可能性を生まれながらにして
決定していたのかもしれません。

適切な環境と理論さえあれば、
どんな人間でも育てられるということは、
言い換えれば、
よい教育を受けられれば、
どんな個人にでも、
可能性が開かれていることを示しています。

しかし、哲学者たちは、
経験や教育の重要性を主張しながらも、
それがどのように起こり、
達成されるのかについての、
具体的な理論は持っていませんでした。

ワトソンは、
自らの学習理論を、
そのようなものとして考えていたかもしれません。

ワトソンの主張は、
今日でもわれわれの目に
過度にラディカルに映ります。

しかし、その主張の向こうに、
彼が何を見据えていたのか、
何を揺り動かそうとしていたのか、
を想像できるようになることが、
歴史を学ぶことの意義であるといえるでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年3月11日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学 鹿取廣人・杉本敏夫編 1996 東京大学出版会

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版
 
● キーワードコレクション 心理学 重野純 編 1994 新曜社


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【編集後記】
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ワトソンの主張は、
非常にラディカルであり、
受け入れがたい要素を多分に持っています。

そのため、今日では、
その主張の多くは修正されて、
そのままの形では、
心理学の中に残ってはいません。

しかしオリジナルな学問は、
それが生まれた時代の他の様々な要素から影響を受け、
また与えながら成立しています。

つまり、
新しいパラダイムが立ち上がるとき、
その主張は、歴史の文脈の中でしか、
読み解くことができない部分を持っているということです。

ワトソン自身が、
貧しい家で生まれ育ったこと、
のちに、社会的・政治的な成功を求めたこと、
ラディカルな主張に込められた熱、
こうしたことを考え合わせると…。

いろいろ想像は浮かびますが、
さて、ワトソンは、行動主義を通して、
いったい何を社会に訴えようとしていたのでしょうか。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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2008年2月19日火曜日

【Clip!アカデミー】第111回:応用号「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

【Clip! アカデミー】 第111回 2008/2/19
第2週 応用号 「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
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      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【アルバート坊やの実験】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
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           第4週 基本的にお休み
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 3巡目1ヶ月目 心理学史から
        「ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

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  ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

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2)【アルバート坊やの実験】
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ワトソンが、
助手のレイナーとともに行った実験についてまとめ、
成果を発表したのは
1920年のことでしたが、
それはアメリカで初めての、
古典的条件付けの成功例でした。

1913年に、
論文「行動主義者から見た心理学」
において新しい心理学の方向性を示唆し、
学会に大きな波紋を投げかけたものの、
パブロフの条件付けの追試は
まだ成功していなかったのです。


当時11ヶ月だった乳児は、
白ネズミに対する恐怖を
条件付けされることになりました。

白ネズミに手を伸ばすしぐさからは、
彼アルバートが、
白ネズミに恐怖を感じていないことが
確認できました。

一方で、突然の大きな音に対しては、
乳児が生まれつき持っている驚愕反応を示し、
泣き叫んで、這って逃げ出すという
行為が見られました。

アルバートが白ネズミに注意を向けたとき、
同時に鉄の棒をハンマーで思い切り叩いて驚かせる、
という手続きを繰り返した後、
アルバートは白ネズミを見ただけで、
泣いて逃げ出そうとするようになりました。

その後、アルバートは白ネズミだけでなく、
白ウサギなど白ネズミに類似のものにも、
同様の恐怖を示すようになりました。


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3)【解説:知識の根っこ】
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アルバート坊やの実験では、
乳児が持っている生得的な恐怖が、
古典的条件付けのプロセスによって拡大していくという、
ワトソンの主張を裏付ける結果が
見られることになりました。

生得的な恐怖とは、
大きな音に対する驚愕反応のことです。

そして、
刺激を同時に提示することによって、
生得的な恐怖は、
提示された刺激と連合し、
独立でも連合した恐怖を喚起するようになったのです。

ここでは、
     大きな音=無条件刺激
     大きな音への恐怖=無条件反応
です。

これに、
     白ネズミ=条件刺激
を連合させます。

すると、
       大きな音→恐怖
だったのが、
実験によって 大きな音→恐怖
       白ネズミ
となり、
最終的には、
       白ネズミ→恐怖(条件恐怖)

という条件付けを形成することになったのです。

このように、
無条件反応が古典的条件付け
によって拡大していくことを、
般化とよんでいます。


アルバート坊やの実験として知られる
この研究は、
条件付けの研究としては大成功でしたが、
大きな物議をかもしたのも事実です。


おそらく、
アルバートに両親がいれば、
このような実験には決して賛成しなかったでしょう。

また、
この実験の影響が
アルバートのその後の人生に、
どのように影を落としたのか、
我々は知らないからです。


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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年2月26日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学 鹿取廣人・杉本敏夫編 1996 東京大学出版会

● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版
 
● キーワードコレクション 心理学 重野純 編 1994 新曜社


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【編集後記】
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アルバート坊やの実験はよく知られています。

おそらく、
この研究がなければ、
行動主義心理学の歴史を語りえないほどに、
心理学の可能性を、
明瞭に語っているためでしょう。

しかし、
アルバート坊やに与えられた
恐怖条件付けはどうなったのか、
その後、アルバート坊やがどうなったのか、
参考書にはハッキリと書かれていない
ことが多いようです。

おそらく、
執筆者・編者も
かなり頭を悩ませているところかもしれません。

皆さんも、気になった方は、
ぜひご自分で調べてご覧になることを
お勧めします。

寡聞なため、
アメリカで、アルバート坊やのその後について、
なんらかの追跡調査が
されたのかどうか知らないのですが、
もしご存知の方がいらっしゃれば、
教えていただければと思います。


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2008年2月12日火曜日

【Clip!アカデミー】第110回:理論号「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

【Clip! アカデミー】 第110回 2008/2/12
第1週 理論号 「心理学史から:ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
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      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)】
           3)【解説:知識の種】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
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     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
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 ※【今回はこちら!】 第1週「理論号」… 知識のタネをまく
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 3巡目1ヶ月目 心理学史から
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   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   用語説明は、知識のタネです。
   
   勉強、特に受験勉強においては、まずはたくさんのタネを
   自分の脳の中にまかなければなりません。
   
   タネは小さくてかまいません。

   逆に、完ぺき主義はいい結果を生みません。
   
   はじめはできるだけコンパクトな知識からはじめましょう。    
   
   しかし、そこで勉強は終わりではありません。

   そこからが、勉強のスタートなのです。    
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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2)【ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)】
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今回は心理学史から、
「ジョン・B・ワトソン(J.B.Watson)」
を通して、心理学について考えていきましょう。


============用語説明==============


ジョン・B・ワトソンはアメリカの心理学者である。

心理学研究における行動主義を提唱し、
実証可能な行動のみを研究の対象とすること、
人間の行動の背後に心を想定しないことを、
科学としての心理学のあり方として強く主張した。


ワトソンの業績として最も有名なものに、
アルバート坊やの実験がある。

幼児に白ネズミを見ただけで泣き出すように、
嫌悪条件付けを行った実験である。

白ネズミの提示とともに、
大音響で幼児を驚かせることで、
アルバート坊やは白ネズミを怖がるようになった。

この実験は、当時パブロフがロシアで行っていた実験、
すなわち、条件反射の理論を実証するものであり、
人間の行動も、刺激と反応の連合によって
説明できるという、
ワトソンの主張を裏付けるものとされた。

革新的なこの主張は、
新しいパラダイムを求めていたアメリカで広く受け入れられた。

アメリカ心理学会の会長に選出されてから、
女性スキャンダルによって大学を辞職するまで、
ワトソンは精力的に研究を続け、
行動主義の繁栄の基礎を作ることになる。


==============================


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3)【解説:知識の種】
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ワトソンはサウス・カロライナのまずしい農家で生まれ、
のちにAPA(アメリカ心理学会)会長を勤めるまでに
出世しました。

大きな野心と革新的な理論で、
時代に大きな影響を与えた人物であるといえます。

ワトソンの主張は、
人間の行動は徹底的に刺激と反応に還元できるし、
そのメカニズムさえ明らかになれば、
いくらでも制御可能なものである、
というものでした。

ワトソンの主張には、
人間の思いや、意思が入り込む余地はありません。

しかしここには、逆説的ではありますが、
ワトソン自身の強い意志が感じられます。

自分(人間)の行動はすべて
自分(人間)が制御することができる、
ということ。

すなわちそれは、
自分(人間)には何でもできる、
と考えることにほかならないからです。

ワトソンは実際に、
どんな赤ん坊であれ、出自に関係なく、
どんな職業にでも育てることができる、と豪語します。

実際にワトソンは、
貧しい農家からAPAの会長にまで登り詰めることで、
それを証明したように見えます。


当時のアメリカで、
行動主義が心理学と同義になった背景にも、
アメリカがそうした強い意志と、
楽観的な自信を求めていたからと考えられないでしょうか。

ワトソンは、その意志を実現するための、
ひとつの実践可能な手続きを、
全力で構築しようとしたわけです。

しかし、そこには当然、
様々なリスクと矛盾が生じることにもなりました。

ワトソンは、
有力者の縁故であった妻に
助手の女性との浮気をリークされ、
マスメディアに大々的に叩かれることになります。

また、行動主義自体も、
そのラディカルすぎる主張を、
様々な形で修正していくことになります。

行動主義の光と影の両方は、
まさにワトソン自身が体現しているように
さえ思えてくるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
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   次回 【応用号】… 2008年2月19日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学物語 テーマの歴史 R.C.ボールズ 著 富田達彦 訳
  2004 北大路出版
 
● キーワードコレクション 心理学 重野純 編 1994 新曜社


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【編集後記】
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知識は、経験に結びつかなければ、
実際の知恵にはなりません。

それに、知識を簡略化して、
まとめて記憶しようとすればするほど、
学習意欲はどんどん低下していきます。

人間の脳は、
無意味な情報を記憶することを
非常に苦手としているからで、
こうしたときこそ、
なんとしてでも、自分が学んでいる知識の中に、
意味を見出さなければならないのです。

歴史は、
われわれが学んでいることすべてを、
現実の世界に結び付けてくれます。

われわれが名前しか知らないような
過去の偉大な先人たちも、
生きているときは、
様々な失敗やエピソードを繰り返しながら
生きていたわけであり、
その人間らしさに触れることが、
知識に奥行きを与えてくれます。

ワトソンのケースは、
そのいい例であるように思うのです。


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