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2005年11月22日火曜日

【Clip! アカデミー】第24回:解説号「心の歴史図における論点」

【Clip! アカデミー】 第24回2005/11/22
第3週 解説号「心の歴史図における論点」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
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      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題の解説】
          【Q1】心身二元論の影響についての問題
          【Q2】操作的定義についての問題
          【Q3】心理学の限界への反論についての問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

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            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【前回のまとめ】
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●これまで、以下の心の歴史図を中心に、
心理学の歴史について検討を行ってきました。

エッセイ号では、心の歴史図の締めくくりとして、
そこから見えてくる心理学の特徴と限界について
検討を行いました。

前回問題号では、考えてもらう問題を用意しました。

今回の解説号では、前回の3つの問題を解説していきます。

● 心の歴史図(仮)

===時代==|==========心的過程===========|=外界=

17世紀以前  【         魂→精神→意識         】
17~19世紀後半【    意識     】【     身体     】
20世紀前半:1【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】
20世紀前半:2【   意識   】【 潜在意識  】【  身体  】【行動】
20世紀前半:3【意識】【潜在意識】【知覚(ゲシュタルト)】【 身体】【行動】
20世紀後半  【意識】【潜在意識】【  認知過程  】【知覚】【身体】【行動】

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2)【それでは問題です】
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【Q1】心身二元論の影響についての問題

デカルト以来、精神と自然は切り離して考えられるようになった。

現代医学の進歩は、主としてこのような世界観のもとで進歩してきたが、
二元論的思考と対立する医学上の進歩を、
以下の選択肢から選びなさい。

  ====選択肢=====
   
   a. 外科手術の発展
   b. 病原菌の発見
   c. 心療内科の設立
   d. 医薬品の開発

  ============

正解は、
    【 c. 】…心療内科では、心身をひとつのものと捉えます。

【 a. 】【 b. 】【 d. 】では、
心と身体を切り離し、身体を精密な機械と捉えて、
その構造と働きを理解することが前提として存在します。

どの選択肢も、現代医療の常識を形成している、
重要な治療モデルです。

ここでは詳しく説明しませんが、
押さえておくことをお勧めします。

心療内科は、池見酉次郎が
1961年に、日本で始めて九州大学に開きました。

1996年に標榜科として正式に認可され、
日本中に広く認知されるようになってきています。

心療内科は、心身症を対象としています。

心身症とは、
心理社会的な要因が密接に関係して発症する身体疾患のことです。

それまで、身体を心から、できるかぎり切り離し、
物質として研究し、治療の対象としようとしてきた医学において、
心と身体の間の関係を重要視し、出来る限り心身をトータルで
扱おうとするのが、心療内科だといえるでしょう。

ただし、今日全国的に増えている心療内科では、
薬物治療が中心になりつつあり、
池見酉次郎の考えたものからは離れてきている、という現実もあります。


【Q2】操作的定義についての問題

科学があいまいさを容認することができないのは、
研究対象についての仮説を科学的に検証するためには、
研究対象を具体的に定義づけなければならないためである。
これを、操作的定義と呼ぶ。

操作的定義の説明のうち、
不適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。

 ================選択肢==============

  a. 物理学者のブリッジマンが提唱した考え方から来ている。
  b. 心理学研究室を設立した当時のヴントらに大きな影響を与えた。
  c. 具体的な手続きによって研究対象を明確にすることをさす。
  d. たとえば「愛情」を、「1日に来る恋人からのメールの数」
    という形に置き換えることである。

 =================================

正解は、
    【 b. 】…ブリッジマンが操作主義を提唱したのは、1928年です。
          大きな影響を受けたのは、
          スキナーら行動主義者たちでした。
          
もともとは、アインシュタインの研究成果から
物理学において提唱された方法論で、
ヴントの時代には、まだ知られていませんでした。

科学においては、操作的に定義された概念でなければ、
その概念は、ないも同然として扱われます。

すなわち、操作的定義とは、形のない概念に、
実際にいじくりまわすことのできる形を与える、
とイメージできると思います。

これは、実際に研究をしてみると実感することが出来ます。

特に心理学は、認知だの態度だの知能だの、
抽象的な概念を研究対象にすることが多いので、
注意が必要です。

【 d. 】に挙げたように、
「愛情」は個人の主観的な感情であって、
計ったり、他人と比較したりすることはそもそも難しいものです。

しかし、研究者は、これって愛情の差だよね?という根拠を、
誰もが納得するような形で示すことが求められるのです。

それを可能とするのが、
具体的な手続きによって、抽象的な概念を定義する、
操作主義という考え方なのです。


ただし実際には、皆さんもお感じのとおり、
「愛情」=「1日に来るメールの数」とは言い切れません。

「愛情」という言葉には、
もっと複雑な意味が含まれていて、
それが言葉の意味をあいまいにしているのですが、
操作的定義ではそれを切り捨てることになるからです。

操作的定義は、目に見えない概念に、
手にとって研究するための形を与える、
という意味で有効な手段です。

ただし、研究結果から何を読み取り、
どんな意味を与えるかは、結局はあいまいな世界に住む、
我々自身なのだといえるでしょう。


【Q3】心理学の限界への反論についての問題

前回は心の歴史図から読み取れる心理学の限界について解説した。
前回の主張に反論する場合、もっとも適切な主張はどれか。
次の選択肢から選びなさい。

 ===============選択肢==================

  a. その人の悩みを理解しなければ、問題は解決しない。
  b. その人自身を問題にせず、たとえば行動の変容のみでも問題は解決する。
  c. DSMの診断基準にしたがえば、精神障害への適切な処置が可能である。
  d. 問題の解決は、人格的成長の一部に位置づけられる。

 ====================================

正解は、
    【 b. 】…たとえば、身体や法律問題だけを扱う整体師や弁護士でも、
          このようなかかわりを持つことは可能です。

 ※ この問題はかなり解釈の幅が広いため、
   正答よりも、自分だったらどう反論するか、
   を念頭において考えてみてください。

前回エッセイ号の最後では、

   研究対象としての諸概念の集合体ではなく、
   全体として生きる人間を対象とするとき、
   我々は心理学の限界を、どのように補うことが出来るのか。

という点を、宿題として問題提起しました。

人間を相手にする、ということは、
風邪やLDなど、問題をあいてにすることとは違います。

厳密に定義され、
同じ条件の中でだけ比較され、
積み重ねられた概念と異なり、
人間は、刻一刻と変化する世界の中で、
常に異なる状況を生きている存在です。

ですから問題に対しても、
DSMのような分類を当てはめる以外に、
その人自身や、
その人の人生という全体の中に位置づけ、
そこからその人へのかかわりや援助を考えようとする
視点が必要になるのです。

ただ、当事者にとって、問題をこれまでの人生や、
自分自身に結び付けることは、
自分の問題に正面から直面することでもあります。

このことは、多くの場合、当事者に抵抗を生みます。

その意味では、個人と切り離された問題として、
部分的に扱うことが有効な場合の方が多いのも事実です。

たとえば、子どもに学習障害があることが分かることによって、
子ども自身と勉強の苦手さを、切り離して考えることができます。

この場合、勉強の苦手さを子ども自身に結びつけることは、
本人の努力不足などの、精神論におちいりがちになるでしょう。

お互いに長短のあるかかわり方ですが、
逆に、どちらか一方に偏らないことで、
より有効な援助が出来る可能性があります。

ここで考えられるのは、たとえば、
カウンセラーは全体的な視点からクライエントの問題を眺め、
アセスメントを行いながら、
実際の相談においては、なるべく具体的な問題のみを扱っていく、
という方法です。

そのため、選択肢に挙げられた反論の中では、
問題を個人から切り離して捉えようとする、
【 b. 】【 c. 】の選択肢が残ることになります。

その中で、【 c. 】のDSMによるアセスメントは、
個人や、人生といったその人そのものを物語る視点を、
一切排除した形で分類をするためのシステムです。

カウンセラーがその人個人に対するまなざしを持ち、
問題の背景や、その意味を受け取りながらかかわるのなら、
その人自身を問題にする必要はない、といえるでしょう。


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 12月6日(火)にお送りする予定です。
※ 次週11月29日(火)は休刊です。特別号が配信されることがあります。

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【参考文献】
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● 心療内科 池見酉次郎著 1963 中央公論社 

● 実践心理データ解析 問題の発想・データ処理・論文の作成 田中敏著
1996 新曜社

● 人間科学序説 ジャン・ピアジェ著 波多野完治訳 1970 岩波書店

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【編集後記】
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前回のエッセイ号が、しめくくりということで、
どちらかというと考え方についての内容であったため、
前回の問題号は、なかなか設問を考えるのが大変でした。

意見系の問題は、正解不正解の判断がはっきりしない
場合が多いので、誤解や解釈の余地を生まず、
しかも勉強し、考えなければ解けない良問を作るのが難しいのです。

ただ、心理学の基礎知識を問う大学院入試に対して、
臨床心理士としてのあり方をも含めて問わなければならない、
臨床心理士認定試験では、意見系の選択肢問題が数多く出題されています。

以前は悪問が多いと愚痴をこぼしていたこともありましたが、
いざ自分が問題を考える立場に立つと、
問題作成者の先生方のご苦労が身にしみるというものです。

今年の一次試験は10月に終わり、
これから二次試験が行われます。

来年はどのような臨床心理士たちが巣立っていくのでしょうか。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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