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2005年8月30日火曜日

【Clip!アカデミー】第15回:解説号「心の過程図を捉えなおす」

【Clip! アカデミー】 第15回2005/08/30
第3週 解説号「心の過程図を捉えなおす」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

         ◆目次◆
       ※【読売新聞より取材を受けました!!】※            
            ※【セミナーのお知らせ】※
              1)【前回のまとめ】
              2)【問題号の解説】
【Q1】心の過程図に関する問題
          【Q2】リバースエンジニアリングに関する問題
          【Q3】家族システムに関する問題
          【Q4】サイバネティクスに関する問題
          【Q5】システムと臨床心理学に関する問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

==================================================================


   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
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     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
※【今回はこちら!】  第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
            第4週 基本的にお休み
           (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

    

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1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今回は、心の過程図を検討する一連のサイクルの、
最後になります。

次回から、新しい図式を検討していくので、
今回は、これまでの流れと、目的について、
簡単に振り返ってみることにしたいと思います。

Clip!アカデミーでは、
既存の参考書と違い、網羅的な専門知識の解説を目指していません。

その理由としては、紙幅が限られていることと、
優れた参考書が多く世に出てきているからです。

心理学を勉強中の読者の皆さんは、
より実際的な知識を求めていると思いますが、
ここでは、あえて一歩引いた、
「心理学全体」とでもいうものを、検討の対象にしています。

受験勉強は特に、
断片的な知識の寄せ集めになりがちです。

しかし、我々が実際に心を捉えようとするとき
必要になってくるのは、寄せ集めの知識ではなく、
自分の体験や世界観、現在の社会や、現代人の生きかた、
などに結びついて発展してきた、心理学という学問についての、
体系的・全体的な知識だといえます。

心理学全体についてのまなざしは、
もちろん、受験勉強を通しても身についていくと思います。

むしろ、基礎的な専門知識は必要不可欠です。

しかし、心理学を全体として捉えようとすること、
様々な視点から見れることは、
こうした基礎的な受験勉強にも役に立つことでしょう。

そこで、Clip!アカデミーでは、
心理学全体を常に一度に扱い、異なる角度から捉えなおす、
という試みを行うことを通じて、
読者の皆さんが、個々の断片的知識の暗記的学習に埋もれず、
心理学全体へのまなざしを得るお手伝いをすることを目指しています。

はじめに、
心を、「身体」「認知過程」「潜在意識」
「知覚・ゲシュタルト」「意識」「行動」
の6つの側面から捉える、心の構造図(仮)を立てました。

現在は、
心を、身体→知覚→認知過程→潜在意識→意識→行動
という6つのプロセスの流れとして捉える、
心の過程図(仮)を検討しています。

エッセイ号では、こうした心理学全体を捉える図式をまず立て、
次の回で、その詳細と、限界、図式の欠点を論じています。

なぜそんな形式にしているかというと、
そもそも、心理学という学問を、ひとつの図式で捉えることは、
できないからです。

しかし、無理にでもひとつの図式を立ててみることで、
どこがおかしいのかが見えてきます。

そのおかしい部分は、
実は、心というものにとって、
とても大切な視点が隠れているのです。

そこを検討していくことで、新しい視野が開けてくるでしょう。

これは、仮説を立て、検証し、結果から新しい視野を
得ようとする科学的研究と、実は
まったく同じプロセスなのです。


今回は、この心の過程図を検討するサイクルの、
最後の回になります。

現在、Clip!アカデミーエッセイ号では、
プロセスという側面から心を捉えた心の過程図を、
より大きな(マクロな)視点、より小さな(ミクロな)視点から、
捉えなおす試みを行っています。

前回は、それに関連した問題を出題する、
問題号をお送りしました。

今回は、前回の問題の正答と、解説をお送りしたいと思います。

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2)【問題号の解説】
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【Q1】心の過程図に関する問題

● 心の過程図(仮)
 ┌――――――――┐
 |物理的エネルギー|
 └――――――――┘
   ↓
 ┌--------------------------┐
 |身体|→|知覚|→|認知過程|→|潜在意識|→|意識|
 └--------------------------┘
                           ↓
                         ┌――┐
                         |行動|
                         └――┘


心の過程図において、矢印にしたがって流れているものは、
そもそもなにか。
次の選択肢からもっとも適切なものを選びなさい。

   =======選択肢=======

    a. エネルギー

    b. 情報

    c. 意識

    d. 表象

   ===================

※ 心の過程図についての復習問題です。

  基本的な事柄なのですが、意外と盲点で、
  心をプロセスとして捉えるとはどういうことか、
  を理解していないと、答えられないかもしれません。

心の過程図では、
心を、過程(プロセス)・流れ等と表現し、
図式化してきました。

心が流れである、という表現は、
外界からの刺激が入力され、行動として出力される、
という表現をする場合、前提として存在するものです。

したがって、上記のような表現や、図式に触れたことのある人なら、
なんとなく直感的にイメージできるでしょう。

ただ、この場合、この流れは、何の流れなのか、
ということは、意外と考えてみることがないのではないでしょうか。

その意味で、とても基本的な事柄であるにもかかわらず、
答えるのが難しい問題だったと思います。

さて、直感的に陥りやすい誤答は、【 a. 】です。

エネルギーの流れ、という表現は、
特にフロイト(S.Freud)を学んだばかりだとイメージしやすいのですが、
我々の主観的な意識からはそのように感じられる、という意味であって、
実際には、生理学的な裏づけに欠けています。

【 c. 】の意識も同様です。

意識の流れ、という表現は、
ジェームズ(W.James)の心理学で重視された概念ですが、
この選択肢も、あくまで、
主観的に感じられる、という点に限定された選択肢です。

そうなると、問題は、

【 b. 】の情報か、【 d. 】の表象か、

ということになります。

両者とも、認知心理学における中心的な概念です。

心の過程図は、あくまでフローチャートとして表現された、
感覚から行動に至る心的プロセスとして表現されています。

フローチャートは認知心理学の成立と切り離せない、
ということは、前々回のエッセイ号で説明したと思います。

よって、まずは、このどちらかだろう、
と当たりをつけられれば、◎です。

さて、皆さんは、
情報(information)と、表象(representation)
の違いを説明できるでしょうか。

情報は、情報理論によれば、それを受け取る側において、
事態の不確実性を減少させる、
すなわち、物事を規定するものを指します。

例えば、Bさんにとって、Aさんの年齢が、
20代であって30代でない、
ということを表現することができるものは、
全て情報です。

その意味で、
「Aさんは30代ですか?」
と尋ねたとき、「・・・。」と沈黙が返ってきたとしても、
それも情報になります。

また、直立姿勢を維持するためには、
常に筋緊張を微調整する必要があります。

このとき、姿勢を制御する筋肉からは、
現在の姿勢についての情報が、
神経信号としてフィードバックされています。

一方、表象は、
心理学においても様々な経緯をたどってはいますが、
現代においては、人間の心的過程における、
外的対象を表すシンボル、という捉え方をするのが一般的です。

例えば、「Aさん」という言葉はBさんにとって、
実在する「あの人」を表象するシンボル(言語表象)です。

認知心理学においては、
心的表象は認知過程の対象であり、
我々は、外部に対して構成した心的対象を操作することで、
記憶や思考といった認知処理をしているとされます。

こうして両者を比較してみると、
情報の方が、表象よりも広い概念であるといえるでしょう。

また、表象は人間が情報を認知し、操作するための、
形式のひとつであると見ることが出来ます。

よって、常に進行しているプロセスとしての心は、
様々な形の、情報のやり取りの中から立ち上がってくるもの、
と考えることが出来ます。

正解は、  【 b. 】


【Q2】リバースエンジニアリングに関する問題

リバースエンジニアリング(reverse engineering)
とは、再現するための技術である。
認知心理学の観点から見た場合、
リバースエンジニアリングの対象としてもっとも不適当なものは、
次の選択肢のうちどれか。

 ======================選択肢======================

  a. 人間の知能を再現しようとする、人工知能

  b. 人間自身を再現しようとする、人工人間(ロボット)

  c. 人間の臓器を再現しようとする、人工臓器

 =================================================

※ 選択肢自体は、初学者にとって難しいモノではないと思います。
  むしろ、初学者でない人の方が迷うかもしれません。

  リバースエンジニアリングという言葉自体、
  聞きなれない言葉だと思います。

  ただし、認知心理学においては重要な方法論なので、
  基本的な考え方を知っていることで、
  テクノロジーと心理学の関係について、
  これまでと違った見方を出来るようになるのではないかと思います。

料理についての
リバースエンジニアリングを考えてみましょう。

例えば、皆さんがお料理好きだとすると、
話題のお店に行ったときに何を考えるでしょうか。

おそらく、
この味付けにするには、何を調味料に使っているのかとか、
このてんぷらの衣がカリッとしているのはなんでかなど、
なぜ美味しいのか、という理由を探すのではないでしょうか。

そして、推測の段階であっても、
理解できたら実際に家で挑戦してみる。

そうしてお店の味が再現できたとすれば、
その料理に対する理解が正しかったことが分かります。

認知心理学におけるリバースエンジニアリングも同様ですが、
この場合、再現することができる=理解の正しさが支持される、
という点が重要です。

すなわち、リバースエンジニアリングは、
工業への応用より先に、基礎研究における、
仮説の検証手続きとして、その意義を認められているといえるでしょう。

認知心理学が、研究の対象としてきたのは、
広い意味での人間の認知の仕組みです。

感覚刺激の符号化から、
知覚の成立、記憶や思考、問題解決、
外界への働きかけまで、多様な範囲が対象になりえます。

では、この問題の選択肢の中で、
リバースエンジニアリングという研究方法が有効なものはどれでしょうか。

逆に、ほかの方法でも研究が可能なものはどれでしょうか。

そう考えてみると、
リバースエンジニアリングというアプローチが有効なのは、
やはり形のないモノ、捉えがたいモノであるといえそうです。

人間の、モノを考え、推論し、問題を解決するという、
機能は、いったいどこからくるのか。

そもそも、人間とは、どういったものなのか。

どんなに捉えづらくとも、
実際に再現することが出来たなら、
そこには答えがおのずから存在しているはずです。

また、再現の過程では、
人間とは何か、という哲学的・抽象的な問いが、
おのずから具体的で、技術的な問題に落とし込まれるでしょう。

また、捉えづらい問いにおいて問題となるのは、
何が正解で、何が不正解なのか、という判断基準です。

しかし、人間を再現しよう、という前提から出発すれば、
実際にどれだけ再現できたか、実物にどれだけ近づいたか、
という形で、おのずから、判断基準を得ることが出来ます。

その点で、

【 a. 】人工知能と、【 b. 】ロボットは、
リバースエンジニアリングに適しているといえます。

ですが、臓器の理解は、
わざわざ膨大な手間をかけてそっくり同じ臓器を再現しなくても、
解剖学など、構造を分析することで行われてきました。

よって、最も適当なもの、と考えると、

正解は、【 c. 】

ただ、もちろん、人工臓器への認知心理学的なアプローチの可能性も、
考えられます。

例えば義足などの制御システムに、
人間の脳が行っている情報処理過程を再現できれば、
生身の人間と変わらない運動機能を実現できるかもしれません。


【Q3】家族システムに関する問題

家族システム理論の立場から見たとき、
夫婦というシステムを規定するものとして
もっとも重視されるのは、次の選択肢のうちどの側面か。

  =============選択肢=============

    a. 婚姻届

    b. 愛情

    c. コミュニケーション

    d. 習慣

  ================================

※ 家族や夫婦を、分解できないひとつの全体として考える場合、
  それをシステムとして成立させているものは何か、という問題。

  どの選択肢も、
  それぞれ異なる文脈においては、間違ってはいないのですが、
  家族を、システムとして捉える場合は、
  どのような条件を前提として考えるのでしょうか。

【 a. 】の婚姻届ですが、これは法的な規定です。

法律というルールにおける夫婦成立の前提条件ですが、
そこには、実際の夫婦システムが存在している必要はありません。

【 b. 】の愛情。

確かに夫婦の間には、お互いに対する愛情が必要かもしれません。

愛情がなくなれば、
相手のことはどうでもよくなり、離婚にいたることもあるでしょう。

これは、人間主義的な(ヒューマニスティックな)捉え方といえます。

しかし、愛情がなくても、
夫婦としていっしょに住んでいるふたりは、
ひとつのシステムを構成することが可能です。

正解は、    【 c. 】コミュニケーションです。

【 d. 】習慣ですが、これは、個人内の過程ですね。

システム論は、システムの存在を、
個人内の過程に還元するものではありません。

夫婦間の情報のやり取りによって規定されるのが、
システムとしての夫婦の在り様です。



【Q4】サイバネティクスに関する問題

サイバネティクス(cybernetics)は、
システムを制御するための方法論を提供する。

N.ヴィーナー(N.Wiener)は、
システムの制御に用いられる相互作用として、
フィードバックと、フィードフォアードをあげている。

夫婦システムにおける以下の選択肢は、
フィードバック、フィードフォアード、どの例といえるか。

適切な組み合わせを答えなさい。

1) 妻が泣くと、夫は我に返って慰めた
2) 妻が泣くと、夫はより激しく手を挙げた
3) 夫は、これを言ったら妻は泣き出すだろう、と口をつぐんだ

A プラス・フィードバック B マイナス・フィードバック
C フィードフォアード 

   ==========選択肢============

        1)  2)  3) 
   
    a.   A   B   C

    b.   A   C   B

    c.   B   A   C

    d.   B   C   A

   ============================

※ 【Q3】では、システムの在り様を規定するのは、
  コミュニケーションであるといいました。

  では、コミュニケーションは、
  実際には、どのようにシステムを規定しているのでしょうか。

エッセイ号では、フィードバックについて
エアコンのサーモスタットの例から説明しました。

改めて、簡単に説明すると、
フィードバックとは、出力に関する情報のことであり、
システムを制御するために、出力に関する情報を、
次の入力の調整に用いることです。

このようなフィードバックを、
マイナス・フィードバック(minus feedback)、
あるいはネガティブ・フィードバック(negative feedback)
と呼びます。

夫婦間では、

1) 妻が泣くと、夫は我に返って慰めた

がその例になります。

この二人は喧嘩をしていたのでしょう。

夫婦関係(システム)は安定を求めますから、
それまでの関係を破綻させるような逸脱を、
何とか修正しようとします。

この場合、妻が泣くことは、
夫婦関係の破綻につながるような
システムの不安定のサインになっています。

それ以上、深刻な対立を続けると、
関係が破綻する、というサインを受け止めた夫は、
関係の安定を取り戻すべく、対立を解消するような行動に出ました。

これによって、
夫婦の関係は、これまでのあり方を取り戻します。

夫婦は、個別に反応しているだけですが、
夫婦全体から見ると、お互いにフィードバックのやり取りをしながら、
現状の関係(夫婦システム)を
維持する方向で行動していることが分かります。

ただ、このように、
現状を維持しようとするフィードバック機構は、
現状に問題がある場合、問題をも維持し、
必要な変化を妨害することがあります。

この場合に重要になるのが、
プラスのフィードバック(plus feedback)、
またはポジティブ・フィードバック(positive feedback)です。

プラス・フィードバックは、
システムの安定を維持する方向に修正する
マイナス・フィードバックとは異なり、
逆に現状からの逸脱を増幅するように働きます。

例でいえば、

2) 妻が泣くと、夫はより激しく手を挙げた

にあたります。

この例では、妻が泣くほど、夫の暴力はエスカレートしていきます。

これはどう考えても深刻な状況ですが、
プラス・フィードバックの意味は、
変わる必要のあるシステムに、変化を呼び込むという点にあります。

夫の暴力が激しくなれば、
妻はなんらかの時点で、単に泣くことで、
それまでの関係を維持しようとする努力を放棄せざるを得なくなります。

その結果、妻の対応の変化や、第三者の介入によって、
システムはより現状に即した変化を迫られることになります。

この場合、もちろん、離婚という形で、
システムが崩壊する危険性もありますが、
ポジティブ・フィードバックによって、
よりよい安定に到達する可能性があるのです。

システムの制御には、
過去の出力を次の入力に用いるために差し戻すフィードバックのほかに、
未来に生じるであろう事態を推測し、
その推測を、次の制御に用いようとするものもあります。

3) 夫は、これを言ったら妻は泣き出すだろう、と口をつぐんだ

それが、フィードフォアード(feedforward)です。



よって、正解は

1)…B 2)…A 3)…C

で、 【 a. 】


【Q5】システム理論と心理学に関する問題

一般システム理論の視点から見たとき、
人間は有機体システムとして捉えられる。

以下の心理学研究者のうち、
有機体論に基づく人間観に、立っていないものを答えなさい。

   ============選択肢============

    a. ピアジェ(J.piaget)

    b. ワトソン(J.B.Watson)

    c. ロジャーズ(C.R.Rogers)

    d. オールポート(F.H.Allprt)

   =============================

※ システムという言葉は、
  現代においては、特にパソコンなどの複雑な機械を連想させます。

  そのために、人間や人間関係を、システムとして捉える、
  と聞くと、反射的に、人間や人間関係を、単なる機械として
  扱おうとしているのではないか、と誤解する人がよくいます。

  しかし、ベルタランフィ(L. von Bertalanffy)を初めとした、
  システム理論的な視点は、
  機械論とは正反対の立場を取っていることに注目しましょう。

有機体論とは、人間を、部分に分割できない全体(システム)として
見ようとする視点です。

以外に感じられるかもしれませんが、
システム論は、機械論に立つ行動主義などと対立し、
人間性心理学や、ゲシュタルト心理学などに近い考え方なのです。

ここから、行動主義の祖である、【 b. 】のワトソンが、
異質であることが分かります。

発達心理学に大きな影響を与えたピアジェですが、
彼は、発達という現象を、部分部分の変化ではなく、
あくまで有機体全体の構造の変化として捉えようと試みました。

また、ロジャーズの著作を読むと、
有機体という言葉が頻繁に出てくるのに気づくでしょう。

オールポートが有機体論者なのはどうしてでしょう。

オールポートは、
パーソナリティを、部品として分けられないシステムとして捉えたためです。

よって、正解は 【 c. 】


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 9月13日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理臨床大辞典 改訂版 氏原寛 他 2004 培風館

● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊 他 1973 有斐閣 

● 一般システム理論  フォン・ベルタランフィー著 長野敬
  太田邦昌訳 1973 みすず書房

● 人格心理学 上・下 G.W.オールポート 著 今田恵 訳 1968
  誠信書房

● 事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法  長谷川啓三 若島孔文
  2002 金子書房



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【編集後記】
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6回にわたってお届けしてきました、
心の過程図ですが、いかがでしたでしょうか。

最後は、システム論から、
かなり広い学際的な分野について言及せざるを得ない場面がありました。

私が知りたいのは、システム何チャラではなく、
心理学だ、という方もいるかもしれません。

私が心理学を勉強し始めて、
ようやく心理学全体のあり方みたいなものが見えてきたとき、
一番愕然としたことは、
心理学は、今まで一度も心を研究したことがない、
という事実でした。

本来心を対象とするはずの心理学は、
心を扱わないことでしか、成立できなかった。

その原因には、心理学成立当時の技術的水準や、
心なるものにまつわる、本質的な問いまでもが、
現れているように思います。

技術水準も向上し、
現在、心のナゾに迫ろうという学問は、
何も心理学だけではありません。

我々一人一人が、そうした諸科学からのアプローチを知り、
なおかつ心理学にしか扱えないだろう領域を見極め、
進んでいくまでには、非常な時間が掛かるだろうと思います。

このことは、学校現場や、医療現場での、
カウンセラーの立場、アイデンティティの問題を連想させます。

おそらく、心理学と諸科学との間の問題と、
カウンセラーと異業種との間の問題は、表と裏なのでしょう。

だからこそ、我々は、
ここでもまた、心理学と同じ問題に直面します。

心理学者・カウンセラーとしてあろうとするならば、
むしろ心理学・カウンセリング以外の世界を知らなければなりません。

心というあやふやなものに寄って立ち、
それ以外のものから守られていることは、もうできません。

そう決意して初めて、
我々は心理学に向かうことが出来るのではないでしょうか。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   
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