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2008年12月17日水曜日

【Clip!アカデミー】第139回:展開号「心理学研究法から:実験現象学」

【Clip! アカデミー】 第139回 2008/11/4
第3週 展開号 「心理学研究法から:実験現象学(experimental phenomenology)」

       ◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆     
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◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【実験現象学の広がり】
           3)【解説:知識の展開】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
            第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
       ↓   (具体例を中心に)
 ※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
                  ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/04/clip.html

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号2
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html 


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4巡目5ヶ月目 臨床心理学から
        「実験現象学(experimental phenomenology)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
        2ヶ月目 基礎心理学から1
        3ヶ月目 基礎心理学から2
  4ヶ月目 臨床心理学から
  【NOW!】5ヶ月目 心理学研究法から 
   |    ↓
    |  【※違うテーマではじめから繰り返します。】
   |  ======================
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 ● 第1週「理論」号
「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓

http://clipseminar.blogspot.com/2008/10/clip137.html

 ● 第2週「応用」号
「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓

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 ● 第3週「展開」号
「実験現象学(experimental phenomenology)」はコチラ↓


   ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。

   取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
   他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。

   展開号では、
   これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。

   関連する様々なテーマを紹介することで、
   立体的な理解と、
   心理学の中での位置づけが、
   容易になるでしょう。
   
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【実験現象学の広がり】
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今回の展開号では、
実験現象学の広がりを、3つのトピックスから
展開していきましょう。


●現象学的還元

哲学者フッサールは、
意識の志向性などについて触れ、
優れた業績を残した哲学者ブレンターノに師事し、
「厳密な学」としての現象学を構想した。

現象学的還元とは、
現象学のためにフッサールが提唱した主要な手段であり、
「判断停止」、「カッコ入れ」とも呼ばれる。

現象学的還元とは、
現象を経験しているとき、
それを「当たり前」としている前提自体を、
ひとまず「カッコに入れる」作業を指す。

たとえば、
リンゴを現象学的に観察しようとするならば、
まず、「それがリンゴである」、
という判断を停止し、脇に置いておく。

この手続きによって初めて、
”それ”は、「リンゴ」という言葉やイメージ、
概念としての含みなどを引き剥がされることで、
意識の作用として私に経験されている現象
として、厳密な観察の対象となることができるのである。


●現象学的心理学

対象としての心理過程や行動を、
現象学的な記述や分析から把握する立場を
指して用いられる。

精神症状や生きがい、疎外など、
実験的に取り扱うことが困難な心理的事象に対し、
特に実存主義的な立場から
記述や分析を行ったメダルト・ボスや、
ビンスワンガー、V・フランクルらの名前が
挙げられることが多い。

心理過程を要素に還元し、
操作的に定義し検証していく自然科学的な
立場と対置して論じられる。


●アフォーダンス

J・J・ギブソンは、
ゲシュタルト心理学や実験現象学に影響を受け、
知覚心理学に新しい視点を提供した。

それがアフォーダンス理論と呼ばれる、
知覚の性質である。

アフォーダンスは、
環境が知覚者に「与える」、
「アフォードする」特徴や機会を指す。

アフォーダンス理論においては、
対象の価値や特性は、
知覚者のなかにあるのではなく、
知覚対象と知覚者の関係によって決まる。

たとえば「水」は、
のどが渇いた人にとっては「飲むこと」を、
海辺の観光客には「泳ぐこと」をアフォードする。

こうした環境と行為主体との相互作用から、
人間の心理や行為を捉えていく立場は、
生態学的心理学と呼ばれている。


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3)【解説:知識の展開】
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世界を客観的に観察しようとするとき、
そこには、
「客観的な世界がまず実在し、私はそれを正しく認識できる」
という前提が隠されています。

しかし、もし本当に厳密に、
「客観的な観察」を行おうとするなら、
そもそも、そうした前提が本当か、
検討する必要があるでしょう。

その問題に、
現象学的還元、という方法論から
真剣に取り組んだのがフッサールです。

「客観的な世界」とはなにか?

そもそも、
その「客観的な~」は、
我々の主観的な経験を通して、
我々の意識の中に現れているわけですから、
その時点で厳密な検証に耐えません。

だからこそ、
まずはじめに、
主観的な経験として我々の意識に現れた
現象自体を検証することが必要だ、
とフッサールは考えたのです。

こうした方法論は、
哲学史の中では、
ハイデガーやメルロ=ポンティといった、
実存主義と呼ばれる人々によって、
継承されていきました。

そして、心理学においては、

●精神症状を脳の構造や化学物質の問題ではなく、
 人間が人生の中で経験するままに記述しようとした
 精神病理学者たち

●ゲシュタルト心理学を通して、
 世界がなぜ今のように経験されるのか、
 を同じく単純に生理学や行動主義的な単位に還元しないで
 検証しようとした心理学者たち

などに受け継がれていくことになりました。

しかし、
状況や対象を「ありのまま」に観察しようとする、
状況や対象を「当たり前」と考えず、
それを「当たり前」にしている前提自体を疑う、
という発想は、どのような研究においても、
最初の出発点であるはずです。

この問題をよくよく考えていくと、
そもそも「客観性」って?とか、
「実証」とは可能なのか?など、
研究が一歩も先に進まなくなる危険性があります。

しかし、
それを独創的に踏み越えられれば、
ギブソンのように、
新しい学問分野さえ切り開いていけるかもしれません。


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【次回配信】
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   次回 【理論号】… 2008年11月18日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社

● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● わかりたいあなたのための現代思想入門
  小坂修平 竹田青嗣 志賀隆生 他著 1990 JICC

● エコロジカル・マインド 三嶋博之 2000 NHKブックス


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【編集後記】
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「あるがまま」というのは、
言葉にする分には簡単なのですが、
かなりの曲者です。

あるがままに観察すれば、
それで現象学になるのかというと、
若干疑問です。

その難しさを引き受けて、
現象学的還元というひとつの方法論を打ち立てたのが、
フッサールであるということが出来るでしょう。

これはさすがに哲学者というところで、
その厳密さと徹底さには、
心理学者はかなわないのかな、
と感じてしまいます。

もちろん、
方法論が異なるのですから、
かなわなくてかまわないのですが、
どうも心理学者が現象学という言葉を使うと、
「あるがまま」のような、
抽象的なお題目になりがちな気がします。

その点については、
個々人のモラルにおいて、
自戒する以外にないのでしょうか。


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