【Clip! アカデミー】 第124回 2008/6/18
第3週 展開号 「心理学研究法から:一事例実験計画(single subject designs)」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆ http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【現在地】
2)【一事例実験計画法の限界】
3)【解説:知識の展開】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※
メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
無料心理学メールマガジンです。
■ 基本サイクル ■
第1週「理論号」… 知識のタネをまく
↓ (用語説明から)
第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす
↓ (具体例を中心に)
※【今回はこちら!】 第3週「展開号」… 知識をつなげる
↓ (テーマを展開する)
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】
● 0ヶ月目 ガイダンス号
http://clipseminar.blogspot.com/2007/04/clip.html
● 0ヶ月目 ガイダンス号2
http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html
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【お詫び】
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先週6月10日分の【Clip!アカデミー】第123号を
先日6月17日にお届けした関係で、
予定していた第124号を
例外的に本日配信しております。
次回からは通常どおり火曜日の配信になります。
ご迷惑をおかけしますが、
よろしくお願いいたします。
Clip!アカデミー事務局
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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 3巡目5ヶ月目 心理学研究法から
「一事例実験計画(single subject designs)」
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0ヶ月目 (ガイダンス号)
1ヶ月目 心理学の歴史から
2ヶ月目 基礎心理学から1
3ヶ月目 基礎心理学から2
4ヶ月目 臨床心理学から
【NOW!】5ヶ月目 心理学研究法から
| ↓
| 【※違うテーマではじめから繰り返します。】
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↓
● 第1週「理論」号
「心理学研究法から:
一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓
http://clipseminar.blogspot.com/2008/06/clip122.html
● 第2週「応用」号
「心理学研究法から:
一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓
http://clipseminar.blogspot.com/2008/06/clip123.html
● 第3週「展開」号
「心理学研究法から:
一事例実験計画(single subject designs)」はコチラ↓
~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~
知識は、知識とつなげることで、はじめて意味を持ちます。
取り入れた知識を、自分の中に根付かせるためには、
他の知識とつなげていくことを同時にやらなければなりません。
展開号では、
これまでに紹介してきたテーマを、さらに展開していきます。
関連する様々なテーマを紹介することで、
立体的な理解と、
心理学の中での位置づけが、
容易になるでしょう。
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※ その他バックナンバーはコチラ↓
http://clipseminar.blogspot.com/
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2)【一事例実験計画法の限界】
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●ABA法がうまく行かない場合
一事例実験計画法において、
介入条件(B)による行動(独立変数)の変容が
継続する場合が考えられる。
たとえば、
●技術の習得(テニスや将棋、自転車の運転など)
●病気の治癒(風邪や悪性腫瘍から、自傷行為まで)
などがあげられる。
技術を習得してしまった場合、
介入を中止して、
第二ベースライン(A2)の段階を観察することは、
第一ベースライン(A1)との比較として
適当ではないために、
介入と独立変数の変化との因果関係について、
言及することができない。
また、病気が治癒した場合、
風邪ならば生理的要因が明確であるため、
反復する必要はないし、
自傷行為が消失した場合、
第一ベースラインの状態を再現しようとすること自体が、
倫理的に問題となる。
これらの場合、
ABA法では因果関係の検証は不適当である。
●多層ベースライン法
多層ベースライン法とは、
一事例実験計画の中でも、
ベースラインを複数設定し、
介入のタイミングをズラすことで、
介入の効果を検証するために利用される実験方法である。
ABA法では検証できない事例に対して、
介入の効果を検証したい場合などに用いられる。
・被験者間での多重ベースライン
たとえば、
同じクラスの同程度の学力の学生で、
介入のタイミングをズラして技術習得の結果を検証する。
・行動間での多重ベースライン
黒板を写したり、問題を解いたり、
といった被験者内の複数の行動に対しても、
それぞれの行動のベースラインを設定して、
介入の時期をズラせば、
指導法の結果を検証できることになる。
・状況間での多重ベースライン
学校と家庭での発話の頻度をそれぞれベースラインとして、
介入の時期をズラすことで、
治療法の効果を検証する。
●一事例実験計画法の限界
一事例実験計画が研究法として、
目的とする介入の効果の検証、
すなわち、介入と独立変数との因果関係への言及
が可能であるためには、
・反復実験が可能であること
・被験者内の、
もしくは被験者間の同一性を前提とすることが可能なこと
・厳密に単独の独立変数の変化のみを、
介入条件として設定できること
などの条件が考えられる。
逆に言えば、
こうした条件が満たされない場合、
結果の解釈には、自ずから限界が出てくることになる。
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3)【解説:知識の展開】
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一事例実験計画に、
反復を含まないABデザインを含むとすると、
現場においては、
仮説検証のために、
一事例での実験計画をしている場合が多いものです。
たとえば、
叱る代わりに放っておく、
という介入を実施して、
事前事後での相手の行動の変化を比較する、など。
意識的な実践であれば、
介入ごとの結果をきちんと観察していて、
何度も反復を繰り返す中で、
ジグザクに、
よい介入方法に対する確信を深めていく、
というパターンになるのでしょう。
これを計画的に実験に組み入れると、
一事例実験計画に近づいていくのかもしれません。
しかし、そうした意識がまったくない場合、
一事例で事前事後を見るだけでは、
非合理的な処遇の原因となる場合もあります。
たとえば、
たまたま怒鳴ったら効果があった。
この人が、
自分の実践に不安を感じていて、
相手の反応を意識的に観察できていなければ、
今度は、また怒鳴らないでみたら、
どうなるか、という検証をせずに、
いつも怒鳴ってばかりの人になってしまうかもしれません。
加持祈祷の類で病気が治ったという場合や、
カツ丼を食べたら、いい点が取れた、
という場合にも、
同様の盲点があります。
こうした現場における仮説検証に、
一事例実験計画は一定の根拠を与えることが出来る
と考えられます。
とはいえ、もちろん万能の研究法
というものは存在しません。
ABA法は、
介入を中断して、
もう一度”元の状態”に戻してみることで、
介入の効果を分かりやすく検証することができます。
しかし、”元の状態”に戻せない場合、
あるいは、戻すことが適当でない場合、
第2ベースラインを設定することには、
意味があるとはいえません。
こうした場合には、
条件の統制に関して、
別のロジックを用いなければならなくなります。
よく知られているのが、
多層ベースライン法と呼ばれる方法です。
とはいえ、
これでもまだ根本的な前提について、
問題が解決しているとはいえません。
第一ベースラインと第二ベースライン、
あるいは、
被験者間での多重ベースラインは同一である、
という前提は成立するかしないか。
違いを無視できる場合もあれば、
出来ない場合もあります。
また、
「●●指導法」などという大雑把な介入条件では、
変化が起こっても、
その条件のどこが行動変容に影響しているか、
結局分からない場合もあります。
こうした限界にとらわれると、
逆にまた現場で用いるのは難しくなってきます。
ただ単に、
「効果的な介入である」と、
実証するためだけに用いるならば、
結局はまた、
研究が現場から離れていくだけになるかもしれません。
その場その場での目的を明確にし、
研究法の効果と限界とをにらみながら、
程よいバランスを探していく
必要があるのでしょう。
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【次回配信】
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次回 【理論号】… 2008年7月1日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 行動分析学入門 杉山尚子 著 2005 集英社新書
● はじめての応用行動分析 P.A.アルバート A.C.トルートマン 著
1992 二瓶社
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【編集後記】
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行動分析学では、
行動を詳細に観察し、
行動の事前事後、
すなわち行動随伴性を検証することで、
研究法としての厳密さと、
臨床実践における有用性の両方を
満足させようとします。
しかし、
研究法としての厳密さ、
因果関係検証へのこだわりが高じると、
現場での、
全体の流れの中での実践、という視点が、
分断されるように感じられることもあります。
あまりに行動の分析のみに集中すると、
相手が一人の人間というより、
個々の行動にしか見えなくなるかもしれません。
特に、行動の分析だけで、
あまりに多くの問題が解決できてしまうと、
問題状況さえも、
単なる謎解きパズルになってしまったりはしないのでしょうか。
もちろん、
これは個人の態度や心がけによって
防げる問題なのかもしれません。
しかし、
それを防ぐためには、
行動主義的な考え方自体を捨てる必要があるような気がします。
なんとなく、
行動主義でもなく、
行動主義的なアプローチも取っていないけれど、
結果だけ見ると、
とても行動分析的に素晴らしい実践になっている。
このような人が、
逆説的にいうと、
理想的な実践家なのかもしれません。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 http://www.clinicalpsychology.jp/ ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座 に帰属します。無断転載・転用を禁止します。
2008年6月18日水曜日
【Clip!アカデミー】第124回:展開号「心理学研究法から:一事例実験計画」
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