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2006年2月14日火曜日

 【Clip!アカデミー】第33回:解説号「心の研究法図の盲点」

【Clip! アカデミー】 第33回2006/2/14
第3週 解説号「心の研究法図の盲点」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/ 

      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題の解説】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
  ※【今回はこちら!】第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


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1)【前回のまとめ】
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心の研究法図を用いた3回目のエッセイ号である
前回エッセイ号では、
これまで検討してきた心理学研究法図の限界、課題として、
なぜ【ゲシュタルト】の側面を入れなかったか、
という問題定義を設定しました。

これまでの検討の締めくくりですから、
若干応用的な内容になっています。


●心の研究法図(仮)
===================================

          【 捉え方 】     【  道具   】
・・・・・  ┌─┐       ┌─┐           ┌─┐
     → │ |【 身体 】…|操|→ 生理学的検査  →| |
     → |観|【 意識 】…|作|→ 内観法     →|仮|
“こころ”→ |察|【潜在意識】…|的|→ 事例研究・面接 →|説|
     → | |【 行動 】…|定|→ 観察法・実験法 →|検|
     → | |【認知過程】…|義|→調査法・数理的解析→|証|
・・・・・  └─┘       └─┘           └─┘
===================================

●心の研究法図2(仮)
===================================

【 捉え方 】 【  道具   】  【研究への影響】 

【 身体 】→ 生理学的検査   …【科学的観察】
【 意識 】→ 内観法      …【言語報告】
【潜在意識】→ 事例研究・面接  …【対話】
【 行動 】→ 観察法・実験法  …【条件統制】
【認知過程】→ 調査法・数理的解析…【モデル構築】

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前回は、そのエッセイ号を受けての、
基礎知識の確認問題でした。

今回は、その解答と、その解説をしていきます。


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2)【問題の解説】
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【Q1】アクションリサーチに関する問題


アクションリサーチの特徴を挙げた以下の選択肢のうち、
もっとも不適切なものを、一つ選びなさい。

============================

a. 研究と同時に訓練も行うことを目的としている。
b. 実践研究である以上、必ず実践成果が求められる。
c. 計画、実践、評価、修正、適用の段階に分けられる。
d. マルチメソッドで行われる。

============================

正解は、   【 b. 】

…成果がなければ
 研究として成り立たないわけではありません。
 
 ただし、実践に成果が見られるまで、
 仮説の修正と実践のサイクルを繰り返すことが望ましいのは、
 いうまでもありません。


前回、基本的な説明が足りなかった部分を補うために、
アクションリサーチについての問題を用意しました。

近年、個人だけでなく、公園の緑化プロジェクト、
小学校の総合的学習から自治体レベルでの、
町おこし運動に発展したものなど、
アクションリサーチを用いた大規模な共同研究が、
報道などにおいても見られるようになって来ています。

アクションリサーチでは、
研究・実践・訓練を同時並行して行うとされています。

研究のプロセスとして実践的取り組みを行い、
その評価を通して、問題に改善が見られることで
研究が進むと考えると、たしかにこれは訓練のプロセスでもあります。

ただし、これはあくまで現場ですでに実践を
行っている研究者の職場内研修(OJT)であることが前提になっています。

また、計画、実践、評価、修正、適用の段階に分けられ、
場合によっては、初期仮説の修正を行ってから、
何度かサイクルを繰り返す場合もあります。

実践の評価には、質問紙法や観察法、事例検討などなど、
複数の研究法が組み合わせて用いられます。

このように、
アクションリサーチのプロセスは、
広い意味で、心理臨床から、経済活動、行政など、
様々な形の実践活動で、実際に行われているプロセスを、
研究という形で捉えなおしたものといえそうです。

ただし、研究法としてのアクションリサーチは、
実践の成果によってだけその価値が測られるものではなく、
実践のプロセスを記述すること自体に意味がある、という点が、
実践活動との違いであるといえるでしょう。


【Q2】K・レヴィンに関する問題

以下に挙げたK・レヴィンの業績のうち、
誤りであるものを一つ選びなさい。


======選択肢=======

a. 生活空間
b. グループダイナミックス
c. ソシオメトリー
d. 葛藤タイプ
e. アクションリサーチ

================

正解は、   【 c. 】

…ソシオメトリーは、
 精神科医のJ.L.モレノが考案したものです。


アクションリサーチを開発したのは、
社会心理学者のK・レヴィンです。

K・レヴィンは、ナチスの弾圧を逃れて、
アメリカで大きな業績を残した心理学者です。

ゲシュタルト心理学の影響を強く受け、
心理学に、“場”の概念を導入することで、
行動主義とは異なる視点から人間の心と行動について研究する
道を開きました。

レヴィンの“場”は、
B=f(P、E)で表されます。

これは、行動(B)は、人間(P)と環境(E)の関数(f)である、
すなわち、人間と環境からなる“場”によって引き起こされる、
ということです。

“場”とは、
オーケストラの奏でる音楽のようなものです。

実際には、
メンバーのそれぞれが、楽器を通してある瞬間に
ひとつの音を出しているだけ。

音楽は、こうした個々の音のタイミングや、
共鳴、反発、といった緊張関係の全体として現れます。

こうして出来た音楽は、
一瞬も同じではなく、実体を持ちません。

しかし、我々の心を動かし、
影響を与えるのは、バラバラの音そのものではなく、
実体を持たないはずの交響曲なのです。

その瞬間、音楽はそれを構成している音の、
単なる足し算以上の存在として人を動かしている、
というのがレヴィンのいう“場”のイメージです。

こうしたイメージを、個人の行動を引き起こす要因や、
集団の力学に当てはめてみてください。

レヴィンの生活空間や、グループダイナミックス、
葛藤タイプといった概念が、理解しやすくなるはずです。

またレヴィンは、人間の行動に、
行動主義とは異なる説明をすることで、
アメリカの心理学に多大な影響を与えました。

例えば、認知的不協和理論のフェスティンガーは、
彼の弟子にあたります。

認知的不協和状態では、
安いお給料だから楽な仕事だろうと思ってやってみたら、
実際にはひどく大変な仕事だった場合など、
現実と認知に矛盾があり、
現実を認められない緊張状態が続きます。

こうした場合、人は変わらない現実の代わりに、
自分の認知を変えることで、この緊張状態を解消しようとする、
というのが、認知的不協和理論の趣旨です。

お給料が安くても、やりがいのある仕事だから!
と思うことで、自分の中での矛盾を解決するわけですね。

どうでしょう。

レヴィンの影響を感じ取ることができませんか?

このように、有名な社会心理学者を、数多く世に出したことも、
レヴィンの業績のひとつなのです。


【Q3】質的研究に関する問題

以下の質的研究法のうち、仲間はずれを一つ選びなさい。


======選択肢======

a. フィールドワーク
b. エスノメソドロジー
c. グラウンデッド・セオリー
d. アクションリサーチ
e. 事例研究

===============

正解は、   【 a. 】

…フィールドワークは、主に文化人類学の研究法です。


この問題は、皆さんに様々な質的研究法を意識してもらい、
それについて考えてもらうためのものです。

エッセイ号では、
アクションリサーチという、
質的研究法の中でも、
特に日本の心理学ではあまり用いられない方法を通して、
現代の心理学研究法について論じてきました。

そのため、質的研究法自体について触れることが
あまりありませんでした。

しかし、
エスノメソドロジーやグラウンデッド・セオリー、
アクションリサーチ、事例研究の共通点は、
やはり、現場のディテールに触れるための方法である点でしょう。

一般化していく、ということは、
個々の事例のディテールを、捨てていくことです。

それが量的研究の醍醐味なわけですが、
それでは成り立たない研究もあります。

その代表が、例えば自然災害や過去の出来事などの、
再現することができない出来事に関する研究でしょう。

あるいは、固有の文化や集団も、
実験室で再現することはできません。

前者を対象とするのが事例研究であり、
後者を対象とするのが、文化や集団をありのままに観察するための、
参加観察を中心とした手法なのです。

フィールドワークは、
こうした手法を長く積み重ねてきた、
文化人類学において発達してきた手法です。

心理学者ももちろんフィールドワークを行いますが、
心理学の研究法としては、
フィールドワークという形式はありません。


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【次回配信】
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   次回 【エッセイ号】… 2月28日(火)にお送りする予定です。
※ 次週2月21日(火)は休刊です。特別号が配信されることがあります。


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【参考文献】
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● ヘルスケアに活かすアクションリサーチ 2005 
  アリソン・モートン=クーパー著 岡本玲子 関戸好子 鳩野洋子 訳
  医学書院

● 臨床心理学研究の技法 2000 下山晴彦 編著 福村出版

● 心理学研究法入門 -調査・実験から実践まで 2001
  南風原朝和 市川伸一 下山晴彦 編 東京大学出版会

● 心理学物語-テーマの歴史 R.C.ボールズ著 富田達彦訳 2004 北大路書房


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【編集後記】
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心の研究法図が終わりました。

本メルマガでは、
ひとつの図式の検討の最後に、
その図式の限界や課題を示すことで、
仮に立てた図式を一度リセットする、
という方法をとっています。

なぜなら、”こころ”という存在は、
1つの定義、ひとつの図式で把握しきれるものではなく、
特定の側面を切り取るということは、
あくまで仮の足場を組み立てるということだからです。

仮の足場を解体するためには、
それまで検討してきた図式の限界や、
そこからでは分からないところ、
を示すことです。

ただ、この限界や疑問は、
この仮の足場を立てたことで、
見えてきたものです。

前々回のエッセイ号も、
その意味で、多少基礎からは外れる部分や、
筆者の見解が入ってくる場合があります。

その点も、本メルマガの持ち味として、
見てもらえればと思います。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   

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