臨床心理士指定大学院受験講座が提供している、心理学・臨床心理学を学ぶ方を対象とした、メールマガジンのバックナンバーサイトです。 http://www.clinicalpsychology.jp/

最新のバックナンバー

2006年3月28日火曜日

【Clip!アカデミー】第37回:第1週:エッセイ号「心の対象図あれこれ」

【Clip! アカデミー】 第37回2006/3/28
第1週 エッセイ号「心の対象図あれこれ」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/  
      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【対象はどのような側面に分けられるか】
            3)【構成概念というもの】
            4)【基礎と応用】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】

 ※文中の図が正しく表示されない場合、等幅フォントでご覧ください※

  メルマガの最後に【Outlook Express・Netscape Messengerの場合】
  のフォント設定のやり方を載せてあります。

==================================================================


   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
  ※【今回はこちら!】第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1)【前回のまとめ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

前回エッセイ号より、Clip!アカデミーも新章に突入しています。

これまで、Clip!アカデミーの切り口から、
心理学における”こころ”の捉え方に、様々な方向から
光を当ててきました。

それがひと段落着いたところで、
本章では、一歩引いて、”こころ”にとっての、
対象とはなにか、について考えて行きます。

以上のコンセプトから、
”こころ”に対する対象の位置づけを、
大まかに図にまとめてみたのが、
以下の心の対象図(仮)です。

● 心の対象図(仮)
=======================

時間的広がり
  ↑
  |   ┌-----┐   ┌----┐
  |   |”こころ”| ⇔ | 対象 |
  |   └-----┘   └----┘
 ←+-------------------→
  |              空間的広がり
  ↓
=======================

時間的広がりにおける、
”こころ”と対象との関係は、
たとえば、現在の自分(”こころ”)からみた、
過去の自分(対象)になります。

過去の自分自身は、現在の”こころ”からは、
自分の外にある対象になります。

そして、この関係は、【発達】と名づけることが出来るでしょう。

そして、
空間的広がりにおける関係は、
自分(”こころ”)と他人(対象)との関係が挙げられます。

この関係は、【個人差】として捉えることが出来ます。


今回のエッセイ号では、このような“対象”について、
もう少し詳細に検討していくことにしましょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)【対象はどのような側面に分けられるか】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

“こころ”から見るとき、
そして、科学の目を通してみるときでは、
“対象”は見える側面が異なります。

たとえば、我々が演劇の舞台を見ているとしましょう。

「ドン・キホーテ」
(もしくはミュージカル「ラ・マンチャの男」)には、
ドン・キホーテが風車に挑みかかっていく有名なシーンがありますが、
ここでは、ドン・キホーテには風車は恐ろしい竜に見えている。

我々は風車であることを知っているから、
竜に向かって行く彼の勇気が、コメディになるわけです。

これが、“こころ”から見ることができる“対象”です。

五感や、引き起こされた感情、印象、イメージ。

それは、常に同じではなく、移ろい、変わっていきます。

だからこそ、
張りぼての舞台道具が、風車になったり、竜になったりします。

それが、我々の心の世界だということもできます。

科学の目を通してみるとき、
舞台道具は風車にも、竜にもなりません。

あくまでも、木材やペンキで作られた舞台道具です。

科学は、対象を捉えるとき、
再現可能性や、一般性を重要視します。

つまり、いつ誰から見ても、
変わらない部分を共通の土台として、
それを、研究を通して拡大していこうとします。

ただ、科学の目を通して捉えることのできる対象は、
我々が“こころ”で直接捉えることのできない部分です。

舞台道具に用いられている木の材質や年代だとか、
釘に使われている金属の混合比。
絵の具の原料。

たとえば、空気の中の、酸素と窒素の比率だとか、
光の波長の中でも、エックス線などの放射線などは、
検査装置、すなわち科学の目を通さなければ、
捉えることのできないものです。


ここでは、いつもどおり、便宜的に
前者を“概念”、後者を“実在”と置いて、
議論を進めていくことにしましょう。

       “  対象  ”
     ┌-----┬-----┐
     | 概念  | 実在  |
     └-----┴-----┘
       風車・竜  舞台道具
        風    酸素・窒素…etc.
         

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)【構成概念というもの】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ここまでで皆さんは、
心理学が扱うのが、“対象”のなかでも、
主に“概念”の側面、
“こころ”を通して捉えられる側面であることが
分かったでしょう。

しかし、心理学は、
あくまで、科学の目を通して対象を検証していく学問です。

“概念”的な側面を、どのように科学の目から
捉えるのか。

そのために、心理学がよく用いるのが、
構成概念と呼ばれるものです。

構成概念は、対象に関する実験や観察など、
実際の観察の結果から、理論的に構成される概念です。

そのため、構成概念自体は、
実際に観察可能ではない、
人工的に構築された概念なのです。

心理学は、実在する対象について、
色々な実験をしたり、観察したりします。

そして、多くの場合、
人間の“こころ”について検討をする際には、
なんらかの「仮説」を立てることになります。

たとえば、
臨床現場で、繰り返し似た症例を観察した結果、
人間には、人間の行動を規定している動因としての、
【無意識】というものがある、
と仮に考えることにするわけです。

【無意識】という概念によって、
人間の行動や、その理由が整理され、明確に理解できるならば、
その仮説は有効な仮説です。

それが、構成概念(特に仮説的構成概念)と呼ばれるものです。

実は、心理学において“こころ”を研究するという場合、
こうして形成された、構成概念の確からしさや、
特徴を検証する、ということである場合が多いのです。

             “  対象  ”
┌------┐   ┌-----┬-----┐
| 構成概念 | → | 概念  | 実在  |
└------┘   └-----┴-----┘
    ↓         ↓    ↓
  【無意識】  →    竜    風車

この例の場合、
少々通俗的で、的外れなたとえになりますが、
「風車」が「竜」に見えるのは、ドンキホーテの中の、
巨大なものに対する「無意識」的な恐怖が風車に向けられたためだ、
と考えるわけです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)【基礎と応用】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


同じ心理学の中でも、
取り扱う側面によって研究の対象に違いがでてきます。

そして、この違いは、基礎心理学と、応用心理学では、
より大きくなります。

その主な守備範囲を、大まかに区分したのが、
以下の図です。

● 心の対象図2(仮)
=============================

 ┌-----┐   ┌-----------┐
 |”こころ”| ⇔ |     対象    |
 └-----┘   └-----------┘
                 ↓
┌------┐   ┌-----┬-----┐
| 構成概念 | + | 概念  | 実在  |
└------┘   └-----┴-----┘
                  ======
                   自然科学
                  (大脳生理学等)
            ============
               基礎心理学
 =================
       臨床心理学

=============================

基礎心理学は、観察可能な研究対象から、
“こころ”にアプローチし、構成概念を生み出します。

一方で、
応用心理学である臨床心理学では、
基礎心理学が生み出した構成概念(=心の捉え方)を通して、
個々の対象(クライエント)にかかわっていく、といえるでしょう。

基礎心理学 = モデル化(構成概念の構成)
┌------┐   ┌-------┐
| 構成概念 | ← | “対象”  |
└------┘   └-------┘
    
臨床心理学 = 構成概念から個々の“対象”へ
┌------┐   ┌-------┐
| 構成概念 | → | “対象”  |
└------┘   └-------┘

臨床心理学の仕事のひとつは、
概念と、構成概念を足がかりにして、
基礎心理学が構築した研究成果を、
実在する対象に結び付けていく、
概念と実在の橋渡しをすることだといえます。

ここに、
臨床心理学を実践の場で用いるうえで、
その前提に存在する基礎心理学の知識と考え方
を身に着けておくことの必要性があるのです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回配信】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   次回 【問題号】… 4月4日(火)にお送りする予定です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【参考文献】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


● ドン・キホーテ<前篇1> 2001 M・セルバンテス著 
  牛島信明訳  岩波文庫

● 心理学論の誕生 サトウタツヤ 渡邊芳之 尾見康博 2000 北大路書房
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


去年の3月25日に【準備号】をお送りしてから、
本メールマガジン【Clip!アカデミー】も、
丸一年が経過しました。

ひとつの側面からでは捉えきれない、
”こころ”についての学問である、心理学。

それを勉強する人たちのために、
すこしでもお役に立てばと思い、
参考書とはまた違った角度から、
心理学について検討してきました。

よりよいものにするための
試行錯誤を忘れず、
4月からも、心機一転、
新しい進路に進む方たち、
これからのための勉強を始める人たちと、
ともに歩んでいきたいと思います。

これからも、
【Clip!アカデミー】を、
よろしくお願いいたします。

====================================================================
送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。   

0 件のコメント: