【Clip! アカデミー】 第39回 2006/4/11
第3週 解説号「心の対象図あれこれ」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題号の解説】
【Q1】対象の研究に関する問題
【Q2】基礎と臨床の比較に関する問題
【Q3】構成概念についての問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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前回エッセイ号は、心の対象図検討の第2回をお送りしました。
34回でお送りした第1回目の検討では、
”こころ”を、これまでからは一歩引いた視点、
すなわち、”対象”との対比から現れてくるものとして
捉える試みをしました。
検討を通して、便宜的に立てたのが、
以下の図です。
● 心の対象図(仮)
=======================
時間的広がり
↑
| ┌-----┐ ┌----┐
| |”こころ”| ⇔ | 対象 |
| └-----┘ └----┘
←+-------------------→
| 空間的広がり
↓
=======================
第2回であった前回ではさらに進んで、
”対象”自体を、より詳細に、
「概念」と「実在」という側面から検討しました。
● 心の対象図2(仮)
=============================
┌-----┐ ┌-----------┐
|”こころ”| ⇔ | 対象 |
└-----┘ └-----------┘
↓
┌------┐ ┌-----┬-----┐
| 構成概念 | + | 概念 | 実在 |
└------┘ └-----┴-----┘
======
自然科学
(大脳生理学等)
============
基礎心理学
=================
臨床心理学
=============================
対象に、概念と実在の側面を置くと、
実在の側面は観察可能で科学的検証が有効な
側面になるでしょう。
概念の側面は、一見確かな事実に見えても、
我々の見方、捉え方によって変化するし、
変化させることが出来ます。
舞台セットを対象とすると、
それがベニヤ板(実在的側面)で出来ていても、
見る側は、それをベニヤ板にも、風車にも、
ドン・キホーテが突進していく竜にも、
見ることが出来る。
これは、我々の”こころ”の働きといえます。
基礎心理学は、自然科学における様々な成果を前提に、
こうした、科学的に捉えにくい側面を捉えるために、
構成概念という仕組みを作り、検証していく。
では臨床はどうか。
その辺を考えつつ、
考えを深めるための刺激剤、
問題号3問をごらんください。
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2)【 問題号の解説 】
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【Q1】 対象の研究に関する問題
以下の図のうち、対象の広がりを研究するために、
(A)と(B)に入る最も適当と思われる研究法の組み合わせを、
以下の選択肢から選びなさい。
● 心の対象図(仮)
=======================
時間的広がり ←(A)
↑
| ┌-----┐ ┌----┐
| |”こころ”| ⇔ | 対象 |
| └-----┘ └----┘
←+-------------------→
| 空間的広がり ←(B)
↓
=======================
======選択肢=======
(A) (B)
a. 横断的研究 コホート研究
b. 縦断的研究 コホート研究
c. 縦断的研究 横断的研究
d. コホート研究 縦断的研究
=================
正解は、 【 c. 】
…感覚的に捉えれば簡単に答えが出てきます。
時間を縦断して、対象の時間的変化を捉えるのが縦断的研究、
空間を横断して、対象というカテゴリ内の差を捉えるのが横断的研究です。
縦断的研究が、
もっともシンプルに当てはまるのは、
発達研究の分野です。
アイデンティティにせよ、認知機能にせよ、
身体能力にせよ、対象を時系列で研究し続けることで、
その目に見えない変化を形にすることができます。
逆に、横断的研究の代表格は、
社会学における社会調査や、
心理学における個人差研究です。
社会学は社会全体を対象にする学問であるため、
特に横断的研究の方法論を工夫する必要がありました。
なぜなら、
社会全体というとき、本当なら、
社会成員全員について調査することが必要になるからです。
成員全員を対象に行う調査を全数調査といいますが、
国勢調査など、対象が大きすぎる場合、
なるべく社会全体を平等に代表するような、
データの集め方が工夫され、心理学でも用いられています。
ただ、縦断的研究、横断的研究だけで、
フォローしきれない部分があります。
それが、コホートです。
コホートは、「バブル世代」「丙午の生まれ」「旧制高校卒」など、
ある特定の時期に、同一の社会経験をした人たちのことです。
たとえば、出生率が年々増加している、
という縦断的研究の結果があるとします。
しかし、毎年の出生率をグラフにしてみると、
ある年だけ、ぽこっと出生率が低い年がある。
これを無視して、
「年々増加している」と言い切ってしまうのは、
研究としてはNGです。
丙午の年に生まれた女性は、
気性が荒く、嫁の貰い手がつかない、
というジンクスを重視した人たちが、
妊娠出産を控えた、という説明が正しければ、
出生率は年々増加している、という結果を、
もっと自信を持って主張することができます。
【Q2】 基礎と臨床の比較に関する問題
(A)と(B)にはいるものとして、
もっとも適当な組み合わせを、
以下の選択肢から選びなさい。
基礎心理学
┌------┐ ┌-------┐
| 構成概念 | ← | “対象” |
└------┘ └-------┘
学習障害 ( A )
臨床心理学
┌------┐ ┌-------┐
| 構成概念 | → | “対象” |
└------┘ └-------┘
学習障害 ( B )
1 脳細胞の損傷 2 学校成績
3 観察や検査における個人差 4 その人自身
====選択肢=====
(A) (B)
a. 1 2
b. 1 3
c. 2 4
d. 3 4
============
正解は、 【 d. 】
…一見、(A)にはどれでも入るように見えますが、
基礎心理学が、対象を科学的に一般化し、モデル構築に進むことを
考慮すると、3になります。
基礎心理学は一般化に向かい、
対象の中の例外や細部のディテールは切り捨てていく。
臨床心理学は個人に向かい、
むしろ例外やディテールに注意を向ける。
同じ現象を扱っていても、
ふたつの心理学では、
そもそも“対象”として仮定しているものが、
ズレているとさえ、いえるかもしれません。
学習障害は、
なんらかの脳内の情報処理のアンバランスや、
偏りが原因として仮定されているが、
脳内の損傷など、器質的変化は特定されておらず、
生物学的な根拠には乏しい。
構成概念としては、
まだまだ慎重に扱う必要のある概念だといえます。
【Q3】 構成概念についての問題
「血液型占い」を、構成概念として見ると、
その前提には、以下のような対象が存在すると考えられる。
================================
【構成概念】 ∥ 【概念】 | 【実在】
∥ |
血液型パーソナリティ ∥「A型」「B型」 | ヘモグロビンタイプ
∥「O型」「AB型」 |
================================
上の図の説明として最も適切な文章を、以下の選択肢から選びなさい。
==============選択肢=====================
a. 血液型占いは、これまで十分に科学的検証を経てきたパーソナリティ類型である。
b. 赤血球のヘモグロビンのタイプが性格を決定する
c. 血液型パーソナリティという構成概念は、十分な科学的根拠を持つとはいえない。
d. 科学的根拠に乏しい血液型占いを、個人に当てはめるのは無駄である。
=======================================
正解は、 【 c. 】
…ヘモグロビンのタイプの違いが、なぜパーソナリティの違いに結びつくのか、
という問いは、これまで多くの科学的検証をされていますが、
実証されていません。
血液型占いは、我々人間が個々に持っている血液型によって、
行動や人格の傾向を類型化することができる、
と考えるものです。
ここで、血液型パーソナリティなる構成概念が
存在すると考えると、
この構成概念が前提とし、依拠している“対象”はどこにあるのか、
これまで検討してきた図式から考えてみましょう。
ひとつには、我々が、実際に、
「BさんはB型っぽいよね」「OさんはいかにもO型だ」
というときの、B型らしさ、O型らしさ、
といったものがあります。
次に、そうした我々の言う、
B型らしさ、の根拠はどこに見出せるでしょうか。
ここでは、話を単純化するために、
「B型らしさ」の根拠として、
個人の血液型を決定している赤血球内のヘモグロビンのタイプを
挙げましょう。
ヘモグロビンのタイプは、科学的に観察可能な実在物ですから、
構成概念の信頼性を裏付ける科学的根拠としては、
文句なしです。
…でも、ちょっとまってください。
そもそも、どうやって、
血液型を決定するだけのヘモグロビンのタイプが、
個人の行動や、人格を規定しているのでしょうか。
古川竹二によって学説として提唱された当時は、
様々な追試が行われましたが、
これまで、血液型とパーソナリティに相関がある、
という結果は見られていません。
可能性は一概に否定できませんが、
このヘモグロビンから、きちんと研究結果を積み上げて、
我々のパーソナリティへの影響を実証するまでの道のりは、
遠いように思われます。
しかし、選択肢のd.のように、
科学の裏づけがないのだから、血液型占いには意味がないのだ、
と切り捨ててしまうのも、心理学徒としてはいかがなものか、
という感じがします。
なぜなら、
血液型でお互いを類型化し、批評し合うことで、
コミュニケーションが促進されたり、
理解しがたい相手の行動や、その動機を自分なりに納得したり、
といった効果も、決して少なくないからです。
このような捉え方は、社会心理学的な視点になります。
一面では科学的とはいえないもの、
科学的に研究が難しいものも、
別の面からは、科学的に研究することができます。
血液型占いを、
科学的でないという理由だけから退けてしまうことは、
科学の楽しみだけでなく、
人生の楽しみの一部も、
ちょっぴりなくしてしまことがあるかもしれませんね。
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【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 4月25日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 流れを読む心理学史 世界と日本の心理学 サトウタツヤ 高砂美樹
2003 有斐閣
● 心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし 高野陽太郎・岡隆 編
2004 有斐閣
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【編集後記】
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“対象”にまつわる、
こころの対象図をめぐる検討も、
残すところあと3回になりますが、
皆さんはどう受け止められているでしょうか。
こころの歴史図や、研究法図などは、
心理学史、心理学研究法などに対応していますから、
なじみやすいのです。
この図式は、心理学概論のテキストでそのまま扱われることのない
領域ですから、とっつきにくいと感じている人も多いでしょう。
どちらかといえば、哲学に片足を突っ込んだ議論だからです。
それをあえて取り上げているのは、
特に臨床心理学においては、
こうした、哲学の初歩を前提にした議論が、
非常に重要な意味を持つからです。
ただ、ここで扱えるのは、
哲学のテの字が出てくる前、
専門用語が出てくる手前の、イメージくらいです。
もう少しお付き合いいただいて、
哲学のモノの見方にも、すこし親近感を感じてもらえると、
あとで勉強するときに、
抵抗が少ないかもしれません。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
2006年4月11日火曜日
【Clip!アカデミー】第39回:解説号「心の対象図あれこれ」
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