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2006年12月19日火曜日

【Clip!アカデミー】第65回:解説号「心の未知の側面と取り組む

【Clip! アカデミー】 第65回 2006/12/19
第3週 解説号「心の未知の側面と取り組む」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/



      ◆目次◆

            1)【前回のまとめ】
            2)【問題の解説】
           【Q1】心理臨床と観察に関する問題
           【Q2】心理療法に必要な要素に関する問題
           【Q3】権威と実践に関する問題
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】


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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
  ※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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心理学史や研究法など、
心理学の基礎的な文献を読みながら、
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もしかしたら、それを元に、
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clip-academy@clinicalpsychology.jp


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1)【前回のまとめ】
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心の実践図(仮)
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●論理・科学→「語りえないもの」を「(仮に)語りえるものとみなして語る」
●物語・文学→「語りえないもの」を「語らないまま語ろうとする」
●宗教   →「語りえないもの」を「“語られたもの”として信じる」
●芸術   →「語りえないもの」を「語らないまま表現する」

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心の実践図2(仮)
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○「語りえないもの」に対する実践
  ●物語・文学→「語らないまま語ろうとする」
  ●宗教   →「“語られたもの”として信じる」
  ●芸術   →「語らないまま表現する」
   ↓
○実践を自覚・検証・修正する手段
  ●論理・科学→「(仮に)語りえるものとみなして語る」
   ↓
◎心理学的実践=心理臨床

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前回エッセイ号までの2回のエッセイ号による検討では、
「語りえないもの」という、
”こころ”のなかでも論理では説明できない側面を、
どのように捉えるか、
という点について考えてきました。

前回エッセイ号では、「なぜ人を殺してはいけないのか」
という倫理的な命題を通して、
このことを確かめるとともに、
心理学の実践的応用分野である心理臨床は、
どのように「語りえないもの」を捉えることができるのか、
ということを考えてきました。

ここでの一応の結論が、
心の実践図2にあるように、
「語りえないもの」に対する取り組みにおいては、
科学的視点によってそれを自覚し、修正し、
理論化する、という点こそ、心理臨床実践の独自性ではないか、
というものです。

前回の問題号、今回の解説号では、
もうすこし心理学に引きつけた形で、
心理臨床実践について3つのテーマを掘り下げています。


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2)【それでは問題です】
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【Q1】観察のいろいろに関する問題

心理臨床における観察のあり方について
よく説明しうる概念として、
もっとも適当なものを、
以下の選択肢よりひとつ選びなさい。


 ====選択肢=====
  
  a. 自然観察
  b. 参与観察
  c. 関与しながらの観察
  d. 実験的観察
 
 ============


正解は、   【 c. 】

自然観察と実験的観察の違いは、
統制条件があるかどうか、
から区別することが出来ます。

観察対象の諸条件をコントロールせず、
できるだけありのままの状態で観察するのが、自然観察。

逆に、条件をコントロールし、
特定の条件下での観察対象の振る舞いを観察するのが、
実験的観察になります。

有名なものでは、
幼児の愛着形成のパターンを観察するために行われる、
ストレンジシチュエーション法などが
それにあたるでしょう。

「参与観察」と「関与しながらの観察」に関しては、
おそらく【 c. 】をあげた人がほとんどではないでしょうか。

しかし、勉強している人ほど迷ったのではないかと思います。

なぜなら、
実際には、このふたつはほとんど同義として
扱われているからです。

元の英語も、同じparticipant observationです。

違いを挙げるとすると、
臨床実践において取り上げられる場合、
participant observationは、
新フロイト派の臨床家、H・S・サリヴァンの言葉として、
「関与しながらの観察」と訳されます。

一方、「参与観察」と訳され、用いられる場合、
観察法という研究法のひとつとして紹介されることが多いでしょう。

そして、この目的の違いからは、
やはり同じ行為であったとしても、
あえて区別するだけの意味があるように思われます。

どこが違うのか、皆さんも考えてみてください。


【Q2】心理療法に必要な要素に関する問題

心理療法を実践する上で不可欠な要素として
もっとも適当なものを、
以下の選択肢の中からひとつ選びなさい。


 ===選択肢===
  
  a. 心理検査
  b. 心理査定
  c. 医学的診断
  d. 受理面接
 
 =========


正解は、   【 b. 】


この中で、心理療法に欠かせない要素というと、
どれになるでしょうか?

心理検査を行うことや、
受理面接を行うことは、
ときにほとんど心理査定とイコールとして扱われます。

心理査定と、医学的診断が、
ほとんど同義になることもあります。

そういう意味で言えば、
心理検査・受理面接・心理査定・医学的診断、
これらが欠けていても、心理療法は成立しそうに見えます。

しかし、心理査定の意味を、
もう少し広く捉えるとどうでしょう。

心理査定→基礎資料から問題に対する仮説を構築すること

つまり、
クライエントの問題や障害、
それに対する治療法の選択、
その結果予期される予後の見通しを得ること。

とすると、ほかの3つは、
心理検査→心理査定のための道具
受理面接→心理査定のための枠組み
医学的診断→医師による問題の評価と分類

と区別することが出来そうです。

このように捉えると、
心理査定=アセスメントのない
心理療法は、存在しないことが分かります。

心理検査や受理面接、医学的診断は、
医療現場において、
アセスメントを構造として行うために発達してきた
枠組みであると考えられます。

その意味で、
医療現場でなければ、
心理検査や受理面接、医学的診断のない
ところでスタートする心理療法も成立しえます。

しかし、
アセスメントがまったく存在しない心理療法は成立しえません。

クライエントに関するなんらかの仮説がなければ、
クライエントにどのような援助が期待できるか判断することは出来ず、
したがって、そもそも心理療法の用不要自体が判断できないからです。

逆に、治療構造として備わっていない分、
アセスメントを常に明確にしている必要があるのが、
医療現場以外での心理臨床であるといえるでしょう。


【Q3】権威と実践に関する問題

権威との関係について、
心理臨床実践に大きな変化をもたらした臨床家として、
最も適当と思われるものを、
以下の選択肢から一人選びなさい。


 =====選択肢=====

  a. C・R・ロジャーズ
  b. G・フロイト
  c. M・ホワイト
  d. M・エリクソン

 =============


正解は、   【 a. 】


心理臨床が、
フロイトの行った精神分析療法にその多くを
負っていることに反対する人は、
おそらくいないでしょう。

フロイトは医者であり、
またその権威を自明のものとして、
あるいは意図的に、治療関係に持ち込みました。

しかし、治療者の権威を前提とする
「治療者(医者)‐患者」関係に疑問を持ち、
その後の心理臨床実践を位置づけなおしたのが、
来談者中心療法の生みの親であるC・R・ロジャーズです。

それまでの受動的な存在としての「患者」は、
ここでは自らのニーズを持って、
主体的にサービス(心理療法的援助)を
求める「来談者」として位置づけられます。

その背景には、心理療法の、
医療以外の現場への拡大という問題がありました。

専門的サービスの提供、
という枠組みであれば、
教育現場、福祉や矯正の現場においても、
広く心理療法的援助が可能になります。

医療的には問題のない健常者も、
心理療法的援助の対象者に入ってくるからです。

このようにして、
来談者中心のスタンスは、現在の心理臨床における、
グランドセオリーのひとつを成しているに至っています。

しかし今度は、
本当に現在の心理臨床は「来談者中心」か、
という問題が提起されることになります。

●そもそも、相互に影響を与え合っている治療者と来談者は、
弁護士のように、専門的知識を来談者に一方的に与えている
他の専門的サービスとは、根本的に異なる、という考え方があります。

●はたまた、来談者の問題を解決するためであれば、
権威だろうが、なんだろうが、あるものを使えばよいし、
必要なければこだわる必要はない、という考え方もあるでしょう。

●現代社会において、もっとも「来談者中心」なのは、
サービス産業における、サービス提供者のあり方かもしれませんが、
心理療法が、はたして、他のサービス産業と同じような
産業になりえるのか?という疑問もあるかもしれません。

心理臨床の実践について考える上では、
治療者と来談者の関係のあり方について、
避けて通ることができません。

皆さんも、自分の想像の及ぶ範囲で、
こうした関係の在り方について考えてみてください。


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【次回配信】
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 次回 【エッセイ号】… 2007年1月2日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 新訂 方法としての面接-臨床家のために 土居健郎 1992 医学書院

● 心理臨床大辞典[改訂版] 氏原寛 亀口憲治 成田義弘 東山紘久 
  山中康弘 共編 2004 培風館

● 新版 心理臨床家の手引 鑪 幹八郎 名島 潤慈 編 2000 誠信書房 


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【編集後記】
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今回は、3問のうち、どれも答えの定まらない問題を
出題することにしました。

それは、実践というテーマ、「語りえないもの」というテーマ自体が、
自信を持ってこれが答えだ、
と論じられることを、拒むところがあるからです。

明確な結論を拒む、というよりも、
そのテーマや疑問について考える過程のほうに意味がある、
といった方がいいでしょうか。

例えば【Q2】を読んで、

そういえば、アセスメントのない心理療法って、
あるとしたらどんなものだろう、

などの疑問が、ふと浮かんでこなかったでしょうか。

こうした「もしも」の仮説を、
頭の中で検証してみることを思考実験といいます。

このメルマガが、こうした「もしも」について考えたり、
ご友人と議論したりするきっかけになれば、と思います。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
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