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2007年6月12日火曜日

【Clip!アカデミー】第84回:確認号「基礎心理学から:感覚と知覚

【Clip! アカデミー】 第84回 2007/6/12
第3週 確認号「基礎心理学から:感覚と知覚」


◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【感覚と知覚に関して、研究の広がり】
           3)【心理学とのつながり】        
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】



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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「出題号」… タネをまく
                 ↓  (基礎概念と論述問題)
            第2週「解答号」… 深める 
      ↓    (論述問題の解説)
 ※【今回はこちら!】 第3週「確認号」… つなげる
                 ↓    (関連諸分野から)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

 

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 2ヶ月目 基礎心理学から
             「感覚と知覚」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
【NOW!】← 2ヶ月目 基礎心理学から
  |     3ヶ月目 応用心理学から
  |     4ヶ月目 臨床心理学から
  |     5ヶ月目 心理学研究法から 
  |
  |    ================
  ↓


 ● 第3週「確認」号「基礎心理学から:感覚と知覚」はコチラ↓

~~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~

  個々のテーマについて考えた後は、
  それを、より大きな視点から、捉えなおしていきましょう。

  心理学全体の視点から、そのテーマを考え直してみる。

  そうすると、違う文脈から、違うテーマが、次の問いが
  浮かび上がってくるかもしれません。

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2)【感覚と知覚に関して、研究の広がり】
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●神経心理学(神経科学)

神経心理学は、人間の高次認知機能を、
大脳神経系の構造や働きの解明を通して、
理解しようとする学問分野である。

ブローカの失語症研究に始まり、
脳の損傷と機能障害との関連付けから、
大脳の機能的局在や、障害の理解に貢献してきた。

脳損傷の研究や、分離脳の研究など、
初期には解剖学的な研究方法が取られたが、
近年は、MRIやPETなど、
侵襲性の低い脳機能の診断技術が開発されたため、
活動している脳の働きを研究することによって、
新たな知見がもたらされつつある。

●認知心理学(認知科学)

人間の認知機能を、
高次の情報処理システムとみなし、
その処理過程を解明することを通じて、
理解しようとする学問分野。

初期には、コンピューターとの比較から、
注意や記憶、思考、問題解決など、
様々な処理が直列的に連なって実行されて、
最終的な行動として現れると考えられていた。

現在では、大脳神経系の情報処理の仕組みが、
コンピューターとは大幅に異なることが明らかになるにつれ、
そのモデル化に研究がシフトしつつある。

認知心理学においては、
リバースエンジニアリングという発想から
研究が行われる。

脳の機能を理解するために、
まずは実験的に統制された情報に対し、
脳がどのように対応するか、データを収集する。

S(刺激=入力)→O(有機体=脳)→R(反応=出力)

その結果から、
脳の機能を模倣したモデル(O’)を作成するのである。

作成されたモデルから、脳機能が再現できれば、
そのモデルの正しさが、支持されたことになる。


●神経心理学と認知心理学

現在では、大脳神経系における並列処理や、
ニューラルネットワークによる学習など、
神経心理学における脳の構造についての新しい知見が、
認知心理学に取り入れられたり、
逆に認知心理学における視知覚の処理モデルが、
神経心理学に影響を与えたりと、
様々な学際的な交流が行われています。

しかし、ニューロンの発火(情報を伝える脳細胞が活性状態になること)と、
我々の知覚(ひとつのまとまりとして、世界を経験すること)との
間の関係は、未だ、明らかにはなっていません。


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3)【心理学とのつながり】
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●ヘルムホルツの無意識的推論は、
感覚・知覚の大前提の、転換点に位置しています。

感覚・知覚を、
客観的に存在している”真実”を写し取った写真、
と考える視点から、
不確実で限られた情報を能動的に解釈し、
大雑把に編集を加えながらまとめられた、
TV番組のようなものと考える視点へ。

1枚の報道写真と、それを使った報道番組を比べた場合、
編集や、加工の余地が大きいのは、報道番組です。

むしろ、不確実で、限られた情報を、
能動的に解釈し、編集や推測を加えることで、
ひとつの番組としてのまとまり、を作り出しているといえます。

知覚も同様に、
矛盾したところや抜けているところについては、
常に解釈や推測を加えることで、
知覚のまとまりを維持しています。


知覚が、自分が見ている風景が、
脳内で編集され、加工されたものだ、と考えることは、
我々にとって受け入れづらいことです。

我々は、「自分が今見ているとおりに世界は存在している」
と素朴に信じていたいのです。

しかし、こう信じることは、
逆に我々をだまされやすく、ナイーブにしていることも事実です。

常に、「盲点」の存在を知って、
それを自分の利益のために用いようとする人たちがいるためです。

それを防ぐためにも、
実際にはどのようなプロセスで、
我々の世界(=知覚)が成り立っているのか、
を理解し、共有する作業が必要です。

ヘルムホルツが「生理学的光学」を執筆したのは、
1866年ですが、2007年の今、
我々の世界(知覚)がどのようなプロセスから成り立っているのか、
というテーマは、
ますます重要になってきているように思われます。


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【次回配信】
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   次回 【出題号】… 6月26日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● MIND HACKS! 実験で知る脳と心のシステム 
  トム・スタッフォード マット・ウェッブ著 2005 オライリー・ジャパン

● 脳とクオリア なぜ脳に心が生まれるか 茂木健一郎著 1997 
  日経サイエンス社

● 心理学 鹿取廣人・杉本敏夫編 1996 東京大学出版会

● 心理学物語 -テーマの歴史- R・C・ボールズ著 2004 北大路書房  

● キーワードコレクション 心理学 重野純 編 1994 新曜社


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【編集後記】
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認知心理学は、現代における心理学のメインストリームです。

しかし、
臨床心理学を専攻している場合、
認知行動療法を専門にしているのでもなければ、
認知心理学とは縁がないということになるのでしょうか?

そんなことはありません。

たとえば、臨床心理学を専攻していても、
修士論文で尺度研究をしていれば、
そこには、すでに刺激と反応の間に、
仮説的構成概念(潜在因子)を仮定する、
認知心理学のパラダイムが前提とされているといえます。

自分がどのような足場の上に立っているのか
知っていることは、とても重要なことです。

その上でこそ、
必要なだけの謙虚さを持った上で、
他者とのコミュニケーションが始められるからです。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
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