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2006年11月7日火曜日

【Clip! アカデミー】第60回:新章突入!エッセイ号「補足:心の未知の側面」

【Clip! アカデミー】 第60回 2006/11/7
第1週 エッセイ号「補足:心の未知の側面」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/
  
      ◆目次◆

          1)【前回のまとめ】
          2)【“こころ”を捉えるための努力】
          3)【心の未知の側面】
          4)【小説家の実践】
          5)【「語りえないもの」との向き合い方】
            【次回配信日】
            【参考文献】
            【編集後記】



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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
 ※【今回はこちら!】 第1週「エッセイ号」…問題提起
                 ↓
            第2週「問題号」…練習問題 
      ↓
         第3週「解説号」…確認とフィードバック
                 ↓
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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【Clip!アカデミー勉強会のお知らせ】
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【Clip!アカデミー】では、
現在勉強会を準備中です。

心理学史や研究法など、
心理学の基礎的な文献を読みながら、
重要なトピックについてディスカッションするものです。

もしかしたら、それを元に、
メールマガジンを配信することになるかもしれません。

●現在大学院の院生であり、
心理学やその周辺状況について、熱く語りたいが、
大学院でのディスカッションに飽き足らない方、
ディスカッションしようにも、そもそも周りに相手が見つからない方。

もちろん、ディスカッション上の
ルールやマナーを身に付けていることは
前提ですが、Clip!アカデミー事務局までご連絡下さい。


   ↓ご連絡はこちら↓
clip-academy@clinicalpsychology.jp

※ 勉強会は、表参道の講座事務所で行う予定です。

※ 応募者多数の場合、1回のディスカッションに、
  多くの方に参加してもらうことは難しいかもしれません。
  もし参加希望の方がいらっしゃれば、
  勉強会に関するメーリングリストに登録していただくことになります。


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1)【前回のまとめ】
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ひとつの図式では捉えることの難しい“こころ”
というものを、あるひとつの図式を使って便宜的に捉え検討する。

そして、その限界や矛盾から、
新しい図式を使って新しい側面を捉えようとする。

その繰り返しが、これまで行ってきた
【Clip!アカデミー】での心理学学習のサイクルでした。

これまで取り上げてきた“こころ”の側面を
大きく分けると、

●実体的側面…心の構造図、心の過程図
●概念的側面…心の歴史図、心の研究法図
●関係的側面…心の対象図、心の関係図
●物語的側面…心の物語図

のように分けられます。

教科書に書かれている心理学の区分とは、
かなり違いますね。

教科書における心理学の区分というものは、
出来る限りすっきりと全体を分割することを
目的としているといえます。

なぜなら教科書の役割は、
心理学の各領域をできるかぎり網羅することだからですね。

【Clip!アカデミー】との違いがどこか分かるでしょうか。

本メルマガでは、
“こころ”全体を、なるべく全体のままに
論じようとしている点です。

「図式」というのは、
“こころ”をある視点から眺めたときに見える、
全体図のことなのですね。

その点で、はじめから、
「網羅」という教科書的な機能は指向していません。

必ずしも成功しているとはいえない点も見られますが、
教科書とは異なる立場から、
皆さんの勉強を補完することができればと考えています。


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2)【“こころ”を捉えるための努力】
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これまで【Clip!アカデミー】では、
心という、あいまいで捉えがたいものを、
心理学の先人たちがどのように捉えようとしてきたのか、
という点から、図式を立ててきました。

しかし、心の物語図のあたりから、
そろそろ、その領域の限界まで来てしまったような気がします。

ここから先は、心理学にとっては、
まだまだハッキリしない領域。

その意味では、
ここから先は、まだ心理学とはいえません。

とはいえ、人間の“こころ”を捉えようという努力は、
実際には有史以前から連綿と行われてきたものです。

心理学はまだまだ、“こころ”を捉えようとする
人間の努力の中では、新参者なのです。

はみ出してしまった以上、
心理学エッセイとしてのClip!アカデミーも、
一段落を迎えるときが近づいてきたということになります。

その前に、今回からは、補足的な捉え方として、
そうした心の未知の側面について、
できる限りの検討をしていきたいと思います。


3)【心の未知の側面】

前回までのClip!アカデミーでは、
心の物語的側面を検討してきました。

しかし、なぜ物語が、
“こころ”の重要な側面を、捉えているといえるのでしょうか。

物語が、科学の言葉と異なる側面を、
なぜ捉えることが出来るのでしょうか。

それは、物語が、科学の言葉と違って、
「語りえない」ものに直接触れさせてくれるからです。

この、「直接触れさせてくれる」という部分が、
科学のように、一度対象を客観的に把握しようとする態度と、
大きく違います。

主観的な把握は、すべて実践に基づいています。

心理学が学問であるがゆえに把握し切れていない、
実践に基づいた、経験的にだけ把握できる心の側面。

それをここでは、心の未知の側面として、
検討していくことにしましょう。

しかし、心の未知の側面を検討するには、
注意が必要です。

これまでのように、
心理学という枠組みの中で、
明確な土台を意識しながら議論をすることが出来ません。

心理学という枠組みの外側の輪郭をなぞりながら、
「語りえないもの」を捉えようとするほかの努力のあり方と比較し、
つかず離れずに進んでいかなければなりません。

まずは、心の物語図でも取り上げた、
科学と物語における、「語りえないもの」の捉え方の違いを、
比較するところから始めましょう。


4)【小説家の実践】

これまで、我々は、科学ないし、学問の
範疇だけで、議論をしてきました。

物語を取り上げたといっても、
それはあくまで、心理学や言語学、哲学における
物語論の所産であって、実際の物語について
検討したことはありませんでした。

そこで、ここでは、実際の作家においで願って、
物語について語ってもらうことにしましょう。


作家の保坂和志は、小説の定義を、

「小説とは小説家の中にあるイメージというか何か言葉にならないものを、
人物の動きや情景や出来事の連鎖によって読者の中に作り出そうとする
表現行為のことだ。だから小説は言葉によって書かれているのではあるけれど、
音楽や絵画と同じように、言葉によっては再現することができない。」
(「小説の誕生」p.57)

と述べています。

つまり、小説においては、
「言葉にならないもの」を、
そもそも言葉で再現できるとは考えていないのです。

我々が、「言葉にならない」“こころ”というものを、
手を代え品を代え、
様々な仮説=図式でもって語ろうとしてきたのとは、
大きな違いですね。

つまり、

● 物語は、「言葉にならないもの」を、
言葉で直接表現できない、という前提に立ちます。

そして、言葉を人物や情景や出来事の代わりに使って、
それを間接的に匂わせ、体験させようとするといえるでしょう。

だからこそ、小説が本当に表現しようとしているものは、
絵画や音楽と同じく、言葉で直接再現することができないのです。

小説の中の文章は、
「言葉にならないもの」を伝えるための、
単なる道具にすぎないからです。

一方、

● 科学は、「言葉にならないもの」を、
仮に語りうるものと見なすところからスタートする、
ということができるでしょう。

そのためには、「どこなら言葉にできるか?」
ということを、徹底的に追求していきます。

そうして、対象を「言葉にできるところ」と
「言葉にできないところ」に分け、
後者はとりあえず脇に置いておくのです。

「言葉にならないもの」は、
科学においては、研究によってフォローできない“余り”であり、
物語においては、どれ、と指し示すことのできない“すべて”である、
ということもできそうです。


5)【「語りえないもの」との向き合い方】

これまでの、科学と物語においての、
「語りえないもの」との向き合い方を、
図式にすると、以下のようになるでしょうか。


●論理・科学→「語りえないもの」を「(仮に)語りえるものとみなして語る」
●物語・文学→「語りえないもの」を「語らないまま語ろうとする」


このような形式で、
ほかにもいくつかの実践を、図式に表してみると、
以下のようになりました。

●宗教   →「語りえないもの」を「“語られたもの”として信じる」
●芸術   →「語りえないもの」を「語らないまま表現する」

ほかには、たとえば、

●人間    →「語りえないもの」を「語らないまま生きる」?

こんなことも言えそうです。

次回エッセイ号では、この図式を、心の実践図として、
もう少し詳細に検討していきましょう。


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【次回配信】
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   次回 【問題号】… 11月13日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 小説の誕生 保坂和志 2006 新潮社 


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【編集後記】
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ここまで続いてきたClip!アカデミーも、
ついに60回を迎えました。

心理学の全体像を、
様々な角度から取り上げてきた本メルマガですが、
ようやく、理論を越えて、実践について
論じるところまできました。

ただ、実践というのは、
理論ほど論じやすいものではないし、
それこそ「言葉にできない」部分が多いものです。

だから、心理学の枠組みを、
一度出てしまうことで、
「心理学のメルマガで、なんで小説?」
と思われる方がいるかもしれません。

逆に、「今までだって、
散々哲学やら文化人類学やら
いってきたじゃないか、今更だな」
と思う人もいるかもしれません。

どこが違うかというと、
今までは、あくまで
学問のなかでの移動だったわけです。

「学問」という共通のフォーマットを持つプログラム間
での移動というか。

その中では、物語といっても、正確には「物語論」、
宗教という場合、「文化人類学」の先行研究から
議論しているわけですね。

今回は、「文学」とか「芸術」とか、
生の実践にも触れていきたいと思っています。

なぜかというと、
心理臨床の実践もまた、理論を越えた、
ナマモノだと思うからです。

ですから、みなさん、もう少しお付き合いください。

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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/  
 ※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。   
 無断転載・転用を禁止します。

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