【Clip! アカデミー】 第68回 2007/1/16
第3週 解説号「心の未知の側面に取り組む」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題号の解説】
【Q1】心理学モデルについての問題
【Q2】事例と理論についての問題
【Q3】想像力に関する問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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心の実践図(仮)
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●論理・科学→「語りえないもの」を「(仮に)語りえるものとみなして語る」
●物語・文学→「語りえないもの」を「語らないまま語ろうとする」
●宗教 →「語りえないもの」を「“語られたもの”として信じる」
●芸術 →「語りえないもの」を「語らないまま表現する」
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心の実践図2(仮)
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○「語りえないもの」に対する実践
●物語・文学→「語らないまま語ろうとする」
●宗教 →「“語られたもの”として信じる」
●芸術 →「語らないまま表現する」
↓
○実践を自覚・検証・修正する手段
●論理・科学→「(仮に)語りえるものとみなして語る」
↓
◎心理学的実践=心理臨床
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現在、「語りえないもの」(=心の未知の側面)
からの検討を行っています。
第3回目のエッセイ号となった前回は、
検討のそうまとめとして、
「語りえないもの」との取り組みとしての心理臨床実践について、
その限界と行く末について検討していきました。
「人の心を理解する学問」というイメージで
語られることの多い心理学、
特にその中でも臨床心理学が、
果たして実際に、「人の心」=ここでは他人の気持ちを、
説明することが出来るのか。
それは、突き詰めていくと、
否、という答えしか出てきません。
そして、心理臨床家は「人の心を理解」できるか、
という地点まで行くと、
答えはグレーゾーンへと突入していきます。
答えはNoでもあり、Yesでもある。
どこまで行っても、
心理学を用いて人の心を理解することはできないでしょう。
それは、どんなに度の強いメガネをかけても、
そのせいで外国語の本の内容を理解できるようには
ならない、ということです。
心理学は心を日常とは違った角度から見るための道具であり、
最終的に、人の心について、
それまでとは異なる視野を与えるのは、
本人の想像力なのではないか。
その意味では、
用いる道具が違うだけで、
他の職業やアプローチとなんら変わるところはない。
そこでようやく、
「それでは、他のアプローチとは異なる、
心理学にしか見えない景色とはどんなものか」
という問いを考えることができそうです。
以上が、前々回、エッセイ号の趣旨でした。
今回は、上述のエッセイ号の細部について、
より詳細な議論を進めていくための補足問題、
解説編です。
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2)【問題号の解説】
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【Q1】心理学モデルについての問題
心理学において、ある現象の因果関係を説明するモデルを
構築するためによく用いられる統計的手法として、
もっとも適当なものを、
以下の選択肢からひとつ選びなさい。
====選択肢=====
a. 因子分析
b. パス解析
c. 重回帰分析
d. 共分散構造解析
============
正解は、 【 d. 】
…実際には、共分散構造分析は、
a.~c.の分析手法の応用です。
心理学を初めて学ぶ人は、実際に論文を読み、
自分で分析をしたり、研究をしてみるまでは、
統計的な手続きについて、ピンとこない人が多いのではないでしょうか。
心理学モデルの検証に用いられる統計的分析手法としては、
共分散構造分析がメジャーです。
たとえば、いくつかの変数の間の関係について、
あるモデルを立てるとします。
共分散構造分析では、「あるモデル」が、
測定した変数同士の関係を、実際にどれだけ説明しているか、
という「当てはまりの良さ」を調べることができるのです。
心理学において、モデルによって現象の因果関係を検証するという手続きは、
心理学概念の検証としては最終段階に近いものになります。
なぜかというと、
たとえば職場のストレスの高さを説明するモデルは、
職場のストレスに関連する主要な要因を、ほぼ網羅している必要があります。
ストレスとは何か(概念の定義)とか、
どうやって測るか(ストレス要因を測定するための手段(尺度)の作成)、
何が関係しているか(関連する変数のあぶり出し)、
などを、多くの研究を通して明らかにしていきます。
ここまでやってみて、
ようやく、ストレスにはこれこれの要因が関係しているらしいのだが、
要因同士は、どのように関係しているのか、
という、関係についての研究(モデル)に進むことができます。
そして、モデルの検証を通して、
ようやく、関連する変数のどれが原因で、どれが結果か、
などといった話ができるのです。
大学院修士レベルだと、
心理尺度の改善とか、尺度を用いた相関関係の研究などが、
とっつきやすくてよく行われています。
ある概念について研究したい場合、
今その分野がどのような段階にあるのか、
という大きな流れを念頭に置けば、
いきなり共分散構造分析をやろう、という結論は出てこないはずですね。
【Q2】事例と理論についての問題
ある人が、パートナーから
「逃げようと思えば逃げられるのに、逃げようとしない」場面を、
心理学理論から説明するとしたら、
もっとも適当でないものは、どれか。
以下の選択肢から1つ選びなさい。
=======選択肢========
a. オペラント条件付けが生じている
b. ダブルバインド状況にある
c. 内的要因に原因帰属させている
d. 共依存が生じている
==================
正解は、 【 a. 】
…オペラント条件付けというよりも、
古典的条件付け。
ただ、オペラント条件付けでも
説明しようと思えばできるのかもしれません。
明確な正解が与えられない、いじわる問題を作ってみました。
基本的には、どの選択肢も間違いではないでしょう。
どれからでも説明は出来る、
理屈をつけることができるという意味では、
心理学理論は、
自然科学理論がもっているような厳密性を持っていません。
新しい発見があり、新しい心理療法が作られたとしても、
古い心理療法が、全くすたれてしまう、
ということは、あまり見られません。
もちろん、お国柄や時代によって、
はやりすたりはありますが。
ここには欠点もありますが、
心理臨床家、心理学の実践家が共有している、
ひとつの現実的な知恵も潜んでいるように思われます。
もともと、
当事者の気持ちや、実際の状況などというものは、
当事者にも分からない、あいまいなものです。
そのため、事態が行き詰まっているときには、
論理的に正しく説明するよりも、
何かを語っているように見えつつ、
いかにはっきりさせないか、
ということが大事になることがあるからです。
また、一つの説明が受け入れられなくても、
別の説明なら受け入れられるかもしれません。
いかに「あいまいさ」に耐えるか。
ambiguity toleranceが必要な状況において、
いくつもの説明というオプションは、
一定の効果を発揮しているのかもしれません。
【Q3】想像力に関する問題
自閉症スペクトラムの特徴として、
「社会性」「コミュニケーション」
「想像力とそれにともなう行動」の3つ組み
の障害が強調される。
ここでいう「想像力」の障害とは、
どのような意味か。
以下の選択肢から、もっとも不適切な
ものをひとつ選びなさい。
========選択肢=========
a. 他人の気持ちを推測することが難しい
b. 想像する能力の欠如
c. 反復的で常同的な行動へのこだわり
d. 興味や行動の限局
====================
正解は、 【 b. 】
…文字通りの想像する能力は、
もちろん自閉症スペクトラムの人たちも
持っています。
自閉症スペクトラムとは、
ウィングの提唱する自閉症のとらえ方です。
スペクトラムとしてとらえる場合、
自閉性という特徴を共有するグループを、
なだらかな連続線(スペクトラム)上に位置づけるということです。
ですから、知的障害のある古典的な自閉症(カナー型)も、
アスペルガー障害などの高機能型も、
このスペクトラムのどこかにいることになります。
この自閉性を説明する場合に用いられることの多い
モデルが、「3つ組み」の障害、と呼ばれるものです。
近年、アスペルガータイプの人々が、
自分たちの内面や、自分たちから見た社会や世界について、
積極的に発表するようになってきました。
彼らが抱える困難の多くは、
その視点が、あまりに普段
“常識”とされる視点とは異なるために生じていることが、
著作を読むことで伝わってきます。
自分たちの常識が、
他の文化、他の認知的特徴の中では、
必ずしも常識ではない、と気づかせてくれる点で、
これらは自閉症者の世界への、
優れた旅行記であるともいえそうです。
これらの著作は、
一般に「想像力に欠ける」と見られる行動に、
異なる説明を与えてくれます。
それは、初めて訪れた未知の国で
誰もが侵してしまうルール違反であり、
人格的な欠点では決してないということです。
もし彼らが、
定型発達の世界に対して「想像力に欠ける」
というのであれば、
定型発達の人間も、彼らの世界に対して、
同じ意味で想像力に欠けているということができます。
自閉性の障害を含む広汎性発達障害の研究は、
まだまだ社会的に適切な理解がされているとはいえません。
しかし、
文化人類学が西洋文明に突きつけたショックと、
同様の影響を、
現代社会にもたらす可能性を秘めているといえそうです。
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【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 1月30日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引 American Psychiatric Association
高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳 1994 医学書院
● あなたにもできるデータの処理と解析 岩渕千明編著 1997 福村出版
● 俺ルール ~自閉は急に止まれない~ ニキリンコ 2005 花風社
● 自閉症だった私へ ドナ・ウィリアムズ 2000 新潮社
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【編集後記】
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想像力、という言葉は、
心理臨床にかかわらず、
多くのヒューマンサービスにおいて、
キーワードとなる概念だと思います。
心理療法の多くも、
想像力の働きなくしては、
その効果を発揮することができません。
逆に、想像力がまったく関与しない
心理療法というものは、
面白いテーマですが、実際には考えにくいですね。
どんな時代にも、
その時代の視野を大きく変えるような、
”異文化体験”が求められます。
20世紀初頭には、
それが西洋文明から遠く離れた地域の、
人々の暮らしでした。
フロイトの精神分析学にはじまる、
力動的精神医学の潮流も、
その意味で、非常に大きな”異文化体験”
から、人間について学ぶことだったということができます。
想像できる範囲が広がるということは、
自分の生きている世界が広がるということでもあります。
心理学を学ぶからには、
すこしずつでも、想像力の及ぶ範囲を広げたいものです。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
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2007年1月16日火曜日
【Clip!アカデミー】第68回:解説号「心の未知の側面と取り組む」
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