【Clip! アカデミー】 第72回 2007/02/27
第1週 エッセイ号「心の総合図を捉えなおす」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【ジグソーパズルとしての勉強】
3)【全体を見渡す、ということ】
4)【パズルの外】
5)【心の総合図を捉えなおす】
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
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心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
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■ 基本サイクル ■
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第3週「解説号」…確認とフィードバック
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(特別号が配信される場合があります)
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■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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現在は、「心の総合図」についての検討をしています。
もともと、本メルマガの
「図式を立てて、それを検討する」というスタイルは、
心理学における心の様々な捉え方を、
ひとつの図で表せないか、
という発想から始まりました。
ひとつの図で表すということは、
ひとつの捉え方、ひとつのモデルで、
心理学を説明しようとすることです。
それを、ひとまずここでは、
“心の総合図”とよんでおきましょう。
しかし、実際にやってみると、
様々な不都合が発生します。
例えば、心の構造を、会社に例えて
考えてみるとどうなるか。
これは、入門書等でよく見るようなものです。
●心の構造図(仮)
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● コンビ二の各側面
┏━━┳━━━━━┳━━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
┃ ┃ | | ┃ ┃ |
┃本社┃ 報告書 |店長の野望| レジ ┃従業員┃販売|
┃社長┃ | | ┃ ┃ |
┗━━┻━━━━━┻━━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛
● 心の各側面
┏━━┳━━━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
┃ ┃ | | ┃ ┃ |
┃ ┃ 知覚 | | ┃ ┃ |
┃意識┃ゲシュタルト|潜在意識|認知過程┃身体 ┃行動|
┃ ┃ | | ┃ ┃ |
┃ ┃ | | ┃ ┃ |
┗━━┻━━━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛
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しかし、この図式はどうしても、
心を還元主義的に見る視点を前提としています。
心を、いくつかの要素や部品に分解すれば
捉えられる、という考え方です。
これだと結局、
心の非還元主義的な捉え方が表せないのです。
このようにして、
ひとつの捉え方から図式を作ると、
それでは捉えきれない部分が、
どうしても出てくることが分かります。
しかし、
もともと心というものは、
そのようなあいまいなものであり、
ひとつの捉え方では、捉えきれないものなのかもしれない。
クーンのパラダイム論を当てはめるならば、
心理学は、複数のサブパラダイムが並立する、
プレ・パラダイム状態ということになります。
そのような前提のもと、
心を捉えるための様々な図式を立ててきました。
1)ひとつの図式から、心を捉えようとする。
2)どうしても捉えきれない部分がある。→1)へ戻る
そのようにして、検討してきたのが、以下の図式です。
【心の構造図】
【心の過程図】
【心の歴史図】
【心の研究法図】
【心の対象図】
【心の関係図】
【心の物語図】
【心の実践図】
もし、心がどこまで行っても
捉えきれるものではないのであれば、
この図式も、永遠に続けていけることになります。
それを、ここまで積み重ねてきた中で、
あえてイメージにしてみると、
以下のような図式になるかもしれません。
●【心の総合図】(イメージ)
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□
□
■ ■ □
■ ■ □
■ * * * * ■ □
□ * “心” * ■ □
□ * ■ □
□ * + + ■ ■ □
□ □
□ □
□ □
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*や□のそれぞれ…独立した“こころ”の捉え方
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このようにして、
”こころ”をひとつの図式で捉えようとするならば、
決して完結しない図になるでしょう。
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2)【ジグソーパズルとしての勉強】
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さて、心の総合図の検討では、
むりやり、心理学全体について考えてみる、
という試みをしているわけですが、
このことには、何の意味があるのでしょうか。
心理学の内容ではなく、
心理学自体について考えることは、
我々に、対象を一歩引いて眺めることを要求します。
これまで用いてきたパラダイムという概念は、
学問を規定している枠組みのことですが、
この枠組みを捉えるためには、
心理学全体を視野に入れられるまで、一歩引いて見ることになるのです。
皆さんが、心理学を学ぶために、普段行っているだろうこと。
地道に基礎的な理論や概念について参考書をあたる、
提唱者や有名な実験の結果について記憶する、
専門用語を自分なりにまとめてノートに書きつける…。
それは、心理学という学問の中を一歩一歩進みながら、
欠けている断片(研究や概念)を探し、
試行錯誤してつなげていきながら、
ジグソーパズルの空白を埋めていく作業と比べられるでしょう。
今は、そのジグソーパズルの全体を、
一歩下がって眺めてみる時間にしてもらえればと思っています。
これは、本メルマガ自体のスタンスでもあり、
心理学の勉強において、強調したい点でもあるのです。
●断片を埋めていく、地道な作業
●そのパズルを俯瞰して、その全体像を捉えようとする時間。
その往復作業をどれだけ行ったかが、
実は、勉強をどれだけ自分のものにできるか
の分かれ目になるのではないか、と思われるからです。
これを一般化すると、
A)パラダイムを身につける作業
B)パラダイムを俯瞰する作業
ということになるでしょうか。
心理学の全体について考えようとする試みには、
皆さんが没頭しているパズルがいったい何なのか、
少し視点を変えてみてみてほしい、
という狙いがあるのです。
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3)【全体を見渡す、ということ】
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しかし、もちろん、
A)のパラダイムを身につける作業が、
勉強の中心なのは当然のことです。
ある程度の空白が埋まってもいないのに、
パズルの全体像をイメージすることは出来ないでしょう。
つまり、日々の勉強の積み重ねがなければ、
B)のプロセスから得られるものは、
それだけ少なくなってしまうことになります。
実際にジグソーパズルをしていても、
ピース(断片)同士がうまくハマるよう試行錯誤しながら、
ときおり顔を上げて、全体の絵をイメージしようとしますね。
そのとき、完成している部分が多ければ多いほど、
完成形をイメージしやすくなるのと同じです。
ただ、ピースがうまくハマるか、
という細部での試行錯誤が、パズルの中心作業ですが、
しばしば途中で頭を上げて、
全体を見渡そうとすることにも、大きな意義があります。
「自分はどんなパズルに取り組んでいるのか」
「今自分は、どこまで来ているのか」
について考えること。
特に、自分が何を何のために勉強しているのか、
見失いそうになるとき、
取り組んでいる勉強から、顔を上げてみることが大切になります。
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4)【パズルの外】
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ただ、ジグソーパズルと心理学の違いは、
完成図の絵が、ハッキリしているか、否かという点にあります。
ジグソーパズルなら、
完成図を予想することで、
パズル自体のヒントが得られます。
しかし、心理学においては、
全体を予想しようにも、いつまでも完結しない…。
さしずめ、空想上の動物のように、
角を見れば鹿に似ていたり、体を見れば蛇に似ていたり、
足を見れば、鳥に似ていたり…。
見る視点によって、様々で、
しかも、実際には誰も見たことがない。
常に全体をイメージしろといいつつ、
全体は定かではない、というのは、
実に矛盾しています。
ただし、この矛盾があるからこそ、
このジグソーパズルは、世界中の研究者を熱中させている
のかもしれません。
誰にとっても、これくらい身近なものはないのに、
誰もハッキリと見たことがないもの。
それを見たい、知りたい、という熱意が、
このジグソーパズルに向けられているような気がします。
結局、勉強しながら、そこで得た知識から
心理学の全体をイメージしようとすることは、
人間について考えようとすることと同じことだからです。
そして、臨床心理学においては、
それは、目の前の個人について、
自分がかかわる人たちについて、考えようとすることです。
心理学の勉強は、常にその知識や研究を突き抜けて、
その先に人間や、個人を想定しなければ、
とたんに魅力を失ってしまうのではないでしょうか。
知識や研究の枠の中だけで、
人間や個人を理解しようとすることの陳腐さを常に自覚し、
その外に出ようとすること。
そのベクトルが、
おそらく心の総合図を、永遠に未完にしているのでしょう。
未完ということは、常に前に進んでいるということだからです。
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5)【心の総合図を捉えなおす】
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心理学という名前の、完結しないジグソーパズルの上に、
あいまいな”心”を、よく目を凝らしてみようとすれば、
結局学問の発展は、直線的に前進するというより、
新しい視点が生まれる、という形で生じることになるのかもしれません。
その意味では、
心の総合図の個々のパラダイムは、
それぞれが別々のジグソーパズルということになるでしょう。
●【心の総合図2】(イメージ)
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■ ■ □
■ ■ □
■ * * * * ■ □
□ * “心” * ■ □
□ * ■ □
□ * + + ■ ■ □
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※ □ …”心”についての様々な視点から見たジグソーパズル
皆さんは、今どのパズルに取り組んでいることでしょうか。
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【次回配信】
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次回 【問題号】… 3月6日(火)にお送りする予定です。
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【参考文献】
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● 現代心理学〈理論〉事典 2001 中島義明 編 朝倉書店
● 心理学者のための科学入門 1999 中丸茂 北大路書房
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【編集後記】
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心の総合図について考えることは、
なかなか難しいことです。
心理学とは、なぜ今のような成り立ちをしているのか。
こうした問いは、
勉強においては二の次になることが多く、
逆にこんなことばかり考えていると、
なかなか勉強が進まなくなることになります。
ただ、まったく考えない人は
いないのではないでしょうか。
その疑問や、もやもやを、
少しでいいので、大事にしてあげてください。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
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2007年2月27日火曜日
【Clip!アカデミー】第72回:エッセイ号「心の総合図を捉えなおす」
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