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2007年8月7日火曜日

【Clip!アカデミー】第90回:確認号「臨床心理学から:幻肢(phantom limb)」

【Clip! アカデミー】 第90回 2007/8/7
第3週 確認号「臨床心理学から:幻肢(phantom limb)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

  
      ◆目次◆

            1)【現在地】
            2)【幻肢研究の広がり】
            3)【心理学とのつながり】
              【次回配信日】
              【参考文献】
              【編集後記】


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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「出題号」… タネをまく
                 ↓  (基礎概念と論述問題)
            第2週「解答号」… 深める 
      ↓    (論述問題の解説)
 ※【今回はこちら!】 第3週「確認号」… つなげる
                 ↓    (関連諸分野から)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 4ヶ月目 臨床心理学から
             「幻肢(phantom limb)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
        2ヶ月目 基礎心理学から
3ヶ月目 応用心理学から
  【NOW!】 4ヶ月目 臨床心理学から
   |   5ヶ月目 心理学研究法から 
   |
   |  ================
   ↓



 ● 第3週「確認」号
  「臨床心理学から:幻肢(phantom limb)」はコチラ↓       

  ~~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~

  個々のテーマについて考えた後は、
  それを、より大きな視点から、捉えなおしていきましょう。

  心理学全体の視点から、そのテーマを考え直してみる。

  そうすると、違う文脈から、違うテーマが、次の問いが
  浮かび上がってくるかもしれません。

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2)【幻肢研究の広がり】
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●身体図式(body schema)

身体図式とは、視覚や触覚、体性感覚、運動感覚など、
様々な感覚情報から形成される、
意識下の働きとされる。

身体図式は、
我々の身体の空間内における姿勢や、
身体の各部位の間の位置関係に関する身体像(body image)を成立させている。

幻肢は、四肢の切断による、
新しい身体図式の学習が追いついていない間、
過去の身体像が残存してしまう現象である、という説もある。

身体像のゆがみは、
幻肢や麻痺といった、器質的な原因が明確なもの以外にも、
拒食症や、一部の発達障害(自閉症スペクトラムやADHDなど)
にも見ることが出来る。


●ラマチャンドランのミラーボックス

脳神経科学者のラマチャンドランは、
たとえば切断していない方の手を鏡に移し、
その動きが、存在していない幻肢の動きと重なるようにすることで、
幻肢を動かせるようになったり、消失したりする事例を報告している。

トリックであっても、視覚的に、幻肢が動いている、
という情報がフィードバックされることで、
身体像の変化が促されたと考えることが出来る。

ここから、幻肢治療のためのミラーボックスが開発され、
治療に利用されつつある。

●メルロ=ポンティの心身一元論

現象学の立場から、幻肢について考察し、
身体論の分野で大きな業績を残したメルロ・ポンティは、
デカルト以後の心身二元論への反論で知られている。

ポンティによれば、
我々は、身体としてあるのであり、
主観的な心と客観的な身体が、
別々に存在しているわけではない。

その根拠となるのが、
体験の主体でもあり、客体でもある、”私の身体”である。

そして、私の身体は、
習慣化によって、自転車や鉛筆、キーボードさえ、
自分の身体の一部として感じることが出来る。

それは、身体図式の延長ともいえる。

幻肢も、その意味では、古い習慣が、
消えずに残っている状態と表現することが出来る。

身体図式の変化と再構築という現象は、
旧来の人間観、身体観に代わる、
新しい人間の見方につながっていくことが考えられる。


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3)【心理学とのつながり】
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幻肢研究は、
現在、脳神経科学の領域での目覚しい発展によって
牽引されています。

ラマチャンドランの研究も、
脳神経科学に裏づけされたものですが、
彼の研究の視点は、徹底して臨床的な試行錯誤とともにあります。

現に、ミラーボックスはダンボールをくりぬき、
手を入れる穴を作ってから、鏡を真ん中に嵌めるだけ、
という、誰でも実験可能な構造です。

感覚や知覚の領域の研究は、
もともと、錯視や精神物理学的測定法など、
身近で出来る実験によって支えられてきました。

それは、感覚や知覚が、
主観と客観の中間に位置するためであり、
人間のあり方と世界のあり方について、
我々に多くのことを教えてくれるためなのです。


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【次回配信】
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   次回 【出題号】… 8月21日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 心理学辞典 中島義明 編 1999 有斐閣

● 脳のなかの幽霊 V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー 
  著 山下篤子 訳 1999 角川書店

● メルロ=ポンティ 哲学者は詩人でありうるか? 熊野純彦 著
  2005 日本放送出版協会


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【編集後記】
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ラマチャンドランは脳神経科学者であり、
メルロ=ポンティは、哲学者です。

ふたりが幻肢を扱う目的は異なりますが、
共通するのは、その現象学的な視点の在りようであるといえるでしょう。

現象学は、
もともとは実存主義哲学において、
対象とするものを分析するための方法です。

現象学的還元を、”「  」(括弧)に入れる”
という言い方で表すことがありますが、
まずは、あらゆる物事を、日常的な捉え方、見方から開放して、
括弧に入れてみる。

そうすることで、括弧に入れた対象のありのままを、
観察し、分析できると考えたのです。

現象学的な視点、というときは、
哲学よりも、もう少し広い意味で、
既存の文脈から離れて、対象のありのままを見据えよう、
という視点として使われることが多いようです。

ラマチャンドランも、メルロ=ポンティも、
目の前にあるものを、ありのままに捉えようとするところから、
幻肢の治療法や、我々人間が「生きた身体」としてあること、
などを考えていきました。

こうしたスタンスは、
臨床の場、研究の場に限らず、
常に意識していたい点であると思います。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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