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2007年12月25日火曜日

【Clip!アカデミー】第105回:展開号「臨床心理学から:健忘症(amnesia)」

【Clip! アカデミー】 第105回 2007/12/25
第2週 応用号「臨床心理学から:健忘症(amnesia)」

◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
 http://www.clinicalpsychology.jp/
  


      ◆目次◆

           1)【現在地】
           2)【グレッグ、最後のヒッピー】
           3)【解説:知識の根っこ】
             【次回配信日】
             【参考文献】
             【編集後記】

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   ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○

    ◆ 【Clip!アカデミー】は、
     心理用語を紹介するだけの従来の心理系メルマガとは異なる、
     1ヶ月(3週)1サイクルで完結するユニークな
     無料心理学メールマガジンです。
   
            ■ 基本サイクル ■
            第1週「理論号」… 知識のタネをまく
                 ↓  (用語説明から)
 ※【今回はこちら!】 第2週「応用号」… 知識の根を伸ばす 
      ↓  (具体例を中心に)
            第3週「展開号」… 知識をつなげる
                 ↓  (テーマを展開する)
           第4週 基本的にお休み
         (特別号が配信される場合があります)
               ↓
            ■ 第2サイクルへ続く ■

   ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○

 ※ 【初めてお読みになる方は、こちらもご覧ください。】

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/04/clip.html

 ● 0ヶ月目 ガイダンス号2
   http://clipseminar.blogspot.com/2007/09/94clip.html 


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1)【現在地】
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【現在のテーマ】 2巡目4ヶ月目 臨床心理学から
        「臨床心理学から:健忘症(amnesia)」

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        0ヶ月目 (ガイダンス号)   
        1ヶ月目 心理学の歴史から
   2ヶ月目 基礎心理学から1
      3ヶ月目 基礎心理学から2
【NOW!】4ヶ月目 臨床心理学から
    |   5ヶ月目 心理学研究法から 
   |    ↓
    |  【※違うテーマではじめから繰り返します。】
   |  ======================
   ↓

 ● 第1週「理論」号
  「臨床心理学から:健忘症(amnesia)」はコチラ↓

http://clipseminar.blogspot.com/2007/12/104amnesia.html 

 ● 第2週「応用」号
  「臨床心理学から:健忘症(amnesia)」はコチラ↓


  ~~~~~~~~~~【今週】~~~~~~~~~~~~~~

   知識のタネをまいたら、
   次にすることは、水をあげること。

   いろいろな方向から刺激してあげることで、
   知識を様々なイメージで膨らませていくことが出来るでしょう。

   応用号では、
   理論号で紹介した概念について、
   今度は具体例などを紹介しながら肉付けしていきます。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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2)【グレッグ、最後のヒッピー】
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今回は、
オリヴァー・サックス著「火星の人類学者」
から、健忘症の事例をご紹介しましょう。

60年代にヒッピー文化の中で青年期を過ごしたグレッグは、
脳腫瘍を見過ごされていたため、
発見時には、失明し、記憶障害や性格の変化など、
様々な障害を併発することになりました。

腫瘍は良性だったのですが、
大きさはオレンジか小さめのグレープフルーツほど。

前頭葉や間脳、下垂体、海馬を含む側頭葉など、
高次の精神機能に必要な部分は
圧迫され、機能を損なわれていました。

手術は76年に行われましたが、
彼には、70年代の記憶がほとんどなく、
新しい事柄も憶えられなくなっていました。

永遠に、彼が青春を過ごした
60年代の中に、閉じ込められることになったのです。


あるとき、父を失ったグレッグをなぐさめるため、
著者はグレッグの大好きな、
ロックコンサートに連れて行きます。

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「すごかったね」
  コンサートが終わって、会場を出るとき、グレッグが言った。
 「今日のことは決して忘れないよ。人生で最高の日だった」
  できるだけコンサートの気分をとよい思い出が持続するようにと、
  帰りのドライブのあいだじゅう、
  わたしはグレイトフル・デッドのCDをかけつづけた。
  一瞬でもデッドの曲が聞こえなくなったら、
  コンサートの記憶そのものが
  グレッグの頭から消えてしまいそうで怖かった。

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翌朝。著者は、ポツンとしているグレッグに、
グレイトフルデッドについてどう思うか尋ねます。

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  「すごいグループだよ。ぼくは大好きだな。
   セントラルパークに聞きに行ったことがある。
   フィルモア・イーストにも」

  「そうだってね。だけど、そのあとはどう?
   マディソン・スクウェア・ガーデンに
   聞きに行ったばかりじゃないのかい?」

  「いや」彼は答えた。
  「マディソン・スクウェア・ガーデンには行ったことがないよ」
   
   (了)
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        引用:オリヴァー・サックス(1997)
           「火星の人類学者」ハヤカワ文庫

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3)【解説:知識の根っこ】
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この事例のグレッグは、
脳腫瘍によって脳が圧迫され、
新しい記憶を憶えられなくなっています。

これは、前回理論号で説明した、
順向性健忘に当たります。

以前の記憶は、
60年代後半からだんだんとあやふやになり、
70年代の記憶はほとんどありません。

これは、逆行性健忘の症状といえます。

また、健忘症とはいっても、
記憶のすべての面が損なわれているわけではないのが、
引用からも分かるでしょう。

スクワイヤーの記憶の分類によると、
記憶は、以下のように分けられます。
         
 ●宣言的記憶…意味記憶・エピソード記憶

 ●手続き的記憶…古典的条件付け・技能学習・運動学習
         知覚学習・プライミング

海馬を含む側頭葉の損傷は、
宣言的記憶の固定を損なうが、
手続き的記憶は損なわないことが知られています。

そのために、
グレッグは新しいエピソードを憶えられませんでしたが、
新しい歌を憶えたり、
病院での新しい生活習慣に適応することができたのです。


著者はグレッグの事例を、
グレッグが「人生で最高の日」を
憶えていなかったところで閉じています。

しかし、本当にグレッグは、
あのロック・コンサートのことを憶えていないのでしょうか。

それは誰にも(グレッグにも)分かりませんが、
そもそも、著者がグレッグを
コンサートに連れて行ったのは、
グレッグが父の死以降、落ち込んだままだったからです。

新しいことを憶えられないグレッグが、
なぜ「父の死」に落ち込むことが出来たのでしょうか?

この点について、
著者は医学的観点からの説明を
つけようとはしません。

潜在的な部分では、父の死を知っているのはないか。

というに留めています。

それならば、
たとえ顕在的には憶えていなくても、
楽しかった思い出のことも、
グレッグはどこかで憶えているのかもしれません。

 
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【次回配信】
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   次回 【展開号】… 2008年1月1日(火)にお送りする予定です。

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【参考文献】
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● 火星の人類学者 オリヴァー・サックス 1997 ハヤカワ文庫

● キーワードコレクション心理学 重野純 編 1999 新曜社


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【編集後記】
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今回は、実際にノンフィクションから、
健忘症の事例をご紹介しました。


著者のオリヴァー・サックスは、
脳神経科医であり、
優れたノンフィクションライターでもあります。

これまでも、様々な事例について
丹念に調査・研究するのと同時に、
彼らの人生に積極的にかかわり、
その交流の中から、
単なる医学的な知見とは異なる姿を紹介してきました。

ほかにも、「レナードの朝」「妻と帽子を間違えた男」
などが有名です。

「レナードの朝」は映画化もされています。

興味がある方は、ぜひ手にとってみてください。


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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
 http://www.clinicalpsychology.jp/    
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