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2005年7月6日水曜日

【Clip!アカデミー】第9回:解説号「心の構造図を検討する」

【Clip! アカデミー】 第9回2005/07/06
第3週  解説号「心の構造図を検討する」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座
  http://www.clinicalpsychology.jp/

   
              ◆目次◆
   
            1)【前回のまとめ】
               2)【問題号の解説】
            【Q1】 “身体”の側面に関する問題
            【Q2】 “行動”の側面に関する問題
            【Q3】 “ゲシュタルト”の側面に関する問題
            【Q4】 “潜在意識”の側面に関する問題
       【Q5】 “仮説的構成概念”に関する問題
                【次回配信日】
                【参考文献】
                【編集後記】
   ========================================================
   
   
      ○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
   
   
               ■ 基本サイクル ■
               第1週「エッセイ号」…問題提起
                    ↓
               第2週「問題号」…練習問題 
         ↓
    ※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
                    ↓
               第4週 基本的にお休み
            (特別号が配信される場合があります)
                  ↓
              ■ 第2サイクルへ続く ■
   
   
      ○ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ○
   
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   1) 【前回のまとめ】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   本サイクルでは、
   全サイクルで心理学における心の捉え方を見渡すために提示した
   「心の構造図(仮)」を、検討しなおす、という作業を行っています。
   
  
   
   ●「心の構造図(仮)」
   
      ┏━━┳━━━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━╋━━┓
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃   知覚 | | ┃  ┃ |
      ┃意識┃ゲシュタルト|潜在意識|認知過程┃身体 ┃行動|
      ┃  ┃      |    |    ┃   ┃  |
      ┃ ┃ | | ┃  ┃ |
      ┗━━┻━━━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━╋━━┛    
    
   
   ここでは、仮に、心理学における心の捉え方として、
   6つの側面をあげています。
   
   前回問題号では、
   いつもの心の各側面に関する問題以外に、
   「心の構造図」の検討作業に伴って出てきた概念も、
   心理学の基礎にかかわるものは、いくつか問題として取り上げています。
   
   前回問題号バックナンバーはこちら↓
   
   【Clip!アカデミー】第8回:問題号「心の構造図を検討する」
   
   http://k.d.mail-magazine.co.jp/t/k9wv/400lbqz0d81u3evuag
   
   初学者の方には、
   ちょっと難しい問題もあったのではありませんか?
   
   本メルマガの問題は、
   問題をきっかけに、
   皆さんの考えを深めてもらうために作られています。
   
   正解不正解にはこだわらず、
   興味を持った問題については自分で調べてみたり、
   出題者の意図を考えたりしてみてください。
   
   それでは、解説号をお届けします。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2) 【問題号の解説】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   【Q1】 “身体”の側面に関する問題
      
   大脳の以下の領域が司るとされる機能の、
   正しい組み合わせを述べなさい。
      
   (1) 前頭葉(frontal lobe) (2)頭頂葉(parietal lobe) 
   (3)側頭葉(temporal lobe) (4)後頭葉(occipital lobe)
      
   A 体性感覚(somatic sensation) B 運動(kinesthesis) 
   C 聴覚(auditory sensation) D 視覚(visual sensation)
   
   
          ==============選択肢=============
   
           (1) (2) (3) (4)
   
          a.  A  C  B  D
   
          b.  B  A  C  D
   
          c.  B  A  D  C
   
          d.  C B A D
   
          ================================
   
   
   【解説】
   
   ※大脳の機能的局在に関する問題です。
   
   
   大脳皮質(cerebral cortex)の中で、もっとも有名?なのは、
   前頭葉かもしれません。
   
   前頭連合野は、
   意志や計画といった機能も司っていると考えられているからです。
   
   この部位を損傷すると、行動から積極性が失われ、
   いつ行うか、やめるか、など行動の計画が立てられなくなる
   ともいわれます。
   
   ただ、A~Dの選択肢にはないようですね。
   
   このなかで前頭葉にあるのは、Bの運動野です。
   
      (1)前頭葉 … B 運動
   
   大脳の機能的局在は、
   
   ◆ ブローカ(Broca,P.)やヴェルニッケ(Wernicke,C.)らの
    失語症(ahasia)研究で有名な、
   患者の症状と関連する脳の損傷部位の特定から調べる方法。
   
   ◆ ペンフィールド(Penfield,W.)らの、脳の皮質に直接電気刺激を
   与えることで、被験者の反応を調べる方法。
   
   ◆ fMRI(機能的磁気共鳴画像法)など、
   脳の血流量を測定する最新技術を用いて、
   特定の活動に対応する部位を特定する方法。
   
   などを通して研究が進められています。
   
   その中でも、後頭葉を中心とした、
   視覚関連領域は、よく研究されています。
   
   よって、
     (4)後頭葉 … D 視覚
   
   脳や神経系に関する基礎知識は、
   「心理用語の基礎知識」14章の「心理学の生理的基礎」
   によくまとまっています。
   
   (※ 「心理用語の基礎知識」には現在新版が出ていますが、
   ここでは、普及している旧版を挙げておきます。)
   
   
   とはいえ、
   最近は、脳科学について入門書レベルでも
   興味深い文献が多く出ています。
   
   それを読みながら、
   「心理用語の基礎知識」を知識の確認に使うといいでしょう。
   
   前頭葉の機能から押さえていくと
   憶えやすいと思います。
   
   また、はじめは後頭葉=視覚という記憶の仕方でも
   いいでしょう。
   
   この問題は、この二つが分かれば、
   正解がわかるようになっています。
   
   正解は、
         【 b. 】
   
   大脳の機能的局在は、
   現在、ニューロンレベルで解明が進められています。
   (例えば「おばあちゃん細胞」)
   
   ただ、最近では、単純に機能的局在を明らかにするだけでは、
   脳の機能を明らかにすることは出来ない、
   とする考え方も多くあります。
   
   
   【Q2】 “行動”の側面に関する問題
    
   「A男がB子の人形をとって、B子は泣いた」という状況があるとき、
   「行動」の側面に注目する考え方としてもっとも適当なものを、
   以下の選択肢から選びなさい。
   
   
       ======================選択肢========================
   
        a. A男は、何らかの葛藤を抱えている。
        b. A男は、発達障害である。
        c. A男は、突然人形をとられたB子の気持ちを
          推測できない。
        d. A男が、B子の人形をとったことに、意味はない。
        e. A男が、今何を感じているかが問題である。
   
       ====================================================
   
   
   【解説】
   
   ※ ひとつの状況に関して、心の捉え方によって、
   どのような考え方の違いが出てくるか、という問題です。
   
   考え方の違いを強調するためかなり誇張した表現になっています。
   
   
   いずれエッセイ号で詳しく取り扱いたいと思いますが、
   「心の構造図」においてあげている6つの側面から、
   この状況を考えてみると以下のようになります。
   
    a. A男は、何らかの葛藤を抱えている。→ 【潜在意識】
    b. A男は、発達障害である。→ 【身体】
    c. A男は、突然人形をとられたB子の気持ちを
      推測できない。→ 【認知過程】
    d. A男が、B子の人形をとったことに、意味はない。→ 【行動】
    e. A男が、今何を感じているかが問題である。→ 【意識】
   
   よって、
        正解は、【 d. 】
   
   「行動」の側面に注目する行動主義では、
   行動の背後にあるものについて意味付けをすることを好みません。
   
   そのためここでは、A男の行動は、
   単純に自発的に生じた行動
   =オペラント行動(operant behavior)と考えられます。
   
   オペラント行動は、
   特定の誘発刺激を伴わない行動で、
   その結果によって、生起率が変わります。
   
   A男の行動が問題行動であるなら、
   その行動を強化している随伴刺激を除去したり、
   嫌悪刺激の随伴による抑制を行ったりすることで、
   生起率を低下させる手続きをとることができます。
   
   もちろん、同時に適応的な行動の強化も必要です。
   
   例えば、ここが学校で、
   A男が教師の注目を求めてB子をいじめるとします。
   
   A男への感情的な注目を避け、
   B子に人形を返してあげた瞬間にすかさず誉めることで、
   A男の適応的な行動を強化することができます。
   
   こうした考え方の利点は、
   A男の内面を問題とすることなく、
   A男の行動を扱うことが出来る点です。
   
   A男自身と、A男の行動を切り離して扱うことは、
   特に教育の場面では重要になります。
   
   他の側面の選択肢に見られるように、
   特に、難しい状況になるほど、
   A男の内面を推し量り、
   その行動をA男自身に帰属させることは、
   状況を悪化させる場合があるためです。
   
   
   ただし、この問題では、
   A男とB子を取り巻く状況、関係についてはなんの情報もありません。
   
   もしかしたらその人形は、
   B子がC子から取り上げたものだったかもしれないし、
   そもそもA男は30歳の父親で、
   おもちゃ売り場でぐずるわが子に手を焼いていたのかもしれません。
   
   行動の意味は、状況によって、
   まったく異なったものになってしまいます。
   
   この場合、上の選択肢の中で、
   ナンセンスになってしまわないのは、
   d.のほかはe.のみです。
   
   現場の状況に心理学を応用しようとするときは、
   このような点にも注意が必要です。
   
   
   【Q3】 “ゲシュタルト”の側面に関する問題
   
   ゲシュタルト心理学では現象学(phenomenology)が重視された。
   現象学についての記述のうち、不適切なものを次の選択肢から選びなさい。
   
   
       =======================選択肢========================
   
        a. 現象学における「現象」は、客観的な実在というより、
             意識上の現象のことである。
        b. 現象学は、我々が現象についての
          一切の判断を停止することによって行われる。
        c. 現象学を創始したのはフッサール(Husserl,E.)だが、
          学問として体系化したのは
          メルロ・ポンティ(Merleau-Ponty,M.)である。
   
       ======================================================
   
   【解説】
   
   ※ 現象学は、
   意識や世界について考えるために哲学が作り出した方法です。
   
   心理学を研究するにあたっても、
   意識や世界を考える上での基本的な態度として、
   身に着けておく必要のある知識といえるでしょう。
   
   
   現象学を創始したのは、ドイツの哲学者フッサールです。
   
   フッサールが明らかにしようとしたのは、
   我々の認識が、客観的な世界と“どのように”一致するのか、
   という点でした。
   
   しかしそこには、今でも多くの人が確信している、
   ひとつの前提があります。
   
     我々の外には確固とした客観的な世界があって、
     我々が世界について不確かなことしか分からないのは、
     単に努力が足りないだけなのだ。
   
   フッサールの現象学は、客観的な世界の認識は、
   どこまでいっても原理的に不可能なのだ、
   ということを証明することになりました。
   
   
   哲学は、我々が当たり前と考えていることを、
   疑ってみることから始まります。
   
     人間は、普段、目に見えているものが、
     客観的に存在しているという前提に立って、毎日を生活している。
   
     しかし、そもそも世界が客観的に存在している、
     という我々の確信には、どのような根拠があるのか。
   
   フッサールは、このような問いを考えるため、
   一度、世界は客観的に存在している、という我々の側の前提を、
   “カッコに入れる”、という作業から始めます。
   
   根拠もわからないままに、素朴に下している判断を、
   一時的に保留しておくのです。
   
   これが、判断停止(epoche:エポケー)という、
   現象学的還元(phenomenological reduction)のプロセスです。
   
   よって、
        【 b. 】は正しい記述。
   
   判断停止によって、客観的な世界は、
   とりあえず存在するとは限らないことになります。
   
   あるのは、我々の意識上に現れるものだけです。
   
   フッサールの現象学は、このようにして、
   人間が、意識の中に現れた世界についての像だけから、
   どのようにして“客観的な世界”という確信を作り上げていくのか、
   という過程を検討しようとしたのです。
   
   ここから、
        【 a. 】も、正しい記述。
   
   よって、残りの
   
        【 c. 】が正解。
   
   現象学を創始したのはフッサールであって、
   メルロ・ポンティがその影響の元に、
   身体に関して彼独自の現象学的考察を行ったのは事実です。
   
   しかし、現象学が、彼によって「体系化された」
   という記述は不適切といえるでしょう。
   
   
   ここから先は、興味を持った方が自分で調べてみてください。
   
   ただ、ここまで見てきただけでも、
   現象学が、ゲシュタルト心理学に与えた影響は顕著です。
   
   ゲシュタルト心理学においては、
   人間の知覚がいかなる仕組みによって構造化されるのかを、
   主観的な体験から導き出そうとした点に、
   現象学の影響を見ることが出来そうです。
   
   
   【Q4】 “潜在意識”の側面に関する問題
   
   「潜在意識」の特徴のうち、
   もっとも不適切なものを以下の選択肢から選びなさい。
    
   
   ==============================選択肢================================
   
    a. 精神分析など、主に人格理論において仮定される。
    b. 意識されない動機として、人間の行動を規定していると考えられる。
    c. その構造には、生理学的基盤は想定されない。
    d. 催眠状態において、意識水準が低下したとき観察される。
   
   ====================================================================
   
   
   【解説】
   
   ※ 初学者の方達は、潜在意識、無意識というと、
     反射的にフロイト(Freud,S.)の無意識を思い浮かべるでしょう。
   
     フロイト的無意識は、
     長年ここでいう“潜在意識”の側面
     において、唯一の存在で在りつづけました。
   
     逆にいうと、こころの潜在意識的側面について、
     他の考え方を許さなかった、
     という言い方をすることもできます。
   
     そこで、一度そうした認識を
     相対化する視点を取り上げてみたく思い、
     この問題を載せることにしました。
   
     したがって、問題の正解不正解よりも、
     自分の持っている
     無意識についての先入観について考えてみてください。
   
   
   どの選択肢も紛らわしいのですが、
   b.の、「意識されない動機」としての無意識は、
   フロイト的無意識の重要な特徴です。
   
   それ以外でも、
   催眠状態において暗示され、
   覚醒した後は忘れるよう指示された行動は、
   本人によって、別の理由を与えられることが知られています。
   
   たとえばとなりの女性の肩に手を置く、などの行動は、
   催眠状態において暗示されたにもかかわらず、
   本人は「悲しそうに見えたから」「ゴミくずがついていたから」等の
   理由を挙げます。
   
   また、右半球と左半球が切り離された
   分離脳(split brain)の研究においては、
   両半球に情報の連絡がないため、
   言語野のない右半球の司る行動は、行っている本人にも
   理由を答えられない、
   という現象が報告されています。
   
   こうした現象も、意識できない動機という点で、
   心の潜在意識的側面の存在を示唆しています。
   
   しかし、
   その根拠は脳科学や認知科学など、
   フロイト的無意識とは異なるところに求められています。
   
   無意識を、単に意識的にアクセスできないだけの、
   潜在的な処理システムの集まりであると考えると、
   これらの現象はうまく説明できそうです。
   
   実際、無意識の概念は、フロイト以前には、
   ライプニッツ(Leibniz,G.W.)やヘルバルト(Herbart,J.F.)ら
   19世紀の哲学者によって予感されていますが、
   これらはむしろ、
   潜在的な処理システムとしての側面に近いようです。
   
   すなわち、潜在意識的側面は、
   精神分析的な捉え方によって
   心理学の重要な研究テーマとなったのですが、
   それ以外にも捉え方が存在するということです。
   
   そして、そうした捉え方は、催眠状態や、脳の働きからも、
   アプローチ可能であると考えられます。
   
   フロイトは、無意識を対象とした実証的研究の可能性に
   積極的ではありませんでした。
   
   そのため、彼の理論は、ほとんどが臨床的な観察と、
   理論的な考察から成り立っています。
   
   それに対して、
   こうしたアプローチは、
   生理学的基礎に基づく実証的研究の
   可能性を示唆しています。
   
   はたして、フロイト的無意識は、
   実証的研究から、異なる説明によって代替されうるのか。
   
   あるいは、どこまでが潜在意識的プロセスで、
   どこまでが認知過程的プロセスなのか。
   
   この点は、まだ明らかになっていません。
   
   よって、
   正解は、【 a. 】
   
   
   【Q5】 “仮説的構成概念”に関する問題
   
   以下の文章の(1)(2)に当てはまる語句の組み合わせを、
   選択肢から選びなさい。
    
    ---------------------------------------------------------
    仮説的構成概念(hypothetical construct)は、
   (1)を検討する必要があるが、(2)と同じように用いられる。
    ---------------------------------------------------------   
   
   A 仲介変数(intervening variable) B 妥当性(validity) 
   C 剰余意味(surplus meanings)
   
   
          =========選択肢========
   
            (1) (2) 
   
           a. C    B
   
           b. B    A
   
           c. A    C
   
          =======================
   
   
   【解説】
   
   ※ 仮説的構成概念は、心理学では特に問題になります。
   
   議論は尽きず、心理学内部でも立場が分かれますが、
   基本的なことは押さえておきましょう。
   
   
   仮説的構成概念は、
   理論的構成概念とも、仮説的構成体とも呼ばれます。
   
   仲介変数とは、仮説的構成概念とほぼ同じ意味ですが、
   関数の形であらわされます。
   
   よって、
    (2)に入るのは、A 仲介変数
   
   仮説的構成概念は、
   観察結果に還元しきれない剰余意味を持つことが特徴です。
   
   前々回エッセイ号「心の構造図」の議論でも
   いくつかを取り上げたように、
   心理学では、人間の行動の原因に、様々な心理的要因を仮定します。
   
   例えば、成績の良し悪しという観察結果を、
   「知能」という言葉で説明しようとする場合がそうです。
   
   こうした心理的要因は、
   目に見える、つまり観察可能な行動から推測は出来ても、
   観察結果と完全に一致はしません。
   
   知能指数とは、成績の単なる言い換えではない、ということです。
   
   そこには、すでに成績の差を生じさせる、
   個人内の心理過程についての仮定が含まれている。
   
   このズレが、C 剰余意味です。
   
   仮説的構成概念は、このように、
   観察結果が生じた原因等を説明する上で用いられます。
   
   しかし、ここで出てくるのが、
   仮説的構成概念を、どのように測定し、実証するのか、
   という問題です。
   
   なんとか、成績の差として観察可能な、
   特定の心理過程の存在を証明したいのです。
   
   そこで重要になってくるのが、妥当性の検討です。
   
   仮説的構成概念は、実際に目で見ることは出来ないので、
   他の方法で、その存在を証明しなければなりません。
   
   ここで、ある仮説的構成概念を用いて、
   あるテストの成績の差を、予測できるとします。
   
   つまり、理論的にはAはBよりもよい成績を取るはずだ、
   と予測するわけです。
   
   実際にテストを行ってみて、予測通りの結果が出たら、
   その仮説的構成概念は、AとBの成績の差を予測する上で、
   有用な道具になります。
   
   あるいは、その仮説的構成概念は存在する、
   と仮定しておいて、さしつかえない、ということになります。
   (ここまで来ても、ある、とは言いきれないことに注意。)
   
   これが、ある仮説的構成概念によって、
   ある現象を説明することについての妥当性の検討です。
   
   このときの妥当性を、
   構成概念妥当性(construct validity)といいます。
   
   ここから、
   (1) に入るのは、B 妥当性
   
   正解は、       
         【 b. 】 
   
   -----------------------------------------------
   仮説的構成概念は、B妥当性 を検討する必要があるが、
   A 仲介変数 と同じように用いられる。
   -----------------------------------------------   
   
   このような仮説的構成概念は、
   観察できない現象を扱う心理学にとっては、
   重要な道具です。
   
   しかし、妥当性の検討は、実際には上で挙げたように
   簡単には行きません。
   
   そのため、行動主義のように、
   そもそも、仮説的構成概念を用いない、
   という立場も出てくるのです。
   
   
   次回エッセイ号では、
   心をまた別の視点から眺めてみる予定です。
   
   お楽しみに。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【次回配信】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
      次回 【エッセイ号】… 7月19日(火)にお送りする予定です。
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【参考文献】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   仮説的構成概念等基礎知識
     ● 心理学論の誕生「心理学」のフィールドワーク 2000 サトウタツヤ
   
       渡邊芳之 尾見康博 北大路書房
   
   現象学・構造主義
     ● わかりたいあなたのための現代思想・入門 1990 小坂修平・
       竹田青嗣・志賀隆生 他 JICC
   
     ● はじめての構造主義 1988 橋爪大三郎 講談社現代新書
   
   潜在意識
     ● 自分を知り、自分を変える―適応的無意識の心理学 2005 
       ティモシー・ウィルソン 著村田 光二 訳 新曜社
   
   脳科学・認知科学
    ● 心理用語の基礎知識 東洋・大山正・詫摩武俊 他 1973 有斐閣
   
     ● 脳内現象〈私〉はいかに創られるか 2004 茂木健一郎 
       日本放送出版協会
   
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   【編集後記】
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
   
   今回取り上げた
   現象学や仮説的構成概念の考え方は、
   臨床心理学の大学院受験にはあまり必要ないかもしれません。
   
   しかし、
   大学院に進学し、
   心理学の研究をいざ行おう、というときには、
   知らずに大なり小なり、現象学的な作業をすることになるでしょう。
   
   また、自分の測定したい対象がなんなのか、
   分からなくなってしまうこともあると思います。
   
   そんなとき、
   先人の知恵を知っているか、いないか、
   仮説的構成概念を廻る議論を知っているか否かによって、
   その後の研究がかなり変わってくるのではないかと思います。
   
   院生レベルにおいて必要なのは、
   こだわりすぎるのでもなく、
   かといって、前提であることは知っている、
   というバランスです。
   
   そうした議論があることを念頭においた上で、
   自分が今できるレベルの研究に全力で取り組む、
   という健全なあきらめと妥協にあるのではないでしょうか。
   
   みなさんも、
   ここで読んだことは、一度自分なりに噛み砕いた上で、
   それにとらわれないように心がけましょう。
   
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座 
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