【Clip! アカデミー】 第50回 2006/08/01
第3週 解説号「心の関係図の行き先」
◆提供:臨床心理士指定大学院受験講座◆
http://www.clinicalpsychology.jp/
◆目次◆
1)【前回のまとめ】
2)【問題の解説】
【Q1】集団の力学に関する問題
【Q2】集団の研究法についての問題
【Q3】集団と学問領域に関する問題
【次回配信日】
【参考文献】
【編集後記】
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○ ~~~~~~Clip!アカデミーサイクル~~~~~~ ○
◆ 【Clip!アカデミー】は、
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■ 基本サイクル ■
第1週「エッセイ号」…問題提起
↓
第2週「問題号」…練習問題
↓
※【今回はこちら!】 第3週「解説号」…確認とフィードバック
↓
第4週 基本的にお休み
(特別号が配信される場合があります)
↓
■ 第2サイクルへ続く ■
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1)【前回のまとめ】
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前々回のエッセイ号では、
関係性の議論の中で、
関係性には大まかなパターンはあるものの、
常に、パターンから予測される結果を外れるような意外性、
遊びが存在している、と指摘しました。
関係性のこうした特徴が失われる、
すなわち、パターンから外れるような遊びがなくなると、
パターンは硬直し、Aという刺激にはBという反応、
という特定のパターンが、
様々な側面に見られるようになります。
心理療法は、
こころの様々な側面に見られる、
このような特定のパターンに注目し、
治療に用いています。
今回解説号で、その詳細について、
もう少し詳細な事項を論じていきましょう。
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2)【問題の解説】
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【Q1】認知過程に関する問題
心理療法において、
【認知過程】に生じる硬直したパターンとみなすことができないものは、
以下のうちどれか。もっとも適当と思われる選択肢を挙げなさい。
====選択肢====
a. 過度の一般化
b. 原因帰属
c. 二分割思考
d. 自己関連付け
===========
正解は、 【 b. 】
硬直したパターンの例として、
認知療法において論じられてきた自動思考についての問題です。
選択肢に挙げた例が、
認知療法において、認知の歪み、自動思考、スキーマ
として知られているものです。
認知療法では、気分障害を中心として、
精神疾患の原因を本人の認知過程の中に求めます。
外界を認識し、情報を処理して、
適切な行動を取る。
原因帰属の過程は、
この中でも、出来事の原因を何に求めるか、
自分や他者の行為の理由を推論するために用いられます。
お皿が割れてしまったのはなぜか、
夫が怒っているのはなぜか。
原因を自分の内的な属性(臆病さ、そそっかしさ)
に帰属すれば、自分を責めることになるし、
他者に帰属すれば(夫は怒りっぽい)、
逆に相手に怒りを感じるでしょう。
つまり、日常生活におけるエピソードや、
自分や他人の行為を、どのように考え、
どのような意味づけをし、受け止めるかが、
精神疾患を引き起こすと考える訳です。
社会心理学においては、
ハイダーに始まる帰属理論の研究から、
気分障害に関して様々なモデルが提唱され、
認知療法を始め、心理療法に寄与していますが、
原因帰属自体が精神疾患を生じるという研究結果はありません。
よって、【 b. 】が正解です。
中でも、気分障害に特有の考え方(認知の様式)として、
●過度の一般化(たとえば、ひとりの人に指摘された欠点を、
すべての人から指摘されたように受け止めてしまう)
●自己関連付け(物事の失敗の原因を、すべて自分に結び付けてしまう)
●二分割思考(結果をゼロか100か、でしか判断しない)
などが良く知られています。
これらの考え方は、
日常において、誰もが経験のある考え方であり、
特別な考え方というわけではありません。
その意味で、
気分障害の状態にある人と、そうでない人との間に、
違いはありません。
ただ、気分障害に陥りやすい人、
もしくは、気分障害という診断を受けている人は、
常に、と言って良いほど、日常の出来事を、
同じ認知の枠組みを通して受け止めている。
非常に硬直したパターンを、
繰り返しなぞり続け、外に出られないことで、
脳内のホルモンバランスなど、様々な部分にも
支障を来たしている状態と考えられそうです。
【Q2】例外に関する問題
短期療法において重視される「例外」とは、
どのような状況を指すか。
以下の選択肢の中から、もっとも不適切なものを選びなさい。
===========選択肢===============
a. 授業参観中、母親の前では給食を食べることが出来た。
b. 家族との関係は悪いが、叔父との関係は良い。
c. 子どもは嫌いだが、口では「好きだ」という。
=============================
正解は、 【 c. 】
…【 c. 】は、ベイトソンの提唱した、ダブルバインドの例です。
心理療法では、関係性の持つ特徴を、
様々な形で治療に応用していると考えられますが、
短期療法における「例外」という概念は、
その中でも、非常に興味深い発想をしています。
短期療法では、
相談者が困っていること(問題状況)は、
家族、あるいは相談者自身が繰り返している、
特有の行動のパターンによって維持されているとかんがえます。
そうでなければ、
たまたま給食の時間にお腹が痛くなっても、
放っておけば、そのうち問題状況は変化し、
なくなっているはずだからです。
実際、ほとんどの場合は
意識せずにそうなっていると考えます。
こうした悪循環を断ち切るための手段として
持ちいられるのが、「例外」探しと呼ばれる方法です。
悪循環が維持されるには、
たとえば給食の時間になると決まってお腹が痛くなる、
というように、同じきっかけに対して、
同じ反応が生じる必要があります。
しかしもともと、
関係性のパターンは、
常にパターンを裏切るような例外性に満ちているものです。
それは、一見硬直したパターンにおいても、
よく探すと存在するはずである、と考えるわけです。
よく思い出してみると、
給食の時間は、いつもお腹が痛くなるが、
たまたま授業参観で母親が見に来ていたときは、
お腹が痛くならずに、給食を食べることができていた。
こうした例外が見つかると、
もう一度母親にそばにいてもらえないか、
とか、母親がそばにいるときのような安心感を
与えるにはどうしたら良いか、とか、
様々な方策を立てることができるようになります。
短期療法では、
ミラクルクエスチョン、スケーリングクエスチョンといった
問いかけを用いて、
徹底的に「例外」を探したり、作り出したりすることで、
硬直したパターンを突き崩し、問題状況に影響を与えようとします。
単純に技法だけを流用してもうまくいかないことが
多いようですが、
「例外」をめぐるこうした発想は、
我々が論じてきた関係性についてのイメージを膨らませるためには、
役に立つのではないでしょうか。
【Q3】集団の性質に関する問題
A~Dにあげた集団を、
目的達成の機能が強い順に並べた場合、
もっとも適当なものを、以下の選択肢から選びなさい。
A サークル B 家族 C 軍隊 D エンカウンターグループ
========選択肢======
強い←目的達成機能→弱い
a. A > B > C > D
b. A > C > D > B
c. C > B > A > D
d. C > A > B > D
=================
正解は、 【 d. 】
AとCは、目的達成のための集団といえます。
まず、なんらかの目的があり、
それを達成するために、集団を構成するわけです。
この場合集団は、目的を達成するための、
様々な集団規範や組織構造を発達させていきます。
個人は、こうした集団規範や組織構造の中で、
決められた役割を果たすことを求められます。
こうした集団においては、
個々人の間の関係性は、排除されないまでも、
目的達成機能を損なう要因と考えられることが多いようです。
たとえば軍隊においては、
個々人の間には、階級という厳密な地位構造があります。
士官と兵士は、命令を与えるものと、従うもの、
という役割関係以外のものを、
関係性の中に持ち込むことを許されません。
豊かな関係性が生じている集団では、
個々人の間に、役割の違いがある場合でも、
様々な形で生じる例外や関係性の揺らぎがあることによって、
集団の中に変化が持ち込まれます。
上司と部下の間での冗談は、
一瞬、役割関係を超えた、対等な者同士の
心の交流を作り出すかもしれません。
しかし、関係性が硬直した集団では、
こうした関係性の揺らぎは生じません。
上官はあくまで上官であり、
兵士はあくまで兵士です。
軍隊やサークルは、
目的達成のための集団といえますが、
家族やエンカウンターグループは、
そもそも目的達成のために存在する集団ではありません。
もちろん、家族にもエンカウンターグループにも、
様々な目的がありますが、
それは結果的に達成されるだけで、
明確に追い求められることはありません。
こうした集団においては、
組織構造や集団規範は意図的にデザインされ、
構築されるわけではなくて、
個々人の関係性や必然性から、
自然に発生してきたものが採用されることになります。
逆に、こうした集団の関係性が硬直するのは、
目的が明確になりすぎる場合です。
家族が、「子どもを育てる」ことのみを目的として、
それを達成するための集団になれば、
そこには様々な弊害が生じてくるでしょう。
たとえば、常に子どもが優先され、
夫婦関係が二の次にされれば、
夫が浮気に走ることになるかもしれません。
「人格の変化」だけを追求するエンカウンターグループは、
個々のメンバーに、
人格の変化を強要することになるかもしれません。
個人で考えた場合、
人間という存在自体、
なんらかの目的を達成するために
存在しているわけではありません。
種の繁栄や遺伝子の運搬、
幸せや社会的成功といった目的も、
人間が、後付けで考え出した目的です。
目的を明確に定義し、
その達成に向けてすべてを研ぎ澄ませていくことは、
もちろん個人の生き方としてはありですが、
一面で、自分を脆く、弱くしていくことでもある、
ということは、覚悟されるべきことです。
心理学、特に臨床心理学では、
人間の中にある揺らぎ、遊びの部分に注意を向け、
変化する柔軟な存在として人間を捉えることが求められて
いるとはいえないでしょうか。
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【次回配信】
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次回 【エッセイ号】… 8月15日(火)にお送りする予定です。
※ 次週8月8日(火)は休刊です。特別号が配信されることがあります。
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【参考文献】
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● こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳 大野 裕 著
2003 創元社
● 家族内パラドックス 長谷川啓三著 1987 彩古書房
● エンカウンター・グループ 人間信頼の原点を求めて
カール・ロジャーズ著 畠瀬稔訳 畠瀬直子訳 1973 ダイヤモンド社
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【編集後記】
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●今回、ひそかに50回を迎えました。
1年間以上に渡って続けてきた本メルマガですが、
伝えたいメッセージは変わっていません。
ただ、内容の方は、
かなり変わってきていると思います。
最近購読を始めた方は、
以前のバックナンバーも、ご覧になってみてください。
●DATE BOOK、今年度版が完成しました!
各大学院への質問項目は、
大学院受験の経験者たちが、
「自分たちが欲しかった」「あると役に立った」
という観点から厳選しています。
今回は、前回の項目に多少変更を加え、
例えば、就職先であれば、
医療分野や教育分野、博士課程など、
どのような分野に進む卒業生が多いのかが、
パーセンテージで分かるようになっています。
自分の将来働きたい領域を念頭において、
大学院選びができる形になっているわけです。
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送信者:臨床心理士指定大学院受験講座
http://www.clinicalpsychology.jp/
※Clip!アカデミーの記載内容は臨床心理士指定大学院受験講座に帰属します。
無断転載・転用を禁止します。
2006年8月1日火曜日
【Clip!アカデミー】第50回:解説号「心の関係図の行き先」
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